フルーツパーラーにはない果物 (文春文庫 せ 11-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167906153

作品紹介・あらすじ

自分を果物にたとえたら……四者四様の恋が動き出す「フルーツパーラーにない果物はなんでしょう」その質問をきっかけに、四人の女性は自分の恋愛を振り返る。甘酸っぱい連作短編集。

感想・レビュー・書評

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  • タイプの全然違う4人の女性。だけど、皆どこか自分のことが好きじゃない。
    ある日皆で行ったフルーツパーラーでの「果物占い」をきっかけに、自分を変える恋をしてゆく連作短編集。

    どの話もとても面白かったです。
    キャラクターとしては”王道イチゴ女子”の真衣が、どこまでも「女の子」で不器用で、でも面倒見が良くて可愛いなと思いますが、ストーリーは”引き立て役レモン”のモリッチの話が好きですし、”個性派パイナップル”の絵野川の男性観には共感しました。”高級で箱入りの桃”の玲奈の話は、他の三編からは見えない彼女の秘密にびっくりします。
    恋だけではなく、友情もおろそかになっていないのがまた良いです。

  • 表紙やあらすじをみると、よくある恋愛小説とか女の友情話に見える。
    でもすごいリアルな葛藤ややるせなさが描かれている。
    言葉選びや行間がとてもいい。何かに苦しんでる女性の力になる小説だった。
    面白い!!

  • 学生時代だったらきだと仲良くはならなかっただろう、という同性とも、社会人になったら否応なく付き合わなければならない。そのなかで、ここまでわかちあえる友達になれる相手がいれば、それはとても幸運なことだと思う。どの女性の話も共感できる部分がある。1番キュンとしたのは理系女子で、いまの自分に近く感じたのは桃の彼女、何年か前に読んでいたらイチゴの女性に思い入れがあったかもしれない。傷も汚れもすべてひっくるめて生きていくしたたかさ。

  • *かわいい形をしていて誰にでも好かれるけれど、すぐに飽きられるイチゴのような女の子。でも、こんな自分になりたかったわけじゃないのに―。今の自分がどこか好きになれない。メーカー勤務の四人の女性たち。二十代後半の彼女たちが出会った、人生を変えるかもしれない恋愛と友情を描く連作短篇集*

    面白かった!お話自体は一見ありがちな設定ですが、若い女性の揺れる女心が緻密に描かれています。フルーツ占いをきっかけに、そのフルーツに例えた自分を見つめ直す流れも自然で効いています。自分が嫌いで、人を羨ましく思って、でも、やっぱり自分を捨てきれなくて好きになりたくてもがいて…そんな甘酸っぱい女子の迷いや葛藤がぎっしり詰まっていますが、タッチが軽いのでさらさら読めます。第5話で物語がキレイに収束するので読後感も良し。なんだか懐かしく、頑張れ若人!と応援したくなる本。

  • 面白かった。でも、どの子もわたしにはなれない姿。
    イチゴみたいにみんなから愛されないし、レモンみたいにスパイス的な存在にもなれない、桃みたいに美しく手を出したくなる存在でもない。
    もちろん強烈な艶やかさを持つマンゴーでも、可愛らしいさくらんぼでもない。
    強いて言うならパイナップルかな。
    でもシロップ漬けされて、食べやすくもなれないんだ。
    そうだな。わたしはアボカドかな。
    一応、果実なんだろうけどスイーツには中々選ばれない。熟せば柔らかくて食べやすいけど、女の子には好かれるけど、あんまり男の子には好んで食べられないよね。
    きっとアボカドもそんな立場をわかってるし、スイーツみたいに食べられたいとは思ってない。
    フルーツバスケットに憧れるけど、入れるとは思ってないし、入ったところで浮くのもわかってる。
    でも、やっぱり誰かには選んでほしいな。

  • 大手メーカーに勤務する、同期の女性4人。
    それぞれタイプの違う彼女たち、四者四様の恋と生き方を描いた連作短編集。

    第一話「イチゴになりたかったわけじゃない」
    言い方悪いけど、イチゴ=量産型女子!って感じで、まさにありふれた話だった。
    たしかに強烈な個性を持つ“マンゴー”には太刀打ちできないかもしれないけど、それでも最後に選ばれるのはやっぱり王道のイチゴだと思うけどなぁ。
    だいたい個性って、意識したところでそうそう出せるもんじゃないから。むしろイチゴの安定感って、けっこう貴重だと思うよ。

    第二話「気がつくとレモン」
    この話がいちばん切なかったわー。
    結局いつだって、(あざといってわかってても!)わかりやすく可愛い“さくらんぼ”がモテちゃうんだから、やってられんわー。笑
    でも、世の中いちばん頑張ってるのはレモンみたいな子だからね。報われてほしいなぁ。

    第三話「パイナップルは傷つかない」
    まだ途中なのに、なんだか総括的な話だった。
    この、恋がはじまりそうな感じ~で終わるところがいい。

    第四話「ピーチだったことは忘れて」
    いちばん共感できなかった話。なぜこのお嬢様は、二股かけてることに微塵も罪悪感がないのだろう?と思って…。だけど、いちばん考えさせられた話でもあった。
    現状から逃げたかったわけじゃなくて,納得できる形で受け入れたかった~という台詞に、ハッとさせられた。たぶん、他の女性たちにも当てはまることだと思うし。
    もう綺麗な桃じゃないってことを自分だけが知っていて、その秘密を隠し通さなければいけない…だけど、秘密を持ったことで、これからどんなときも自分らしくいられる~という結論が、なんとも深いなぁと思った。

    第五話「フルーツパーラーにはない果物」
    それぞれの後日談。
    みんな自分にはないものを求めて憧れて…だけどそんな自分のことも、やっぱりどこか憎めない。
    今までもこれからも、自分は自分と生きていくしかないのね~という感じのまとめ。

    恋愛についてどうこう~というよりも、女の生き方と友情について再確認できた作品だった。

  • 女の子って本当にめんどくさいし、ずるいし、ねちっこいし、不安定だけど、輝いてるし、可愛いし、結局自分が好きだし、面白いし、美しい。

    自分はなんのフルーツか考えたけど、答えが出なかった。だって私自身だもん。フルーツパーラーにはない果物って。それがなんなのかなんて確定しなくていい。ただ酸っぱく甘く、苦く強く生きていければいいんだと、この本を読んで思った。

    読んでてずーーーーっと心がぎゅうぎゅう締め付けられたけど、楽しくてワクワクして、女の子として生まれてこれたの本当に楽しい!って思った。
    自分自身を見つめすぎるとよく分かんなくなるし、『自分』というレッテル(ラベル)で包まれて分からなくなるけど、結局自分が好きなんだと気づく。この本はたいせつだなぁ

  • 皆それぞれに個性があって魅力的なのに、自分で気付いてなくて他の人を羨んでいるのでもったいないなぁと思う。恋もそれぞれに違っていて面白い。

  • フルーツパーラーの果物に主人公たちを例えた、4通りの恋のストーリー。親近感があったのは「パイナップルは傷つかない」。グループに馴染めない、人から変わってると言われる、拗らせた主人公。恋の幸せな結末はなかったけれど、清々しい終わり方で読みやすかった。 ジメっとしてない恋のストーリーなので、個人的に好きな一冊。

  •  私には、何とも言い難い内容。4人の女性の恋愛物語だが描写が細かすぎて自分の想像の世界に入り込めなかった。
     私の場合、何故本を読むのか…想像を掻き立てられるのが好きで読むのかと改めて思った。

  • 四人の女性の恋愛と友情を描いている。この作家は何度読んでも女性でないかと思ってしまう。
    プロフィール等検索しても、詳細はわからない。
    この作品は極端な表現や展開(私だけがそう思っているかも)が多いがそれぞれの個性がうまく噛み合って面白かった。
    お嬢様の展開が特に意外な展開だったかな

  • 恋愛と友情の物語。自分を果物になぞらえて、性格や生き方について考える女性たち。

    自分にはない特徴を羨ましいと思っちゃう。それは当然みんなにあることだと思う。

    でも、自分にある特徴もそれと同じくらい評価できるといいと思った。
    それに、みんなが同じ特徴ばっかり持ってたらつまんなくない?違うという時点で、もうすでに価値があるのでは、と思った。

    ちなみに、フルーツ占いって調べてみたら水晶玉子さんっていう人の占いが出てきた。
    私は梨だった。
    結構当たってたかも

  • 2021.08.29

  • 周りにはいろんなフルーツがいるからコンプレックスが浮き彫りになって、自分に自信が持てなくて他のフルーツが羨ましくて仕方なくて……そんな苦しさとか男性の程よい無神経さとか、読みながらそのリアルさに苦しくなっちゃいました。だけど、読み終わるときにはちょっと前を向けるようないい作品でした。

  • なんか順番に闇が深くなってく感じが。でもなんといっても友情がいい。

  • 4人のお年頃の女性がフルーツパーラーにある沢山の種類のフルーツのようにそれぞれの恋を経験していくお話。
    それにしてもこの作家さん、一つ小説を書く度に色んな情報を収集するのはすごいと思う。
    安心して読める作家さんではある。

  • 可愛い表紙だけど、内容は結構シビア。面白かった。

  • 私は果物に例えるならパイナップルだと思う

    人生とはどう生きるのが美しいかを問い続けることだと思う。
    美しくあることは自分の誇り。
    だけど気がつくと誇りは義務にすり替わって、生きている私の方が、生き方に押しつぶされそうになるときがある。      に共感。

  • パイナップルのヒノカワと瀬尾のカップリングは好きだね。なんか私みたい

  • 鋭く刺さるワードがたくさん。
    ほのぼの読んでたけど、後半の展開にびっくりした~。

    読みやすかった!

  • 女子特有の話。
    読んでいても読み終わっても、悪い気持ちにはならない

  • 最近本を読んでいない、と思って地元の本屋で何気なく手に取った作品。短編で恋愛モノで、夏向きかなと思ったけどイマイチのめりこめなかった。
    4人のOLがそれぞれ主人公だったが、考え方も恋愛のやり方もどうも子供っぽい。理解はできるけど、共感はできない。フルーツ占いをきっかけに自分のことを見つめ直すストーリーのためか、キャラクターが極端すぎるようにも感じた。
    それぞれの出す結論は分かりやすいものだったが、その場しのぎでは?と不安になる。私が彼女たちと同じ職場の同期だったら、本当に同世代かな…と思ってしまいそう。
    読みやすさは保証します。

  • 自信がなくて、あと一歩を踏み出す勇気がなくて、女であることをこじらせているモリッチと桧野川には少しだけ共感できた。
    真衣は…共感は出来ないけれど憎めない。
    女の子としてはきっと真衣が一番正しいんだろうなと思える。
    だけど、玲奈。彼女だけは、女というものはこうも醜くなれるものかとゾッとした。
    すました表情をして、自己肯定のためだけに他人の気持ちを弄んで、自分で刻んだ傷に酔っている。
    人間はこんなにも自己愛の塊になれるのか。
    彼女が「美しさ」を語るなんて吐き気がする。
    玲奈の話がなければ心地よい読後感だったのに、残念。

  • 気持ちはわかるんだけど、気分転換に読む本ではない。
    どろどろした内面の吐露に読んでいると気分が悪くなるので、どういうときに読んでいいかわからない。

  • 確かに自分のことが嫌いで、他人が羨ましくても、誰かと丸ごと取り換えるのは嫌だと思う。不思議。

  • 2016.08読了。

  • もっとキャピキャピして、ザ・女子!って感じであまり好きになれないかもなーっていう先入観で読み始めたけど、そうでもなく、なかなか深いところを突いていると思った。20代女性の恋愛を軸に進むけれど、恋愛を通しての成長ストーリーなのでそこまでベタな恋愛小説ではない。全5章で書かれていて、すべて話者が別だけど全部が繋がっている。なるほどそういうことね、と、読み進むうちに視界が開けていく。

  • かわいい形をしていて誰にでも好かれるけれど、すぐに飽きられるイチゴのような女の子。でも、こんな自分になりたかったわけじゃないのに―。今の自分がどこか好きになれない。メーカー勤務の四人の女性たち。二十代後半の彼女たちが出会った、人生を変えるかもしれない恋愛と友情を描く連作短篇集。

  • フルーツパーラーにはない果物は?

    とある日、同期入社の4人で行ったフルーツパーラーで問いかけられたクイズに、それぞれが一年間自分の中で問答し、1年後の同じ日に答え合わせをするはなし。
    結婚適齢期の彼女たちの気持ちは自分にも当てはまるものばかりだった。
    だからこそ、終わり方がチープすぎる感じがして残念だったな。

  • 今の自分がどこか好きになれない、職場は同じだけれど性格も外見も全然違う二十代後半の四人の女性たち。
    合コン女王、お笑いキャラ、理系女子、生粋のお嬢様。
    「フルーツパーラーにはない果物はなんでしょう」という理系女子 桧野川が放った何気ない質問が、彼女たちの中に思わぬ波紋を広げ、一話ごとに一人ずつ自分の生き方を見つめ直していくことになる。
    桧野川の視点に戻る第五話が好き。「私たちはみんな自分のことが嫌いで、いつだって誰かを羨んでいるくせに、人生をまるごと取り替えてあげようかと言われると、悩んだ末に断ってしまうくらい自分に執着している」という一文にどうしようもないくらい心が揺れた。

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著者プロフィール

1983年兵庫県生まれ。2007年に第14回電撃小説大賞銀賞を受賞し、『under 異界ノスタルジア』でデビュー。真っ直ぐで透明感のある文章、高い構成力が魅力の注目作家。他の著作に、「花魁さんと書道ガール」シリーズ、『雪には雪のなりたい白さがある』『フルーツパーラーにはない果物』『今日も君は、約束の旅に出る』『わたしたち、何者にもなれなかった』などがある。

「2021年 『パンダより恋が苦手な私たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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