ロスジェネの逆襲 (文春文庫 い 64-7)

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  • Amazon.co.jp ・本 (421ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167904388

感想・レビュー・書評

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  • 1.著者;池井戸氏は、子供の頃から、国内外のミステリ―を読み漁ったそうです。大学卒業後に三菱銀行に入り、32歳の時に退職。その後、コンサルタント業の傍ら、ビジネス書を執筆。「果つる底なき」で、江戸川乱歩賞を受賞し、作家デビューしました。氏は、ミステリ―のセンスを企業小説と融合させた新たなタイプの小説家と言われています。江戸川乱歩賞(果つる底なき)と吉川英治文学新人賞(鉄の骨)と直木賞(下町ロケット)の三賞を受賞した実力作家です。氏は、フライフィッシング・バイク・写真・・と多趣味で、ミュージカルにも造詣が深いそうです。
    2.本書;「ロスジェネ」とは、ロストジェネレーション世代の略で、バブル崩壊後の約10年間の就職氷河期を体験した世代の事です。「オレたちバブル入行組」「オレたち花のバブル組」に続く、半沢直樹シリーズの第3作目。バブル世代の主人公(半沢)が飛ばされた証券子会社が舞台。親会社から受けた嫌がらせや人事での圧力は、知恵と勇気で倍返し。ロスジェネ世代の部下とともに、周囲をあっと言わせる秘策に出る。直木賞作家が書いた、企業や組織に焦点を当てたエンタメ小説。九章構成で、著者作品の中で、テレビドラマの影響もあり、初めて売上が100万部を超えました。
    3.個別感想(気に留めた記述を3点に絞り込み、私の感想と共に記述);
    (1)『第五章 コンゲーム』より、「(半沢;バブル世代)プレッシャーのない仕事なんかない。仕事に限らず、なんでもそうだ。嵐もあれば日照りもある。それを乗越える力があってこそ、仕事は成立する。世の中の矛盾や理不尽と戦え、森山(半沢の部下、ロスジェネ世代)。オレもそうしてきた」
    ●感想⇒会社で仕事をするというのは、山積する問題・課題との対峙です。私も、会社ではプレッシャ―の連続で押し潰されそうな時もありました。会社は学校とは違い、答の無い応用問題ばかりなのです。誰かに頼りたい時もありましたが、恩師に「どうしたらいいですか?とは言っていけない。難しい問題でも、自分の頭で考えなさい。人は見ています」と教えられ、私なりによく考えて回答したものです。上司には、「検討不足だ」と突っ返えされる事しばしばでした。私なりの回答を出した時には時々評価もしてくれました。学問で学ぶ事は大切です。しかし、実体験も重要です。私は貧乏学生だったので、色んなバイトを通じて、様々な考えを持つ人達から学ぶ事が多く、読書と共に問題解決に役立ちました。もちろん、“七転び八起き”の精神は言わずもがなです。
    (2)『第六章 電脳人間の憂鬱』より、「(半沢)サラリーマンだけじゃなくて全ての働く人は、自分の必要とされている場所にいて、そこで活躍するのが一番幸せなんだ、会社の大小なんて関係がない。知名度も。オレたちが追求すべきは看板じゃなく、中身だ」
    ●感想⇒同級生は、商社や銀行に就職する者が多かったです。私は、メーカー志望でした。理由はモノづくりで社会貢献したいと考えていたからです。希望した会社には入れなかったものの、メーカーには入社出来ました。会社には様々な職種があり、人間がいます。私は、スタッフ職につき、現場に関係深い仕事をしました。現場に行った際、ネクタイをしていって叱られもしました。私は現場が好きです。何かにつけ、頼られもしました。良きビジネス生活を送れたと感謝しています。愚痴です。「会社の大小なんて関係ない」とはいうものの、社員の給料等の処遇格差は容認できません。
    (3)『第九章 ロスジェネの逆襲』より、「(半沢)世の中を儚み、文句を言ったり腐ってみせたりする・・。でもそんなことは、誰にだってできる。お前は知らないかもしれないが、世の中に文句ばっかりいってる奴は大勢いるんだ。だけど、果たしてそれになんの意味がある」
    ●感想⇒何事にも否定的で文句や愚痴を言う人はいます。私は、そうした人の言い分でも聞いてあげるようにしています。そして、文句の正否を判断し、付き合い方を考えます。価値基準が異なる意見を受止めることも必要ですが、世の中を果敢なむ事は嫌です。将来に夢を託し、前向きに生きたいと思います。“井の中の蛙大海を知らず”にならないようにしたい。
    4.まとめ;理不尽な出向で、子会社にいった半沢でしたが、どこでいこうともスタンスを変えずに働く姿が共感を呼びます。それは「この借りは必ず返す。やられたら知恵と勇気で倍返しだ」に凝縮されています。現実の企業では、様々な人々が虚々実々のかけひきの中で戦っています。私は、そうした世界でも、真摯で誠実な生き方がよいと願います。見ている人は必ずいます。最後に、池井戸氏のメッセージです。「人生というのは基本的に勝負の積み重ねなんですが、努力している人が全敗することはないですよ。だから1回の失敗でくじけないで、努力すべき時はしっかり努力する。諦めないこと。それがすごく大事だと思います」。若人へのエール、心を揺さぶる言葉ですね。 ( 以 上 )

  • 私もロスジェネ世代だということに気づき、そうだったなぁと感慨深い思いが蘇ってきた。半沢の暑い台詞が心に響く。

  • 半沢直樹シリーズ第3弾。テレビドラマで視聴していたのでイメージも湧きやすかった。にしてもこのシリーズは期待されても、その期待を裏切らないですね。
    笑ったのが、半沢が伊佐山に対して放った「ゴミ扱いしているのではありません。ゴミだと申し上げているのです」
    最後に心に響いた半沢氏の言葉「仕事は客のためにするもんだ。ひいては世の中のためにする。その大原則を忘れたとき、ひとは自分のためだけに仕事をするようになる。」
    心に刻み仕事をしようと思った今日この頃です。

  • ストーリー全体としてはお馴染みのものであるが、目まぐるしく展開していく構成力が素晴らしいと思う。
    ありそうで実際にはない、でもこんな話があったらいいなというあたりを、いい塩梅で描いている。

  • 今回も面白かった。
    1→2→5→4→3の順番で読んでしまったが、完結してるので問題なし。
    会社やお金の勉強にもなるし、仕事をする上でのスタンスは下手なビジネス本より学べる。

  • 前作からの半沢の働きが最後の最後で報われた形になり、気分がスッとした。

  • ロスジェネ世代を影で支え、時にはリードし…出向先でも闘い続ける半沢直樹、やっぱり面白い!

  • ★4.5
    半沢直樹シリーズの3作目。前作で出向辞令が下り、子会社・東京セントラル証券で働く半沢直樹。銀行外部には出たものの、彼の敵はやっぱり銀行内部の腐った人たち。さらに今回は、バブル世代とロスジェネ世代、出向社員とプロパー社員、買収する側とされる側と、徹底した対比を描き、それが前作以上の面白さを齎す所以となっている。そして、ロスジェネ世代のひとりとしては、森山の不満と諦観、半沢に感銘を受ける気持ちがとてもよく分かる。が、現実的には清濁併せ呑む働き方は出来ないけれど。新たな辞令を受けた半沢の今後が楽しみ!

  • 東京セントラル証券に出向した半沢直樹ですが
    組織に巻かれない姿勢はブレてません。
    IT大手が相談に来た買収事案を
    古巣の「銀行」に横取りされても
    泣き寝入りしません。
    「倍返しだ!」←本文で言ってるし

    ロスジェネ世代は部下の森山君。
    クサってるだけじゃ未来はないのだ。
    いつのまにか半沢部長に巻き込まれて
    仕事に前のめりになってくのが
    既定路線だけどグッとくる。

    株式のこととか詳しくは知りませんが
    なぜ証券から銀行に鞍替えしたのか
    どうしたら一発逆転できるのか
    そういう部分はミステリ的でもある。
    よーし、ドラマが始まる前に
    もう一冊も読んでしまうか!

  • TVシリーズ、あと3回。「銀翼のイカロス」へ!
    TVシリーズと比べると、体型・風貌は違うが、口調は同じ…が多い。

著者プロフィール

1963年岐阜県生まれ。慶應義塾大学卒。98年『果つる底なき』で第44回江戸川乱歩賞を受賞し作家デビュー。2010年『鉄の骨』で第31回吉川英治文学新人賞を、11年『下町ロケット』で第145回直木賞を、’20年に第2回野間出版文化賞を受賞。主な作品に、「半沢直樹」シリーズ(『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』『アルルカンと道化師』)、「下町ロケット」シリーズ(『下町ロケット』『ガウディ計画』『ゴースト』『ヤタガラス』)、『空飛ぶタイヤ』『七つの会議』『陸王』『アキラとあきら』『民王』『民王 シベリアの陰謀』『不祥事』『花咲舞が黙ってない』『ルーズヴェルト・ゲーム』『シャイロックの子供たち』『ノーサイド・ゲーム』『ハヤブサ消防団』などがある。

「2023年 『新装版 BT’63(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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