慟哭の谷 北海道三毛別・史上最悪のヒグマ襲撃事件 (文春文庫)
- 文藝春秋 (2015年4月10日発売)
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感想 : 101件
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Amazon.co.jp ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784167905347
作品紹介・あらすじ
1915年12月、北海道苫前村の開拓地に突如現れた巨大なヒグマは、一軒の民家に押し入り、阿部マユと預かり子の幹雄を惨殺。村人たちは恐怖に震えながらも、ヒグマ退治に乗り出すが、冬眠しそこねて〝穴持たず〟となり凶暴化したヒグマは、悪魔のような知恵を働かせて、村人たちを次々と牙にかけていくーー。
死者8名という世界的にみてもヒグマによる食害事件としては類をみない最悪の惨劇となった「三毛別(さんけべつ)事件」の全貌を、生存者たちへの貴重な証言をもとに描き出す戦慄のノンフィクション。文庫化にあたり、著者の『ヒグマそこが知りたい 理解と予防のための10章』より、著者自身のヒグマとの遭遇事件、さらに福岡大学ワンゲル部の日高山系におけるヒグマ襲撃事件、写真家・星野道夫氏の事件など別のヒグマによる食害事件を検証した二章を特別収録!
みんなの感想まとめ
人間とヒグマとの恐ろしい遭遇を描いた本書は、北海道三毛別で発生した史上最悪のヒグマ襲撃事件を中心に、熊害や食害の実態を詳細に検証しています。著者は元林務官として、感情に流されることなく証言や証拠に基づ...
感想・レビュー・書評
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獣害史上世界最悪とされる北海道三毛別のヒグマ襲撃事件を中心に、熊害・食害がしっかり検証されている一冊。
様々なマスメディアによって繰り返し取り上げられてきた有名な事件ですが、視聴者や読者が衝撃を受ける部分に焦点を当てたものが多かったと思います。
元林務官である著者は感情論を持ち出さず、証言や証拠から得られた事実を検証することに専念しています。
それによって明らかになるのは、悲惨な結果のほとんどが熊の生態に対する無知に起因しているということです。
人間が捕食者から被食者となること、それは映画や小説の中の話でなく現実で起こり得ることなのです。
著者は無知の状態で森林や山へ入る人が多いことを嘆き、これまでの事件を無駄にせず今後の対策として本書が活用されることを望んでいます。
間違いなく良書であり、後世に残すべき内容でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2022年に今年こそは読みたい本にリストしていてやっと今読みました。
この本は吉村昭氏の「羆嵐」の題材にもなった事件を詳細に調べて書かれたものでした。
私も道産子だし、昨年は実家に最も近い高校に羆出たりもしてるので羆にはアンテナはってます。
一つの事件だけじゃなく、著者の遭遇した(著者は林務官)事件から、カムチャッカで亡くなった動物写真家星野道夫さんの話まで羆の生態から襲撃の詳細を記し私たちに警告をならしています。
羆は日本では北海道にのみ生息していますが、本州の熊だって怖い。これから入山する人は読んでおくといいと思います。 -
羆(ヒグマ)への畏怖しかない。
1914年に北海道の北西部で起きた史上最悪の熊事件。2人を惨殺し、その通夜の現場にもカチコミ、計8人(臨月の妊婦のお腹の子供も犠牲に…)の命を奪った羆との闘い。
事件自体は早々に書き終わり、他の熊事件も語られるが、それのいずれも恐ろしい。勝てるはずがない。交わるべきではない二つの個体。畏怖を持って接し、自然の中では自然の生き物に従うしかない。抗う力を持たざるものは近づいてはならん。 -
吉村昭『羆嵐』の原型となったノンフィクション。これが本当に起こったとは。
羆の犠牲者の通夜をしている家に羆が再び襲いかかる。人間にとっては遺体だが、羆には獲物であり奪われた獲物を取り返しに来るのは当然のことなのだ。逃げ惑う人びと、妻の背中を踏みつけても天井裏に逃げた夫を責めることは出来まい。
怖い。実話だから怖い。 -
三毛別の事件の迫力と緊張感がすごかったのはもちろんのこと、写真家星野道夫さんの事件や福岡大学ワンゲル部の事件にも触れていて、とても読み応えありました!面白かったです
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先日NHKで放送された、北海道三毛別(さんけべつ)で起こった、立て続けに人々を食い殺したヒグマの番組を観て、そのヒグマの恐ろしさに圧倒され、もっと詳しく知りたいと、こちらを図書館で借りてきました。
これを書かれたのは、その被害のあった地域を管轄とする営林署に配属になった方。
もう事件から何十年も経っていましたが、被害者の家族や事件で生き残った方たちで、道内あちこちに散らばってしまった方たちから丁寧に聞き取りをし、当時の記録や新聞などの報道と事実関係を照らし合わせられています。
大きく2部構成のようになっており、前半は物語のように事件の始まりから事件の終わりまでが語られ、事件の考察、登場人物の詳しい紹介、事件後の現場についてが描かれ、後半はヒグマについて書かれています。
ヒグマは個体差はありますが、多くの種類のクマの中でも特別に大きいのです。この事件のヒグマは体調3mほどあったそうです。そんな大きさのクマ目の前に立ちはだかったら…と思うと、本当に恐ろしい。
北海道の山奥を開墾して過酷な生活を送ってきた人たちに襲った、このまるで架空の物語のようなことが、実際の事件だったなんて、信じられません。
北海道では、昨年(2021年)札幌の比較的中心の住宅地でクマが出没し、歩行者を襲ったニュースがあり、また今年(2022年)も最近、札幌市内の登山道にクマの巣穴が見つかり、巣穴を調査した調査員が襲われる事件がありました。
札幌のような街なかでも毎年出没するようになったヒグマ。私たちは恐ろしさと習性を理解し、共生しながら対策を考える必要があると思いました。 -
吉村昭「羆嵐」や、戸川幸夫の作品、その他いくつかの作品の元ネタになった。
三毛別熊害事件について、たった50年しか経ってない時に書かれたので、まだまだ生存してた事件の直の関係者に取材してる。
しかし実は三毛別事件の記述は実は半分以下。少ない。その他の様々なヒグマ事件に関する記述が興味深い。福岡大サークルの事件や、星野道夫の事件(テレビ番組の取材中の事件だったとは知らなかった。すごく好きな番組だったけど)についても記されてる。
著者自身、営林官として北海道の山林を歩き回って何度もヒグマに遭遇し、時には危うく自分も襲われそうになったこともあると。
ヒグマについてのトリビアもあるけど、…火を恐れない、大声出してても熊除けにならない、人間の数が多くても近づいてくる、熊除けスプレーも役に立ってない、などと、…あんまり助言になってない…
全体、詳細で興味深いんだけど…オカルト話が紛れ込むと一気に信憑性が薄れるので、どーにかならんものか…「驚くべき偶然の一致が!」て、それ、牽強付会ってヤツでしょ?後知恵バイアスだの確証バイアスだのってヤツでしょ?
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羆、怖い。怖すぎる。
「熊嵐」や「シャトゥーン」も怖かったけど、やはり実録に勝るものなし。 -
吉村昭の小説熊嵐が下敷きにした北海道三毛別部落のヒグマ襲撃事件。開拓民を襲った悲劇。
元林務官の手になるノンフィクションで熊の習性も詳しく書かれている(よく知られている火を恐れる、大勢でいれば襲われないなどが本来はあてはまらない)。
大正、昭和初期の北海道は熊と人と戦いがあった。但し2000年代でもゼロではない。 -
熊ブームに乗って再読。2015年に羆嵐からの流れで読んでいた。やはり怖い。
臨月である斎藤タケの「腹破らんでくれ!」「喉食って殺して!」が一番怖かった。
改めて読み返すと、林務官である著者が1920年生まれと昔の人なのに、文章がとても読みすいことに驚いた。平易な文章と漢字で、分かりやすく丁寧に事件の詳細が述べられている。 -
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この本は、吉村昭が『羆嵐』を作る際に、参考資料としたものである。
第一部の三毛別の羆事件に関して。木村氏が、事件の真相を知る被害者家族に丁寧に取材を行ったことにより、それまで詳しく分らなかった三毛別事件の詳細が記されている。実際に羆がどのように家の中を歩きまわり、人を次々と襲撃したのか、詳細に図示されており、リアルな恐ろしさを感じた。
第二部ではヒグマとの出会いということで、林務官としての木村氏が関わったこれまでの羆の情報を詳細に書き記したものである。特に木村氏が北千島でヒグマと遭遇した際の話は、当事者だからこそ書けた本当に恐怖の内容だと思う。
本文は話ことばのように丁寧で、木村氏の温かい人柄がうかがえる。
この本を通じて、ヒグマの教訓を後世に伝えたいという、木村氏の気持ちがよく理解できた。 -
熊害事件の実録もの。これをベースに名作が生まれ。当該事件の記録や、その他の事件の記録は興味深く読めた。苦労話はどうだったかな。
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吉村昭の羆嵐を読んでいたが、あれは本書をもとにして書いたとのこと。たまり本書は資料として一級品であろう。
内容は図絵を多数用いており、理解がしやすい工夫がある。
読了 45分 -
吉村昭『羆嵐』の原型となったノンフィクション。
実際に起こった事件だと『羆嵐』で知っていたものの、改めて、事件後50年後に書かれたものだけに、その凄惨が伝わる。
しかし、本書は、事件の概要がすべてではない。
むしろ、本書の後半のほうが興味深かった。
筆者が取材過程で、あるいは、実際に体験した羆の生態、三毛別以外のヒグマによる食害事件についての詳しい記述が書かれた後半部分が、羆の恐ろしさが伝わってくる。 -
ところどころ読みづらいが、事件の様子が克明に描かれている。三毛別羆事件のみならず、多くのヒグマ事件について触れられている。
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熊が身近にいない地域の者として、一度読んでおこうと思った本。想像以上に恐ろしい。野性動物との共存、とかいうレベルの話ではないな…。獲物と認識される前にその性質を理解し、こちらが用心するしかないのでは…。とても人間が太刀打ちできる存在ではないとよーくわかった。
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私が初めてヒグマを見たのは昭和新山熊牧場。牧場には「人のオリ」というのがあり、そこへ入った時にヒグマが私の存在に気づき檻に近づいてきた。その顔の大きさを見た時「なんて大きいんだろう」と感じ、とてもじゃないが人間が勝てる相手ではないと思った。
この本は「三毛別羆事件」や「福岡ワンダーフォーゲル部ヒグマ事件」「星野道夫ヒグマ事件」やその他の事件を取り上げ、また、元林務官の著者の体験も書かれているが、そこが1番印象に残っており、ヒグマの恐ろしさを改めて認識した。
人間とヒグマとの距離が近づいてしまったらもうそれは、「異常な熊」であり、ましてや道外にいる、熊との遭遇にほぼ縁のない人が言う「撃ち殺すのはかわいそう」「麻酔銃で山に返すことは」なんて悠長な事は言ってられない。
酷な事を言うが、様々な事件からヒグマの習性が分かり、それを知らずに起こした人間の行動が教訓となり、現在未然に事故を防ぐ事も出来ている。現在、知床など自然に行く観光客がヒグマに近づきすぎているという話を見たが、事故を起こさないように、
人と熊が共存する為に習性を理解し、クマが住む山に“入らせてもらう”という感覚で、互いに適切な距離をとれるようにしたい。
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読み物としての面白さは、この本を引用した羆嵐に劣る。しかし、多角的、また俯瞰的に羆を捉える本書には、リアリティがこれでもかと詰まっている。
先日札幌市街に出没する羆が報道され続けたが、この人慣れした羆はヤバイ、と感じることができた。 -
吉村昭著「羆嵐」を先日読了し、今度はこの「慟哭の谷」を読むことにしました。羆嵐は、この慟哭の谷を基にして書かれた小説ですが、この本はノンフィクションですので、内容の凄まじさは相当なものでした。
三毛別羆事件での生存者の証言も、興味深く読ませてもらいました。また、三毛別以外のヒグマによる食害事件についても詳しい記述があります。
こんな恐ろしい野性動物が身近にいると思うと戦慄します。
木村盛武の作品
