お家賃ですけど (文春文庫 の 16-5)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167904302

感想・レビュー・書評

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  • 築40年と年季の入った下宿風のアパート、加寿子荘。ここで過ごした20代の日々。初めは風呂なし部屋に男性として入居したが、いったん離れた後、風呂有部屋に再入居。その時には、見た目が女性に…。
    いつもの能町節に慣れてしまっていたので、とりとめのない文章にもぞもぞする。こんな能町さん見ちゃってよいのかしら…みたいな。でも、半ば日記のようなつぶやきのような、若かりし頃の能町さんが見た風景、出会った人、お気に入りの住まいへの思い…エピソードの一つ一つが愛おしい。古い建物につきもののギョッとした出来事もあるけれど、加寿子荘の描写は和みます。当時の写真もまたレトロでいい。アパートの間取りも描かれ、非常用扉?階段もなく、開けたら即外の、どう考えても危険な用途不明の扉とか(笑)。加寿子荘ほどではないものの、かつて私もそれなりに築年数の古いアパートに住んでいたことがあるので、そういう独特の構造が面白いし、不便なようで何気に快適だったりするのだ。家主の加寿子さんもいいキャラで、とってもかわいらしいおばあちゃん。昭和の女性っぽくきっちりしているけれど、能町さんの事情(男→女)に対しても理解を示す度量の広さがまた素敵。
    極私的な雰囲気の内容なだけに、人によっては面食らうかもしれない。それで私もなかなか手に取れなかったのだけど、文庫化を機に読むことが出来てよかったなと思う。初期の能町さんの本も読みたくなりました。

  • 加寿子荘への愛とオーエル時代の話
    自分のおばあちゃんだけじゃなく、よそのおばあちゃんのことも可愛い!癒される!発言
    優しい方なんだなと思いました

  • こういうのを私小説と呼ぶのか知らん。

    昭和が隅々まで沁みこんだような下宿風アパートメント『加寿子荘』での日々が書き連ねられています。

    男から女に性別を変えて『加寿子荘』に舞い戻るという筋書きは耳目を集めるのに十分だけど、それがテーマではないのです、まったくもって。
    ここを強調させていただきたい。

    大家の加寿子さんをはじめとする古い人たちに対する親しみ。
    神楽坂のど真ん中に聳り立つ高層マンションに対する憎悪とほんの少しの羨望。

    能町みね子というフィルターをとおして覗く世界がとても好き。
    嫉妬してしまう、世界をこんな風につかまえてしまうなんて、こんな風に表現してしまうなんて。

  • 神楽坂、昭和レトロなお家、ちょっと謎めいて
    でも決して一線をふみこまない距離感のよい人たち。

    大好きな要素に包まれた能町さんのエッセイは、
    おもしろいのだけれど、
    軽くサクサク読めるのだけれど、
    日本語も大切に使われていて
    読んでいる時間が心地よかった。

    神楽坂、牛込散歩したくなる。
    この家を探して、和寿子荘を探して、
    なくなったあの建物の痕跡を探して。
    きっと、これまでより楽しくなりそう!

  • 私も築40年の物件に引っ越したばかりなので、なんとなく親近感で購入。
    この本を読んで、自分も、ガタがきてるこの物件を、部屋を、のろけられるくらい好きになりたいなぁと思えた。まぁ始まりが一目惚れだったので、あとは愛を育むだけ、なんだけどね。
    ゆったりして落ち着いたエッセイでした。

  • 会社を辞めて築40年を超えた下宿風アパート「加寿子荘」で暮らし始めたのは、著者が22歳の頃。
    大好きなこのアパートを1年で引き払い、それから1年9ヶ月して彼女は「加寿子荘」に戻ってきた。名前と性別を変えて…。

    今から15〜20年くらい前のことではあるけれど、こういう物件が東京にもあるのだ、ということにまず感動を覚える。
    古い一軒家を使った下宿のようなアパートで、1階には大家さんの加寿子さん(推定80代)が住んでいて、時々世話を焼いてくれる。
    著者の能町みね子さんが性転換をする前に住んでいて、女性になってからしばらくしてまた戻ってきた「加寿子荘」。それだけ彼女にとっては住みやすく、思い入れのある物件なのだということが、読んでいても分かる。

    鋭い観察眼で描写される他の住人のあれこれ、仕事のこと、「加寿子荘」に住んでいて起こること(言うこと聞いてくれないお風呂の湯沸かし器とか)、性転換手術の前後に体調を崩して入院した時の出来事(これもまた鋭い観察眼で同室の人たちのことをよく見ている)など、基本は当時のミクシィの日記に書かれていた文章がエッセイ化されたものらしい。
    能町さんの著作は最近のものも読んでいるけれど、20代の頃から観察眼は鋭かったのだなぁと思わされる。シンプルに、読んでいてとても面白い。
    「加寿子荘」の能町さんが住んでいた部屋と思われる写真が時々差し挟まれていて、画としても想像しやすかった。

  • 好奇心を大切にして生きていきたいなぁと思い直した本。色んな人がいいなと思うものを私も生きている間にたくさん目にして耳にしたいと思う。

  • 2回目の読了。
    初めて読んだときはエッセイだと知らず、小説かな?と思ってたらご本人のことだったんだ…!と衝撃でした。
    2回目を読んだら、私がテレビで見たことある能町さんの感じで読めてとても楽しかったです。
    私は割と都会とか、便利な世の中が好きな人なので、下宿風だったり隣の部屋の声が聞こえるとか、たぶん楽しめない。
    仕事の方達との繋がりとか、暮らしが素敵だなぁと思いました。

  • 能町みね子さんの若き日の神楽坂での暮らしを綴ったエッセイ

    十数年前のことなのに、ずいぶん昔のことのように感じる、昭和感溢れるアパート
    加寿荘での毎日

    よく知っている土地なので、懐かしいカフェや佃煮屋さん、彼女が忌み嫌っているタワーマンションなどの光景が目に浮かびクスッとなる部分もたくさんあった

    大家さんやご近所、家族、会社の社長や友達などとの距離感がとても良い。

    性転換という決断を下すまでは葛藤もあったかと思うが、強くしなやかな心で乗り越えた彼女だからこそ、いまの活躍があるのだと思えた。

  • 能町さんの静かな日常がうかがい知れる。
    男性から女性へ。
    現代でもよくあるとは言いがたい変身だけれど、
    彼女は淡々と静かに自然に変化して行く。
    人間観察力はさすがでございます。

著者プロフィール

北海道出身、茨城県育ち。文章やイラストの仕事のほうが多い漫画家。他称好角家。雑誌やネット媒体でコラムなどの連載多数。2006年、イラストエッセイ『オカマだけどOLやってます。』(竹書房)でデビュー。著書に『くすぶれ!モテない系』(文春文庫)、『ドリカム層とモテない系』(ブックマン社)、『逃北〜つかれた時は北へ逃げます』(文春文庫)、『「能町みね子のときめきデートスポット」略して能スポ』(講談社文庫)、『雑誌の人格 2冊目』(文化出版局)、『うっかり鉄道』(幻冬者文庫)など。『「能町みね子のときめきサッカーうどんサポーター」、略して能スポ』(講談社文庫)がサッカー本大賞2017の大賞を受賞。ラジオやテレビなどでも活躍している。

「2018年 『中野の森BAND』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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