望郷 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 4312
感想 : 310
  • Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167905231

作品紹介・あらすじ

日本推理作家協会賞受賞! 心に刺さる連作短編集島に生まれ育った私たちが抱える故郷への愛と憎しみ…屈折した心が生む六つの事件。推協賞短編部門受賞作「海の星」ほか傑作全六編。

感想・レビュー・書評

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  • いやぁなんとも美しいお話でした。
    ただ勝手に連作短編集かと思っており「みかんの花」でのサスペン臭を起承転結の「起」なんだと、
    さてこれからどんな悲劇が待ち受けているの///
    と、壮絶な勘違いをしながら読み進めておりました。

    完全別物のお話に共通する「島」のワードに
    これとこれがどう繋がって〜( *¯ ꒳¯*)♪んふふ
    とまぁ事前に調べなかったせいでとんだ間違った楽しみ方をしてしまい大変勿体なく思います。
    でもさ、作品説明は読んでるんだからそこに「短編集」って書いてくれたっていいじゃないか...(小声)

    ......(´ρ`*)コホンコホン
    最初でも申した通り美しいお話が多く
    受賞作「海の星」は読み終えてからの表紙とのリンクに柄にもなくロマンチックな気持ちになりました。
    実を言うと後半はモチベが下がってしまいアプリゲームのオート機能をポチポチしながらのながら読みになっていたのですが...シ━━━ッd(ºεº;)
    「光の航路」では涙を浮かべ携帯画面に戻ると引っ込み、また文章にウルウルして..を繰り返すなんとも情緒不安定な楽しみ方をしました(笑)

    サイコ大好きサイコちゃん(自称)には綺麗過ぎて物足りませんでしたが、たまにはこんな作品も...と新鮮な気持ちで
    グレーに荒んだこの心も0コンマ一瞬綺麗になったような気がします^ ^

  • 島が舞台となった6つの短編集。

    著者の柔らかい方の思考で描かれた作品といった印象で、どのストーリーも結末が美しくて、美し過ぎて、私には少々物足りなかったが、「海の星」の話は久々に琴線にふれた物語であった。

  • 旅というものに何を求めるでしょうか?どうしてその場所を目的地として選んだのでしょうか?もしその旅に、日々の生活の疲れを癒すため、現実逃避がしたいとを心が求めている、そういう場合には、日常との落差を感じさせる場所を敢えて選ぶように思います。でも実際に訪れて、そこに普段暮らす日常と変わらない風景があったなら、日常の象徴であるコンビニが同じようにあったなら、一気に興を削がれると感じるかもしれません。これが一過性の旅人であれば次回はもっと違う場所にと、行き先を変えることができます。でも、それが故郷を後にして、例えば東京で暮らす人だったらどうでしょうか。故郷をどう思うかは人次第だと思います。過去と今を比べて、どちらが輝いていると感じるかでも変わってくるでしょうし、過去に苦い思い出があれば、幾ら美しい風景でもどんよりと陰ったもの以上には見えないでしょう。一方で昔は良かったと感じている人は、過去の記憶に縋りたくなります。過去が変わってしまうことが、過去の幸せだった記憶まで変質させられるように感じてしまうこともあるかもしれません。でも、故郷を離れ、東京で暮らす人の気持ちはどれだけ大切なものなのでしょうか。故郷が変わる、離島だった島が本州と繋がる。その時、『無駄に騒いだのは、島外に出て行った人たちだ。』普段生活をしている人でなく思い出に生きる人が守ろうとする島、故郷。『故郷を守りたくないのか?それなら、あんたが島に住んで税金を納めろ。』相反する利害の対立。『出て行った人たちはお気楽なものだ。白綱島は昭和なんとか村というアトラクション施設ではない。人間が生活をしている場所なのだ。出て行った人たちに、ノスタルジーがどうの思い出がどうのと、文句を言う権利などない。』そこに暮らす人の視点、思い、複雑な感情を背景に物語は展開します。

    湊さんの出身地である因島をモデルにしたとされる白綱島。都を追われ、失明したお坊さん。暗闇の中に一本の白い綱が見えた。それを辿りながら歩き続けた先、白い綱が海に向かって伸びていった先にあったとされ、かつては造船で賑わった島。高校時代に駆け落ちして島を出て売れっ子作家になった姉の25年ぶりの凱旋帰郷。認知症になった母と島に残った妹。久しぶりに帰った我が家で姉が料理を作ると言い出します。それに対して『やめて。出て行った人に、台所に立たれたくない。』と叫ぶ妹の複雑な感情・思い。でも本当の真実はそれとは全く異なるところにあった衝撃の結末。〈みかんの花〉というどこか甘酸っぱい章題、ノスタルジーな風景に隠された25年前の真実。最初の章からすっかり魅せられてしまいました。

    〈みかんの花〉を含め六つの短編から構成されたこの作品。白綱島を舞台にちょっとミステリーな物語がそれぞれ展開します。いずれも今と過去の二つの時に光を当て、その対比、その繋がりが巧みに描かれます。舞台となる白綱島の風景がそれぞれの章で少しづつ丁寧に描かれていることもあって、読み終わる頃にはこの島の過去と今の情景がそれぞれが浮かび上がってきました。

    もう一点、〈光の航路〉では、いじめについても取り上げています。『誹謗、中傷、窃盗、暴力、行きすぎたこれらの行為は大人がやれば犯罪とされるのに、子ども同士で起きれば、平仮名三文字の重みのない言葉で誤魔化される。』という視点。同じ子どもでも街中でこれらの行為を行えば犯罪とされるのに、全てが『いじめ』の三文字と共に聖域化されてしまう不思議な場所・学校。そんな聖域で受ける仕打ちに声をあげられない『いじめられる側』。湊さんは『誰かに相談するということは、いじめられっ子であるのを自分自身が認定するということだ。』と書きます。多くの作家が一度は取り上げようとする題材『いじめ』。それは、大半の大人が過去に過ごした聖域の中で何かしら目にした、関係した光景だから、そしてこの先も決してなくなることのない永遠のテーマだからなのだと思います。そこかしこにある目の怖さ、閉塞感のある日常を舞台に、かつて高校の先生でもあった湊さんのリアルな描写が胸を苦しくしました。

    色々な視点からの六つの短編、人の心の闇を描きつつも、それでいてみんなどこか前向きであることが共通していたさわやかなミステリー、湊さんってこういう作風なの?そんな印象も持った読み応えのある作品でした。

  • よくテレビで田舎暮らしの特集をしていて、ゲストの芸能人が「羨ましい!私も住みたい」などといっているが、閉鎖的で迷信深いという負の面があることを知っているのだろうか⁈
    そんな裏の顔を作者の故郷、因島(白綱島)を舞台に書き綴った短編集。
    あまり好みの作家ではないといままで感じていたが、この一冊は心に響いた。辛い状況に陥っている人に勧めたい傑作だと思う。

  • 白綱島で生まれ育った主人公たちが成長して、それぞれの生い立ちや、島での生活で抱えてきた、謎や不満や後悔等々を、再び白綱島に関わることで解決したり、納得したり、思い直したり…。

    23区内出身の友達は、実家のある生まれ育った所を「故郷」とは言わないから、生まれ育った所が田舎だから「故郷」というキレイな言葉が当てはまるのかもしれない。
    あの田舎ならではのモヤモヤを私も主人公たちのように抱いていて、なんだかどの短編も共感出来た。

  •  瀬戸内にある白綱島。島に囚われた人、出て行った人、暮らす人……、様々な人の、島に対する思いを描いた連作短編。

     やっぱり湊さんの、人間心理のひだの描き方の巧さはすごいです!

    「みかんの花」で描かれる、島を出て行った姉の成功を妬む妹の心情の描き方もさすがなのですが、島民と島を出て行った人の、”島”に対する思いの温度差の描き方がまた巧いです。

     白綱島は市町村の合併で、島の市の名前が「白綱市~町」から「O市白綱~町」に変わることになり、島を出て行った人は「故郷が失われる」と嘆くのですが、島民は「名前は残るし、合併といっても予算がつくわけでもない」と冷めた様子。そこの温度差を描くあたり、湊さんの人間観察眼が表れているなあ、と思います。

     島というのは言ってみれば共同体なわけで、そこにはいいところも悪いところもあります。「夢の国」の古い家思想に凝り固まった祖母、「蜘蛛の糸」の主人公が成功者になったとたん、デリカシーもなく近づいてくる島民たち、
    そうした人が近いゆえの息苦しさも描かれます。

     その一方で「海の星」、「石の十字架」といった人間関係が近いゆえに生まれた謎と人間関係も描かれます。

     人間の暗い面の描き方もさすが湊さんという感じですが、「海の星」「石の十字架」「光の航路」、そういった人の優しさや切ない真相が描かれる短編も佳作揃いです。「蜘蛛の糸」も息苦しさもあるものも、真相が明かされるとまた見方が変わります。

     やっぱり湊さんといえば『告白』で描かれた”イヤミス”のイメージが強いですし、まだまだその切れ味の鋭さは健在ですが、
    徐々に人間の優しい面、切ない面を描いた作品でも印象的な作品が増えてきていて、ますます湊さんの今後の作品が楽しみになってきています。

    第65回日本推理作家協会賞短編部門「海の星」

  • どっちかが正しければ、どっちかが間違っているわけじゃないと思う。
    ナイフになる「がんばれ」と、ナイフにならない「がんばれ」なんて、最初から区別できるわけがない。

  • 「山猫珈琲 上」が私には相性が悪かったが、その一冊だけで湊かなえ氏を合わないと決めつけるのはいけないと思いこの本を読んでみた。

    島の田舎の狭い暮らしの中で、駆け落ちとかいじめとか親子関係など憎しみの物語が実は悲しい現実でしたみたいに終わる所が面白かった。
    感情的であったり察する部分であったり女特有の面倒くささが物語の鍵になっている。

    先が読めてしまったところが少しあったが、読みやすかった。
    登場人物が意地悪だったり不器用だったりで惹かれる人はいなかったが、アジフライには相当惹かれた。

    小説を読んで、人間って良いな…人生って良いなと思いたいから、湊かなえ氏のポジティブver小説があれば読んでみたい。

  • 重い閉塞感。濃密過ぎる人間関係。「島」という地形には独特のものがあるのだろうか。
    事件はどの作品でも起こる。しかし読後感はスッキリ。
    これはイヤミスではない。
    「イヤミスの女王」の作品と思っていると肩透かしを食らう。
    それでも、これはこれで面白い。

  • 読みはじめてドラマ化していたと思い出した
    良いドラマだった記憶がある。
    1話目「みかんの花」出ていった人と残った人の間にある望郷の溝のくだり、私も故郷を離れた身としてグッとくる。どちらの感情も間違いでは無いような。事件は起きているからミステリーであり犯人もいるのだけれど、そこは糾弾する話ではなく、あくまでも「望郷」に徹しているのが良い。

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著者プロフィール

1973 年広島県生まれ。2007 年「聖職者」で小説推理新人賞を受賞。翌年、同作を収録した『告白』でデビュー。本著は、「2009 年本屋大賞」を受賞。12 年「望郷、海の星」(『望郷』収録)で日本推理作家協会賞短編部門を受賞。16 年『ユートピア』で山本周五郎賞受賞。18 年『贖罪』がエドガー賞ベスト・ペーパーバック・オリジナル部門にノミネートされた。その他の著書に、『少女』『高校入試』『物語のおわり』『絶唱』『リバース』『ポイズンドーター・ホーリーマザー』『未来』『落日』『カケラ』などがある。

「2021年 『ドキュメント』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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