- Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167904692
作品紹介・あらすじ
男の子みたいな姫君と、女の子みたいな若者が繰り広げる痛快平安ラブコメディ都で評判の権大納言家の凛々しい若君・春風と、美しくたおやかな姫君・秋月。実はこの異母兄妹、春風は姫君で、秋月は若君。「ああ、このふたりをとりかえられたらな・・・・・・」という父・権大納言の願いもむなしく、ついに二人は正体を隠して宮中デビュー!!春風は帝のおぼえめでたく出世街道まっしぐら、秋月は女東宮の尚侍として寵愛され後宮の花となって・・・・・・偽りの生活はどこまで続くのか!?
感想・レビュー・書評
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●2020年7月23日、読み始め。
田辺聖子さんの作品は、そこそこ読んでる。ブクログへの登録は、今回で4冊目になる。
今までに登録した3冊は、いずれも、田辺聖子さんが生存されていた時に読んだもの。
田辺聖子さんは、1年前に91歳で亡くなられている。
さて、今回の「とりかえばや物語」だが、この作品は、平安時代後期に書かれたとされている「とりかえばや物語」を、現代語訳したものらしい。
「とりかえばや物語」は、読むべき作品ではない。と、高校時代に刷り込まれたような記憶がある。絶対禁止というわけでもないのだろうが、まず入試で出題されることはなかったので、読む気もしなかったが。
ただ、ここにきて、私も還暦が近くなり、「読まずに死ねるか」(汗)と、下らない考えが出てきて、読んでみることにした。
●2020年7月30日、一応読了。最後の方は、飛ばし読み。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
性別を取り替えたい兄妹の物語。
平安時代にこのストーリーを考るなんて、平安時代だからこそ、なのでしょうか。入れ替わりものの元祖はとても面白い!田辺氏の現代語訳はとても自然で、里中満智子さんの解説も贅沢でした。
中盤はどう転がるのかハラハラしましたが、王道のミュージカルのような落とし方で良かったです。(正直誰か一人くらいは闇落ちするのかと思っていたので) -
何となくあらすじは理解しているけれど、とりかえばやは、なかなか原文を読む機会がない。
聞くところによると、近年は高校の教科書にも載っているらしい。
漫画版も、原文を交えたダイジェストも、本書のような作家の現代語訳も読んでみると、やっぱり、一度は原文を読まねば、と思えてくる。
解説にフェミニズム小説だとあるにだけれど、本当にそうなのかなあ、と疑問に思えるからだ。
男姿で宮廷生活を送るヒロインを春風、と田辺さんは名づける。
彼女の兄(原文ではどちらが上とはわからないのだろう)で、女姿で尚侍になってしまう人は、秋月、そしてこの兄妹を恋する軽薄貴公子を夏雲という。
夏雲はトリックスターというか、物語を駆動するために生み出されたような人物。
これは誰が現代語訳しようが、きっとそう。
田辺さんは、底が浅いけれど、憎めない人物、と描いていく。
逆に田辺さんの情の深さが思われる。
この、ジェンダーが逆転した兄妹に、しかし結局は振り回される話なんだよね。
たしかに、夏雲によって宇治にかくまわれた春風が、ただ待つしかない女の生き方に疑念を抱くのはフェミニズム的と言えなくはない。
一人のパートナーとの誠実な関係を望むのは、一夫多妻の時代の女性たちの願いであったのかもしれない。
ただ、それは「男」を生きることにした秋月にあっさり否定される。
「男」に目覚めた秋月は、恋の狩猟をして、複数の夫人、恋人を持つようになる。
初めて愛した女東宮も、大事にはされているのかもしれないが、大勢の中の一人に埋没する。
春風の一時味わった絶望は何だったのか、と思ってしまう。
こういうニュアンスは原文のものか、田辺さんが付け加えたものかわからない。
おそらく前者だろう、と思うけれど。 -
美しい言葉遣いで、私の脳内が浄化されていくようでした。田辺聖子さんの現代語訳は最高です…
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女性が男装して男社会で生きる楽しみを謳歌し、望まぬ妊娠後、女として生きることのつまらなさに絶望していたところ、帝の寵愛を受けて、女に生まれたことを良かったと思う。
春風は、一夫多妻制(多愛人容認社会)への疑問も口にしている。
平安時代に、男性社会への疑問や、女性としての幸せとは何かを考えた人がいたとは。 -
原典に触れる前に田辺さんの訳を読了。
春風、秋月、夏雲、冬日、というネーミングセンスに痺れました、素敵です。そういう時代なので仕方ない仕方ない…と言い聞かせながらもやはり浮気心極まりない夏雲に終始腹が立ちましたね、楽しかったです。春風と秋月に会ってみたいなぁと思いました。 -
田辺聖子さんの上品かつ艶やかな文体で書かれていて、読んでいてうっとりしてしまった。言葉遣いが優しかったのでとても読みやすい。
春風の男社会で学んだ理性や落ち着きを生かして、自分の人生を強く歩んでいこうとするところには尊敬と憧れを感じた。夏雲は情にほだされやすくて呆れた。でも当時の、男性はこんなものかとも思った。
著者プロフィール
田辺聖子の作品






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