- Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167903824
作品紹介・あらすじ
あの話題の清張賞受賞作、早くも文庫化!戦時下の上海で謀略に巻き込まれた、財閥令嬢にして人気画家の多江子の運命は。〝食堂のおばちゃん〟で話題沸騰の松本清張賞受賞作。
感想・レビュー・書評
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一万円選書の中の一冊。
読み始める前は「上海の話かあ。なんか地名とか読めない漢字ばっかとかで、読みにくそう」と思ってましたが、そんな心配ご無用、でした。読めなくたってどうでもよい。話がおもしろい。
菊池寛が出てきたので、え、八島多江子って実在した人物?と調べたりしてしまいました。
お金持ちはたとえ戦時中でも優雅なのねえ。東京編が面白かったです。瑠偉よお……。
ただ、夏のところに潜入するのがあまりにあっさりすぎて、しかもそのエピソードがそんなにこの本の中では重要じゃない感じで、やや拍子抜けでした。
選書でどうしてこの本を選んでくれたのかなあ?と考えました。私が戦時中の話が好きなことと、あともしかして私が給食のおばちゃんで、著者が食堂のおばちゃんだから? -
戦時中の上海、過去にスキャンダルで時の人となった画家の主人公が、活動拠点を移して再発起を図るが、きなくさいトラブルに巻き込まれていく…、という物語。
装丁のイメージどおり、才色兼備の女性と一癖二癖ある男性陣との愛憎入れ混じる展開を混ぜつつ陰謀も匂わせて、スピーディに物語は展開します。
…のですが、「ん、あれ?」と思うほどあっけない幕切れだったような気がしました。もう一波乱あっても良いのに…ベタベタですが裏切りとかそういう厭らしさを含んだクライマックスがほしかったような。振り返って考えてみると、「ただただみんなにモテモテ」なお話だった気が…いや、もちろん主人公自身は凄くかっこよく描写されていて素敵ではあったんですが。
読み方が良くないのかもしれないと思いつつ、サスペンス風味がもっとあればな、と感じたのでした。 -
家柄も見た目も才能も持って生まれた主人公。
そこに芯の強さ、負けず嫌いも相まってかっこよさ、頼り甲斐を感じた。でも恋愛面では相手に尽くしたり盲目になるのが人間らしい‥
戦時中の内容であるから仕方ないけれど女性を物として、下のものとする描写が多くて苦しかった。。 -
物語の舞台は、19世紀半ばに上海に設定された外国人居留地、即ち租界が舞台となっています。
上海租界では様々な様式のモダンなビル群が並び、最先端の文化を享受することが可能な衛星都市で、ファッションの面でも大胆な最先端モードが発信されていました。
『月下上海』で描かれている上海租界は、当時の雰囲気がとてもリアルに描かれ、まるで私は彼の地の風景を眺めているような感覚を抱いてしまいました。
主人公の八島多江子は財閥の美しい令嬢であり、愛する夫との破局を機に、画家を目指して昭和17年に上海に赴きます。
多江子は持前の美貌と才能に加え、物事に動じない性格が相まって、上海租界で画家としての社会的地位を確立します。
当然多江子の才と美しさに惹きつけられる男性も登場し、租界を舞台に戦時中の複雑な社会変化の中で、多江子は辛苦を味わう事となります。
圧倒的な男性社会の時代、ましてや海外である上海租界で、多江子は財閥令嬢の立場をフルに利用し、そして男達の視線を一同に集める美貌を武器に、雑多な様相を呈す上海の地で埋没する事なく堂々と生きて行く姿は、まるでハードボイルドな劇画的な女性の雰囲気を醸し出していました。
そんな多江子に、中国人の実力ある実業家に接近して情報を得るようにとのスパイ行為を強要され、波乱の物語が展開する事になります。 -
食堂のおばちゃんの方が好み。
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詳細に描き出される「魔都」上海が舞台として何より魅力的。多分そうだろうと思っていたが、作中に現れるクラブやホテルの名前は全て実在のものだという。気が強くて行動力のあるヒロインは、そのくせ妙に男に甘いところがあって、女性よりむしろ男の目に魅力的に映るかも知れない。正直、寸止め感みたいなものはあるのだが、そこを突っ込んでも、多分読後感が悪くなるだけろうなあ。