望郷 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • レビュー :170
  • Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167905231

作品紹介・あらすじ

日本推理作家協会賞受賞! 心に刺さる連作短編集島に生まれ育った私たちが抱える故郷への愛と憎しみ…屈折した心が生む六つの事件。推協賞短編部門受賞作「海の星」ほか傑作全六編。

感想・レビュー・書評

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  •  瀬戸内にある白綱島。島に囚われた人、出て行った人、暮らす人……、様々な人の、島に対する思いを描いた連作短編。

     やっぱり湊さんの、人間心理のひだの描き方の巧さはすごいです!

    「みかんの花」で描かれる、島を出て行った姉の成功を妬む妹の心情の描き方もさすがなのですが、島民と島を出て行った人の、”島”に対する思いの温度差の描き方がまた巧いです。

     白綱島は市町村の合併で、島の市の名前が「白綱市~町」から「O市白綱~町」に変わることになり、島を出て行った人は「故郷が失われる」と嘆くのですが、島民は「名前は残るし、合併といっても予算がつくわけでもない」と冷めた様子。そこの温度差を描くあたり、湊さんの人間観察眼が表れているなあ、と思います。

     島というのは言ってみれば共同体なわけで、そこにはいいところも悪いところもあります。「夢の国」の古い家思想に凝り固まった祖母、「蜘蛛の糸」の主人公が成功者になったとたん、デリカシーもなく近づいてくる島民たち、
    そうした人が近いゆえの息苦しさも描かれます。

     その一方で「海の星」、「石の十字架」といった人間関係が近いゆえに生まれた謎と人間関係も描かれます。

     人間の暗い面の描き方もさすが湊さんという感じですが、「海の星」「石の十字架」「光の航路」、そういった人の優しさや切ない真相が描かれる短編も佳作揃いです。「蜘蛛の糸」も息苦しさもあるものも、真相が明かされるとまた見方が変わります。

     やっぱり湊さんといえば『告白』で描かれた”イヤミス”のイメージが強いですし、まだまだその切れ味の鋭さは健在ですが、
    徐々に人間の優しい面、切ない面を描いた作品でも印象的な作品が増えてきていて、ますます湊さんの今後の作品が楽しみになってきています。

    第65回日本推理作家協会賞短編部門「海の星」

  • 故郷を捨てた人、土地や家族に縛られている人、そこでしか暮らす術を持たない人…
    それぞれの想いが綴られた、離島を舞台とした短編集です。
    何処で暮らそうと家族の呪縛がある家はあるし、離島でなくても育った土地を離れられない人はいる。
    けれども、離島で暮らした人にしか分からない閉塞感ってあるんです。因島出身の湊さんならではですね。

  • 解説にある通り、最初の内はわからない謎が最後にはわかるようになっている点は非常に面白い。ただ一方で、人間のドロドロした側面を見るようで、少々見るのが辛くなった個所もあった。それはある意味できちんと人間の内面を描いているからだろうとは思うけど…

  • 2018.04.02

    瀬戸内海に浮かぶ島を舞台にした愛憎入り交じる短編集

    前半3作はいつもの湊かなえ 後半は。

  • 架空の島「白綱島」を舞台にした短編6編
    読みやすいですが、読みごたえもあって良かった

  • 白網島を舞台にした短編集。
    島の閉塞感、都会への憧れ。
    闇が深くて…さすがだな!って思うけど、湊かなえさんにしては、あっさりめの仕上がり。

  • 湊かなえさんの作品はどよんと重苦しい印象があるが、これは短編集で割合さらりと読めた。6編の中ではやはり 海の星 が余韻も残り後味もいい。全てが瀬戸内海の一時は賑わったが時代の波に抗しきれず過疎化途中のとある島に纏わる人物たちの話で構成されている。湊さんの出身が因島らしいので まさに望郷の気持ちで書かれた かな?!

  • 瀬戸内海の白綱島が舞台の6つの物語
    島に対して色々な思いを持った人々
    ある者は島を出て行き、ある者は島に残り、ある者は一度島を出るが帰ってくる。
    6つの物語主人公ほとんどが島に対していい思い出を持たず成長していく。
    大きくなったからこそ分かる事実や思いが切実に書かれている。

    最後の解説でこの白綱島は湊かなえさん出身の因島がモデルとなっていると書かれていた。
    自分も瀬戸内海に面した街に住んでいるので何か心に響くものがありました。

  • 『みかんの花』、『海の星』、『夢の国』、『雲の糸』、『石の十字架』、『光の航路』の6編が収録された短編集。著者の出身地である因島をモデルにした架空の島「白綱島」という島を舞台にしています。

    子どものときに暮らした島は良い思い出ばかりではありません。大人になった主人公がそれぞれの事情から再訪するパターンがいくつかの編に見られます。小さな島だから、噂はすぐに回る。その噂は何十年経っても振り払われることなく、心ないことをあれやこれやと言われることがわかっているのに、それでも帰郷してしまう人々の心情。

    普通に文芸作品と思って読み進めてみると、立派なミステリー。陰鬱ではありますが、惹かれます。特に日本推理作家協会賞(短編部門)受賞した『海の星』は秀逸。湊かなえといえば長編のイメージの強い人でしたが、短編を書かせても面白い人なのだと再認識。

  • 一言で言ってしまえば、島が舞台の人間模様。瀬戸内海に浮かぶ小さな「白綱島」はどこか寂しい印象です。

    「みかんの花」は25年ぶりに島に帰ってきた姉への葛藤が描かれている。島に残った自分と母は辛い思いをしながら暮らしてきたというのに、姉は都会で自由に生きてきた。だけど姉と母が決して語らないであろう事情を推測し、本当に犠牲になっていたのは誰だったのかを悟る主人公。姉のサバサバ感が物語を暗くし過ぎずにいるのがいい。

    「海の星」では「おっさん」の不器用な優しさの理由が分かったところで切なくなる。海面の青い輝き、私も見てみたい。表紙の絵柄のような感じかしら。

    「夢の国」はまさにDランドの事ですね。遠くの島に住んでいたら、それは特別な場所でしょうね。だけど夢の国は夢に見ているうちが1番いいのだと思います。それにしても支配しまくりのおばあちゃんがいる家で、主人公はよく頑張ってきました。私だったら絶対飛び出している。。

    「雲の糸」「石の十字架」「光の航路」では虐めへの怒りが強く湧いてきます。子供は時に大人より残酷になる。大人になっても人の痛みを想像出来ない人もいる。雲の糸、石の十字架、光の航路はどれも、登場人物たちの弱った心を救ってくれた。

    この本、選考委員全会一致で日本推理作家協会賞受賞したそうです。心の深い部分に落ちてくるような小説でした。

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