路 (文春文庫 よ 19-6)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (475ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167903572

作品紹介・あらすじ

台湾でも大反響! 国を越え、溢れる想い台湾に日本の新幹線が走る! 巨大プロジェクトに、それぞれの国の人々の個々に抱いてきた想いが繋がる。確かな手触りの感動傑作!

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりに行った書店でドラマ化のせいか、平積みにされていたので買いました。

    中心になる話は、2000年からの台湾高速鉄道をつくる会社に勤める多田春香とその周辺。
    そして台湾を日本の新幹線が走るまでの話。
    多田春香には繁之という、結婚も視野にある恋人がいますが、学生の頃に台湾に遊びに来て、偶然知り合いスクーターで台湾の街を1日だけデートした、エリックという台湾人の青年が忘れられずにいます。
    そして春香は台湾新幹線のプロジェクト要員として台湾に派遣されるところから物語は始まります。

    「台湾を訪れた日本人の観光客は、ほとんどの人が懐かしさを感じるという。台湾には古き良き時代の日本がそのまま残っている。だから日本人はこの街を訪れると懐かしさを感じるのです。-本文より」
    確かに、この2000年から2007年の台湾の物語には懐かしさを覚えました。
    台湾の人たちは、スクーターに乗って街を走り、屋台のレストランで食事をします。
    なんか、いいなあと思いました。
    春香が会社の同僚の林芳慧とその恋人とタイレストランで食事をして、夜の書店で三人で立ち読みをするところは、すごく羨ましいと思いました。今はコロナで夜の外食も、書店で立ち読みも自粛ムードだし…。(本筋に関係なくてすいません)
    春香の上司の安西と恋人になる台湾人のユキの温泉デートもとても羨ましかったです。
    そして、春香とエリックの再会もあります。
    あー、みんな生き生きしていていいなあと思いました。
    日本も、コロナ前はこんな場面たくさんあったのにと思いました。

    吉田修一さんの作品は『悪人』『怒り』他なども読みましたが、小説巧者だと思います。
    何人もの人生模様が、台湾新幹線の周りで交差しますが、その匙加減が絶妙だと思いました。

    • moboyokohamaさん
      台湾にこそ古き良き日本があると言うのは何故でしょう。そして台湾には親日家がとても多いとも聞きます。何故だろう。
      怨みに報いるに徳を以てす 、...
      台湾にこそ古き良き日本があると言うのは何故でしょう。そして台湾には親日家がとても多いとも聞きます。何故だろう。
      怨みに報いるに徳を以てす 、台湾というとこの言葉を思い起こします。蒋介石が日本軍に対して取った温情は素晴らしい事だと思っていたのですが、実は蒋介石と国民党は非人道的な政策をもって台湾の人々を苦しめたらしいと知ると日本軍に示した温情も裏に何かあったからなのかと思ってしまいます。
      台湾に親日家が多いのは国民党のあまりの酷さを知ったからそれ以前の統治者日本が素晴らしかったと感じたのだろうという意見を聞いたことがあります。
      だから台湾には台湾の人々にとって良き時代だった日本統治時代の雰囲気が残るのだろうか。
      「路」は先日のNHKドラマで観ました。
      たった3回だけの放送だったので原作をどれ程表現できているかわかりませんですが、日本の技術者が日本の新幹線こそ絶対のものだとして台湾側に全てを受け入れるべきだとして、台湾の独自性を認めようとしないところに、例えば統治者であった日本の台湾に対する政策の中に潜んでいたかもしれない「我々が施す政策があなた達にとって最高なのは間違いない」といった思い上がりのようなものが重なって見える思いでした。
      是非原作も読みたいです。
      2020/06/07
    • まことさん
      moboyokohamaかわぞえさん♪

      コメントありがとうございます。
      私は台湾の歴史などは無知でよく知りません。
      最近、他にも台...
      moboyokohamaかわぞえさん♪

      コメントありがとうございます。
      私は台湾の歴史などは無知でよく知りません。
      最近、他にも台湾を舞台にした小説(『僕が殺した人と僕を殺した人』)を読み、少し知った程度でお恥ずかしいです。
      ドラマは予告編をちらっとみただけで、観ていませんが、小説はすごく面白かったです。
      お薦めです。
      もし読まれたら、レビューも楽しみにしています!
      2020/06/08
  • 台湾に日本の新幹線が走る事が決まった2000年から、開業する2007年までの話。
    商社勤務の春香が、この大きなプロジェクトに参加し、台湾支局で働く事になる。
    この新幹線事業が背景になっているが、描かれているのは、登場人物たちそれぞれの想いや人生です。
    春香と、学生時代に台湾で出会った青年との再会。
    台湾生まれの老人が60年間の思いを胸に台湾へ帰省。
    高雄に住む台湾人青年の決意。
    他にも春香を取り巻く人々の人生模様。
    登場人物は多いが、年別に章が区切られていて分かりやすい。
    そして、嫌な人が誰も出てこない!
    みんな思い遣りのある人々なのです。
    葛藤しながらも困難を乗り越え、明るく生きようとする。
    更に、台湾の景色や空気、匂い、温度までもが肌に感じられる程の素晴らしい描写。
    美味しそうな料理もたくさん登場し、そそられるのです。
    読み終わった今も、台湾の風に吹かれている気がする。

  • 文庫ではなく、単行本で読んだ時のレビューです。ご了承ください。 <(_ _)>
    ※NHK連続ドラマで放送中だが、ドラマもよい感じです。

    ──台湾は美しい街だ。そして親しみやすい街でもある。
    街を歩けば、そこかしこから漂ってくる美味しそうな匂いが鼻腔を刺激し、緑の多い歩道が目を和ませ、さらには、普段なら喧しく感じるはずの、人々の騒がしい声や車のクラクションの音なども、不思議と気にならない。
    夜市に足をのばせば、あちこちに立ち並んだ屋台で舌鼓を打つこともできるし、名所旧跡を訪れれば、故宮博物館など、歴史の奥深さを感じさせる逸品ばかりで一日いても飽きることがない。

    吉田修一の文章を読んでいると惚れ惚れする。
    バランスの取れた長さの美しい日本語文。
    これしかないという、的確な接続詞。
    前後の脈絡を踏まえた適切な文節の区切り。
    心理描写の表現の見事さとそれを挟み込む絶妙な位置。
    ほとんど非の打ち所がない。流れるように文字を追うことができる。
    文章を読んでいて気持ちが安らぐし、音読すると非常に心地よく耳に響いてくる。
    現代作家は数多く存在するが、五本の指に入る巧みさだと思う。
    稀に見る資質の持ち主だろう。
    だから一つの言葉、一つの文章にその魅力を凝縮させた短編でこそ、さらにその威力を発揮する。
    長篇でもしっかりとしたストーリーなら、その才能は存分に発揮される。

    ただし、この前の作品「太陽は動かない」では、そんな感じがしなかった。
    理由は単純明快。
    サスペンス&アクション──タッチの作品などやはり彼の文章にはそぐわないからだ。
    彼が実験的にその方面に挑戦したのか、出版社の編集者に唆されたのか知らないが、明らかに失敗作だ。
    ああいった路線の作品は他の作家に任せておけばよいのだ。
    サスペンス&アクション路線は無機質な文章を書く作家が得意とする分野であって、彼には似合わない、無理がある。
    有機的で味わいのある彼の文章の長所を発揮できないのだ。

    この最新作「路」は違った。
    さすが吉田修一、と思わせるような煌く文章の連続。

    台湾で日本の新幹線を走らせる仕事に色々な方向から携わった日本人と、彼らと関係した台湾人のそれぞれの視点からの物語。
    ひとりひとりの人物造形も心理描写も非常に丁寧だ。
    序盤から中盤にかけては、日本人、台湾人それぞれの友情や恋愛、台湾在住時代への郷愁が描かれ、一見ばらばらでさまざまなエピソードの一つ一つが、きらきらと光り輝いている。
    例えば、台湾人である劉人豪と日本人の多田春香が九年ぶりに再会する場面。
    物語としては単なる一部分に過ぎず、ことさら泣くようなシーンでもないのだろうが、なぜか胸が熱くなる。
    一言一言、さりげない比喩や文章が心の中に深く沁み込んでくる。
    この部分だけでも一つの短編小説として完成されているような深い味わいの会話と描写。
    そう、珠玉の短編がいくつも交じり合って重厚感のある長篇を成立させている、そんな不思議な魅力を持った小説なのだ、これは。

    物語は終盤に進むに連れ、多くの点と点が複数の線で結び付けられ、ばらばらだった登場人物の位置が近づき、少しずつ絡まりあっていく。
    その伏線回収の仕方も見事だ。

    戦後台湾から日本に引き上げた葉山勝一郎と台湾からの留学生劉人豪の年の離れた友情。
    新幹線開通のため台湾現地で仕事に取り組む多田春香と整備士を目指すようになる陳威志の出会い。
    流れた時、止まった時間、記憶の片隅に残る思い出、奇跡的な再会。
    遥かなる過去と過ぎ去った時間、でも変わらなかったお互いの熱い思い。
    ところどころに散りばめられた、過去の思い出に対する無念、あるいは後悔の情を抱く場面。
    それらのシーンに出会うたびに、涙が頬を伝う。
    登場人物から吐き出される言葉の意味。作者の書き綴る情景描写や心理描写。
    それらが一体となって紡ぎ出された世界に、しばし目が潤む。
    すべて吉田修一の創り上げた劇中の仮想空間に過ぎないのに、言いようのない幸せな世界と時間を共有した気にさせてくれる美しい作品だ。
    長年の間“思い出”という名に変わり、切り取られていたリボンが、再び結び付けられ、新しい未来と時間を創り始める。
    そんな幸福感を味わえる、お薦めの一作です。

  • 12月に入り仕事も慌ただしく、平日はほとんど読み進めることが出来ずに読了まで1週間ほどかかってしまいました。

    台湾に日本の新幹線が走る。

    その一大プロジェクトに直接かかわる人、日台という歴史の中でかかわる人、物語の最後で開通した台湾新幹線の中でそれぞれがクロスします。

    人と人との繋がり、日本と台湾の繋がり、日本人と台湾人の繋がり。

    新幹線の初輸出も含め、壮大な人間物語でした。


    内容紹介
    台湾でも大反響! 国を越え、溢れる想い

    台湾に日本の新幹線が走る! 巨大プロジェクトに、それぞれの国の人々の個々に抱いてきた想いが繋がる。確かな手触りの感動傑作!

    内容(「BOOK」データベースより)
    台湾でも大反響! 国を越え、溢れる想い
    台湾に日本の新幹線が走る! 巨大プロジェクトに、それぞれの国の人々の個々に抱いてきた想いが繋がる。確かな手触りの感動傑作!
    1999年、台湾~高雄間の台湾高速鉄道を日本の新幹線が走ることになった。 台湾新幹線開発事業部に勤務する多田春香は、正式に台湾出向を命じられた。春香には大学時代に初めて台湾を訪れた6年前の夏、エリックという英語名の台湾人青年とたった一日だけすごし、その後連絡がとれなくなってしまった彼との運命のような思い出があった。
    1999年から2007年、台湾新幹線の着工から開業するまでの大きなプロジェクトと、日本と台湾の間に育まれた個人の絆を、台湾の季節感や匂いとともに色鮮やかに描いた、大きな感動を呼ぶ意欲作。 「生きる感触を伝える物語の力」「国境を越える絆を描く傑作」「戦後文学の終焉、新しい感動を味わわせてくれる必読の小説」と各紙誌で絶賛された傑作長編。

    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    吉田/修一
    1968年生まれ。高校まで長崎で過ごし上京。法政大学経営学部卒業。97年、「最後の息子」で第84回文學界新人賞を受賞。同作が芥川賞候補作となる。2002年、『パレード』で第15回山本周五郎賞、「パーク・ライフ」で第127回芥川賞、2007年、『悪人』で第61回毎日出版文化賞と第34回大佛次郎賞、2010年、『横道世之介』で第23回柴田錬三郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • ノスタルジックで、ロマンチック。
    以前ドラマで観てから、ずっと読みたかった本書。
    大好きな台湾の街、風景、匂い、湿度、その全てが台湾の新幹線事業の立ち上げから開通までを背景に、様々な人間模様と共に語られる。
    素朴で、好奇心旺盛で、真面目で親切な台湾の人達、何故だか懐かしさを感じずにいられない街並み。それらが鮮やかに胸に迫り、そしてここに登場する、懸命に生きる人たちの思い、悲しみや喜びや希望、友情、仕事への情熱、愛がどちらかといえば静かに、けれどとても丁寧に描かれている。

    非常に読みやすく、時間が許せば一気に読めたと思う。
    読後は、非常に満たされた、爽やかな気持ちになれた。

  • 台湾新幹線開通までのプロジェクトなんちゃらみたいなお話ではないが、皆それぞれの路(みち)を模索しながら着実に歩いている姿に胸を打つ。純粋に「人って素晴らしい」と思える作品。

  • 台湾高速鉄道に欧州連合と競い合った結果、日本の新幹線が採用されるところから、紆余曲折の開業までの7年間の日本と台湾の様々な人々の関わりを描いた感動の物語。2012年11月単行本、2015年5月文庫本。
    台湾新幹線は1999年12月に採用が決まり、2007年1月に開業する。実は当時車両部材に関わるビジネスに携わっており、台湾新幹線の部材にも関わったのでより興味深く読んだ。
    物語はビジネス中心の話ではない。主人公は日本の総合商社で入社4年目の台湾新幹線プロジェクトの担当者多田春香と上司の安西誠を中心にビジネスは進行するが、春香が大学時代に台湾旅行で知り合った台湾の大学生で、現在は日本の大手建築設計会社で働いている劉人豪との巡り合いのドラマが併行して進行する。劉人豪の神戸淡路震災への想いと行動と多田春香の台湾震災への想いと行動、二人の友人達の想いが二人を運命の再会へと導く。
    ビジネスの方は順調とはいかず、安西はビジネスと家庭への苦悩を抱えながら、純な台湾ホステスに惹かれていく。
    また日本統治下にあった台湾で生まれ、高校生の時に終戦を迎え、日本に引き揚げその後大手建設会社の専務までになり今は引退している葉山勝一郎と劉人豪が知り合い、日台の別のドラマも併行して進行する。台湾時代のわだかまりを抱えた勝一郎の残り少ない人生の再生ドラマにも心を動かされる。
    その他高校卒業後もバイト暮らしで人生に何の展望も持っていなかった台湾の若者陳威志が台湾新幹線の整備工場で働くようになって多田春香と関わり、日本人の子を生んだシングルマザーの彼の幼馴染張美青と整備工場での勤務をきっかけに結婚し新しい人生を歩むことになったりと様々な日台の人々が描かれる。
    併行して進む各人のストーリー展開が台湾新幹線の開業で一つの姿になる。
    台湾新幹線の開通を通して、日台様々な人々の思いが強く結びついていると感じる。そして日本と台湾は他の外国との関係とは違う強い温かい絆があるように感じる。台湾が好きになる本だと思う。

  • 台湾新幹線を軸に交錯する人々の物語。それぞれに魅力的な人物。台湾の美しく郷愁をさそう南国の風景。美味しそうな食べ物。
    この作品に限らず、吉田修一はどこか冷めていて冴えた若者の気持ちや中高年の孤独感を書くのがうまくて、それと同時に家族や友人だけでなく全くの他人ですら温かく微笑ましい姿を見せる。
    この作中で言われてるとおり、私も台湾のことを知ろうとしない日本人のひとりだ。身近なのに遠ざけている存在なのかもしれない。

  • つい先日まで波瑠さん主演でドラマをやっていたことと、
    台湾新幹線(台湾エクスプレス)の話とのことで、手に取ってみました。

    大枠では、台湾新幹線を横糸として、そこに、
    4組の男女の物語が縦糸として、彩をあたえていく流れ。

    台湾には未だに行ったことがないのですが、風景、人々、食べ物、文化が、
    本当に目の前に浮かんでくるようでした、、ドラマのおかげなのかもですが。

    1組目は、学生時代に台湾で出会った、台湾人の男性と日本人の女性、
    阪神大震災、台湾大震災を経て、台湾と東京でそれぞれの「路」が交差します。

    彼らが生きてきた世代は、まんま自分とも重なっていることもあり、共感も一入でした。

    2組目は、日本人の男性と台湾人の女性、夜の街での出会いから、
    離れていても大丈夫、離れていたら大丈夫ではない、どちらも正解かと。

    原作では、そんな家族の在り様の問題も描かれていましたが、、
    ドラマでは尺の兼ね合いもあってか、だいぶ端折られていて、残念です。

    3組目は、台湾人の一組の男女、幼馴染的な関係性から、
    一つの挫折を経て戻ってきた女性と、その息子を絡めての物語。

    果たしてこの二人が、どう“台湾新幹線”に絡んでくるのかと思っていましたが、
    なるほどなぁ、、と、この時代の台湾の若者、日本とも変わらないよな、とも。

    4組目は、戦前・戦中に台湾で生れ育ち、戦後に日本に戻ってきた日本人夫婦、
    いつの日か、台湾に“戻りたい”との想いを秘めながらの人生でしたが、、

    と、私の祖父(だいぶ前に亡くなりました)も戦中派で従軍もしていたとのことで、
    自分の祖父や、そのルーツ(祖父は日本生まれです)に、久々に想いを馳せました。

    そんな4組の男女とそれを取り巻く人々、環境を、
    2000年から2007年までの間、1年に1エピソードくらいで、描いています。

    そういった意味では、ある種ロードムービー的な感じでしょうか、
    それこそ、題名の『路』が示している通りに、、

    人は何がきっかけで、どんな“路”を進むことになるのかは、
    本当にわからない、だからこそ人生は面白い、のでしょう。

    ちなみに、波瑠さんのドラマは全3回で、かな~りに駆け足でしたが、
    原作との相互補完で、ドラマでは描き切れてない部分も、想像しながら観ていました。

    個人的には、6回くらいで組んでくれれば、もうちょっと、
    それぞれの想いや軌跡、、“それぞれの路”を描けたのかなぁ、とも。

     “台湾の人が日本を思う気持ちに比べると、日本人が
      台湾のこと(台湾と中国のこと)を知ろうとする気持ちは、
      あまりにお粗末としかいいようがない”

    劇中でもよく出てきた「台湾オリジナル」とのフレーズは、
    本質的には日本でも連綿と受け継がれてきていると思います。

    外部の文化の受け入れからの、日本仕様への変容は、日本人の文化に通じる、と、
    そういった意味では、普遍的な価値観だけではなく、文化的な価値観をも共有できるのかな、

    と、李登輝さんを思い出しながら、久々にその著作を再読したくなりました、
    李登輝さんもまた、私の祖父と同世代の方となります。

    ん、自分自身の心の向き先とも折り合いをつけながら、
    前を見て、上を向いて歩んでいきたいとあらためて感じた、そんな一冊です。

  • 台湾に日本の新幹線を走らせようとしていたこの時代、私は日本にいたはずなのに、ほとんど関連ニュースを見た記憶がない。この大プロジェクトに大なり小なり関わった人たちのいわば群像劇なのだけれど、みんな爽やかで、読んでいてとても清々しかったし、力をもらった。台湾の魅力が伝わってきて、コロナ禍後に絶対行きたい場所の一つになった。

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著者プロフィール

1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。1997年『最後の息子』で「文學界新人賞」を受賞し、デビュー。2002年『パーク・ライフ』で「芥川賞」を受賞。07年『悪人』で「毎日出版文化賞」、10年『横道世之介』で「柴田錬三郎」、19年『国宝』で「芸術選奨文部科学大臣賞」「中央公論文芸賞」を受賞する。その他著書に、『パレード』『悪人』『さよなら渓谷』『路』『怒り』『森は知っている』『太陽は動かない』『湖の女たち』等がある。

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