武曲 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2015年3月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (496ページ) / ISBN・EAN: 9784167903213

作品紹介・あらすじ

これが二十一世紀の剣豪小説だ!



無自覚な天才少年・羽田融とその「殺人刀」の血を恐れる剣道部コーチ矢田部研吾。反発と無視を乗り越えやがて二人は運命の対戦へ。

みんなの感想まとめ

剣道と人間関係の深い探求を描いた物語で、無自覚な才能を持つ少年と、複雑な背景を持つコーチの成長が鮮やかに描かれています。二人の対立から始まる物語は、剣道の技術や精神を通じて、彼らの内面に迫る深い洞察を...

感想・レビュー・書評

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  • 『剣豪小説の新時代を切り拓いた傑作』
    初心者ながら天性の才能を感じさせる少年と、実力者ながら様々なものを抱えたコーチ。
    二人の男が主人公の物語。語り手が入れ替わりながら進んで行きます。
    剣道、兵法、仏教、馴染みのない難しい言葉が多かった。言葉に興味のある少年が主役なので尚更だろう。
    読み進めるのに時間がかかったけど面白かったです。汗臭く、男臭く、酒臭い物語!

  • 剣道の才能というか、センスというか、そういうものってやはり独特のモノのような気がする。
    仕事や家族よりも剣の道を選ぶヒトってのも、たしかにいるし。なんでそこまでと思うけど、本人もわからないんじゃないか。
    剣と父親とアルコールにとらわれる一人の男と、ラップをこよなく愛する高校生の出会いと死闘。
    長い長い回り道の果てに2人が至った境地。たぶんそれこそが多くの者が剣に惹かれる理由なんだろう。

  • 2025.08.24-2025.12.13

    なかなか時間が取れずゆっくりとした読書になってしまったが、面白い物語だった。

    「剣道の空気感や試合う時の表現ってどんなものがあるんだろう?」
    これが本書を読むきっかけであった。
    私自身、小学生〜高校生まで剣道を習っていた。相手と剣を交える時の緊張感や、多種多様な剣風、面金の奥から不思議とよく見える相手のまなざし。
    ああいった独特の要素は、自分の視点でしか体感することはできず、客観的に剣道の体感を言語化してあるものを読んでみたかった。

    結論から言えば、この小説は剣道だけでなく、それ以外の生身の表現が非常に秀逸だった。登場人物たちの闘争心をはじめ、絶望感、焦燥感、絶頂感…すべてがじっとりと書かれている。そのため、間違いなく目的は達成した。

    p250-l11
    木刀を構えながら、静かに霜が降りるように蹲踞くる。そして、煙が一筋上がるように、また静かに立ち上がる。

    この部分を読んだ時、静謐。それでいて圧のある人物が私の目の前に立っている気さえした。静なのに、重く、大きく目の前の存在を感じる。剣先を逸らすことにひどく緊張する。あの感覚を、思い出すのである。

    剣道をやったことがない人には、詳細に。剣道をやったことがある人には、緻密に。剣道の空気が伝わる文章で、非常に良いと思った。

    ストーリー自体は、自己との対話、欲望の行末、他者への寛容が、メインになっていると感じる。個人的に、登場人物たちの行動や精神の変遷には、仏教的精神性が絡められており、羽田や矢田部が目の前の問題を乗り越えていく様は小さな解脱のように感じた。

    抜けた先にはまた各々の葛藤に絡め取られていくのだろうが、それぞれベクトルの異なった問題へ、己の力と剣に向き合うことで、また解放に向かうのだろう。
    この繰り返しと、彼らの成長を予想することのできるラストは、ワクワクとしたまま物語を終えることができた。

  • 人物像の描き方と、ストーリー展開が絶妙です。
    剣道の試合の間の描写が剣道未経験者でもわかりやすく伝わってきます。
    サラサラ読める感じはありませんが、一気に読んでしまいました。

  • おもしろかった!融サイドでは軽く読めるし青春小説のようなのに、研吾サイドはあまりに重い。アルコール依存症の堕ちていく様もおそろしいし、酔っている夢のような現実のようなよくわからない世界観も見事に描かれている。融の獣性とか、研吾のアルコール依存症とかどうなっていくのかと思ったけど、最後はなんだかきれいだった。すっきりとした読了感。

  • 初読みの作家さん。綾野剛さんファンのわたしとしては映画化されたのをきっかけに読みました。長くて難読漢字に辟易した部分もありながら…でもでも人物描写、風景描写がすごい!細やかで、ほんとにその場にいるような、こんな人が実在してるような、そんな文章に、特に山あり谷ありでもないのに、研吾はどうなる⁈融は⁈とグイグイ引き込まれました。剣道は全くの門外漢、ど素人なので、剣道をやってたらもっともっと楽しめたのかもと思いました。そして映画はみてないけど、研吾は綾野剛さんしかいない!!!と思いました☆

  • なんだかとても入りづらい話だった。
    言葉のリズムなのか、選び方なのか、
    読むのにちょっと苦戦しました。

  • 剣道というよりも、木刀で素振りがしたくなった。武道を現代風に解説したような新しい感覚の小説

  • 藤沢周『武曲』文春文庫。

    現代の剣豪小説らしい。何とも残酷で酷いストーリーだと思う。ひょんなことから剣の道を目指すことになる天賦の才を持つ羽田融と人生の落伍者である剣道部コーチ・矢田部研吾の対決という漫画的な構図。こうした構図を描きながら結論を描かない藤沢周の狡さ。

    感動も無ければ、学ぶべきことも無い。

  • ラップ命の高校生と剣道の邂逅。それに心身を震わせるアルコール依存症患者の剣道コーチ。その二人を繋ぐ禅師にして剣道範士。

    読む前に想定していたストーリー展開はことごとく裏切られた。裏切られる快感。快感が呼ぶ興奮。凄まじい攻勢を受け、ただただ圧倒されながら読了した。

    剣道の立ち合いの描写がすごい。自分もこんな風に描写される立ち合いがしたい。

  • 真剣に剣道と向き合って己を研く矢田部研吾。それが過ぎて、研ぎすぎて薄くなった刃のようにその技は鋭く、けれど脆くもなり……いわゆる闇落ちのような状態になってしまう姿に、なぜか同情してしまいます。

    真面目だけど不器用すぎて、要領よく生きられない姿がそうさせるのかもしれません。

    対する羽田融。剣の技に没頭するあまり、矢田部親子と同じように殺人刀の道に落ちかけます。憶測ですが、表層的な格好よさに魅せられて自己満足に陥り、相手を殺し自分を活かすことだけを考えていたからなのかな、と(若人なら普通のことだとは思いますが)。

    しかし一級審査後、その印象がガラリと変わりました。「完全な捨て身の状態であることが、最も自分自身でいられる気がした」という一文から「無防備=相手を自由にさせる」と連想し、そこから融が活人剣に目覚めたように思った次第。

    それまでは悩み・混迷・惑いという要素が多く、どこか鬱屈した雰囲気が作中に漂っていたように感じられましたが、上記の一文以降は爽やかで明るい空気を感じました。年齢的に近い研吾の方により感情移入してしまいましたが、融の今後の成長も気になるところ。「武曲II」が純粋に本作の続編なら、文庫化を待たず単行本を手にとって読んでみたいくらいです。

  • 映画化って帯でみて読んだ
    そして剣道には誰が知ってるのという哲学持ってくるし、先生はアル中だし弱すぎ。
    剣道を題材にするには武士らしさがないうえに、小説としては登場人物がカッコよくないないのでのめり込めなかった。

  • 矢田部の落ちぶれた場面が長くて気が滅入ったけれど、それとは対照的な融の強烈に光り爆発する若いパワーが眩しくて、胸が熱くなった
    斬るか斬られるかの駆け引きおそろしい(わくわく)
    読後感爽やか

  • 面白かった。
    剣道にしろ、それぞれの人物の言動・モノローグにしろ、描写が面白い箇所が多い。物語の展開もとても良い。
    読み終わってはじめてタイトルが沁みた。

  • 期待が高すぎたか。鎌倉、大船、江ノ島は懐かしかった。

  • なんとなく、文書表現がココロに止まらない。お話は面白い。

  • 剣道の場面は迫力があったが、研吾がアルコール中毒で荒れる場面はちょっクドすぎ。殺人剣と言うのも、よく分からない。融がラップをしているのも今風かもしれないが、かえって物語に入っていけなかった。

  • 剣道やってて、また最近剣道やりたいなー思ってて、表紙のイラストとタイトルにやられて即買い。

    細かい描写が多すぎて剣道素人には分からない部分が多いと思う。1級審査とか懐かしすぎるけど、何せ細かすぎる。

    研吾のアル中の件は一切不要。あれが無ければ面白いと思うけど、重いし暗く、読んでて疲れる。再読は無いかな。作中の「我上位なり」は気に入ったけど、ヒップホップがヒルクライムてな。他にもあるだろうに笑

  • 湘南を舞台にした高校生の剣道を通した青春小説。と言うと、随分軽めの印象になってしまうが、武道を多少なりとも噛んだことがある者にとっては、動きや精神性の描写がとても巧み。
    アル中で壊れて行く様や、葛藤が、セオリー通りでなくて良い。

    何というか、表面張力的な書き方で、読者を引き込む。

    ただ、ヒップホップ好きな高校生、剣道、設定は良いが、ヒルクライムを出してくるってのはいかがなものか...あれって、ポップスじゃ...
    細かなツッコミどころはあるものの、物語としては良い一冊でした。

    映画化されるみたいだけも、どうなんだろね。

  • <内容紹介より>
    羽田融はヒップホップに夢中な北鎌倉学院高校二年生。矢田部研吾はアルコール依存症で失職、今は警備員をしながら同行剣道部のコーチを務める。友人に道場に引っ張られ、渋々市内を握った融の姿に、研吾は「殺人刀」の遣い手と懼れられた父・将造と同じ天性の剣士を見た。剣豪小説の新時代を切り拓いた傑作。

    ーーー
    天性の攻撃性と野生を兼ねた剣士、羽田融。
    現代の「死狂い」「不動明王」と呼ばれた剣士の血を引く矢田部研吾。
    父の剣道を恐れ、その呪縛から逃れようとする研吾と、父の県道を彷彿とさせる融の剣。
    融が、「自分の剣道とは」「生き方とは」と模索しながら成長していく過程は読みごたえがある、というより回りくどい、かも。
    試合の描写や、立ち合いの描かれ方は、剣道をやっていた時の記憶を呼び起こすような、正確で密度のある描写で満足ですが、そこにたどり着くまでが長い、という印象です。
    特に、キーパーソンの二人が「生徒」と「コーチ」という関係性なので、おなじ剣道部を舞台とした小説である『武士道シックスティーン』などに比べると読みにくいかもしれません。

    映画化もされるようですが、矢田部研吾は綾野剛ではない。

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著者プロフィール

藤沢 周(ふじさわ しゅう)
1959年、新潟県生まれ。法政大学文学部卒業。書評紙「図書新聞」の編集者などを経て、93年「ゾーンを左に曲がれ」(『死亡遊戯』と改題)でデビュー。98年『ブエノスアイレス午前零時』で第119回芥川賞を受賞。著書に『サイゴン・ピックアップ』『オレンジ・アンド・タール』『雨月』『さだめ』『箱崎ジャンクション』『幻夢』『心中抄』『キルリアン』『波羅蜜』『武曲』『武曲Ⅱ』『界』『武蔵無常』『サラバンド・サラバンダ』『世阿弥 最後の花』『憶 藤沢周連作短編集』など多数。

「2024年 『鎌倉幽世八景』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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