サザエさんの東京物語 (文春文庫 は 47-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167903312

作品紹介・あらすじ

町子姉は悪ガキで、甘えん坊でした――。ワンマン母さんと串だんご三姉妹、女ばかりの長谷川家。極端な人見知りで知られる町子姉は、家の中では「お山の大将」。声も主張も人一倍大きくて型破り。でも親の膝を妹ととりあう「甘えん坊」でもあった。「いじわるばあさん」を自認し、ほしいものは「お嫁さん」。姪っ子たちには「木登り・屋根歩き」を伝授。類まれな集中力で「置き忘れ・失くし物」は数知れず。家族同然の犬・猫たちへの食事といえば……?実の妹がありのまま綴った長谷川町子の素顔と、波瀾万丈で賑やかな昭和の家族のくらし。文庫化にあたり「先輩たちとのお付き合い」「それからの七年」の2章を書き下ろし。解説・江國香織

感想・レビュー・書評

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  • 「家族」、それも同じ性別の妹洋子さんの目から見ての長谷川町子像。他にも語られる様々な昭和のエピソードも併せて、懐かしいような、独自の息苦しさのような、「リアル」さがあった

  • サザエさんで知られる、長谷川町子の妹さん。
    文藝春秋社に入社後、『姉妹社』にて長谷川作品の出版に携わり、その後は『彩古書房』で、児童心理学を中心とした、ご自分の納得のいく本を出版して来られた。

    本書は、長年編集に携わってきた作者の、最初の著作。

    とても初めての著作とは思えない、読みやすく、味わいもあり、品格のある文章で、末っ子の目から見た長谷川家を描かれている。
    やはり家族の目から語るせいか、臨場感半端なく、皆生き生きとしている。
    母、まり姉、町子姉、強烈なキャラクターである。
    作者はその中でこまごまとした用事をもくもくと片付けている、という印象。
    長谷川町子は、サザエさんっぽくもあるけれど、いじわるばあさんにも似ているな~
    海外旅行でのバッグの置き忘れ話など、漫画を読むように面白い。

    そんな、串団子3姉妹から、離れて自由に生きたい、と思ったのは50代半ば。
    姉たちは彼女を許さなかった。
    特にまり子姉の怒りは激しく、町子の死も作者には知らせず、最後まで手紙も突き返し、とうとう亡くなるまで和解を拒んだ。

    家族というものを考えさせられる一冊でもあるが、男社会で、昭和をたくましく生き抜き、必死で働いた女たちのエネルギーあふれる書である。

  • 『サザエさんの東京物語』
                              長谷川 洋子

    長谷川町子三姉妹の末っ子、洋子さんから見た姉達と母の話。(文庫本の方が加筆や後書きがある様です)
     
    長谷川町子の『サザエさんうちあけ話』を、妹の目線で見るとこうなるのか〜!という驚きがあり、面白かった。

    母を筆頭に女傑揃いで我が強い家族のヘンテコリンな癖や、屁理屈とも言える会話の応酬は、長谷川町子の家族ならでは…と笑う事しきり。大人しく常識人の様に思える著者も、女学校では、「生まれたまま大きくなったような人で真っ直ぐな気性のいわば野蛮人の様な子で、そこが美点」などと言われているので、姉達は推して知るべしである。

    面白かったのは三姉妹のうち、唯一子供を授かった著者の娘達を母と姉二人がその強烈な個性でもって、溺愛する所。母は何でも買い与え、毬子姉は心配性の過保護で、誘拐を恐れてタクシーで通学させ、町子姉は、自分の幸せな子供時代を踏襲させようと、木登り、屋根登りを奨励し、子供達はお隣さんを覗いて嫌がられる(笑)実母として、早くに夫を亡くした著者の子育ての右往左往が目に浮かぶ様だ。

    「有り難いけど、迷惑」「愛しているけど、距離が欲しい」何処の家庭にもあるそんな心理が、才能溢れる長谷川町子の妹であるがゆえに増幅されて行ったのも無理は無い。

    母が亡くなり、新しい家を建てることになつた時、著者が二人の姉とは別に、住み慣れた家で暮らしたいと思う気持ちも、病弱で取り柄が無い妹を守り、姪も可愛がり、三姉妹の結束を信じていた姉達が、裏切られたショックも、わからないでも無い。長谷川教の信者から、脱退する様な物だったのだろう。

    この辺の事情は、「打ち明け話」には無かったので驚いたが、文庫と内容が違うのか、毬子姉が死ぬまで続いた確執はここには書かれず、サラッと姉妹間に溝が出来た、と語られている。

    同じ出来事が、置かれた立場によって違う表情を見せる事を、姉妹であるからこそ見え過ぎてしまう、理解出来ない事も有るとこの本は感じさせてくれる。

    読了して、ふと思ったのは、長谷川町子にとって生まれ故郷の福岡だけが、心安らぐ幸せな場所であり、東京山の手のサラリーマン家庭をあれほど上手に描けたのは、実は町子の東京コンプレックスの裏返しで、冷めた目で都会の小市民を見ていたからかも知れないと言うことだった。考え過ぎかも知れないが…

  • サザエさんの生みの親である長谷川町子さんの妹、長谷川洋子さんが長谷川家について語った本です。出来事を並べ立てていて、時系列もあちこちいくのでスッと入ってこないところがあります。

    サザエさん=長谷川町子さんととらえてしまうのですが、あの一家の笑いに満ちた家庭とは少し違っていたのかなと思います。もちろん作者と作品は別物で考えるべきなのですが、賑やかな磯野家のイメージを保っていたい方には読むのはオススメできません。

    この後「サザエさんと長谷川町子」という新書も読んだのですが、語り手が変われば当然その事実の認識も変わります。結局は当事者にしか分からないことだと思いました。

  • 長谷川町子はとてつもない才能のマンガ家だったが、その妹、長谷川洋子もとてつもない魅力的な文章をこの本で書き上げている。
    妹から見た長谷川町子の今まで知らなかった話しが随所に散りばめられている。
    時々ハッとさせられる文に出会う。
    長谷川洋子という凄い人が最初で最後の本を書いた。サザエさんが好きなら読んで欲しい本。

  • 妹から見た、町子姉や家族についてのエッセイ。
    えっと思うような、激しいエピソードが多い。
    しかも、子供のころはそうだった……ではなく、大人になってからも変わらず。
    町子姉に加えて、まり子姉と母も、おなじように強烈で、おどろきのエピソード満載だった。
    特に、若くして夫を亡くし、女4人の一家を引っ張っていった、母のたくましさは、時代を考えると驚異的。

  • 文庫向け書き下ろしの「その後の7年」のエピソードも入っています。長谷川家の物語…ですね。筆者の洋子さんが千葉敦子さんの本を出版されていたこと、初めて知りました。

  • 母の影響で子どもの頃から朝ドラ好き。「マー姉ちゃん」も楽しく見た思い出深いドラマの一つ。そのドラマで扱った時代から後日談も含んだ1冊。ドラマで取り上げられた以後の三姉妹の軋轢にはとても残念な思い。文章はすっきりとして読みやすいが所々両姉への感情が見え隠れする。あくまでこの本は洋子さん側からの視点であり、溝ができた本当の理由、姉たちの言い分はわからないが、母親が亡くなってからの断絶はまるでエプスタイン死亡後分裂していったビートルズのそれのよう。本のタイトルに「サザエさん」の名前を使い、表紙絵にサザエさんの絵を使えたのは姉たちの死後だったからだろうか。洋子さんが出版社を立ち上げ、あの千葉敦子さんの本を出版されていたことは知らなかった。

  • 長谷川家の日常における小話がたくさん読めて楽しい。

    しかし妹の洋子さんが出版社を立ち上げ、
    我がバイブル「ニューヨークの24時間(千葉敦子)」を手掛けられたとは驚いた。

  • サザエさんの作者長谷川町子の妹が語る、三姉妹と母の日常。
    戦争に向かう日本で50歳前後の働き盛りで亡くなった父の無念。
    残された母の果断な行動力。
    姉妹3人は「串だんご」のように結束して母のもとで生き抜いてゆく・・・

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