最終講義 生き延びるための七講 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 31
  • Amazon.co.jp ・本 (396ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167903893

作品紹介・あらすじ

学びの本質をとく、感動の講演集神戸女学院大学退官のさいの「最終講義」を含む、著者初の講演集。学校という場のもつ意味、学びの真の意味が立ち上がる感動の書。

感想・レビュー・書評

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  • 2008年、2010年、2011年に行われた講演を収録したもの。
    神戸女学院大学を退官するときの講義で、ヴォーリズ建築の特徴、自らの手でドアノブを回したものに贈り物は届けられる。世界内部的に存在しないものと関わることを主務としているのは文学部だけ。
    対米従属を通じての対米自立というねじれた戦略。アメリカから見て日本は属国、衛星国、国際社会に対して発信すべき政治的メッセージを何ももっていない国。

  • 著者が1990年から21年間勤めた神戸女学院大学における伝説の「最終講義」はじめ、7つの講演を収めたのが本書。
    私は割と熱心な内田樹ファンで著書もかなり持っていますが、調べると「ウチダ本」を読むのは実に1年2か月ぶりでした。
    しばらく追い掛けていましたが、発刊ペースが速すぎてついていけなくなったのですね笑。
    それだけ多作な方です。
    私がウチダ本を読む理由はただ一つ。
    知的に負荷をかけたいからです。
    自説を補強するような読書には興味がありません。
    どこかで聞いたような話をわざわざ本で読みたいとも思いません。
    極端なことを云うと、そこに書かれていることが正しいか正しくないかにも然したる関心はないのです。
    私は、一部の方たちがどうしてそこまで書物の内容の「正しさ」に過剰にこだわるのか、実は理解できないのです。
    読書の愉しみのそのぎりぎりの勘所を述べよと云われれば、やはり心が揺さぶられることではないでしょうか。
    せっかく読書をするのだから、こちらの先入観を見事に覆し、期待を大胆に裏切って、新たな地平へと運び去って欲しい。
    そんな欲求を満たしてくれる数少ない書き手の一人が内田先生です。
    えーと、前置きが長くなりました。
    本書の読みどころのひとつは、「教育論」でしょう。
    ご存知の通り、1984年の臨教審以降、教育改革が叫ばれて久しいわけですが、近年は特に経済界の要請が教育現場に色濃く反映されるようになりました。
    経済界の要請とは何か。
    端的に云えば、「集客力のあるクライアントに魅力ある教育プログラムを提出するのが学校の責務でしょ」ということです。
    これに対して、内田先生は明快に「否」と云います。
    「市場のニーズに追随して大学が次々と教育プログラムを変えてゆくと何が起こるか。簡単ですね。日本中の学校が全部同じになるということです」
    市場のニーズに対応する大学は一見、アクティビティ(能動性)が高く見えますが、実は「市場のニーズに対してつねに遅れている」。
    つまり、アクティビティが高いわけではなく、パッシビティ(受動性)が高いと著者は喝破します。
    教育はニーズがあって提供されるものではなく、まず教える側が旗印を高く掲げ、そこで学びたいという者を創り出すものであるべきというのですね。
    ほら、凡百の評論家とはひと味もふた味も違うでしょう?
    第5稿「教育に等価交換はいらない」は、ビジネスマインドがいかに教育分野に馴染まないかを情理を尽くして教えてくれます。
    長いですが引用します。
    「日本人が教育をビジネスのタームで考えるようになった病的な兆候の最たるものは『教育投資』という言葉ですね。(中略)では、教育が投資だとしたら、いったいその投資がもたらす利潤とは何でしょう。みなさんが、ご自分の子どもに教育投資を行う。高い教育を受けさせる。すると、子どもたちの労働市場における流通価値、付加価値が高まる。子どもたちが学校で身につけた知識や技術がやがて労働市場に評価され、高い賃金や地位や威信をもたらした。その総額が投下した教育投資総額を超えた場合に『投資は成功だった』とみなされる。要するに、教育投資の総額と子どもの生涯賃金を比較して、投資額よりも回収額の方が多ければよい、と」
    こう読むと、いかに「病的」かが分かろうというものですが、残念ながら私たちにはあまり病識がありません。
    教育の最終的なアウトカムは軽量不能であるという著者の言葉を、私たちは虚心に返って噛み締めるべきではないでしょうか。

  • 赤坂真理さんが解説でべた褒めされているが、たしかに良かった。話が多岐にわたっていて、思い出せない部分もあるのだけれど、教育や医療を市場原理に持ち込んではいけないという点は一貫している。これは一部の州だけのことかもしれないがアメリカでの現状を聞くとひどい話だなあと思える。要するに税金は払うが、自分が払った分は自分のために使ってほしいということ? それのどこがいけないの、という声も聞こえそうだけれど、持ちつ持たれつというか、世の中いろんな人がいて成り立っているのだから、まあ、人助けのために税金を使ってくれるなら良し、とすればいいのではないかな。沖縄に核兵器があるという話(実際のところどうかは別として)、これ内田先生だから公の場でこんな話ができるのだろうか。それがまた、北方領土返還と関わっているというのは、そんなこと考えたこともなかったから、実におもしろい(おもしろいなんて言える話ではないのですが)。ヴォーリズの建築、ぜひ見てみたい。体感してみたい。政治家には100年先を考えてほしい。(原発の再稼働なんてありえない)自分の利益ではなしに。

  • いつものお話だった。

  • 25歳の選択について60歳で語ってる

    それが
    痛いほど正直なとこが
    強いなあ!

    学ぶ意味
    教える立場
    わたしは新しい学びの後
    これ程強くあれるかどうか
    強くあれない理由を知るために
    また本を読もう!

  • 2011年に長年勤めてきた神戸女学院大学を去った著者が、そのころにおこなった講演のうち、6本をまとめた本です。

    最終講義ということもあって、著者がとくに力を入れて取り組んできた問題のひとつである教育問題について率直な議論が展開されています。講演がもとになっているということもあって、他の著書よりも若干「前のめり」で議論がなされているような印象を受けました。そのぶん、著者のエネルギーを感じます。

    また、『私家版・ユダヤ文化論』(文春新書)について著者みずから解説をおこなった、日本ユダヤ学会での講演も収録されています。こちらでは、レヴィナスと武道に打ち込んできた著者がみずからの内なる「反米」というモティーフをえぐり出す試みがなされており、もちろん講演ということで単純化して語っているところもあるのでしょうが、著者の思想を振り返って考えてみるうえで大事な視点を著者みずからが示しているように感じました。

  • ニチユ同祖論と安保闘争のところがとても面白い。
    メンタリティは、敗戦国としてのルサンチマンだったのですね。

  • 一時期レヴィ=ストロースに興味をもっていて内田さんの本を読んだことがあるのですが、
    その本が私にとっては少々荷が重くて、以降内田さんの本から遠ざかっていました。

    今回のもなかなか読み応えがありますが、講演集なので理解しやすいです。
    久しぶりに頭を使って本を読んだ気がします(どんだけ呆けてんねん>自分)
    学びの本質について含蓄がある話が多かったですね。
    20150731

  • 相変わらずの内田節で読んでいて面白い。大学建築の話とか、異質な人が居た方が全体として生存確率が上がるとか、いずれもどこかで読んだことがある話な気もするけど、同じ話を色んな例えを入れつつアップデートしていくのがこの方の流儀だとは思う。
    ただ、読んだことない話もあって、その部分は非常に興味深く読めた。誰が読んでも自分の話だと感じるという、複数の立場を同時に盛り込む文章(倍音)の話は、なるほどな、と思ったりした。個人的にも倍音のある文章を書いてみたいな、とそんなことを思った。

  • 2017/09/22

    学術的な活動を通じて、公共的な利益をどう積み増しするか。
    自分以外の「何か」を背負った方が効率的であるに決まっている

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。東京都立大学大学院博士課程中退。神戸女学院大学を 2011年3月に退官、同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。著書に、『街場の現代思想』(文春文庫)、『サル化する世界』(文藝春秋)、『私家版・ユダヤ文化論』(文春新書・第6回小林秀雄賞受賞)、『日本辺境論』(新潮新書・2010年新書大賞受賞)、『街場の教育論』『増補版 街場の中国論』『街場の文体論』『街場の戦争論』(以上、ミシマ社)など多数。第3回伊丹十三賞受賞。現在、神戸市で武道と哲学のための学塾「凱風館」を主宰している。

「2020年 『日本習合論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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