キッズタクシー (文春文庫 よ 31-5)

著者 :
  • 文藝春秋
3.16
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本棚登録 : 126
感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (281ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167903251

作品紹介・あらすじ

「紅雲町珈琲屋こよみ」の著者が放つ書き下ろしサスペンス!タクシードライバーの千春には、正当防衛で人を殺した過去があった。ある日、客の小学生の行方が分からなくなり、千春にも疑いが…。

感想・レビュー・書評

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  • もともと短編連作作品が多く好きな作家さんです。
    親子・恋愛・過去の過ちなど長編だけれどいくつかのストーリーが絡まりあって、重たいテーマを淡々と語っている。みんな懸命に誠実に生きているのに、小さな悪意が広がっていく怖さを感じます。「子供は親を選べない。親というタクシーに同情するしかない。」せめて良いルートをと思うけれど、良いルートって何だろうね。

  • かっこよかろうが悪かろうが、人は必死で生きていく。であれば、強がりでも少しでも誰かを思いやれる自分であれれば。

  • 木島千春は、AYタクシーに勤務するタクシードライバー。

    AYタクシーは、一般業務の他に、子どもの塾や習い事の送り迎えができない親に代わって送迎する、キッズタクシーを提供している。

    千春は、その会員制キッズタクシーの業務がメインだ。


    彼女は大学時代に恋人の子どもを妊娠し、シングルマザーとなった。

    息子を育てながら苦しい生活を続けるある晩、

    街で男に襲われ、なけなしの金を奪われそうになる。

    抵抗の末、千春は男を殺してしまうのだ。

    正当防衛が認められ、罰を受けることはなかった。

    それから十五年、彼女はその街で、タクシードライバーとして暮らしている。

    彼女が街を出なかったわけ。

    それは、周囲の人々の温かいまなざしがあったからだ。

    AYタクシーの社長、同僚、そして、千春に寄り添い、支える紀伊間一志。

    人を殺しても、正当防衛という名のもとに、償う機会を与えられずに生きていくこと。

    複雑な思いと葛藤を抱えながら、それでも、生きていかねばならないこと。

    ヘビーな過去を持つ女性のストーリーではあるけど、重く、暗くならないのは、温かな人の想いがあるから。


    ある日、千春のタクシーを予約していた小学生、花垣壮太が行方不明になる。

    街の人々が必死に探し回るが、行方は知れない。

    だが、しばらくして、オーストラリアにいる実の父親のもとへ行ったということになっていた。

    壮太の両親は離婚し、母親はすでに他の男性と結婚していた。

    以前から、壮太と母親の間には、不穏な空気が流れている。

    さらに、千春の過去にまつわる中傷がネット上に流れ、近所の店のシャッターにも、同じような中傷の落書きがされる。

    誰が、何の目的で、そのようなことをしているのか。

    千春の息子、修が交際中の彼女を妊娠させたり、千春が殺害した男の息子が登場したり、さまざまな出来事が押し寄せるが、ストーリーは収まるところに収まりながら、静かに流れていく。

    読むものを疲れさせない、そして温かな心にさせる物語である。

  • 15年前の事件と今の事件。千春が悪くなくてもそれらを結びつけて悪い噂やデタラメを言う人は必ずいる。千春はもちろん被害者、加害者の家族の今後にも大きく影響する。普段タクシーを利用することがないのでキッズタクシーというサービスがあるのを初めて知りました。自分ができないという母親の代わりに子供の送り迎えをお願いする。無事送り届けたらメールで保護者に報告。いいサービスだなと思って読んでいたけどこう言った事件も実際あるのかもしれない。家庭の問題から引き起こることもあるだろうと思うと複雑な気持ちになった。リカコは最初から最後まで最低だと思いました。
    h29.5.17

  • キッズタクシーのドライバー千春は過去に正当防衛で人を死なせたことがある。その後、女手一つで息子の修を育て上げて、平穏な日々と思いきや、千春が乗せた小学生の壮太が行方不明になることから、千春の身辺で不穏な出来事が相次ぐ。
    千春と修の親子を中心に色々な親子や登場人物のそれぞれの事情がありドラマがあり、一冊の中に盛りだくさん。千春の誠実に生きようとする様がすてき。過去との折り合いをつけることは本当に難しいのだけど。千春親子を支え続けた紀伊間の優しさと強さが印象的だった。

  • 良い作品ですね。個人的には親子の物語、そして、過去と向き合う物語だと思いながら読みました。

  • 2015.10.16

  • 図書館で。過去の事件に始まり、数組の親子が出てくるんだけどそれぞれの繋がりかたがリアルな感じがして登場人物に感情移入して読みました。またタイトルになっているように主人公の女性が勤めているのはタクシー会社なんだけど、そういうサービス(仕事)もあるのかーって、勉強にもなりました。

  • 女性のタクシードライバーが主人公。章ごとに、視点がかわるので、気をつけてないと、とんだところにいってしまう。この作家さんの十八番だろうか。相変わらずの辛口なのだが、女性っぽいどろっとした嫌味がないので、好きだな~~。

  • 面白いのですが、
    なんか最後までスッキリしなかったです。
    モヤモヤ。

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著者プロフィール

1964年、埼玉県生まれ。群馬県立女子大学文学部美学美術史学科卒業。2004年、「紅雲町のお草」で第43回オール讀物推理小説新人賞を受賞。著書に「紅雲町珈琲屋こよみ」シリーズ『誘う森』『蒼い翅』『キッズ・タクシー』がある。

「2018年 『Fの記憶 ―中谷君と私― 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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