- 文藝春秋 (2015年8月4日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784167904203
作品紹介・あらすじ
NHKドラマ化、韓国映画化決定!
仕事と結婚に失敗した荒井尚人。いまの恋人にも半ば心を閉ざしているが、やがて唯一の技能を活かして手話通訳士になる。
あるろう者の法廷通訳を引き受け、過去の事件に対峙することに。現在と過去、二つの事件の謎が交錯をはじめ……。
マイノリティの静かな叫びが胸を打つ、感動の社会派ミステリー。シリーズ通して読み継がれるロングセラーです。
〈第6回 全国高校ビブリオバトル グランドチャンプ本〉
※NHKドラマ化決定! 草彅剛さんが荒井尚人を演じます。2023年12月16日(土)、23日(土) よる10時放送予定。(総合・BSP4K)
※韓国映画化決定! 映画『無垢なる証人』、ドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』のム・ジウォン脚本カ、長篇映画監督デビュー作。2024年クランクイン予定。
みんなの感想まとめ
手話通訳士としての成長を描いたこの作品は、主人公が自らのアイデンティティと向き合いながら、ろう者の法廷通訳を通じて過去の事件に挑む姿を描いています。特に「コーダ」と呼ばれる、耳の聞こえない親を持つ子供...
感想・レビュー・書評
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全11章の構成が素晴らしかった。章末にぐぐっと読者を惹きつける。手話を介する事で言葉の重みを何倍にも感じた。コーダは聴者なのに、こんなにつらいのか…転んでも泣けない理由を聞いて苦しかった。
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慧眼(物事の本質を見抜く、優れた眼力)
さすがです
さすがの慧眼の持ち主です
好みが似てるのにあまりジャンルや作家さんが被ってない本棚を持ってる人
こういう人を見つけられたらしめたもんですよね
新しい扉開けまくりですよ
今回はみんみんの本棚で高評価だった丸山正樹さんをチョイス
やっぱり面白かった!さすがわしやな!目の付け所がさすがやな!(自分だけを誉めていくスタイル)
さて本編です
耳の聞こえない人を親に持つ聞こえる人のことを“コーダ“と言うのだそうです
そして本作はその“コーダ“の物語です
知ってました?“コーダ“?
恥ずかしながら自分は知りませんでした
そして本作を読んだことで“コーダ“の人が抱える悩み、葛藤、ある種の疎外感みたいなものの一端に触れることができたような気がしました
しかも自分の好きなミステリーというかたちで触れられたのも良かったです
「親が聞こえないのに聞こえるって、へえ~良かったじゃん」って簡単に考えてました
なんか無知ってだけじゃ許されないことがこのカギ括弧の中にたくさん詰まってたんじゃないかって今は思えます
なんか始めの一歩を踏み出せた気がした物語でした-
よっ!隻眼!
よくぞこの地味なシリーズ笑に気づいてくださった\(//∇//)
読む前は重松清か?って地味な表紙にちょっと怯んだわ笑
読後に表...よっ!隻眼!
よくぞこの地味なシリーズ笑に気づいてくださった\(//∇//)
読む前は重松清か?って地味な表紙にちょっと怯んだわ笑
読後に表紙みたら…シブい!
シブい作品見つけてしまった!
ってほくそ笑みました( ̄+ー ̄)
2022/07/16 -
2022/07/16
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2022/07/16
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レビューを拝見して知った本です。ありがとうございます。
作者あとがきによりますと「なぜろう者のことを書こうと思ったのですか」と、本作を読んだ方からは、必ずといっていいほどこう聞かれる。
とまず冒頭でおっしゃっていて、その答えとして「手話には『日本手話』と『日本語対応手話』の二つがある」「先天性の失聴者の多くは誇りを持って自らを『ろう者』と称する」これは、私にとって非常に新鮮な驚きだった。と同時に、大きな感銘を受けた。と述べられています。
世間一般にはまだあまり認知されていないはずのこの事実を小説を通してより多くの人に知ってもらいたいと思うに至ったそうです。
また、文春オンラインの対談では、小説のタイトルとしての「デフ・ヴォイス」には3つの意味があるんです。1つは、そのまま「ろう者の声」。もう1つは「声」そのものではないですが、ろう者に限らず、言いたいことがあっても圧倒的な多数の前にあってその声が社会に届きにくい社会的少数者の声という意味もこめました。とおっしゃっています。
私も、この作品を通して「デフ・ヴォイス」という言葉の意味や『ろう者』という方々の存在を初めて近しく知り得ました。
読んで大変よかったと思います。
この物語はミステリーですが、主人公の元警察勤務だった荒井は、家族全員が『ろう者』の家族に育ったただ一人の『聴者』でコーダと呼ばれる子供でした。
ストーリーは最初、荒井の人間関係がいくつかあって少しわかりずらい気がしましたが、最後には1本の線にすべて繋がります。
起きた事件は確かに胸の痛くなるいたましい事件でしたが、さわやかな読後感の残る佳作でした。 -
やはり。これは完全に読む順番を誤った。
「龍の耳を君に」を読んだ後なので、すでに瑠美がどんな人物か知っている・・・しまったー。
それでも今回もとても興味深く読んだ。
「コーダ」という言葉をこのシリーズを読んで初めて知った。
「両親ともにろう者である、聴こえる子」
自分だけが聴こえるせいで感じる疎外感。周りの目や声を自分だけが敏感に感じ取ってしまうつらさ。
いっそ自分も聴こえなければ、と思うのももっともだ。
しかしコーダだからこそ手話通訳士としてろう者に寄り添うことができる。常に思い悩み、影がある荒井だが、彼にとって天職だと思う。
このシリーズ、すでに4冊も出ているらしい。
ここからはしっかり順番に読んでいこう。 -
『龍の耳を君に』を先に読んでしまっていたので、何となく真相はわかっていたが面白かった。主人公荒井がコーダとしての自分にまだ鬱屈しているところや、益岡さんや方貝さん何森など渋い系キャラのここぞという出番も良かった。
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少し前のあやごぜさんの「龍の耳を君に」のレビューを見て読んでみたいと思ったが、そのレビューに『前作を先に読んでから本書を読むことをお勧めします』とあったので、この巻から買ってきた。
私も会社では多くの障害のある人と一緒に働いているのだが、聴覚障害の人はおらず、なので、ここに書かれてあることは初めて知ることが多くあった。
「手話通訳士」という資格のこと、言語としての手話の種類のこと、「ろう者」と「聴者」という表現、「コーダ」という言葉、刑法第40条の経緯、そして、あとがきに書いてあった『ろう者の皆さんがご自身を「障害者」とはとらえていないこと』、等々。
たまに聴覚の支援学校の先生から実習や就労についてのご相談を受けることがあり、しかし、うちの仕事の性質上そうした特性のある人の受入れが難しいため、いつもお断りするばかりで申し訳ない気持ちだったのだが、この話を読むとさらにその気持ちが募った。
そうした障害の特性にまつわる話をベースに、主人公の荒井の個人的な事情、警察事務職員としての職歴、彼が手話通訳として関わった17年前の傷害致死事件の経緯、その被害者の息子が殺害された最近の事件の捜査状況などが絡まりあいながら少しづつ明かされていく構成で、物語にぐんぐん惹き込まれた。
過去にこだわり危ない橋を渡り続ける荒井に気を揉みながら、彼が最後に取った行動に焦点となっていた親子が応えたラストには深く胸を打たれた。
著者があとがきに書かれた『「何らかの障害を持っている」ことは確かに特別なことではあるにせよ、それをマイナスのものでも逆に賞賛すべきことでもなく、障害を持たない人でも共感できるような種類の葛藤として描けないか』という思いにとても共感した。-
ニセ人事課長さん♪ コメント失礼いたします。
私の拙いレビューを読んで頂きまして、ありがとうございます。
作品を手に取るきっかけにな...ニセ人事課長さん♪ コメント失礼いたします。
私の拙いレビューを読んで頂きまして、ありがとうございます。
作品を手に取るきっかけになったとしたら、とっても嬉しいです♪
本書は、今まで知らなかった世界を見せてくれるといいますか、
多くの気づきを与えてくれる作品ですよね。
第二弾「龍の耳を君に」も是非読んでみて下さいませ(^^)2023/04/28 -
あやごぜさん
こんばんは。いつもレビュー読ませていただいています。
とても興味深く且つ面白い本を読むことができて良かったです。
...あやごぜさん
こんばんは。いつもレビュー読ませていただいています。
とても興味深く且つ面白い本を読むことができて良かったです。
もちろん「龍の耳を君に」も読むつもりです。
『前作を知っておいた方がより楽しめるかと思います』と言われていたので、楽しみです。2023/04/28
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みんみんさんのレビューを読んでから、まことさんのレビューを再読し、Amazonでポチった(笑)
多分みんみんさんレビューの、ミステリーという言葉でピンと来たのだと思う(笑)
手話通訳士の話。
家族がろう者で、自分一人だけ耳が聞こえる。
ろう者の両親を持つ聴者の子供のことをコーダと呼ぶらしい。
主人公はそのコーダの男性。
手話には「日本手話」と「日本語対応手話」があるらしい。
先天性で耳が聞こえない人は、「日本手話」という、日本語とは独立した言語で話すイメージのようだ。
聴者で生まれたが、事故などで耳が聞こえなくなった人は「日本語対応手話」という、日本語にリンクした手話を使うらしい。
自分があまり関わったことのない世界の話だが、物語もかなり引き込まれ、これまで全く知らなかったことを、自然に知ることが出来た良書だった。 -
読んで良かった。知らなかったことばかりでした。
聴者に近づけるためではなく、自我を育てる教育を。ろう者の言語や文化をもっと知りたくなりました。ラストの手話のスピーチシーンに痺れました。
三宮麻由子さんの解説〝翻訳がうまくいくときは“ も、素晴らしかったです。 -
コーダ(ろう者の親を持つ聴者)である過去から逃げるように生きてきた荒井尚人。手話通訳士となった彼が、ある法廷通訳を引き受けたことから物語は動き出す。
本作を通じ、日本手話と日本語対応手話の違いや補聴器のノイズなど、聴者側の無理解を突きつけられた。さらに過酷なのは、ろう者同士の対立や差別だ。
幼少期の尚人の回想。
転んで泣いても気づかず遠ざかる母の背中に「あぁ、聞こえないんだ」と悟る場面。甘えを殺し孤独を飲み込んできたコーダの痛みに、強く胸が締め付けられた。
後半のミステリー展開には少しフィクション特有の物足りなさも覚えたが、
ラストに響く「デフ・ヴォイス」{聾者が発する声)には涙があふれた。ろう者か聴者か、敵か味方かという二元論ではない。
二つの世界の狭間で傷つきながらも、己の立場と生きる道を見出した姿に未来を見た気がした。 -
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H29.7.13 読了。
・「手話には『日本手話』と『日本語対応手話』の2つがある。」
・「先天性の失聴者の多くは誇りを持って自らを『ろう者』と称する。」
聴覚障害者の世界が垣間見えたような作品でした。 -
涙無くしては読めない感動のミステリー。聴覚障害という極めて難しいテーマを扱いながら、見事なストーリーに昇華している。ここ数年の間に読んだミステリーの中では群を抜いて面白い。
同じマイノリティーを主人公にしたミステリーに江戸川乱歩賞受賞作の下村淳史の『闇に香る嘘』があるのだが、それに優るとも劣らない。
主人公の警察事務官を辞めた荒井尚人は手話の特技を活かし、手話通訳士となる。少しずつ明らかになる荒井の過去、過去の殺人事件と現在の殺人事件が交錯する時、全ての真実が明らかになる。
哀しい結末であるが、柔らかな優しさを感じたのは、主な登場人物が皆、困難の中に生きる善人として描かれているからだろう。 -
本作を読み始めて、米アカデミー作品賞受賞映画『コーダ あいのうた』を思い出しました。主人公がコーダ(CODA:Children Of Deaf Adults,きこえない親をもつ子ども)であることが共通していたためでしょうか…。
本作の感想は、とても一言では表せないくらい深い内容を孕んでいるようです。少なくとも、単なるミステリーではない、また、薄っぺらい障がい者の話でもない、という気がします。
聴者とろう者の間で苦悩する主人公を通して、私たちの認知がまだまだ足りてないと、著者が理解と共感を求めている気がしてなりません。実際、「日本手話」「日本語対応手話」等、初めて知ることが多く、簡単に多様性だとか共生社会などと言っていることすら恥ずかしく思えてきます。
それでも、物語の最後に救われます。ミステリーとしての面白さに加え、広い視野での社会的マイノリティへの温かさが感じられ、爽やかな読後感でした。もっともっと読み継がれていってほしい名作だと思います。
余談ですが、私の下手なレビューより、ぜひYouTubeで検索し、第6回全国高校ビブリオバトル決勝、春日部女子高の印南 舞さんの名バトラーぶりを観戦してほしいです。見事に本作『デフ・ヴォイス』がチャンプ本(最優秀賞)に選ばれ、表彰式では著者の丸山さんから賞状と記念品が渡されるというサプライズ付きです。
また、映画『コーダ あいのうた』をまだご覧になっていない方も是非! 主人公ルビーの歌声に癒されます。 -
久しぶりに好みのミステリーに出会いました。
社会問題を提起しながらもミステリーとしてのレベルも高く、読みごたえがあります。
主人公は荒井という40代男性。
離婚歴あり、無職。聴者だが手話がかなりできる。
冒頭ではこれしか情報がないので、どこか屈折した態度を取る荒井への好感度はどうしても低くなります。
ハローワークで職を探す中で手話通訳士なる資格を得て派遣通訳士となるが、1件の法廷通訳を務めたことからとある殺人事件に関わっていくこととなるー。
荒井が事件に興味を持つ理由は彼の過去にあり、作中少しずつそれが明らかになっていきます。と同時に読み手は彼がコーダであり、家族に複雑な感情を抱いていることも知ることとなります。
この辺りの描写を通して、実社会におけるろう者やコーダが抱える問題や心情、手話をめぐる現状など多くの学びがありました。
著者あとがきにあるように、私にとっても「この本が『ろう者』や『手話』を理解する入口にな」りました。
「音のない理髪店」の内容が記憶に新しいこともあり、社会の一員として私にできることは何であろうかと考えています。
以前に何かの本でマイノリティをマジョリティが「認めてあげる」という立場を取っていることに疑問を呈するという内容に触れたことがあります。
それがずっと心に残っているため、迂闊に言葉を発するのはかえって迷惑になるのではとも考えたりするのですが、解説を書かれたエッセイストの三宮さん(全盲)によると、当事者の発言より、当事者に近い健常者が語ることも時に効果的であるそうです。
荒井は健常者ですが、当事者に限りなく近い。
そういう人が架け橋になり得るそう。
荒井が妙にろう者に感情移入しすぎないからこそ、本作において架け橋の役割を果たし、ミステリーとしての面白さも高まったのかなと思います。
本作でおきた痛ましい事件はフィクションですが、ろう者に限らず何かしらのハンディキャップを負う方々がそれを理由に悲しい事件に関わってしまうことのない社会であってほしいと切に願います。
文庫版あとがきでは丸山さんが全日本ろうあ連盟の方に「この本が入口になれば」と話した際、「では出口も探してください」と言われたと書かれています。
ハッとしました。
最後まで読んでも荒井のことは好きになれませんでしたが、このシリーズは早く全部読みたいです。面白かった! -
読み始めてすぐに、これはハマる、と思った。
文体はすごく読みやすくて、
自分の全く知らない分野だったけれど、
イメージがしやすく、
知らないからこそ法廷の手話通訳士の重要性、
特に「権利」についての重篤さについて
しみじみと思った。
言語は思考のツールだとはよく言うけれど、
ろう者にとっても同様で、
思考、表現、理解、どれにとっても
手話というのは不可欠なものなのだろうと
よくよく感じた。
ラストシーンはほろりとした。
あとがきにもあったのだが、
東日本大震災の時、
盲、聾、発達障害などの方々の大変さは
健常者の倍以上だったことと思う。
能登半島地震でも、
そういった方々のケアの必要性について
報道を目にした。
そういった方々のことを少しでも知って、
何か少しでもできることがあれば、
と思いながら、
続編を予約する。 -
草薙くんのドラマになるそうなので先読み
手話にも色々な種類があること初めて知りました。
我々ができることは少ないけど、席を譲ったり、周りを気にしたり、ちょっとだけ理解することが、皆さんにとって住みやすい環境になっていくのだろうと感じました。お話は去ることながら聾者のことを知るきっかけの一冊になりました。 -
差別を深く考えさせられる作品だった。
手話といえばアーティストの楽曲や、保育園の発表会でも目にするようになって、てっきり身近になったと勝手に勘違いしていた。
手話が2種類あると知らなかったし、聾唖と聾の切り分けにも心を打たれた。当事者の方々の思いが結実し、音声言語と同じように手話も言語だと国際法で認められたのは2006年とのこと。自分の不勉強さに恥じいる。
手話を取りまく世界をグッと深掘りしてくれて、かつストーリーもしっかりとミステリー。文句なしに面白い。
今、世間は障害者エンタメという辟易するようなニュースワードで騒がしい。そんな逆風に押し戻されることなく、ありのままの事実を捉えなきゃなと再認識させてくれる。 -
コーダ(Children of Deaf Adults)のことは、本書を読むまで恥ずかしながら知りませんでした。ろう者の世界、コーダとしての葛藤、優生保護法、施設における虐待などを巧みに織り込んだ社会派ミステリーの傑作! 通底するのは家族愛...、優しい気持ちになれました。
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以前観たドラマで「コーダ(耳の聴こえない親に育てられた耳の聴こえる子ども)」という言葉を初めて知った。コーダについてもっと知りたくなってインターネットで検索したところ、本書の紹介記事に当たり、手に取った。
本書の主人公、荒井尚人は耳の聴こえない両親と兄を持つコーダである。家族の中で唯一聴こえる彼は、疎外感や孤独を感じながら生きてきた。
家族やろう者と距離を置き、警察事務職員として働いていた荒井だったが、とあることがきっかけで仕事をやめてしまう。再就職がままならない中で手話ができることを活かし「手話通訳士」となった彼は、ろう者の法廷での手話通訳を引き受けたことから、釈放後もそのろう者の専属通訳として彼を支援するNPO法人と契約することになる。
彼が手話通訳士として働き始めるのと前後して、ろう児施設の理事長が殺害される事件が起きる。殺害された理事長の父親である施設の前理事長もかつてろう者によって殺害されており、荒井は警察時代にその事件の被疑者の取り調べに立ち会って手話通訳を行っていた。
荒井はろう児施設をめぐる2つの事件に意図せず関わっていくことになる。
本書は過去と現在の事件の真相を探るミステリであり、少しずつ2つの事件の真実が明らかになっていく過程は読みごたえがある。しかし本書の一番の特徴は、ろう者やコーダ、彼らを取り巻く環境や社会が詳しく描かれていることにある。
本書の事件は、ろう者の人権を踏みにじる卑劣な犯行がきっかけとなって起こっている。先日読んだ『みんなが手話で話した島』という本の中ではろう者と聴者とが共存する社会があったが、聴者がマジョリティである日本社会では、ろう者を取り巻く環境は極めて厳しい。本書はそのような現実をミステリというわかりやすい形で読者に伝えてくれている。
また、荒井はコーダとしてさまざまな苦悩にぶつかってきた。家族の中で自分だけが仲間外れになったような疎外感や、他の家庭と違うことへの羞恥心、世間のろう者への態度に対する怒りや傷心、自分の子供がろう者になるのではないかという恐れ。
荒井が事件の真相を追い、解決へと導く過程は、そのままコーダである自分自身を肯定していく道筋となっている。
本書には続編もあるようで、次作もぜひ読んでみたい。 -
シリーズ途中から読み始めてしまい、後悔していたので
一作目のこちらをようやく手に取り、一気読み。
最後の数行に涙。
それにしてもこの荒井尚人という主人公、
なぜこんなにモテるのか?
45歳のバツイチ、お世辞にも愛想が良さそうには見えず。だけど彼女いるし、その娘にも好印象持たれてるし。
通訳士を始めればろうの方からの信頼をガッチリ得るという。。
わたしの中では西島秀俊のようなルックスがもやもやと湧いてしまっている。
見た目の描写はほぼないにもかかわらず、
そんな印象が…。
殺人事件を軸に描かれてはいるものの、
中心に据えられているのは
ろう者であり、
その周りを取り囲む聴者であったり、
コーダと呼ばれる「ろう者を親に持つ聴こえる子ども」といった存在との関わりがメインであるように思う。
わたしたちが普段あまり目にしない、知ろうとしない世界がそこにあり、そのことを押し付けがましくなく教えてくれる本作に出会えて良かった。
次作も楽しみ。
著者プロフィール
丸山正樹の作品
