色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
3.67
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本棚登録 : 3489
レビュー : 336
  • Amazon.co.jp ・本 (421ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167905033

作品紹介・あらすじ

多崎つくる鉄道の駅をつくるのが仕事。名古屋での高校時代、四人の男女の親友と完璧な調和を成す関係を結んでいたが、大学時代のある日突然、四人から絶縁を申し渡された。何の理由も告げられずに――。死の淵を一時さ迷い、漂うように生きてきたつくるは、新しい年上の恋人・沙羅に促され、あの時なにが起きたのか探り始めるのだった。全米第一位にも輝いたベストセラー!

感想・レビュー・書評

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  • 「そのとき彼はようやくすべてを受け入れることができた。魂のいちばん底の部分で多崎つくるは理解した。人の心はと人の心は調和だけで結びついているのではない。それは傷によって深く結びついているのだ。痛みと痛みによって、脆さと脆さによって繋がっているのだ。悲痛な叫びを含まない静けさはなく、血を地面に流さない赦しはなく、痛切な喪失を通り抜けない受容はない。それが真の調和の根底にあるものなのだ。」

    高校時代に仲の良かった4人と40前にして再会していく話。

    子供時代の友人のその後、あの当時はわからなかった不思議、謎と対決する……なんとなく中学ぐらいの時分に読み漁ったスティーブン・キングを思い出した。
    村上春樹の数ある主人公……カティーサークを飲み、パスタを茹で、サンドイッチを丁寧に作り、女の子と寝る……そんな主人公たちの中でわりと多崎つくるに好感が持てたのは文頭の引用部分と下記の部分があったためだと思う。

    「正しい言葉はなぜかいつも遅れてあとからやってくる」

    遅れてやってくるのは少なくとも探し続けているからなのだと思う。

    読めと勧めてくれた友人に感謝したい。

  • 感想書いていなかったので記憶を頼りに書き込み(2017/3)

    村上春樹は好きだけどこれはつまらなかった。
    1Q84の時も思ったけど、村上春樹にはなんというか現実世界っぽさは求めてないのかも。

    求めているのは現実っぽい世界の中にある、不思議な世界への冒険というか、心理描写というか、気だるく斜に替え、人生なんてどーでもいいけどとりあえず生きていこうかなみたいな主人公がヘンテコな出来事に巻き込まれて行くのが好き。
    読んでいて、もしかして私が知らないだけで世界ニラこんな不思議なことが起こってるのかも?と思わせてくれるような堂々とした書き方も好き。

    ヘンテコというのは、世界の終わりとハードボイルドワンダーランド的な巻き込まれ型でもいいし、ノルウェイの森のような、ATフィールド全開な自己世界と世間の関わり方でもいい。

    なんでもいいから、普段目に見えない感情をあたかも目に見えるような大げさな比喩を使って"僕"を通して世界を見ている、そんな風に感情移入できる物語を求めてしまう。

    どこかの誰かの人生の歩み方を淡々と読んでる様な本作はあまり好きではないかも

    まとまらんけどメモメモ


    好き
    世界の終わりとハードボイルドワンダーランド
    ダンスダンスダンス
    羊をめぐる冒険

    苦手
    タフターダーク
    1Q84
    田崎つぐる(本作)

  • 色彩を持たない多崎つくる
    最初人生において何事においても無難に済ませがちな自分のことのように感じた
    全体的にはさらっと読めて内容も面白いと思った

    批評を2点あげるとしたら
    最後の終わり方で沙羅とどうなったかが書かれていなかったこと
    結局シロは何故死んだのかが分からなかったことがなんとも言えない気持ちになりました

    まああえて作者に考えさせるっていうパターンだと思うけど、その真実が出て感動または喪失感を感じるものだと思って読んでいたので少しがっかりした

  • 村上さんのなかでは読みやすい気がした。
    かつてあった関係がなくなってしまう ということはけっこう色んな人の色んな場面でありそうだし、普遍的だからかなと思った。

  • 過去に仲の良かったグループから、突然に関係を打ち切られてしまい、そのことに大きな影響を与えられた状態で大人になる。その主人公である多崎つくるが、その過去の謎を解き、清算を行うために行動する物語です。今までの生活と違う場所に過去の人物を訪ねていくので、タイトル通りの旅を、それも内容充実の旅をしたような読後感を楽しませていただきました。絶望を抱えた主人公は、旅によってそれが清算されていき、今ある大切なものに気付かされます。その気づきを、今度こそ離してしまわないように(離せばそれは死を意味してしまう)、最後に行動するのですが、それが間に合ったのか、それとも時すでに遅しなのか、まさかの勘違いなのか。その答えに向き合うところで物語が終わってしまい、煩悶する読後感もあります。その後について、一人で抱えるには大きすぎて、人に聞きたくて仕方がなくなってしまいました。僕はこう思うけど、どう思う?と。

  • 「君に欠けているものは何もない。自信と勇気を持ちなさい。君に必要なのはそれだけだよ。(引用)」エリの一言のとおりだと思う。
    本当の事を聞くのも、会いに行くのも、自分の気持ちを打ち明けるのも全部勇気がいる。フィンランドまでエリに会いに行った勇気と、自分は会いに行くという覚悟のような自信。

    「どんなに穏やかで整合的に見える人生でも、どこかで必ず大きな破綻の時期があるようです。狂うための期間と言っていいかもしれません。人間にはきっとそういう節目みたいなものが必要なのでしょう。(引用)」
    そう言われると少し安心する。そこから這い上がって立て直して、自分の心を律せられる人になりたい。

  • 主人公、多崎つくるの心の傷はどうやら治癒に向かっているという終わりですが、謎は謎のまま残されている部分もあります。
    そこは本題とは違うからいいのでしょうが、気になります。
    シロの事件や沙羅との今後とか。
    村上春樹作品はこれが3作目。その中で一番わかりやすい内容でした。ちょっぴり推理小説的な部分もあって、先が知りたい衝動にかられます。
    男が結婚したいと思うのは、こんな感じなのかな。他に男がいても……。
    それを考えると沙羅という女性は、とても魅力的なのだろう。イメージではかなりの美人を想定しつつ、つくるの今後に愛があることを願うばかり☆彡

  • 2017.3.1
    色を持たない多崎つくる。
    いつもクールで穏やかな人。何かが際立っているわけではないけど、そこにいるだけで人を安心させるような人。
    こういう人の、隠しているわけではないけど、本当はいろいろ思っていたり、傷ついたり、誰かを好きになったり、怒ったり、死にたいくらい落ち込んだりする部分と、独りよがりのような孤独、その硲の苦悩をとても丁寧に描写している。
    "駅"に例えたセンスが、非常に秀逸で、やられた〜という感じ。
    沙羅を離してはいけない、と言ってたけど…
    駅であり、容れ物であるつくるの個性は、他の誰にもない尊いものだし、つくるには是非それを誇りに持ってほしい。

    それにしても村上春樹さんの作品の主人公って、どうしてこんなにハンサムなんだろう。
    いや、村上さんの書く文章がハンサムなのか。
    私もまた、"つくる"という容れ物に、自分のイメージを投影させてもらっている。

  • 大学時代のある日、突然に仲間から絶縁を申し渡された主人公・多崎つくるが、16年の時を経て、その時の事情を知るためにかつての仲間たちを訪れる物語。
    切り捨てられた時の苦悩と内省。ひとつの山を越えた時の静かな思い。新しい段階へ足を踏み入れようとするときの痛み…。他者の個性が彩り溢れたものに見える一方、自分はとみるとそれらと比べて何も持たない凡庸な人間と思えてしまうという心情は、私みたいな平凡な人間にはよく分かる。
    一方、他者から見える自分は自分が知る自分とは違うということもままある。その内に、どれが本当の自分かというよりも、歳を取ればそれもこれも含めて自分だということが分かってくるのだけれど、そうした人生の途中にある人の心情をベースに語られるお話は、読む者に自分の人生をなぞらせる。
    主人公があの時何が起きたのかを探る旅は、事情を明らかにするとともに今までの人生に方を付けていくという意味で、正に“巡礼”というに相応しく、エリと再会し別れる場面の切なさに、私には日本から持ってきたプレゼントを渡す場面が何故か一番心に沁みたのだけど、人がひとりで生きていく儚さを感じる。
    本を読むのは大半が通勤電車の中の私は、どちらかと言えば暇潰しに読んでいるみたいなものなので、いつもはライトなものを読んでいるのだけれど、たまにはこういう本も良いものだと思った。本物の香り、格が違うという感じ。

  • 以前、単行本を読みました。


    この作品では、主要な登場人物には色の付いた名前が多く付けられています。
    けれど、うまいなぁと思うのは、色彩の入っていない登場人物の名前。
    まず多崎つくる。
    彼は特定の色彩を持っていないけれど、「多い」という字を付けられている。
    つくる自身は最初から最後まで一貫して、自分のことを個性も何もない空虚な存在だと思っているにもかかわらず。
    それから彼に順礼を勧めた女性である、木元沙羅。
    彼女の名前である沙羅からは、「まっさら」という言葉を連想しました。
    色の付いた名前の登場人物のことを取り上げている場合が多いけれど、この二人の人物の名前の付け方に、著者の多崎つくるという人物についての思いと二人のその先の関係がどうなっていくかの予測が含まれているような気がします。

    謎が謎のまま残されているというのも印象的でした。
    つくると沙羅の関係がどうなるかということも作品の中では触れられていないし、灰田くんはどうしちゃったのかな、とか、白根さんはどうしちゃったのかな、とかその辺りのことは作品の中に記述がありません。
    小説を読むときにどうしても、謎が全て解決してそうだったのかすっきりした!!
    というのを求めてしまいがちだけど、現実には、わからないままになっていることの方が多い。
    だから、謎のままにされている方が自然なのかもしれない。
    そうしてある方が空想する隙間も多いので、それが作品の魅力の一つだろうと思いました。

    哲学的な部分も多く、示唆に富んだ作品でした。
    色彩の描写が多いので、それを追うだけでも面白かったです。

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著者プロフィール

村上春樹(むらかみ はるき)
1949年、京都府京都市伏見区生まれ、兵庫県西宮市芦屋市育ち。早稲田大学第一文学部映画演劇科卒。大学在学中にジャズ喫茶「ピーター・キャット」を国分寺・千駄ヶ谷に開店していた(1981年、店を人に譲渡)。1979年にデビュー作の「風の歌を聴け」で群像新人文学賞を受賞。谷崎潤一郎賞、読売文学賞、朝日賞など数々の受賞歴がある。2006年にフランツ・カフカ賞、2009年にイスラエルのエルサレム賞受賞。ノーベル文学賞に最も近い作家の一人と言われており、毎年発表時期に日本国内でニュースになる。事実、村上春樹作品は全世界で翻訳されており、アメリカ・アジアでの評価がとりわけ高い。フィッツジェラルドやレイモンド・カーヴァーなどの作品の翻訳も手がけ、翻訳家としての仕事も高い評価を受ける。翻訳と創作活動を交互に行うことで、作風を変化させ、作家としての成長を続けている。新作が発表されるたび大きな話題となるが、近年は特別番組「村上RADIO」にてラジオDJも務め(不定期放映)、数々の名言も注目を集める。代表作に『風の歌を聴け』『羊をめぐる冒険』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』。2019年7月7日発売の『文学界』で短編小説を2作掲載。アメリカのサックス奏者スタン・ゲッツの伝記翻訳を2019年8月末に刊行予定。

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