とにかく散歩いたしましょう (文春文庫)

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  • 文藝春秋 (2015年7月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784167904128

作品紹介・あらすじ

本と散歩ですべてのりきれる。珠玉の随筆集

ハダカデバネズミとの心躍る対面。同郷のスケーターの演技を見る感動。永眠した愛犬ラブと暮らした日々。創作の源泉を伝える46篇。

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

日常の中に潜む小さな出来事や感情を丁寧に描き出すエッセイ集で、作家自身の心の声が感じられる作品です。著者は、愛犬ラブとの散歩を通じて、日常の風景や人々との出会いを優しく綴り、その中に物語の種を見出しま...

感想・レビュー・書評

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  • 昔に猫を抱いて像と泳ぐを読んだ事があったけど、途中で挫折。きっとこの作家さんの作品は私には高尚過ぎるんだと思いそれから手に取る事はなかったのですが、フォローしている方が高評価だったのと、表紙とタイトルに惹かれてしかもエッセイなら…と読んでみました。エッセイだと作家さんが身近に感じて、自分と同じこと考えたり、悩んだりするんだなぁって改めて思えた作品でした。

  • 小川洋子さんの綴る日常は、小川さんの描く静謐な小説の世界と地つづきになっているようだ。
    物語という世界の片隅で、慎ましくひっそりと呼吸する住人たち。小川さんは、彼らの小さな声を一生懸命聞き取りながら、一生懸命物語として記している。同じように、現実の世界でも遠慮がちな小さな声を小川さんはちゃんとキャッチし、その存在をそっと丁寧につまみ上げる。
    「る」と友だちの姪っこちゃんも、愛犬ラブとの散歩道も、コインみがきのバットライナーさんとフィッシュ・カウンターのブッカーさんも、みんな物語の世界へと導かれていく。
    優しく、楽しく、時には切なく。
    愛することを祈るように心に響く。

  • 表題作の『とにかく散歩いたしましょう』の小川洋子さんと愛犬ラブの関係がとても素敵だった。

    最初のエッセイ、『「る」と「を」』で、文字ひとつひとつから、こんなに広げて文章を書けるのはすごいなと思った。小川さんにとっては、小説の種は無限なのだなと思った。多くの本の文章も取り入れてのエッセイは、読みごたえもあり、面白さもありと、楽しい時間が持てた。小説ではどこか凛とした感じや静謐感など個性を感じる作品に今まで出会ってきた。エッセイはまた違った感じで、小川さんが好きになる要素がたっぷりだった。知的でおもしろみがある素敵な人だと思った。小説もエッセイも未読のものがたくさんあるので、これからもどんどん読んでいきたい。

  • 著者の小川洋子さんは『博士の愛した数式』などベストセラー作家であり、そのユニークな視点が垣間見えるエッセー集である。ハダカデバネズミに異様な関心を示してついには会って抱くところまでいったり、スーパーカミオカンデの見学に行って宇宙探索のネーミングに思いを馳せたり、こういった幼いとも思える感受性こそが作家のクリエイティビティを支えているのだろう。

    表題の「とにかく散歩いたしましょう」は、小川さんが飼っている老犬のラブラドール・レトリーバーと一緒に散歩する中で出会う、街の様々な風景が描かれている。個人的にも老犬と一緒に暮らしており、毎日の散歩が季節や時の移ろいを感じる貴重な場面となっている。歩いているとむしゃくしゃや小さな悩みがどうでも良くなってくるのは理解できる。

    この本自体は2012年刊行で、恐らくは東日本大震災前後の日常が描かれているのであるが、ウォーカブルや環世界といった身近な場所に焦点が当たったという意味ではコロナ禍の方がより行動変容を生み出したと言えるだろう。今日も傍らには日向ぼっこしながらうたた寝をする愛犬がいる。

  • 小川洋子さんの「博士の愛した数式」は名作だったが、エッセイを読むのは初めて。
    何気ない日常を、どこか作家らしく鋭く捉えている気がする。

    サッカーがお好きなようなのが意外。
    老犬と散歩をしている時に、転がってきたサッカーボールを男の子に返した後、サッカーのワールドカップの空想。

    【引用】
    そうか、私はゴールキーパーなのか。あのカメルーンの猛攻を防いだ、吼える川島か。あるいは金色の優勝カップを頭上に掲げる、スペインのカシージャスか。いずれにしても私は、一個のサッカーボールを救ったヒーローなのだ。
    【引用終わり】

    スペインが優勝した大会なので、南アの大会だ。
    たしかに日本代表は、本田のゴールを守り切ってカメルーンに勝ち、低い下馬評を覆し決勝トーナメントにも進んだ。
    小川さんが、この大会の日本代表を猛烈に応援していたことが伝わってきて、微笑ましい。

  • まるで散歩をしているような気分で読めた。気負わない、かき乱されない。
    作者はラブという名前の老いたラブラドールを伴って、朝と夕方に散歩に出かける。
    タイトルの散歩はそこから来ている。

    淡々としているのに、その思考はとても意外性に満ちていて読んでいるとまったく退屈しない。というか、むしろすごく面白い。
    これまで私は爆発的な笑いを誘うエッセイを好んで読んできたのだが、このエッセイは真逆である。作者は日常の色々なことに苦労をしながら、ともすれば自分はなんて愚かなのだろう、不器用なのだろうと嘆きつつ過ごしている。なのにその嘆いているエピソードが、ものすごく面白いのだ。

    小川さんが執筆の疲れを癒すものとして挙げていらっしゃるのは、岩波科学ライブラリーの一冊『ハダカデバネズミ 女王・兵隊・ふとん係』だ。この毛の無い出っ歯なネズミを作者はこよなく愛し、できれば本物を飼いたいくらいだという。
    特に惹かれたのはふとん係。彼らは女王ネズミに赤ちゃんが生まれた時、床に寝そべって肉布団になるのである。階級社会の底辺にあって新しい命のために必死に折り重なる彼らを見た時、小川さんは涙ぐむほど愛おしさを感じたのだそうだ。
    そして、できれば自分は肉布団係が気楽でいいなあとおっしゃる。どうせなら赤ちゃんに直接触れられる位置がいいと。

    もちろん、この話は数あるエッセイの中のひとつで、すべてがこんな調子ではないのだろうと思っていたが、そんなことはなかった。
    豊かな個性と少しの物悲しさが残る素敵な本でした。

  • おいしいウィスキーのように、シンプルでいて、深み、豊かな香りが溢れる。そんなエッセイ集。

    常人にはない視点で、日常のなんでもないことを繊細に掬い上げ、想像力の海へ解き放つ。
    小川さん自体が世界に対して、自分に対して、周りに対して好奇心があるからこそ、世界、自分、周りを信じているからこそここまで熱い想いをもち、世界を切り取れるのだと思う。

    文章はさすがにうまく、これだけ比喩や例え話を駆使して、陳腐にならないことがすごい。(これは村上春樹と通じる部分)

    ハダカデバネズミに対する愛。子供へ対する愛。ブンちゃん(桜文鳥)、ラブ(犬)への愛がにじみ出る。
    小川さんの優しさに包まれ、ほんわか幸せになる。

    小川さんの経験談。昔読んだ小説が自分が思っていたストーリーと違ったというのは、自分は経験がない(というよりストーリーをすぐ忘れている)ので、さすが小説家は、ほっといても自分自身の物語が湧いてきてしまい、読んだ文章も自然に動き出してしまうのではないだろうかと思った。

    そして色々な本の紹介がちりばめられているのも嬉しい。
    ポールオースターの本の内容の紹介、ノルウェイの森のひたすら歩き続けることに対する記述など、もともとすごい作品なのだと思うが、小川洋子に語られることで、なるほど、そういう面があったのかと新たな発見を得られる。
    「ふしぎなポケット」の詩が持つ多様性、無限の可能性に、少し恐ろしささえ感じた。

  • ひとつひとつの話が短く、テーマも異なるのでちょっとした隙間時間で読むのにピッタリ。
    ハダカデバネズミの女王社会や肉布団の話は面白く、ロバのイーヨーは一緒にため息をついて傍にいてくれるというのにはとても共感した。一緒にいて疲れない友達が1番だ。
    ちらほら、チェスや、槍投げ、アンネの日記に縁の人、など、過去の著作を彷彿とさせるところもあった。

    「題名同士の思わぬ出会いを演出するためには、本棚は系統立てて整頓しない方が、かえっていいのではないかと思ってしまう。」p103
    という、"背表紙たちの物語"が印象的だった。

  • 小川洋子さんの小説のファンだ。ファンタジックな世界観と、登場人物が自然に物語の中を生きていていて「押しつけがましくない」感じがとても好き。
    このエッセイに書いてあるのは、あくまで作品の執筆と共にある日常の話だが、魅力的な小説が生み出される源を垣間見れた気がする。

    日常のささいなことに対して感動できる感性、自分の知らなかった世界に対して興味を持てる好奇心、物事の裏側に思いを巡らせる想像力、そうして蒔かれた物語の種を謙虚な気持ちで育てる。
    あの生き生きとした登場人物たちはこういった過程から生まれたんだなと分かる。

  • やっぱり安定のクオリティ。お散歩がしたくなるかと思ったら、あれこれまた本を読みたくなってしまった(笑)とくに星野道夫氏のお話が興味深くて、著書をメモ!『旅をする木』と『赤い絶壁の入り江』

  • とにかく散歩いたしましょう(文春文庫)
    著作者:小川洋子
    発行者:文藝春秋
    タイムライン
    http://booklog.jp/timeline/users/collabo39698
    第104回芥川賞受賞作品

  • 2020年5月28日読了。小川洋子のエッセイ集、結果的にタイトルにあるように「散歩」や飼い犬に関する話が多くなっているようだがそればかりでなく、特にテーマを決めて書いているものではないようだ。エッセイというものも切り口の鋭さで見せたり自分の業種の特殊性をネタにしたり権威に反発してみたりといろんなやり方があるとは思うが、「面白いことを書いてやろう」と気負われると読む気も失せるし、「自然な文章がいい」と言われても単なる日記や感想文を読まされてもつまらんし…難しいものだと思うが、この人の場合は特に気負いもなく目の付け所の鋭さとか題材の面白さにこだわらず、ハダカデバネズミの話などは面白いがあまり肩肘張らずにテーマを選んでいるように感じられ、すっと読めた。それだけに読み終わってゴリッと心に残るようなものは特に無いのだが、まあエッセイなんてそんなもの・読む側の暇つぶしになればそれでいい、というもんかな…。

  • 小川洋子さんの今まで作品の源泉となるきっかけがたくさん出てきました。とにかくこの方はとても頭いい方だといつも読んでいて感じます。
    独特な視点で物事を捉えているのが、読んでいて気がつくと引き込まれていて、つい一気に読んでしまうほどでした。
    特に好きだった作品は『背表紙の秘密』『本の模様替え』『とにかく散歩いたしましょう』。
    愛犬ラブの散歩の話はとってもよかったです。私も黙って機嫌よくいようと思いました。
    この本の中には、小川洋子さんの好きな小説や本などがたくさん出てくるのですが、私も気になって読みたいと思ってしまいました。その本を読んだらもっともっと小川洋子さんの世界に引き込まれる気がします。
    とにかくこの方の小説を読んでいるとたくさんの新しい視点、発見、学びがあります。

  • 小川さんが、毎日新聞に月に1回連載していたエッセイ。小川さんの読書の好みが私はとても好きだ。そして、小説も好きだけれどエッセイも大好きだ。なので、読んていてとても気持ちよかった。

  • S図書館 2012年
    毎日新聞連載をまとめたエッセイ


    面白かった
    内容が多岐に渡っていて、ランダムに掲載されているので、どこからでも楽しめる
    どこかへ行ったエピソードもあるが、何て事もない日常が小川さんフィルターを通すと、こんな形に見えるのかと楽しい気持ちになった
    1つの内容が見開き2ページ分あるので充実感もあった

    エッセイは4冊読んだ
    その中で2番目によかったかな
    ちなみに1番は「妖精が舞い降りる夜」

    ・隣同士の本を見て楽しむ小川さん
    82 題名たちも時に本体を離れ、彼らなりにより集まって、友情を育んだり故意をしたり旅に出たりしているのだとしたら…と想像を巡らせるのは、それこそ 子供じみているだろうか。
    自分の書いた本が、どこかの書棚で、とある本と隣り合わせ、挨拶を交わしている。
    内容などお構いなしに、 題名は題名独自のやり方で 、私の思いも寄らない物語を作り出している。
    確かに私が考えたはずの題名が、手の届かない遠い場所を旅している。
    この想像は私を愉快にさせる。
    題名同士の思わぬ出会いを演出するためには、 本棚は系統立てて整頓しない方が、かえっていいのではないかと思ってしまう。

  • 読んでいるうちにどんどん肩の力が抜けていく一冊。正直なところ面白さは期待していなかったのだけど…久しぶりに会う友人から聞く少しとぼけた近況報告のようだったり、我が身にも起こりそうな出来事だったり、日常にはこんなにも話題で溢れているのだと楽しくなってしまった。
    老いていく愛犬との日々にはほろりとしたり、さり気なく差し込まれる書籍のタイトルに読んてみたいと思ったり…一番共感したのは編み物の話。あれは文で書かれると難しいのよねと思いながら読んでいるとオチで大笑い。
    日常の出来事から色々連想したり、ニュースから子どもの頃を思い出したり、感性のアンテナを張っていれば日々の暮らしの中に楽しさや思い出、もしかしたらちょっとした知性も転がっているのかもしれないのに、最近はそれをずいぶん拾い損ねてるかもと反省。
    難しいことは抜きにして、とにかく読んでみて!と友人に渡したくなる本かな。

  • 『私が不安を愛犬・ラブに打ち明けると、彼はグイとリードを引っ張った。“ひとまず心配事は脇に置いて、とにかく散歩いたしましょう。散歩が一番です”』

    本と散歩ですべてのりきれる。珠玉の随筆集


    著者の普段の生活から垣間見る人生観や、物事の感じ方を覗かせていただいた。
    愛犬ラブが多々登場し、犬好きとしては嬉しい。

    “繊細さん”な著者の心配事を綴ったエピソード【巨大化する心配事】はわかる気がするなぁと興味深く読んだ。

    読了後は散歩がしたくなる1冊だ。


    こんな人におすすめ.ᐟ.ᐟ
    ・繊細さんのひと
    ・動物、犬好きなひと
    ・梨木香歩さんが好きなひと

  • 愛犬とのお散歩や日々感じたこと、小説家としての悩みや喜びなど、たまにユーモアを交えながら気取りなく書かれている。

    小説家は、色んなことからインスピレーションを得て、自分の中に取り入れ、自分の言葉に変換し表現することを怠らないようだ。

    普通の人が気にもとめないことでも、キャッチできる感性が小説家には必要なんだろう。


  • よかったなあ…。穏やかな気持ちになった。小川さんの本たくさん読みたくなった。

  • 毎日、暑いのですが、この本を読んでいる時は暑さを忘れて時々「くすくす」笑いながら読みました。小川洋子さんに親近感を感じました。

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著者プロフィール

1962年、岡山市生まれ。88年、「揚羽蝶が壊れる時」により海燕新人文学賞、91年、「妊娠カレンダー」により芥川賞を受賞。『博士の愛した数式』で読売文学賞及び本屋大賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。その他の小説作品に『猫を抱いて象と泳ぐ』『琥珀のまたたき』『約束された移動』などがある。

「2023年 『川端康成の話をしようじゃないか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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