望郷 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 184
  • Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167905231

作品紹介・あらすじ

日本推理作家協会賞受賞! 心に刺さる連作短編集島に生まれ育った私たちが抱える故郷への愛と憎しみ…屈折した心が生む六つの事件。推協賞短編部門受賞作「海の星」ほか傑作全六編。

感想・レビュー・書評

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  •  瀬戸内にある白綱島。島に囚われた人、出て行った人、暮らす人……、様々な人の、島に対する思いを描いた連作短編。

     やっぱり湊さんの、人間心理のひだの描き方の巧さはすごいです!

    「みかんの花」で描かれる、島を出て行った姉の成功を妬む妹の心情の描き方もさすがなのですが、島民と島を出て行った人の、”島”に対する思いの温度差の描き方がまた巧いです。

     白綱島は市町村の合併で、島の市の名前が「白綱市~町」から「O市白綱~町」に変わることになり、島を出て行った人は「故郷が失われる」と嘆くのですが、島民は「名前は残るし、合併といっても予算がつくわけでもない」と冷めた様子。そこの温度差を描くあたり、湊さんの人間観察眼が表れているなあ、と思います。

     島というのは言ってみれば共同体なわけで、そこにはいいところも悪いところもあります。「夢の国」の古い家思想に凝り固まった祖母、「蜘蛛の糸」の主人公が成功者になったとたん、デリカシーもなく近づいてくる島民たち、
    そうした人が近いゆえの息苦しさも描かれます。

     その一方で「海の星」、「石の十字架」といった人間関係が近いゆえに生まれた謎と人間関係も描かれます。

     人間の暗い面の描き方もさすが湊さんという感じですが、「海の星」「石の十字架」「光の航路」、そういった人の優しさや切ない真相が描かれる短編も佳作揃いです。「蜘蛛の糸」も息苦しさもあるものも、真相が明かされるとまた見方が変わります。

     やっぱり湊さんといえば『告白』で描かれた”イヤミス”のイメージが強いですし、まだまだその切れ味の鋭さは健在ですが、
    徐々に人間の優しい面、切ない面を描いた作品でも印象的な作品が増えてきていて、ますます湊さんの今後の作品が楽しみになってきています。

    第65回日本推理作家協会賞短編部門「海の星」

  • 友人に借りて読みました。6つの短編小説が入っています。湊かなえさん本人の出身地をイメージして書かれてものなのでしょうか。6つは全て別々の話ですが、どれも瀬戸内海に浮かぶ閉鎖的な島の中に住む人の物語。主人公の行動や発言にはどれも共感できるものが多く、幼い頃の島での生活と大人になった自分を掛け合わせた話が多く感じた。いつの時代もも親は子を思い、小さい頃には気づけなかったその有り難みを大人になって気づき、自分の子供に伝えていく。何度も読みながら涙しました。

  • 湊かなえの出身地である因島をモデルとする瀬戸内の島に住む人たちあるいは島を故郷とする人たちの6つの短編。読み進めてもなかなかミステリとは気づかないが、終盤になっていずれもその場面に至る秘密が明かされはっとさせられる湊かなえらしいミステリだ。島の人に限らず都会でもどんな社会にでもある妬み嫉み弱い者いじめが描かれ読んでいて苦しくなる。人間ってこんなに残酷で、生きるのは本当に辛いことなのかもしれないと思う。もちろん優しい人も登場はするが。「望郷」というのは故郷を懐かしく思いやる意味なのだが、主人公の誰一人、良い思い出が無い。タイトルの望郷は、手に入れることのできなかった理想の故郷に対する望郷なのだろう。湊かなえ自身の「望郷」と重ならなければと心配になる。

  • 人の醜さとか卑怯さも表してるし
    人の美しさ尊さも表してるのかなと思いました。

    一つの島を舞台にした短編集
    どんな経験したらこんな嫌な母親を表現できるのかと思いました笑

    すっきりもするしどんよりもする湊さんらしい小説家です!

  • 読みきるまで時間がかかってしまった
    おもしろいのもある。

  • 筆者の出身地である因島をモデルに描かれた短編小説集。
    出身地だからリアルか?というと、そういう訳でも無く、逆に湊かなえらしい羽ばたきが薄れてるような気がしない訳でもないような気がしないでもなき。

  • 白綱島という島を舞台に、異なる主人公の話をまとめた短編小説。それぞれバラバラのストーリーだが、白綱島が舞台であることは共通。

    読みやすく軽く読みたいときにはおすすめです。

  • 以前読んだ山女日記もそうでしたが、湊かなえさんの短編集は代名詞でもある「イヤミス」な感じがなくサックリ読めます。島ののどかさに加え、住民の閉塞感と複雑に渦巻く感情の描写はさすがだと思います。「海の星」が読後感も爽やかで一番好きなお話です。

  • イヤミスが苦手なんだけど、ブクログ通信でオススメされてたので読んでみた。
    短編なので読みやすかった。
    「海の星」が一番好きかな。
    やっぱり後味が良いほうが好きなので。


    暗い海に青く輝いた星のような光。母と二人で暮らす幼い私の前に現れて世話を焼いてくれた“おっさん”が海に出現させた不思議な光。そして今、私は彼の心の中にあった秘密を知る…日本推理作家協会賞受賞作「海の星」他、島に生まれ育った人たちが抱える故郷への愛と憎しみ…屈折した心が生む六つの事件。

  • まずまず。
    島出身者は、同様な心境なのだろうか。
    思いがけない展開が良い。
    もっと明るいお話が好き。

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著者プロフィール

湊かなえ(みなと かなえ)
1973年、広島県生まれ。武庫川女子大学家政学部卒。
2005年に第2回BS-i新人脚本賞で佳作入選。2007年には第35回創作ラジオドラマ大賞受賞、「聖職者」で第29回小説推理新人賞を受賞し小説家デビュー。読んだ後に嫌な気分になるミステリー「イヤミス」の優れた書き手として著名。
「聖職者」から続く連作集『告白』は、2008年、「週刊文春ミステリーベスト10」で第1位、「このミステリーがすごい!」では第4位に選ばれ、2009年、第6回本屋大賞を受賞。デビュー作でのノミネート・受賞は、共に史上初。2012年「望郷、海の星」で第65回日本推理作家協会賞(短編部門)、2016年『ユートピア』で第29回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。ほか、直木賞で度々候補になっており、2018年『未来』で第159回直木賞に3度目のノミネート。同年『贖罪』でエドガー賞候補となった。
映画化・ドラマ化された作品多数。特に映画では、2010年『告白』、2014年『白ゆき姫殺人事件』、2016年『少女』、2017年『望郷』と話題作が多い。

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