ビッグデータ・コネクト (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 529
レビュー : 78
  • Amazon.co.jp ・本 (426ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167903282

作品紹介・あらすじ

いま、そこにある個人情報の危機を描く警察小説公立図書館の私企業との提携を進めるエンジニアが誘拐された。サイバー犯罪捜査官とはぐれ者ハッカーのコンビが個人情報の闇に挑む。

感想・レビュー・書評

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  • サイバー犯罪捜査官とサイバー犯罪の元容疑者がタッグを組んで個人情報絡みの事件を追いかける警察小説。 元容疑者である武岱のキャラが立っていて、その存在感に本筋の話が絶妙にフックアップされている。

    「XPウィルス」の作成と配布の罪で逮捕された武岱は2年に渡る勾留の末に不起訴処分となるも、長期の勾留期間によって蝕まれた彼の身体は痩せこけ釈放された頃には骨と皮の亡者然に成り果ててしまう。しかし、その2年後には驚くべきことに彼は筋骨隆々・頭脳明晰というスーパマンへと変貌を遂げていた。 そんな武岱がかつて自分の取調べ担当だった捜査官とコンビを組むという「設定」を軸にして、主要登場人物達(主に警察関係者)のキャラが本筋の流れの中で自然に深掘りされていくのが良かった。

    手垢のついたような構成の話だとしてもキャラに魅力・奥行きがあると見える光景が全然変わってくる。

  • 三年前の小説ですが、ネット社会における個人情報の扱いや、それらに関する世間の認識の甘さだったり、IT企業のブラックぶりなどは、今の世も変わってないなぁと痛感。被害者の月岡、ならびに武岱や内藤といった現場の人たちには(自分も一時期プログラマやっていたので)共感しきり。

    著者も開発会社に勤務していたこともあるらしいので、このように現場が困窮している実態を知って欲しかったりもしたのでしょうか。

    お話的には……武岱が、ゲーム的に言うと武力も知力も高すぎるので、いざとなったらコイツが自分でなんとかするんだろうという安心感があって、緊張感が欠けていたところが残念ポイント。ありきたりかもですが、武岱は登場直後のヒョロガリのままで、足りない武力を綿貫あたりで補ったりした方がよかったんじゃないかなぁ。素人考えですが。

    とはいえ、久々に面白いと思いながら読んでた本な気がします。一番最後のページに書かれている「命を落とした人物」が誰なのか気になりますので、いつかこの続きがあるんじゃないかと、うっすい期待して待つことにします。

  • 文体に慣れていないのか、言葉が、難解なのか、読みづらく、
    最初の段階で、苦労したが、読み進むにつれて、やっと慣れた。
    ビッグデータといえば、個人情報でしょうね。
    インターネットは、実に便利になったと喜んでいたが、
    実は、個人情報がダダ漏れである事実の中で、
    それを意識的に、統合しようとするものは、
    その情報自体が、マーケティング手法にとって
    大きな商品になるばかりでなく、あらゆるものが、データ化されていく。
    収入、貯金、購買記録、その嗜好、犯罪者、病気履歴、親族関係、人脈。
    思想経歴、エッチサイト閲覧経歴、遺伝情報、などなど。
    ネットで繋がる限り、もはや、個人情報を守ることができない。

    一体誰が、個人情報の統括者になるのか?
    それを使って、何をしようとするのか?
    ということが、官民複合施設で、企む 三人の男たち。
    ソフトがどんどん改良されていたとしても、住基台帳には
    外字といわれる文字で、90万近くの漢字が存在するというのが
    面白く、そして、4文字とも 外字である名前が ターゲットとされる。

    XPウイルスを作ったとされる 武岱が 卓越した情報技術をもち、
    身体も強健で、あらゆる監視カメラや個人情報の流出をさせない人物設定が
    なんともいえず、実際にはそれは困難な時代とも言える。
    顔認証は、個人情報でありながら、個人情報であると言える。
    そのためには、整形を繰り返し、身体を常に鍛える必要もある。
    武岱によりそう 赤瀬という女性弁護士のキリリとした
    対応も見逃せない。まさに、現代の新しいスタイルのヒーローである。

    まぁ。名誉毀損というか肖像権の侵害に対する裁判に勝つことで、
    生活費を稼ぐというのは、ちょっと、せこいのであるが。
    武岱のような、それだけのIT技術があれば、
    もっと違うビジネスモデルを構築できるだろうに。

    サイバー対策の万田警部、そして 沢木警視。
    能力はありながらも、大きな構造の中でのわずかな役割。
    武岱を追いかけるが、物的証拠が上がらず、
    状況証拠でしかない。取り調べの可視化という問題が
    とわれながら、結局は 冤罪を生み出してしまうとい現実。

    それにしても、プログラマーたちの残酷な下請け状態。
    労働環境の悪さと その悪さを改善するための方策もなく
    「仕事を奪われる」「能力がない」と見られるという個人に抱え込む体質。
    扱うテーマが大きかった。しかし、ストリートしては、少ししょぼくて、
    残園という感じは否めない。
    犯罪があっても、犯罪者として自覚がなく、
    犯人がいないという設定がいるよね。とても難しいことだけど。

  • 京都府警サイバー犯罪対策課 万田警部の物語。

    官民連携プロジェクト「コンポジタ」の利用者管理システムに絡む巨大な陰謀。

    万田の協力者として捜査協力に名を挙げたのは、かつてXPウイルスの開発者の冤罪で、汚名を着せられた武岱(ぶだい)。

    様々なIT用語が飛び交い、個人情報保護法や住基ネット、戸籍文字の話(斉藤の斎)、マイナンバー、多情下請けなどなど、ややマニアックな面も...

    ちなみに、IPAの脆弱性届出制度も、所々出できます(P190ほか)。
    思わず、ニヤリ (^^;




  •  IT業界の苛烈さは伝わってくるが、ITエンジニア誘拐事件に至る過程って、あまりに陳腐過ぎてことばにならず。文庫本の帯コメントから、期待大であったから尚更ざんねんの一言。多少救われるのが、過去に冤罪で逮捕され、捜査に協力する武岱のキャラが立っていたことぐらいかな。

  • マイナンバー制度、冤罪事件、マスコミの偏向報道、警察の横暴捜査など、現実に今起きている、また今後起こりうる問題がてんこ盛り。

    その上で、物語としてエンターテイメント性抜群で一気読み。

  • ITとか個人情報とか警察とか。そんなものを凌駕してワーカホリックと簡単に呼べないほど仕事に取り憑かれた人たちがグサグサきた。
    役に立たないと思われたくない。自分がやらなければ。すごく良く分かる。
    好きすぎてのめり込みすぎて壊れていく。それはある意味恋だ。

  • ノンフィクション

  • マイナンバー制度を題材にしたサイバー警察小説。元SEと言うだけあって、IT業界の内幕はゾッとする程リアル。作中の【十二次請け】という言葉が過酷な就業環境を端的に物語っている。中盤まではPM誘拐事件の陰に潜む巨額不正発注を捜査する社会派警察小説として楽しめたが、諸々詰め込み過ぎた所為で終盤は明らかに失速。構成が複雑な上に、説明不足も相まって、全体を通して散漫な印象が残るし、説明台詞ばかりで人物描写が圧倒的に足りず、登場人物のキャラクターも弱い。興味のある題材だけに、痒い所に手の届かないもどかしい作品だった。

  • 難しかった! でも面白かった!
    IT産業の下請け体質のひどさとか、いろいろ知れた。
    サイバーのことはほとんど解らないけど、私と同様に解らない人が沢山いて、そこに付け込んで、あわよくば気づかれないだろう、という犯罪が沢山あるんだろうな。マイナンバー制の犯罪は、本当にひどい。

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著者プロフィール

藤井太洋(ふじい たいよう)
1971年、鹿児島県奄美大島生まれの作家。国際基督教大学中退。ソフトウェア開発会社に勤務しながら小説を執筆し、2012年電子書籍『Gene Mapper』をセルフパブリッシングして話題になる。翌年、増補改訂版『Gene Mapper - full build-』を早川書房より刊行、単行本デビュー。2014年には『オービタル・クラウド』(早川書房)を発表、「ベストSF2014[国内篇]」1位、第46回星雲賞(日本部門)、そして第35回日本SF大賞をそれぞれ受賞。2018年『ハロー・ワールド』を刊行し、同作が2019年に第40回吉川英治文学新人賞を受賞。
2015年には日本SF作家クラブ第18代会長に就任している。

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