- Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167902919
作品紹介・あらすじ
鷗外、荷風、百閒、夢野久作、岡本かの子に、吉田健一、福田恆存、澁澤龍彦、筒井康隆、水木しげる……食にまつわる不安と喜び、恐怖と快楽を余すところなく描いた傑作の数々を収め、隠れた食のバイブルとして好事家たちの愛蔵書となった伝説のアンソロジーが、新装版で登場。新装版に際して、幻の名品を新たに収録。(解説 堀切直人)収録作品:堀口大學「シャンパンの泡」 大岡昇平「食慾について」 内田百閒「餓鬼道肴蔬目録」「百鬼園日暦」 大手拓次「洋装した十六の娘」 夢野久作「一ぷく三杯」 永井荷風「妾宅」(抄) 邱永漢「食在廣州 食は広州に在り」 澁澤龍彦「グリモの午餐会」 椎名麟三「松茸めし」 長谷川伸「鼻くそ」萩原朔太郎「雲雀料理」 武田泰淳「もの食う女」 武田百合子「枇杷」 色川武大「大喰いでなければ」 赤瀬川原平「食い地獄」 吉行淳之介「出口」 森鷗外「牛鍋」 岡本かの子「家霊」 筒井康隆「人喰人種」 吉田健一「饗宴」 山村暮鳥「あさがお」 永井龍男「黒い御飯」 小泉八雲「食人鬼」 古川緑波「悲食記」(抄) 森田たま「酢のはなし」 西条八十「お菓子の汽車」 森茉莉「ビスケット」 近藤紘一「夫婦そろって動物好き」(抄) 水木しげる「悪魔くん」(抄)向田邦子「お八つの時間」 直木三十五「果物地獄」 吉田一穂「VENDANGE」 中島敦「幸福」 福田恆存「ニュー・ヨークの焼豆腐」
感想・レビュー・書評
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食にまつわるアンソロジー。とやかく言うよりざっと大まかに収録作家を列挙してみましょう。大岡昇平/内田百閒/夢野久作/永井荷風/邱永漢/澁澤龍彦/椎名麟三/長谷川伸/武田泰淳/武田百合子/色川武大/赤瀬川原平/吉行淳之介/森鷗外/岡本かの子/筒井康隆/吉田健一/永井龍男/小泉八雲/古川緑波/森田たま/森茉莉/近藤紘一/水木しげる/向田邦子/直木三十五/中島敦/福田恆存 どうですか?食指をそそるラインナップでしょう。最後の福田恆存で大笑いして読み終えたのもまた一興です。お腹いっぱい大満足です。
憧れの百合子さんの「枇杷」は何度読んでもホロリとしてしまうし、泰淳の「もの食う女」の百合子さんはそりゃもういい女すぎて素敵だし、吉田健一の「饗宴」の異常妄想ぷりは舌を巻く超絶品なのですが、敢えて1作を選ぶとしたら近藤紘一「夫婦そろって動物好き」を。ベトナム人奥様の屈託ない純粋さと奔放な逞しさはその衝撃ゆえに不思議と感動もたらすのですが。詳細は読んでみてのお楽しみということで。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
先ごろ読んだ『快食快眠快便』のような、食べることに関するエッセイ集かと思いきや、掌小説あり、短編小説あり、ちょっと思惑と違ったが、明治の文豪から現代作家まで網羅されており、それなりに楽しめた。
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食に関するエッセイ集、フルコースでお腹いっぱい。
食べ物はのちのち人を決定づける大切なもの。
食べることって深い。すごい行為だな。 -
収録作
大岡昇平「食慾について」
夢野久作「一ぷく三杯」
武田泰淳「もの食う女」
赤瀬川原平「食い地獄」
吉行淳之介「出口」
岡本かの子「家霊」
筒井康隆「人喰人種」
小泉八雲「食人鬼」
近藤紘一「夫婦そろって動物好き」
直木三十五「果物地獄」
吉田一穂「VENDANGE」
中島敦「幸福」 -
新装版『もの食う話』 (文春文庫)
新品で¥616ですよ。お値打ちですよ。鼻血出ますよ。
食に関する短編を収録した絶品アンソロジー。目次を開くとレストランにあるようなメニューの表紙を模したデザイン、「厨房から」に始まり「食前酒」「前菜」「主菜」「サラダ」「デザート」「食後酒」と章立ててあって、それぞれに合った個性豊かな作風の短編が収められています。エッセイから日記、小説に詩に漫画。美食、うんちく、風刺からミステリ風、奇譚、SF、エログロまで。
これはたまらんかったです。
『喰いたい放題』が好きな色川武大の「大食いでなければ」、『酒・肴・酒』を所蔵していることが自慢の吉田健一の「饗宴」も良いですけど、ダントツに好きな収録作品は武田泰淳「もの食う女」でした。
青い、青臭いよ! 終戦から3年後の昭和23年(1948年)に正反対のタイプの二人の女性と交際し、ぷらぷらと洋食屋で食事をして酒を飲んで、触るやら触らんやら事に及ぶやら及ばんやらをくどくどくどくど・・・と書いてある。この「中二病でも恋がしたい」感!それぞれの女性の性格と主人公との相性が、食べ方やデートのときの態度を軸に語られる。
一切賛成できないけどびんびん共感しちゃう「俺はきっともっとモテるはずだ」と自分に呪いをかけちゃったダメ男の話。面白いなぁ。
あとはイロモノ寄りの大岡昇平、澁澤龍彦、赤瀬川原平、筒井康隆はさすがのインパクトでした。
そして吉行淳之介「出口」はなぜか映画『オールド・ボーイ』『新しき世界』なんかを彷彿させる絶品の味わいでしたね。好きだなぁこれも。 -
食へのオブセッションはエロ、グロどちらにも派生していくと思っていたのだけれども、今回の収録作で後者に含まれるのはさほどなし。小泉八雲「食人鬼」に、筒井康隆「人喰人種」くらいか(ツツイ作品も断筆宣言直前の頃の前衛的なものだから、初期のような毒は少々欠けるが)。
あとは戦時期を生きた作家達の、辛く厳しい食糧事情であっても、逞しくどことなくユーモアのあるエッセー風な作品が多い。武田泰淳、吉行淳之介はさすがにエロいな、と。 -
食べるという行為は本能に根ざしている行動であるが、よく考えるといろいろ不思議で興味深いことが多い。他の命をいただくもの。珍しいものを遠くまで探したりすることもあれば、戦時中などは木の皮まで食べたり。この「食べる」と言うことについて、永井荷風や萩原朔太郎、小泉八雲、岡本かの子などがその体験を描いている。どんなところに重きを置いているのかがわかって面白い。美味しいものを食べるということは性欲や睡眠欲を満たすことと同義なのだと強く感じる。現代日本ではお金さえ払えばいつでもどこでも大抵のものが食べられる。これは便利なのだが食べることの本質というかありがたみが薄れているのかもしれない。
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文豪たちによる、食べることについてのアンソロジー。美味しいものを食べたという記録もあれば、戦時中の食の貧しさ、人食などの話など様々。「食べる」と一言に言っても、その中には人間の強欲さ、性、切なさ、喜び等々、複雑な感情が読み取れ、お腹がいっぱいになった。
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20170906読了
2015年発行。1990年刊行の文庫を増補新装したもの。近藤紘一「夫婦そろって動物好き(抄)」、向田邦子「お八つの時間」、福田恆存「ニュー・ヨークの焼豆腐」