ビッグデータ・コネクト (文春文庫)

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  • 文藝春秋 (2015年4月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (432ページ) / ISBN・EAN: 9784167903282

作品紹介・あらすじ

いま、そこにある個人情報の危機を描く警察小説



行政サービスの民間委託プロジェクトを進めるエンジニアが誘拐された。サイバー犯罪捜査官とはぐれ者ハッカーのコンビが個人情報の闇に挑む。

みんなの感想まとめ

個人情報の危機をテーマにしたこの作品は、サイバー犯罪捜査官とハッカーのコンビが、官民の癒着や不正の現実に立ち向かう姿を描いています。著者の独自の視点から、IT業界の厳しい労働環境やビッグデータの巨大利...

感想・レビュー・書評

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  • SF作家藤井太洋さんの警察小説。
    ITを知りつくした藤井さんだからこそのリアルさで、IT社会の問題やビッグデータの危機が描かれる。

    〈京都府警サイバー犯罪対策課の万田は、ITエンジニア誘拐事件の捜査を命じられた。協力者として現れたのは冤罪で汚名を着せられたハッカー、武岱。二人の捜査は進歩的市長の主導するプロジェクトの闇へと……。行政サービスの民間委託計画の陰に何が?〉(あらすじより)

    事件は天下の警視庁の管轄ではなく、京都府警と滋賀県警というどちらかといえば地味め(ごめんなさーい)、というか人情系刑事ドラマが似合いそうな府県警の管轄で起きる。捜査するのは今や全都道府県警察に当たり前に存在するサイバー犯罪対策課だ。
    SF作家が描く警察小説だからといって、あの人気小説のような新型近接戦闘兵器などは出てこないし、さまざまな特殊能力を有する捜査員が所属する特捜部なんてものもない。ここには地道に犯罪捜査を行う刑事がいるだけだ。

    小説内でリアルに描かれるのはビッグデータの危機だけではない。当然のごとくそれはIT業界の内幕にも及び、その結果、派遣社員のエンジニアが壊れていくしかない業界内の現状をまざまざと見せつけてくる。
    たとえばホワイトボードに書かれた「3/202」の意味。たとえば民間企業のエンジニアがときおり見せる座り方。そういう業界内の人しか知りえない、または業界人であれば当たり前すぎて気にもかけない情報がちょこちょこと挟まれることで、エンジニアのおかれた地獄のもようが真実味を帯びてくるのだ(2015年文庫化。今はどうなっているのだろうか)。作者ならではの描写だと言っていいだろう。

    それにしても悪事を働いた奴らはどうしても許せない。腹立たしくて仕方ない。卑劣極まりない手を使いある人物の人生を狂わせ、また狂わそうとする。さらには真実に近づいた人物の人生までも破滅させようとし、そしてこれからもそんな人たちが数多く生まれるところだった。
    私の愛する滋賀の地で、こんな恐ろしいことが起きようとしていたとは殴ってやりたくなる。
     ※この物語はフィクションです。実在の人物や場所、団体などとは一切関係ありません。
    ←ええ、ええ、わかっていますとも。わかっていますけどねっ!
    あと、自分の個人情報はしっかりと自分で守らなくちゃと思いを新たにした。個人情報保護法ってプライバシーの保護を行うために制定された法律ではなかったなんて、恥ずかしいけど今まで知らなかった。
    IT用語や個人情報関連の話もバンバン出てくるけど、今回も読んでるうちにわかってくるから安心してください。いつもながらの藤井マジック☆

    とはいえ、最後の一文に呻く。
    これは一体……。どちらにとればいいのだろう。うう、どっちだ。……うん、決まってるだろ。
    「帰ってこい!」
    思わず叫んでしまった。

  • 藤井太洋『ビッグデータ・コネクト』読了。言わばIT版蟹工船な残酷にして苛烈な労働環境と社会構造、ビッグデータという巨大利権に群がる官民の癒着、そして不正のリアリティ。藤井太洋と言えばIT系のSFっぽい小説を書く人という認識だったから、「機甲兵装の出ない機龍警察」とでも言うべき骨太な物語に痺れた。サイバー犯罪やシステム開発の物語だけれども、わりかしフィジカルで突き進む豪快さもあり、そのギャップも含めて突き刺さるものがある。武岱という稀有なキャラクターの魅力が迸る一冊。

  • ITもコンピュータも得意ではないし、理解できない用語もたくさんあったがワクワク楽しめた。戸籍の外字問題、探せないだけじゃないのか。個人情報、ダダ漏れなんだろうな。漏れて困る情報それほどないけど、気味悪い…。

  • 藤井太洋さんの本は、知らない世界に自然と連れていってくれる。一気読みしてしまう。ITのエンジニアとか、中国の不可解さとか、システムネットワークとか、全く未知なのに、知りたい欲を楽しく満たしてくれました。

  • サイバー犯罪捜査官とサイバー犯罪の元容疑者がタッグを組んで個人情報絡みの事件を追いかける警察小説。 元容疑者である武岱のキャラが立っていて、その存在感に本筋の話が絶妙にフックアップされている。

    「XPウィルス」の作成と配布の罪で逮捕された武岱は2年に渡る勾留の末に不起訴処分となるも、長期の勾留期間によって蝕まれた彼の身体は痩せこけ釈放された頃には骨と皮の亡者然に成り果ててしまう。しかし、その2年後には驚くべきことに彼は筋骨隆々・頭脳明晰というスーパマンへと変貌を遂げていた。 そんな武岱がかつて自分の取調べ担当だった捜査官とコンビを組むという「設定」を軸にして、主要登場人物達(主に警察関係者)のキャラが本筋の流れの中で自然に深掘りされていくのが良かった。

    手垢のついたような構成の話だとしてもキャラに魅力・奥行きがあると見える光景が全然変わってくる。

  • 出張のお供に小説を持っていきました。
    犯罪小説はあまり得意ではないのですが、
    テクノロジーな世の中になっているので、
    それに関連しそうなネタであって、
    ちょっと新しい著者にトライしてみたいということで
    この小説を読んでみました。

    ビック・データ時代に警笛を鳴らすような小説で、
    これからはますますデータを扱う人の
    倫理観が求められてきそうな小説です。
    著者はもともとIT業界出身のようで、
    至る所に出てくるテクニカルタームが素人には理解できません。。
    でも、小説の大枠はちゃんと理解出来て、
    スリリングな展開を楽しめるので、問題ありません。
    IT系の人なら業界のことをよく理解しているので、
    もっと楽しめるんでしょうかね?

    これからの時代、どんな人でもデータやAIなどとは
    切っても切れない関係になってしまうので、
    こういった小説で時代のニュアンスを感じておくのはとても良いと感じました。

  • 三年前の小説ですが、ネット社会における個人情報の扱いや、それらに関する世間の認識の甘さだったり、IT企業のブラックぶりなどは、今の世も変わってないなぁと痛感。被害者の月岡、ならびに武岱や内藤といった現場の人たちには(自分も一時期プログラマやっていたので)共感しきり。

    著者も開発会社に勤務していたこともあるらしいので、このように現場が困窮している実態を知って欲しかったりもしたのでしょうか。

    お話的には……武岱が、ゲーム的に言うと武力も知力も高すぎるので、いざとなったらコイツが自分でなんとかするんだろうという安心感があって、緊張感が欠けていたところが残念ポイント。ありきたりかもですが、武岱は登場直後のヒョロガリのままで、足りない武力を綿貫あたりで補ったりした方がよかったんじゃないかなぁ。素人考えですが。

    とはいえ、久々に面白いと思いながら読んでた本な気がします。一番最後のページに書かれている「命を落とした人物」が誰なのか気になりますので、いつかこの続きがあるんじゃないかと、うっすい期待して待つことにします。

  • 初期2作ほどの爽快感はないが、より現実に近い話だけに他人事とは思えない感じがする
    ITという新たなインフラも建築現場同様に多重下請けに依存する国の現実を突きつけられる

    話は中心人物がちょっとスーパーマン過ぎるために一気に解決に向かってしまう感じがある
    フィッシング詐欺とかもかなり面白い話題で、途中でわきに追いやられてしまうが、IT刑事ものとして連作としてもいいくらいの内容
    色々な問題が盛り込まれるために、軸としてスーパーマンが出てくるし、さらっと読むと理解が難しい

    メインのビッグデータの連結はすでにほかの国では現実となっているだろうことだけど、そうした社会の息苦しさを考えるとちょっとぞっとする

    この分野に精通して文章が書ける人は限られるので、続編をぜひ書いてほしいと思う

  • ビッグデータを握ったものが、世界の覇者になれると思われる。GAFAが個人情報の元締めとなる。
    インターネットが、実に便利になったと喜んでいたが、実は、個人情報がダダ漏れである事実の中で、それを意識的に統合しようとするものは、その情報自体が、マーケティング手法にとって大きな商品になるばかりでなく、あらゆるものがデータ化されて分析されていく。収入、貯金、ポイントカードの購買記録、その嗜好、犯罪者、病気履歴、親族関係、人脈。思想経歴、エッチサイト閲覧経歴、遺伝情報、などなど。ネットで繋がる限り、もはや個人情報を守ることができない。フェイスブックに顔写真を載せれば、監視カメラにより行動履歴はもはや全て監視される。スマホを持てば、GPS機能によりどこに行ったか、どこにいるのかもわかり、それが盗聴機能まで果たすことがある。
    XPウイルスを作ったとされる 武岱が卓越した情報技術をもち、身体も強健で、あらゆる監視カメラや個人情報の流出をさせない人物設定が、本当にできるのとさえ思う。顔認証は、個人情報の中核ともなる。そのためには、整形を繰り返す事も可能だが、歩行様式や骨格までは変えられない。
    まぁ。名誉毀損というか肖像権の侵害に対する裁判に勝つことで、生活費を稼ぐというのは、ちょっと、せこいのであるが。
    サイバー対策の万田警部、そして 沢木警視。武岱を追いかけるが、物的証拠が上がらず、状況証拠でしかない。取り調べの可視化という問題がとわれながら、結局は冤罪を生み出してしまうとい現実。犯罪があっても、犯罪者として自覚がなく、倫理という不確かなものしか残されていない。
    それにしても、プログラマーたちの残酷な下請け状態。労働環境の悪さと その悪さを改善するための方策もなく「仕事を奪われる」「能力がない」と見られるという個人に抱え込む体質。
    こういうビッグデータの持つ危険性をもっと警鐘を鳴らすことは、必要である。

  •  IT業界の苛烈さは伝わってくるが、ITエンジニア誘拐事件に至る過程って、あまりに陳腐過ぎてことばにならず。文庫本の帯コメントから、期待大であったから尚更ざんねんの一言。多少救われるのが、過去に冤罪で逮捕され、捜査に協力する武岱のキャラが立っていたことぐらいかな。

  • 犯人不明で終結したウイルスを持ちいたサイバー犯罪、目的不明の猟奇誘拐事件。複数の事件が絡み合いやがて大きな闇に近づく王道のサスペンス。IT関係の現代の問題を扱いながら警察小説としてまとまっていた。

  • 長らく積んだままになっていた本書に取り掛かってみたが、「誘拐殺人事件」の謎で興味を引っ張りつつ、個人情報照合システムの問題点に切れ込んでいく構成が素晴らしい。
    もっと早く読んでおけばよかった、と思う面白さであった。
    ギークの生態もよく描写されており、個人情報保護法の問題点の指摘も的確である。
    また、IT業界で横行しているといわれる多重請負問題についても、中抜きやブラック労働だけが問題なのではなく、個人情報の取扱いについても問題があることが指摘されている(本書では明示されていないが、政府や企業の秘密情報も同様であろう)。
    それにつけても、日本そのものが巨大な虎にのまれることがないように願いたいものである。

    なお、本書発表後の個人情報保護法の改正により、本書の「顔紋」のような「個人識別符合」は個人情報に該当することになったので、その点は留意する必要がある。

  • 勝手にもうちょっと硬派な内容を期待してましたが、怪人物が登場してややエンタメよりでした。本書が発売されてから5年以上経って、今の技術はどのくらい進歩しているのか興味が湧きました(それともあまり変わってない?)。一点、舞台が関西ということで関西弁の人が何人か出てきますが、取ってつけたようで終始気になりました。標準語でもいいような気もしますが。関西の方は違和感なく読めるんでしょうか???

  • ノンフィクション

  • 京都府警サイバー犯罪対策課 万田警部の物語。

    官民連携プロジェクト「コンポジタ」の利用者管理システムに絡む巨大な陰謀。

    万田の協力者として捜査協力に名を挙げたのは、かつてXPウイルスの開発者の冤罪で、汚名を着せられた武岱(ぶだい)。

    様々なIT用語が飛び交い、個人情報保護法や住基ネット、戸籍文字の話(斉藤の斎)、マイナンバー、多情下請けなどなど、ややマニアックな面も...

    ちなみに、IPAの脆弱性届出制度も、所々出できます(P190ほか)。
    思わず、ニヤリ (^^;




  • 一般的に時給換算となる職種の人はコスト意識が低い。プログラマやSEではさらに、自分は特別という思いが強くなり、仕事を抱え込む傾向が昔から高い。プライドからサービス残業となっている場合もある。さらに、業務形態も孫請け、曾孫請けなどざらにある。本書では雲孫(ウンソン)、耳孫(エルソン)など何語だと思わせる請負まで。。やはり、IT業界で儲かるのは人材派遣か、丸投げして中間マージンを搾取するしかないのであろうか・・・
    武岱は、XPウィルスの作成者の疑いをかけられ、普通の社会人としては生きられなくなってしまった。復讐のため真犯人を一人で暴こうと、巨大な陰謀と戦う。その姿は、ハッカーらしからぬ鍛え上げられた肉体で、007で出てきてもおかしくない。そんな中、<コンポジタ>の主要開発メンバの月岡が殺され、脅迫メールが送られてくる。操作は再び武岱の身辺に及ぶ。
    007のような特殊なメカは出てこないが、現実にありそうなシステムの矛盾・バグをついたトリックはなかなか面白い。
    最後、トラに襲われたのは、武岱ではなく、守矢であったに違いない。

  • マイナンバー制度、冤罪事件、マスコミの偏向報道、警察の横暴捜査など、現実に今起きている、また今後起こりうる問題がてんこ盛り。

    その上で、物語としてエンターテイメント性抜群で一気読み。

  • *ITに限らず中抜きはほどほどにしましょう。
    *サービス残業はしないようにしよう。

  • 近い将来、すぐそこにやってきているビッグデータの時代にふさわしい、警告を鳴らすような小説。某レンタルショップ・本屋のポイントカードのことを言っているのだな〜と思い、ポイントカードにどれだけ個人情報を収集されているのか、少し強くなる。そしていつか誰も気づかない間にこの小説なようなことが起こるのでは、と思わせる。
    展開はさくさくと爽快にすすむ。ラストはものがなしい。

  • マイナンバー制度、個人情報保護、PC遠隔操作事件、この辺りのキーワードに興味がある人ならば、興味を持って読めるはず。
    UNIXタイム、人月(にんげつ)、多重請負、ヒューリスティック、正規表現という言葉に反応する人ならば、さらに良いと思う。
    藤井さんはちょっとした近未来を、ああ確かにこういうのありそうだなあと思わせる書き方がホント上手いと思う。自分はとても楽しめた。

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著者プロフィール

藤井大洋:1971年鹿児島県奄美大島生まれ。小説家、SF作家。国際基督教大学中退。第18代日本SF作家クラブ会長。同クラブの社団法人化を牽引、SF振興に役立つ事業の実現に燃える。処女作『Gene Mapper』をセルフパブリッシングし、注目を集める。その後、早川書房より代表作『Gene Mapper -full build-』『オービタル・クラウド』(日本SF大賞受賞)等を出版。

「2019年 『AIが書いた小説は面白い?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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