とりかえばや物語 (文春文庫 た 3-51)

著者 :
  • 文藝春秋
3.82
  • (30)
  • (51)
  • (41)
  • (3)
  • (2)
本棚登録 : 543
感想 : 56
  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167904692

作品紹介・あらすじ

男の子みたいな姫君と、女の子みたいな若者が繰り広げる痛快平安ラブコメディ都で評判の権大納言家の凛々しい若君・春風と、美しくたおやかな姫君・秋月。実はこの異母兄妹、春風は姫君で、秋月は若君。「ああ、このふたりをとりかえられたらな・・・・・・」という父・権大納言の願いもむなしく、ついに二人は正体を隠して宮中デビュー!!春風は帝のおぼえめでたく出世街道まっしぐら、秋月は女東宮の尚侍として寵愛され後宮の花となって・・・・・・偽りの生活はどこまで続くのか!?

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ●2020年7月23日、読み始め。

    田辺聖子さんの作品は、そこそこ読んでる。ブクログへの登録は、今回で4冊目になる。
    今までに登録した3冊は、いずれも、田辺聖子さんが生存されていた時に読んだもの。
    田辺聖子さんは、1年前に91歳で亡くなられている。

    さて、今回の「とりかえばや物語」だが、この作品は、平安時代後期に書かれたとされている「とりかえばや物語」を、現代語訳したものらしい。

    「とりかえばや物語」は、読むべき作品ではない。と、高校時代に刷り込まれたような記憶がある。絶対禁止というわけでもないのだろうが、まず入試で出題されることはなかったので、読む気もしなかったが。

    ただ、ここにきて、私も還暦が近くなり、「読まずに死ねるか」(汗)と、下らない考えが出てきて、読んでみることにした。

    ●2020年7月30日、一応読了。最後の方は、飛ばし読み。

  •  粗筋は、他の方が書いて下さってるので省略。
     ジェンダーやフェミニズムといった点に於いて、現代に近い価値観に基づいて書かれており、読んで非常に驚いた。隠している正体に関するドタバタ劇を、高校の文学史で習って以来勝手に予想していたが、一夫多妻が常識として通用している時代で、「男の訪れをただ待つだけの閉鎖的な女の生活は詰まらない、正体を隠し女一人男に立ち混じることになっても自分の能力が世間でどの程度通用するのか試してみたい、そうでなければ男のただ一人の女として愛されたい」という強い時代批判が込められていたから。勿論、現代の価値観は文字通り「現代の」価値観であって、平安時代のそれと比べてどちらが良いとか悪いとか(現代から見て平安時代が良いとか悪いとか)はそれほど軽々に言えることではないが(平安時代より現代の方が、どんな境遇の人にとっても少しは生きやすい世の中であることを僕は願っているしまた実際にそうだろうとも思うが、完璧には全く程遠いというのも紛れもなく事実)、作者は時代の常識に囚われない卓越した先見の明の持ち主だったとは言えるだろう。
     ただ、時代の当たり前から外れてしまった人の味わう苦しみを描いた前半と、兄妹それぞれ本来の(?)性別の姿に戻って栄華を極める後半とはどうもチグハグなようにも感じた。性別を誤魔化したまま天寿を全うするという結末もそれはそれで現実味に欠ける気もするが、時代批判としては中途半端な印象を抱いた。まぁ前半後半もそれぞれ面白いのは間違いないので良し(笑)
     この作品は恐らく女性の手によるものなのだろうなと思ってたら、後書きで田辺聖子さんも同じ推測をしていた。

  • 「おちくぼ姫」に次ぐ、おせいさんの現代語訳二冊目。

    現代語訳、というと、今の私たちの言葉で訳されていながらなんだか堅苦しい文体で読むのが苦手である。
    けれど「おちくぼ姫」がそうであったように、田辺聖子は読みやすい言葉にしてくれるのでストーリーの情景を思いながら物語に入っていける。

    王朝時代は遠い時代だが、おせいさんの言葉により物語の登場人物や当時の方の存在や感性がとても身近なものに感じられた。
    身分の良い方というのはいつの世も考え方が異なる存在と壁を感じてしまうものだけど、この物語を読む限り、その壁はないように思える。
    今以上に性別の役割による制約が多かった時代。
    今、女性も男性と同じように外の世界へ仕事に出るようになり、自分が望みさえすれば社会という広い世界へ入っていけるようになった。そのような世になってもなお、男は、女は、というものに縛りを感じ、悩むこともある。
    そういうところが昔の人も同じようであったのかと知り、それで親しみを覚えるのだ。

    読んでいるなかで感じたことは、このお話に出てくる女性は皆強いということ。反対に、男性は女性的にも思える。そのようなところに、誰しも生まれ持った性別とは別に、もう一つ異なる性別を持っているような気がしてきた。さらには、性別は身体構造による分類であって、生活の中で性別による差を作る必要はそこまでないような気さえする。
    「ジェンダーレス」という言葉が出てきた昨今、長い時を経て、ようやくかの時代の人も抱いた悩みが和らいでくるのかもしれないと期待している。

    【少しネタバレ】
    物語後半は、主人公や周りの女性がよりしたたかで、主人公の夫となる帝もまた、今も昔もこれほど寛容な人間がいようかと羨ましさを覚えるほどの人柄なので、書き手の「こうなったらいいな」という心情がよくわかる。

    また、最初の夫についてはどうしようもない人だと思うのだが、それでも最後まで哀愁を帯びているところにこの人の親しみ、愛嬌のようなものを感じるのであった。

  • 性別を取り替えたい兄妹の物語。
    平安時代にこのストーリーを考るなんて、平安時代だからこそ、なのでしょうか。入れ替わりものの元祖はとても面白い!田辺氏の現代語訳はとても自然で、里中満智子さんの解説も贅沢でした。
    中盤はどう転がるのかハラハラしましたが、王道のミュージカルのような落とし方で良かったです。(正直誰か一人くらいは闇落ちするのかと思っていたので)

  • 何となくあらすじは理解しているけれど、とりかえばやは、なかなか原文を読む機会がない。
    聞くところによると、近年は高校の教科書にも載っているらしい。

    漫画版も、原文を交えたダイジェストも、本書のような作家の現代語訳も読んでみると、やっぱり、一度は原文を読まねば、と思えてくる。
    解説にフェミニズム小説だとあるにだけれど、本当にそうなのかなあ、と疑問に思えるからだ。

    男姿で宮廷生活を送るヒロインを春風、と田辺さんは名づける。
    彼女の兄(原文ではどちらが上とはわからないのだろう)で、女姿で尚侍になってしまう人は、秋月、そしてこの兄妹を恋する軽薄貴公子を夏雲という。
    夏雲はトリックスターというか、物語を駆動するために生み出されたような人物。
    これは誰が現代語訳しようが、きっとそう。
    田辺さんは、底が浅いけれど、憎めない人物、と描いていく。
    逆に田辺さんの情の深さが思われる。

    この、ジェンダーが逆転した兄妹に、しかし結局は振り回される話なんだよね。
    たしかに、夏雲によって宇治にかくまわれた春風が、ただ待つしかない女の生き方に疑念を抱くのはフェミニズム的と言えなくはない。
    一人のパートナーとの誠実な関係を望むのは、一夫多妻の時代の女性たちの願いであったのかもしれない。
    ただ、それは「男」を生きることにした秋月にあっさり否定される。
    「男」に目覚めた秋月は、恋の狩猟をして、複数の夫人、恋人を持つようになる。
    初めて愛した女東宮も、大事にはされているのかもしれないが、大勢の中の一人に埋没する。
    春風の一時味わった絶望は何だったのか、と思ってしまう。

    こういうニュアンスは原文のものか、田辺さんが付け加えたものかわからない。
    おそらく前者だろう、と思うけれど。

  • 美しい言葉遣いで、私の脳内が浄化されていくようでした。田辺聖子さんの現代語訳は最高です…

  • 女性が男装して男社会で生きる楽しみを謳歌し、望まぬ妊娠後、女として生きることのつまらなさに絶望していたところ、帝の寵愛を受けて、女に生まれたことを良かったと思う。

    春風は、一夫多妻制(多愛人容認社会)への疑問も口にしている。

    平安時代に、男性社会への疑問や、女性としての幸せとは何かを考えた人がいたとは。

  •  

  • 原典に触れる前に田辺さんの訳を読了。
    春風、秋月、夏雲、冬日、というネーミングセンスに痺れました、素敵です。そういう時代なので仕方ない仕方ない…と言い聞かせながらもやはり浮気心極まりない夏雲に終始腹が立ちましたね、楽しかったです。春風と秋月に会ってみたいなぁと思いました。

  •  田辺聖子さんの上品かつ艶やかな文体で書かれていて、読んでいてうっとりしてしまった。言葉遣いが優しかったのでとても読みやすい。  
       
     春風の男社会で学んだ理性や落ち着きを生かして、自分の人生を強く歩んでいこうとするところには尊敬と憧れを感じた。夏雲は情にほだされやすくて呆れた。でも当時の、男性はこんなものかとも思った。

全56件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1928年、大阪市生まれ。樟蔭女子専門学校卒業。64年『感傷旅行』で芥川賞、87年『花衣ぬぐやまつわる……』で女流文学賞、93年『ひねくれ一茶』で吉川英治文学賞を受賞。『むかし・あけぼの』『ジョゼと虎と魚たち』など著作多数。

「2023年 『私たちの金曜日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

田辺聖子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
三浦しをん
三浦 しをん
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×