ぼくらの近代建築デラックス! (文春文庫 ま 24-3)

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167903756

作品紹介・あらすじ

人気作家が目一杯楽しむ、建築ゆるゆる散歩人気作家ならではの壮大な想像力と楽しい薀蓄が満載。読むうちに、大阪、東京、台湾へ、近代建築を今すぐ見に出掛けたくなる!

感想・レビュー・書評

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  • 興味があるところだけ読了。専門家の解説は面白い。旅行の参考にもなりそう。

  • 写真はもっとあっていいかも。結構行ってる。

  • 10年位前に大阪北浜にある新井ビルの1階にある「五感」でお土産買ったことあったけど、こんな歴史ある建物だったなんて。また行ってみよう!建築散歩しよう!

  • これまで街中の風景の一部としてしか感じていなかった建物が、本書を読んで靄の中から浮き出たように輝いて感じた。

    門井さんの薀蓄と万城目さんの忌憚のない感想とサラッと次の物件に移ってしまう所が、愉快で軽快なばかりでなく、施主や建築家から時代背景まで広く興味をそそられ、この目で見てみたい。ちょっとググってみたい。という欲求を掻き立てられる。

    建築物入門にうってつけの一冊

  • そういう楽しみ方もあるのかと教えてくれた本でした。私にとって新しい街歩きの視点をくれました

  • 行ってみたい建物だらけ。なぜ昔の建物は、人を惹きつけるのか。そこに歴史の物語があるからか。二人のトークも絶品。

  • 本屋でペラペラ見て、東京編で兼松講堂と築地本願寺、という伊藤忠太建築を2つ取り上げていたためレジに直行。
    作家お2人のテンポよい会話が楽しい。門井さんが詳しすぎてびっくり。万城目さんのほのぼの相づち、突然炸裂する空想壁も作品世界を彷彿させて面白い。

  • 手元に置いておきたい本!図書館で借りたけど、買おうーっと!

    初学者に優しく、好きな作家さんたちが大阪・京都・神戸の近代建築についてお話ししてくれるのはありがたい!散歩に行きたくなるね。
    もう少し写真が多かったら嬉しいかなー。

  • 近代建築好き

  • 面白かったなぁ。
    未知の世界の新しい扉を開いた感がすごくて大満足。
    いい本に出会えました。


    『ぼくらの近代建築デラックス!』 万城目学・門井慶喜 (文春文庫)


    何がいいって、案内人の二人が建築の専門家ではなく作家さんなところですよ。
    ボキャブラリーが豊富で、蘊蓄のひとつひとつにもストーリーがあって、とにかく楽しい。

    大阪、京都、神戸、横浜、東京、そして海の向こうの台湾まで足を延ばした建築散歩。
    それぞれが行きたい場所を挙げ、実際に行き、あーだこーだ言う、というシンプルな形式である。
    服装がラフすぎるのは(特に京都の万城目さん)“散歩”だからだな(笑)


    大阪の始まりの扉に、中之島の中央公会堂がでっかく写っているのが嬉しい。
    やっぱり大阪人には身近な近代建築だから。
    つい先日も、地階のレストランに行ったばかりだし。

    辰野金吾という近代建築界の巨人による設計である。

    赤レンガに花崗岩の白い帯が入る独特なデザインは「辰野式」と呼ばれ、大阪は「中央公会堂」、京都は「旧日本銀行」、神戸は「みなと元町駅」、東京は言わずもがなの「東京駅」と、聞けば誰もが、ああ、あれね!と分かる、万城目さん曰く「不動の四番のような存在」の建築家なのだ。

    大阪の中央公会堂は、たった一人の市民の寄付によって作られた。
    後に、老朽化により壊されるはずだったところ、市民が反対して、多額の寄付が集まり、改装して永久保存することに決まったのだそうだ。

    企業や行政ではなく、市民によって守られ、愛され、そして普段使いされている。
    普段使い、最高じゃないですか。
    この建築散歩の日も、オバちゃんたちのカラオケの歌謡ショーが行われていたそうだ。

    「大阪の宝やと思いますね」と万城目さん。
    たくさんの人によって建物が生かされていることに、感動する。


    さて、この本の中で私が一番好きなのは中央公会堂だが、それ以外にも印象に残っているものがいくつかある。


    まず、これはもう何と言っても、京都の「九条山浄水場ポンプ室」。

    なんだこりゃ(笑)
    辰野金吾と同期の片山東熊という宮廷建築家による設計である。
    うっそうとした山の中に、ひっそりと建つ、派手な宮殿……
    目の前には、琵琶湖疎水……
    違和感満載、実に怪しげで廃墟感が漂う。
    ドラキュラでも住んでいそうだ。


    東京編では、「一橋大学兼松講堂」が異彩を放っている。
    これも怪しい系(笑)

    設計者の伊東忠太は、無類の妖怪好きで、なんと妖怪に関する著作もあるそうだ。
    所々に妖怪チックな謎めいた獣のレリーフが施され、建物じたいも何やら異次元の匂いがする。

    ちゃんと調べてみると、国の登録有形文化財であるとか、音響が優れているとか、ロマネスク様式で何とかいう賞をもらったとかいう情報が出てくるのに、この二人にかかると、

    門井「いきなり期待に違わぬ面白さで先制パンチを喰らいました。」

    万城目「よく政府が許したもんですよね。黒魔術のひとつもやりかねないようなこの雰囲気を。」

    なんてことになるので楽しい。


    あと、神戸の「湾岸ビル」。

    「人馬一体、新旧セット、上下合わせ技のインパクト、見た目のショッキングさがすべて。」

    という、たたみかけるような門井さんの解説に、どんだけ言うねんとクスっとなってしまう。


    それから面白いのは、台湾の「宮原眼科」というお菓子屋さん。

    名前のインパクトもさることながら、使われ方が実にパワフル。

    「この店、近代建築であるということに全然甘えてないんですよ。」

    と万城目さん。

    これも、建物が使う人によって生かされている好例かもしれない。


    台湾のポンプ室では、ポンプの一個一個に、なぜかパンダのぬいぐるみがくくりつけられていたな。


    門井さんと万城目さんの楽しいやり取りの中で、時々ハッと心を動かされる言葉に出会うことがある。

    「大阪城は夕日が似合う。朝日が似合わないのは負け戦の城だから。」
         (「大阪城天守閣」)

    「石というのは、欠けるに任せるか、一から作り直すしかない、リニューアルのしづらい素材。」
         (「芝川ビル」)

    「非日常の存在になることで、存在を許されている。」
         (「大阪農林会館」)


    近代というのは、明治から太平洋戦争の終わりまでをいう。
    こんなにも個性の強い、癖のある、そしてお茶目な建築家たちが、日本の近代化を支えてきたのだと思うと、そのスケールの大きさに胸がいっぱいになる。
    それは、翻って、彼らが存分に才能を発揮できる土台がちゃんとあった時代だったということだろう。

    使う人とともに時代を越えてきた近代建築。

    いやあ、楽しい一冊でした。

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著者プロフィール

万城目学(まきめ・まなぶ)
1976年生まれ、大阪府出身。京都大学法学部卒。
2006年、『鴨川ホルモー』(第4回ボイルドエッグズ新人賞受賞)でデビュー。主な作品に『鹿男あをによし』、『プリンセス・トヨトミ』、『偉大なる、しゅららぼん』などがあり、いずれも文学賞ノミネート、映像化等など、大きな話題を呼ぶ。また、エッセイ集に『ザ・万歩計』、『ザ・万遊記』、対談本に『ぼくらの近代建築デラックス!』がある。

「2013年 『ザ・万字固め』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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