マルセル (文春文庫 た 8-19)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (591ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167903596

作品紹介・あらすじ

実在の事件に材を取った絵画ミステリー一九六八年、京都国立美術館から消えたロートレックの名画「マルセル」。実在の事件を基に謎を追う女性記者の活躍を描くミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • 1968年(昭和43年)の京都国立近代美術館の「ロートレック展」で起きた実在の「マルセル盗難事件」をテーマにした小説。この事件は時効の成立した7年後に「マルセル」の絵は戻ってきたが、事件は未だ闇に包まれたままである。

    事件の謎解きと、ヒロイン千晶の父親の謎、千晶の出生を巡る謎解きが、交差しながら物語が展開し、そして女性として男社会で仕事をして行くという辛さ、オリオさんとの恋の行方が、それらに絡み合い、複雑な進展を見せ、さらに美術界の裏ビジネスまで絡んでくる。

    舞台も東京・京都・神戸・パリ、アルビ(仏ロートレック美術館がある)と変化に富んでおり、どの街も細やかに情景描写されており、その街の雰囲気がよく醸し出されている。特に京都の街は、国立近代美術館から白河疏水通りの地図のイメージが分かると、より楽しく読める。

    物語はいろんな展開を見せ、この次はこういう展開になるだろうという予想は次々と裏切られ、また新しい展開が始まるという、変化に飛んだ構成になっていて楽しい。
    ただ惜しむらくは、最後の場面で読者を一気に引きずり込んで、読ませてくれる馬力に欠けるきらいがあるのは残念だ。ただそれがなくても十分に楽しむことができた。
    ヒロイン千晶は、男から見ると少し理屈っぽいかな?

  • 実際の盗難事件をモチーフにした一冊。文章力でぐいぐい読ませます。

    • きーちゃんさん
      最初、オリオさんが受け付けられなくて 笑(性格とか含め)でも読んでる内に、意外と良い人だって分かったから安心(笑)ずっと、絵の謎を追っかけて...
      最初、オリオさんが受け付けられなくて 笑(性格とか含め)でも読んでる内に、意外と良い人だって分かったから安心(笑)ずっと、絵の謎を追っかけて行く展開は、夢中で読んじゃいますよね!私もそうでした。結構な厚みがある本だけれど、そんな事は全く気にならなかったです。
      2016/01/06
    • shibamaroさん
      わかります。始めは、オリオさんどっち側なのかわからないですよね。でも、途中からは、そんなことも気にならないぐらい引き込まれました。
      わかります。始めは、オリオさんどっち側なのかわからないですよね。でも、途中からは、そんなことも気にならないぐらい引き込まれました。
      2016/01/06
  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99766772

  • 何だか読む気がしなくなり中断

  • 亡くなった父親が昔に世間を賑わせた有名絵画盗難事件に関係していたことらしきことがわかり、その真相を明かして行く話。
    題材としてはおもしろいと思うんだけどなんかイマイチおもしろくない。と言うか、ちゃんと整理されてない感じ。
    重要人物かと思ってた人がたいして重要じゃなかったり、なんでパリまで行かなきゃならなかったんだっけとか。
    あとお決まりの、ひょんなことから知り合った男性と行動を共にすることによって特別な関係になっていくあたりも安い。

  • 高樹のぶ子氏の海外での場所の情景の描き方が、上手い。
    程よく、上品な品物を登場させたりして、普通の生活している者には、少し高値の花のような車や高野槙のお風呂など、、、が、登場する。

    題名のマルセルの絵画。
    実在の未解決事件をテーマに、盗難事件、と父親の過去、母親探し、絵のレプリカ、と、、、発展していく。
    昭和43年の京都近代美術館 ロートレック展のマルセルの絵が、最後の展示の日になくなる怪事件。
    レプリカに、髪の毛が、絵の具に塗りこめられている。

    何年か前に大阪の阪急デパートで、絵の即売会があって見学しに行ったときに、大作の絵画にやはり、絵の具の中に髪の毛が、1本入っているのに気づいて、担当者に訊ねたことがあった。
    担当者いわく、「これも作品の中の物なのです」と、、、
    この本の中の物語を読んで、なるほど!と思った。

    東京、神戸、京都、パリ、私も思い出深い場所ばかりが、登場しているが、作者のように考え深く街並みを見たことが無かった。
    今度、旅行へ行くときには、もう少し、感動のある気持ちで眺めないといけないのかと、、、

    話の展開は、パリまで、飛んで、母親も健在で、いつの日か日本へ帰国する暗示が、最後に書かれてている。
    千晶とオリオの恋愛ストーリーのやり取りも楽しく書かれているが、、、、もう少し、この題名のマルセルの話を書いて欲しかった気がする。

    文庫本で、591ページは、少し長い気もする。
    でも、3日で、読んでしまった。

  • マルセル盗難事件って実際にあった事件だったんだ!初めて知った。
    事件の背景についての独自の脚色もものすごくおもしろかったけど、最後の方ちょっと複雑になり過ぎてついていくのに苦労した。
    個人的にはオリオさんのキャラがイマイチ気に入らない。
    こういう男嫌いじゃ(^o^;
    すごく面白かったけど、美術ミステリーとしては原田マハさんの「楽園のカンヴァス」の方が好きだなぁ。

  • 最初はここに出てくるオリオさん、ボンボンでチャラいし自分勝手、本心をなかなか言わないではぐらかしてばっかだから嫌いだった。でも、読んでいく内にいつしか主人公の千晶に寄り添い、色々と気を使ったり心配したりして(ちょっと心配し過ぎだったけど)案外良い人なのかも。って(笑)

    個人的には面白かった。普段、自分が絵画に親しみがあまりないし、そういうストーリーのものも読まない方なので。

    ただ、最後は長くて少しイライラした。目の前に真相がぶら下がっていて掴もうと思えば掴めるのに、するりと逃げていってしまうし何かちょっと、ボヤっとした感もあったからもう少しコンパクトにまとめても良かったのでは。という事で星4つ。

  • 【実在の事件に材を取った絵画ミステリー】一九六八年、京都国立美術館から消えたロートレックの名画「マルセル」。実在の事件を基に謎を追う女性記者の活躍を描くミステリー。

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著者プロフィール

作家
1946年山口県生まれ。80年「その細き道」で作家デビュー。84年「光抱く友よ」で芥川賞、94年『蔦燃』で島清恋愛文学賞、95年『水脈』で女流文学賞、99年『透光の樹』で谷崎潤一郎賞、2006年『HOKKAI』で芸術選奨、10年「トモスイ」で川端康成文学賞。『小説伊勢物語 業平』で20年泉鏡花文学賞、21年毎日芸術賞。著作は多数。17年、日本芸術院会員、18年、文化功労者。

「2023年 『小町はどんな女(ひと)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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