- Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167903985
作品紹介・あらすじ
直木賞受賞! 私たちの心の奥底を静かに覗く傑作集どこにでもある町に住む、盗癖のあるよそ者の女、婚期を逃した女の焦り、育児に悩む若い母親……彼女たちの疲れた心を待つ落とし穴。
感想・レビュー・書評
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唯川さんのエッセイ「さよならが〜」で、“藁をも掴む思いで掴んだものは絶対に藁だ。”を読ませていただいたばかりですが、それを具現化したような小説でした。
「石蕗南地区の放火」は、辛うじて、藁男子を自ら離す。「美弥谷団地の逃亡者」は、他者にその手を離してもらう。「芹葉大学の夢と殺人」は、藁と共に沈んでいく。それぞれの女性は、違和感と嫌悪感を感じながら焦燥感からか、藁である認識を持ちながら関わりを捨てきれない。趣向ある連作と思う。
「君本家の誘拐」は、勘違いから誘拐騒ぎを起こしてしまった女性。多くのママさん達が、経験している心情が痛々しい。一歩ではないけれど、数歩間違えれば、自分であったかもしれないという不快さ。最後の安堵感、そこに至るまでの共感。似たような経験を思い出し、寒気がした。
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直木賞なので手を出したが、苦手な短編集…
全5篇女性主人公で、それぞれ異なる環境や性格を描写できる作者に感服
想像で書いたと綴っているが、只々感性に驚きつつ面白い!
題名「鍵のない夢を見る」は作中にはでてこない。
ネット徘徊すると、
閉塞感の現状から出ていきたい、ささやかな希望を込めた題名とのこと
なるほどすべての話は少なからず当てはまり読後に納得
「出口」とか「希望」のような安直な単語でなく
ドアの「鍵」としたとこが、おしゃれで日本語って良いなと感じた
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すごいなあ、辻村深月!
全編主人公のキャラクターは全然違うのに、一つ一つの物語の中で、こんなにも個性が際立っている。そして何より、そのキャラクターそれぞれが、本当に生きているかのような、大きなエネルギーを感じた。こういうのを「宿る」っていうんだろうな。
解説の林真理子さんの言葉。
「主人公の一人称小説の場合、ちょっと変な考えのキャラクターであっても、正当性を持ってしまうものなんですけど、この作品では読んでる人にひたひたと違和感を感じさせ、実はちょっと軸が曲がってるんだということが伝わる。これはすごくテクニックがいることです」と。
特に笙子と未玖には、共感しつつも「いやいやいや」と、彼女たちの気持ちにのみこまれる直前に、ぐぐぐ、と自分の気持ちに戻ってくる。最後までは共感させない。この描き方はすごい。でもどこか、昔の自分と重なる主人公の心理状態。だからこそ、共感しながらもゾクゾクして、最終的には自分の気持ちを取り戻す。この、あやうさ。読者との絶妙な距離感。辻村さんは、この絶妙なバランスを描くのに大変長けた作家さんだ。このあやうさに取り憑かれてしまうと、中毒のように求めてしまう。もっともっとと、求めてしまう。きっとすでにわたしは取り憑かれていて、しばらくこの世界から戻れそうにない。-
2019/11/10
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2019/11/10
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登場人物がみんな絶妙にズレている。読んでてとっても居心地が悪いというか、気持ち悪いというか。
そんな登場人物たちの思いや行動に共感するところが少しあったりして、ゾッとする。
本当に上手いなあと思いました。
特に「石蕗南地区の放火」の主人公のズレ具合が本当にゾワゾワしました。 -
ツナグ以来の5話からなる短編作品。
表現が抽象的になってしまうが、どの作品も重めのテーマのようで軽くて薄かった。
登場人物に血肉の備わりが感じられず、私には響かず届かずまったく感情が揺らがなかった。
また出逢うであろう他の作品に期待しよう。 -
地方の町が舞台の五人の女性の物語。
読み始めると一気に引き込まれる。
ゾワゾワ感がすごい。
人の心というものは…
どのお話も共感と驚愕があった。
正しいかそうでないか。
子どもの頃は物事の計りが少なく単純明快だ。
しかし、生きていくと計りが増える。
どんどん複雑になっていく。
頭ではわかっていることも、心がそうさせない。
その両方のバランスを保ちながら生きていく。
心のままに生きられたらいいのに。
そんな風に思ってきた。
しかし、心というものはどのようにもなる。
心の暗部が大きくなってしまうとき。
そんなときに心を優先させたら…
共感するのに、共感しきれない。
それは一線を越えてしまったところにあるのかもしれない。
人の心をこんなにも深く掘り下げて描けるものなんだなぁ。
直木賞受賞作も納得の作品だった。-
ひろ、この本…
こっ、こわいねっ!
心の奥深い部分が書かれてあるんだね
ひろのレビュー読んで腕に鳥肌がぁぁぁ(・_・;ひろ、この本…
こっ、こわいねっ!
心の奥深い部分が書かれてあるんだね
ひろのレビュー読んで腕に鳥肌がぁぁぁ(・_・;2022/12/18 -
ある意味ホラーよりこわいかもっ…!
ありえない話でもなくて、ちょっとしたボタンのかけ違いでもしかしたら…
Σ(||゚Д゚)ある意味ホラーよりこわいかもっ…!
ありえない話でもなくて、ちょっとしたボタンのかけ違いでもしかしたら…
Σ(||゚Д゚)2022/12/18
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泥棒癖のある親子、婚期を逃した36歳のOL、DV彼氏と海に行く女子、元彼が犯人の女子、子育てに苦悩する母親のお話ですが、なんなんでしょ?全てしんどい。
「スロウハイツ」が素敵で「島とぼくらと」は素晴らしくて、「嘘つきジェンガ」でえっ?ってなり「傲慢と善良」ではっ?、今回で好みじゃない!ってなりました。 -
辻村深月さんのダークな雰囲気を集めた短編集。学園ものが読んでて清々しくて面白い印象のある辻村深月さんの作品でしたが、本作はテイストが全然違うように感じました。
全体的にネガティブな考え方でまとまってる作品で、見栄とか嘘とか痴情とか、嫌な感情てんこ盛りみたいな印象を受けました。個人的には、「石蕗南地区の放火」が好みで、いわゆる女性のマウンティングというのがこの頃から上手く表現されててグッドでした。 -
自分が思っていなかった事が起きたり、相手の考えが読めなかったり、そんな時に、何かの点と点が結びついたとき、人間は「思い込みの勘違い」をするのだと思う。
複数の収められている作品の中に共通するメッセージを拾いあげるとこんな感じ、
自分の思い込みや自分の中での正義感や常識が相手への見方を偏らせたり、差別を生んだりするんだと思う。
完全にフラットな人間になることは出来ないし、その必要も無いんだろうけど、その小さな違和感を辻村さんは表現するのがとても上手いです。
ミステリーは相手や物事の現象にあるのではなく、自分自身の心の中が起こすんだな、、と読み進めながら感じることができます。
「自分自身に効く」こんな一冊ですね。