陰陽師 蒼猴ノ巻 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2016年6月10日発売)
3.91
  • (34)
  • (58)
  • (42)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 677
感想 : 50
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784167906276

作品紹介・あらすじ

弁才天はいつから琵琶を持つようになったのか?

神々の逢瀬に歯噛みする猿、秋に桜を咲かせる木、蝶に変わる財物――京の不思議がつぎつぎに晴明と博雅をおとなう大人気シリーズ。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 短編シリーズ11冊目。

    「鬼市」
    藤原兼家がある晩いつものように女のところへ行こうとして「あわわの辻」を通りかかると、どこからか食べものの良い匂いがしてきて見に行くとどうやら夜市をやっている。怪しいからやめましょうという従者の意見も聞かず好奇心の赴くまま夜市に入り込んだ兼家は、美味しそうな麺だの芋だのをどんどん食べ、さらにうろうろしていると、かつて自分が女にやるために買った櫛が盗まれたときに疑いをかけて責め問い、結果死なせてしまった男が現れる。ようやく死者の市だと気づき逃げ帰ったが、銭を払え、と彼らが追いかけてきて…。

    おなじみ藤原兼家がまた厄介ごとを持ち込んで来る(笑)もちろん晴明は助けてあげるけど、兼家、ちっとも反省しないなあ(笑)あと前巻くらいから、晴明に依頼のある人が訪問の伺いをたててくると返答が「その日は源博雅様と約束があるので一緒でもよろしければ」で、もはや一緒に住んでるんじゃないかレベルで常に博雅いる前提(笑)


    「役君の橋」
    役行者と縁のある吉野の金峯山から禅師広達が晴明を訪ねてやって来る。ある河に昔からかかっている丸太の橋があり、それはかなりの年月を経ているのに朽ちることもなく人々も動物も渡っているのだが、その中から助け出してほしいと小さな声が聞こえると言う。晴明が現地に行くと、なんとその木は役行者が仏像を彫るつもりだったが彫られないままになっていた木だった。

    この話最大のトピックは、なんと博雅が晴明と一緒に来ない!いつもなら「ゆこう」「ゆこう」で一緒に出掛けるところ、今回は吉野までは日帰りできないので「ゆ、ゆかぬ…!」となってしまいました。一応博雅にもお仕事はあるのだな。


    「からくり道士」
    近ごろ都で人気の韓志和(からのしわ)という道士は、木彫りの動物などを生きたもののように動かすことができる。珍しいもの好きな小鳥遊渡(たかなしわたる)という男が、志和を呼んで龍を作るよう依頼。出来たら自分の財宝の半分をやっても良いと言う。志和は龍を造り上げるも、動き出した龍にびっくりした渡が転倒したあげく逆ギレ。志和は別のからくりを見せてその隙に逃げる。だが後日、渡の宝物蔵で、お宝がすべて蛹→蝶になりひらひら飛んでいってしまうようになり…。

    晴明が呼ばれてお宝は半分くらいなんとか蝶にならずに残るが、裏で糸を引いていたのはなんと蘆屋道満。道満は志和とマブダチなので志和の仇を取ったとのこと。(志和はあくまでからくりの技術者であり、晴明や道満のような術を使うわけではない)虫がらみだけに露子姫も登場。韓志和は伝説的ながら一応文献などに名前が残っている人物のようです。


    「蛇の道行」
    伴正則が信濃守の任期を終え帰国する途次、ずっと蛇が付いてくることに気づく。あまりにも気味が悪いので都に戻ってすぐ晴明に相談。晴明が蛇から話を聞くと…。

    この蛇はかつて人間だった頃に通ってきていた男がいたが、浮気の末別の女に乗り換えられ、相手の女を取り殺したが男の気持ちは戻らなかった。そのうち男も死んでしまったが、何度転生しても男への恨みが消えず、自分の手で殺してやらねば気が済まない。こうして蛇に転生した今回、なんと鼠に生まれ変わっていた男を発見。こいつが正則の旅の荷物の中に紛れ込んで隠れてしまったのでずっと追いかけてきたのだと言う。

    鼠の隠れた箱の蓋を晴明は開けさせまいとするが、蛇女の口説きに折れ、ついに手を放す。(基本晴明は、男女の仲のこじれが原因の場合は放置の方針)蛇は鼠を咥えて意気揚々と去っていくが、晴明は珍しく「これで良かったのか?」と凹んでる様子。もちろん博雅が励ましてあげて、晴明「お前はよい漢だ」といちゃついて終わり(笑)


    「月の路」
    蝉丸法師を訪ねたついでに、琵琶湖に舟を浮かべて一緒に飲んでる晴明と博雅。例によって蝉丸の琵琶と博雅の笛で合奏などしていると、急に風が吹いて船が流され、琵琶湖の北のほうまで行ってしまう。小さな社を守っている老人が現れ、夢に現れた女性が晴明たちの助けを求めてきたため、晴明たちが来るのを待っていたと言う。4人が一緒に舟で琵琶湖に出るとまたしても風が吹き…。

    晴明に助けを求めていたのは泣沢女神。化け物の青猿がこの女神に一方的な想いを寄せたあげく、年に一度の女神と竹生島の弁財天との逢瀬を蝦蟇を使って邪魔していたのだった。青猿は弁才天が鳴らす弓を噛み切ってさらに邪魔してくるが、晴明が追い払って一件落着。湖に映る月の路を通って女神は弁才天に会いに行く。弓の代わりに、と蝉丸が琵琶を弁才天に差し出し、弁天様が琵琶を持つようになった由来譚にもなっている。しかし弁天様って女性のイメージだったけど、こちらは男性なのね(それとも百合?)


    「蝦蟇念仏」
    蝦蟇占いで失せものを探しあてる陰陽法師・鳴徳が巷で大人気となる。藤原景之は大切にしていた黄金の菩薩像が紛失したが、こちらは蝦蟇占いでは見つからず、晴明のところへやってくる。晴明は景之に、ニセモノの仏像を作ってその紛失が心配だと鳴徳に相談するようアドバイスし…。

    鳴徳は実は失せもの占いを利用して金目のものを盗みに入っていた詐欺師。ニセ仏像で釣るとまんまと盗みにやってきた。だが晴明たちが捕まえる前に逃げたところ、突然現れた青猿に殺されてしまう。蝦蟇の話が続くなと思っていたら、なんと今回の蝦蟇は前回と同じ蝦蟇!前回の騒動で青猿から逃げた蝦蟇を鳴徳が悪用したので怒った青猿が鳴徳を殺して蝦蟇を連れ帰った。晴明にも恨みを抱いてるのでまた出て来ることもあるかしら?


    「仙桃奇譚」
    またしても晴明も博雅も出てこない蘆屋道満回。道満が山道を歩いているとお酒の匂いがするので近寄ってみると小屋の前に酒樽がある。ちょっと飲んじゃったらいきなり矢を射かけられるが、その男が何かに怯えているため話を聞くと…。

    男は元仏師で、ある女性と子を成したため引退、所帯を持つが、妻が病で亡くなったあと、幼い子供も病気になってしまった。その子のために食料を求めて山をさまよっていると、なぜか1本だけ桜の木があり満開の花が咲いている。そしてその木のうろから良い匂いがするので手を入れると桃の実が。それを取ると桜は枯れてしまう。男は桃の実を持ち帰り子供の枕元に置いておくと子供は回復。しかしある日、四つん這いで地面を這う老婆が現れ、桃を返してくれ、返さなければ「あれ」が来てしまうと言う。男は桃を隠して知らんぷりを決め込むが、老婆は夜ごと現れ…。

    実は桃は西王母の庭から(おそらく孫悟空の悪戯で)落ちてしまったもので、老婆はそれを探しに来た紫衣仙女。西王母の桃なので、返さなければ番人の虎が来ることになっている。欲深い男が隠した桃を道満は仙女に返してやる。仙女はもとの美しい姿になって帰って行った。


    「安達原」
    いつものように晴明と博雅が月を眺めてお酒を飲み、博雅が笛を吹いて良い感じになっていると、門前に助けを求める声が。

    祐慶という旅の僧が道に迷い体調を崩し、ようやく小屋をみつけて、そこに一人で住んでいた美しい女に介抱してもらった。数日で回復し、明日旅立とうという前夜、女のほうが夜這いにやってきて交情を結んでしまう。以来、毎日今日こそ旅立とうと思いながら女に未練があり出て行けない。しかしなぜか女のほうは日に日にやせ衰えていく。ある晩、夜中に目をさました男が女の不在に気づき、入ってはいけないと言われていた部屋をつい覗くと、そこには包丁を研ぐ女の姿、そして散らばる人間の死体。女が鬼であることに気づいた祐慶は必死で逃げ…。

    辿り着いたのが晴明の家の門だと言うが、女のほうも彼を追って付いてきていた。しかし晴明は祐慶を助けない。なぜならすでに彼は女に取り殺されており、自分が死んでいることに気づいていないだけだった…。


    「首をかたむける女」
    博雅の夢の中に天女たちが沢山現れ、子供たちが生まれるから笛を吹いてほしいと頼まれる。博雅が笛を吹いてやると天女たちは歓び、赤い衣の女性を「お礼に」と連れてくる。博雅が笛を吹くほどにその女性の首は前に傾いてゆく。

    博雅が目覚めると、外はなんと雪。天女が言っていた子供たちとは雪のことだったようだ。そしてその雪の中にポツンと1輪だけ咲いている赤い椿の花が、雪の重さで首をたれていた。博雅しか登場しないけれど美しい掌編。


    「舟」
    巨椋池の猟師・魚丸は、ある晩「あわわの辻の火丸」と名乗る男から奇妙な頼みごとをされる。真夜中に舟で池に漕ぎ出し、途中で火丸が人の名前を呼ぶと、姿はないのに舟に誰かが乗り一人分重みで沈む。6人が限界で、合計8夜それが続き、48人の見えない者を向こう岸へ運んだ。すべて終わってみてから怖くなり、黒川主の件で晴明に世話になった鵜飼の忠輔経由で晴明のところへ相談に。その晩、一同が舟で巨椋池に出かけると…。

    たまにある怨霊系じゃなくて神様系の良い話。これは方角神の天一神が移動の際に、さきの大水で亡くなり巨椋池に沈んでいた人々をついでに浄土へ連れていってくれる光景を晴明たちも見る。美しい話。

  • なんと、晴明が苦しげに悩む場面があるんですよ。「これで、よかったのかな、博雅よ……」とぽつりとつぶやくのです。心が揺らいじゃったのでしょうね。陰陽師としての自分のやるべきこと、やってきたことについて、つい考えちゃったのかな…なんて想像してしまいました。ちょっぴり傷ついたような晴明。博雅が傍らにいてくれて本当によかったです。その反面、道満は己の思うまま今回も行動しちゃいますね。なんやかんや言いながら仙女さまを助けちゃいます。道満はひとりで気ままに生きているぶん、心は身軽なんだろうな。たとえそれが悪だろうが善だろうが、自分が楽しければどっちでもいいって感じなんだろう……なんて思ってたけれど、何だかそれって思い違いしてたのかも、わたし。「不死などになったら、美味い酒は飲めぬ。笛の音を聴いても、それを心地よく聴けぬ。生命に限りあればこそ、酒が美味いのじゃ。なあ──」なんて嗤う心の中には、晴明たちと酒を飲み交わし博雅の笛に耳を傾ける場面が浮かんでいたのじゃないかしら。もしそうなら、それって心に大切なもの抱えているよね……なんて、そんなことをこれまた勝手に想像しちゃうと、道満も可愛ゆいやつだなぁなんて思っちゃいました。

  • 今回も楽しく読みました♪
    特に道満メインの話が面白かった!
    道満は悪役風で出てくるけど、根はいいヤツということがよく表れている作品だなと。
    他には「安達原」も切ない余韻が残る作品で印象に残りました!

  • またぞろ懲りない兼家はん怪しい夜市に出会う/梨の倒木が橋のようになっているものから聞こえた声。博雅は行けなかった/韓志和をひどく扱った小鳥遊渡の顛末。露子姫も登場/伴正則を蛇がつけてくるのをなんとかしたが、晴明に少しの後悔/琵琶湖に舟を浮かべ月を愉しんでいた晴明、博雅、蝉丸は風に吹かれて/蝦蟇占いをする法師/不思議な桃を隠した男/倒れた男を助けてくれた女は/博雅に笛を吹いてくれと願う声/巨椋池の真ん中で舟に乗り込んでくるものたち。

    ■安倍晴明と源博雅についての簡単な単語集

    【青猿】琵琶湖で晴明に恋路を邪魔された。大きな蝦蟇を使役している。
    【青物主/あおものぬし】猪の化け物、神? 紀声足(きのこわたり)を配下に加えた。
    【青音】藤原長実の娘。ちょっと変わってる女性のようだ? 藤原為成と橘景清が恋の鞘当て。
    【蘆屋道満/あしやどうまん】法師陰陽師。安倍晴明のライバル的存在ではある。敵対することはあるが当人たちは特に敵視してないと思われる。酒好き。
    【安倍晴明】日本史上最高の魔法使い。実在したそうだ。残ってる絵などを見るとなんだか冴えないおっさんやけど、このお話のようにさっそうとしている美形と考えておく方が楽しいでしょう。天皇にも遠慮せず、孤高で博雅など一部の人間以外には打ち解けず、山野の一角をそのまま切り取ってきたようなぼうぼうとした庭を愛でながら暮らしている。《事象の中に、つい、原理を捜してしまう。》醍醐ノ巻p.122
    【綾子】賀茂忠輔の娘。
    【綾女】晴明が使う式神。晴明んちによく似た女の描かれた絵がある。
    【あわわの辻】二条大路と東大宮大路が光差して作られた辻。いろいろと不思議のある辻。
    【一条の六角堂】観音菩薩を安置する予定だったが仏師が途中で死んでしまったので空のまま放置され寂れてしまっている小さなお堂。夜ともなるとかなりもの凄く寂しい。
    【犬麻呂】赤髪の犬麻呂と呼ばれる五十くらいのもと僧侶だった盗賊で皆殺しにしてからゆっくり金品を物色する残虐なタイプ。
    【魚丸/うおまろ】巨椋池の漁師。
    【恵増上人/えぞうしょうにん】醍醐寺の僧。秀才で経などすぐに覚えられるがなぜか法華経の二文字だけが覚えられなかった。
    【猿叫の病/えんきょうのやまい】痛さのあまり猿のような声で叫ぶ病。
    【役小角】陰陽師の祖みたいなものかもしれない強力な超能力者。前鬼・後鬼という鬼を従えていた。
    【応天門】どこも悪いところがないのになぜか雨漏りがする。
    【陰陽師】魔法使いのようなもの。理を利用して理に外れたものを修繕するような役目かと。《晴明よ、我らに必要な才は、かなしいかな、信の才ではなく、疑の才じゃ。》醍醐ノ巻p.194。三態あり、晴明や賀茂保憲など宮廷に仕える陰陽師。民間で民のために働いた陰陽師。播磨を拠点とした僧侶としての法師陰陽師。上田早夕里さんの作品で法師陰陽師が主役の話を読んだことがあります。
    【勘解由小路流/かげゆのこうじりゅう】賀茂家の流れを汲む陰陽道の流派。
    【柏木季正/かしわぎのすえまさ】たびたび不調になるがその都度四徳法師という播磨の法師陰陽師が治してくれた。
    【膳広国/かしわでのひろくに】死んだ後五日後に生き返った。
    【梶原資之/かじわらのすけゆき】図書寮の役人だったが坊主になり般若経の写経を一日十回千日続けることにしたが色っぽいあやかしに悩まされている。僧名は寿水。
    【ガネーシャ】シヴァ神(大黒天)とパールヴァティー(烏摩妃:うまひ)の間に生まれた。
    【賀茂忠輔】腕のいい鵜匠で一度に二十羽の鵜を使うことができる。「千手の忠輔」と呼ばれることもあるとか。博雅の母方の遠縁。
    【賀茂忠行/かものただゆき】陰陽師。安倍晴明の師。
    【賀茂保憲】陰陽師。賀茂忠行の長男。晴明の兄弟弟子だったとか師匠だったとか言われる。岡野玲子さんの漫画では晴明の才能に嫉妬する兄弟弟子という感じ。こちらのお話では大らかでのんびりした大物の風情。
    【韓志和/からのしのわ】木彫りが巧くつくったものが動き出す。
    【漢多太】インド―中国―日本と渡った楽師。琵琶の名器である玄象の作者でもある。
    【寛朝】遍照寺の僧。法力も強く剛力でもある。
    【吉備真備】陰陽道の祖と言われているらしい。
    【首塚】藤原純友の乱が鎮圧された後も暴れ回っていた残党の首領たちを捕らえその首をさらしものにした塚。
    【黒川主】賀茂忠輔の娘、綾子のもとに通ってくる、尋常な風情ではない怪しい男。
    【恵雲/けいうん】謎の僧。叡山の祥寿院にボロボロの僧衣で現れた。
    【玄象/げんじょう】琵琶の名器。羅城門の鬼に盗まれたのを晴明と博雅が取り戻したことがある。事件が終わった後、ふしぎな琵琶になってしまった。
    【金剛】白い犬。
    【紫衣仙女/しいせんにょ】道満の酒の酌をしてくれることになった。
    【式神】晴明など陰陽師が使役する精霊のようなもの。
    【実恵/じちえ】長楽寺の僧。物覚えが悪くとろいが、品性のようなものがあり皆から愛されている。
    【四徳法師】播磨の法師陰陽師。孔雀明王を拝しているという。智徳法師の知人。
    【沙門/しゃもん】賀茂保憲が使役している猫又。黒猫。
    【呪(しゅ)】このお話ではなんでも呪ということになる。こだわり、ことば、名前、勘違い、脅迫観念…。人はただの木の棒に「箸」という呪をかけ箸として使っている。ことほどさように呪とな日常生活の中で誰もが普通に使っている。要するに言葉というものそのものが、それによる概念の定義が呪ということだろう。
    【朱天童子】朱雀門にて博雅と笛を取りかえた鬼。白い水干を身にまとった少年の姿をしている。
    【性空上人/しょうくうしょうにん】播磨国書写山円教寺の僧。播磨国なら蘆屋道満のご近所さんかもね。
    【祥寿院/しょうじゅいん】叡山の施設のひとつでその昔最澄が読経三昧に過ごすために建てた。
    【正祐法師/しょうゆう】僧侶。病気関係に強く帝の腹痛を一発で治した。
    【白比丘尼/しらびくに】有名人。死ねない女で、30年ごとに陰陽師のところにやってくる。
    【心覚上人/しんかくしょうにん】元の名を加茂保胤(かものやすたね)、賀茂忠行の息子。世間では賀茂保憲の弟ということになっているが実は兄。一念発起して僧になった。真面目すぎて融通がきかず極端なことをしでかして物議を醸す。
    【朱雀門の鬼】菅原道真の弟子、文章博士の紀長谷雄と双六勝負をしたり、博雅と笛を吹き合って葉双と博雅の笛を交換してくれたりした鬼。
    【蝉丸】盲目の老法師。琵琶の名手。百人一首でもおなじみ。博雅が三年間通ってようやく琵琶の秘曲である流泉、啄木を聴かせてもらつた。
    【千手の忠輔】→賀茂忠輔
    【善智内供/ぜんちないぐ】妙法寺の鼻の長い上人。前は神護寺(じんごじ)にいた。芥川龍之介の「鼻」の主人公と同一人物かな。
    【善膩師童子/ぜんにしどうじ】東寺(教王護国寺)の毘沙門天の脇に控えている護法童子のひとり。
    【平大成/たいらのおおなり】70歳過ぎた双子の薬師。右頬に瘤がある。紅瓜茸が大好き。
    【平実盛/たいらのさねもり】行方不明になった。
    【平中成/たいらのなかなり】70歳過ぎた双子の薬師。左頬に瘤がある。
    【小鳥遊渡/たかなしのわたる】珍奇なものが好きなコレクター。
    【橘景清】青音をはさんで藤原為成と三角関係に。
    【単/たん】絵師であり表装も得意とする超高齢の先生。
    【智徳法師】晴明を試しに来た坊さんです。ほんのちょっとだけかわいそうな目にあった。
    【智羅永寿/ちらようじゅ】中国の力の強い天狗。
    【月駆道人】天帝から月とともに歩むことを命じられている。
    【土御門流】晴明を始祖とする陰陽道の流派。
    【露子姫】虫めづる姫君。橘実之(たちばなのさねゆき)の娘。いつも男のなりをしていて少年のように見える。式神の黒丸と、虫集めの子ども、けら男を連れている。他人がいるとき晴明は博雅に対し丁寧な口調になるが露子姫だけのときは普段通りのタメ口。
    【天狗の羽団扇】ある事件の後晴明のものとなった。
    【透子】琴の名手、橘花麻呂の娘。一輪だけ散らない花のある桜の下で琴を弾き行方不明になった。
    【伴正則/とものまさのり】信濃守の任期を終え帰って来る途中蛇がずっとついてきた。笙の名手で博雅の管弦の友。
    【呑天/どんてん】寛朝僧正のとこの池にいた亀を晴明が譲り受け式として使っている。
    【猫又】長生きした猫が妖怪となり、尾が二つに分かれたもの。賀茂保憲はチャーミングな黒い猫又を飼っている。
    【葉双/はふたつ】博雅が鬼からもらった笛。
    【秘曲】琵琶の秘曲に「流泉」「啄木」「楊真操」などがある。
    【藤原兼家/ふじわらのかねいえ】摂政。何かとトラブルに巻き込まれるがけっこうそれを楽しんでいるフシもある。
    【藤原貞敏/ふじわらのさだとし】遣唐使。琵琶の玄象、青山(せいざん)とともに幾つもの秘曲を持ち帰った。
    【藤原実貞/ふじわらのさねさだ】目が覚めたら虫(むかで)になっていた。
    【藤原忠輔/ふじわらのただすけ】空を見上げるのが好きで仰ぎ中納言と呼ばれる。六十間近。
    【藤原為成】首に憑かれた男。青音をはさんで橘景清と三角関係に。
    【藤原道長】藤原兼家の息子。後に我が世の春を謳歌する人物。
    【藤原妙瑞/ふじわらのみょうずい】雅楽寮のトップ雅楽頭(うたのかみ)。楽器の名手。
    【瓶子(へいし)】このお話ではよく出てくるアイテム。たいがいお酒が入っている。これをかたわらに片膝立てて杯を傾けながら庭を眺めているのが晴明のお気に入り。
    【牧場/ぼくば】玄象と並ぶ琵琶の名器。牧場が描かれているのでこの名がついた。
    【帝】この国のトップ。安倍晴明と賀茂忠行と蘆屋道満の三人は「あの男」呼ばわりして他者を慌てさせることがある。
    【右姫/みぎひめ】蘆屋道満が連れていた女童。人間ではなさそうだ…平将門の右手で今は道満が式として使っているらしい。
    【密虫/みつむし】晴明が藤につけた名前。のちに使役する女性の姿をした式にもこの名前がついているので藤の精かも。
    【蜜夜/みつよ】晴明の式。
    【蜜魚/みつを】晴明の式。
    【源博雅/みなもとのひろまさ】もう一人の主人公。真の主人公というべきか。平安時代の貴族。地位は三位(さんみ)。実在の人物のようで、醍醐天皇の孫(長男の息子)らしくかなり上流。このお話では30代後半で、晴明の友人。実際に会っていた可能性は高いでしょう。晴明は博雅よりかなり長生きしたようですが物語のような関係だったとしたら寂しかったかもしれません。無骨だけど愛敬のあるタイプ。まじめで、純粋で、正直で、つねに驚きをもって人生を歩んでいるいい男。かなりのロマンチストでふしぎなものは不思議として味わいたいが晴明に分析されて興がさめがっかりさせられることがある。善人で懐の深い大人物だと思う。笛その他の楽器の名手でそのせきで時折この世ならざる存在とかかわるが霊能力は皆無。それでも晴明にすらできないこともしてしまうことがある。このお話の魅力は晴明よりも、むしろこの博雅が醸し出していると思われる。《酒をよばれに来たのではないが、出てくる酒を拒みはせぬ》陰陽師P.27。《よい漢だなあ、博雅》太極ノ巻p.66
    【壬生忠見(みぶのただみ)】死んだ男。歌合わせで平兼盛に敗れて化けて出る。特に悪さもしないので、みんなほっておいている。
    【明徳/みょうとく】遍照寺の僧。寛朝の弟子。
    【無子訶/むしか】妖魔。鼠の姿。琵琶の牧場に憑いていた。ガネーシャ(象鼻天:ぞうびてん)の乗り物。
    【狢】ある人物を利用して家族の仇を討とうとしたが晴明に止められ逃してもらえたのでなにかあれば呼んでくれと言い残して去っていった。
    【明鏡/めいきょう】西光寺の僧。
    【戻橋】晴明が式神を置いているというウワサがある。
    【夜光杯】黒い肌に星が透けて見える杯。藤原成俊の持ち物。唐から持ち帰られた阿倍仲麻呂の遺品。
    【楊玉環/ようぎょくかん】楊貴妃のこと。玄宗皇帝に寵愛された美姫。
    【楊真操/ようしんそう】藤原貞敏が唐から持ち帰った琵琶の秘曲。今弾けるのは博雅か蝉丸法師くらい。
    【余慶律師/よきょうりつし】叡山の僧侶。
    【羅生門】朱雀門をさらに南へ進み京のはずれまで来ると荒れ果てた羅生門がある。いろいろ不思議なことが起こる観光スポットに。当時日本最大の門でもあったそうです。

  •  今宵も晴明と博雅のコンビが都の怪異を解決していく短編10編。

     久しぶりの「陰陽師」、この巻も晴明と博雅がホームズとワトソンの二人のような関係で読んでいてとても安心できます。

     この巻の10編のうち、一番印象に残ったのは、「安達原」のお話です。

     昔話にある山姥の怖い話かと思いきや、ラストは鬼でありながら人として思う心を描いた逸品でした。

     こういう話に出会う醍醐味が「陰陽師」の魅力なのでしょう。

     これからもやめられません。

  • 楽しく読める

  • 初雪のお話が一番好きだな

  • 『蛇の道行』で後悔を含めた迷いを言う晴明とそれに答える博雅に二人の関係の深さを感じます。
    博雅の心の大らかさや純粋さにきっと晴明は何度も救われているのでしょう。

    タイトルにもなっている蒼猴は恋路の邪魔をした晴明を深く恨んでいるので今後も登場しそうです。
    なかなかにしつこそう。

  • お約束な展開が安心して読めました。
    面白かったです。

  • 陰陽師の十三巻『蒼猴ノ巻』。

    「蝦蟇念仏」が良い。
    執念の物語。いつか迎える物語の結末を楽しみにしたいと思います。ぐちゃぐちゃの妄執の果ての結末。

    心のうちにあるどうしようもない衝動。そのぐつぐつしたままの熱量に突き動かされる描写が、夢枕獏作品の好きな部分。あの青猿の行動は自分本位なものなのだけど、善悪は抜きにして、突き動かされているのは確かなので。

  • 2022年5月17日購入。

  • 陰陽師の晴明が呪術に困っている人を助けるという内容だ。晴明が原因を即座に見つけ、そしてあっているか確かめて、ネタバラシをするという内容がほとんどで、続き続きが気になりやすい話だった。そしてさらに話が10遍に分かれているのですぐに話が終わり非常に読みやすい。本が苦手な人が慣れとして読むのにおすすめだと思う。

  • 鬼市
    麺が気持ち悪い。そんなものを食べたなんて。

    からくり道士
    道士感じの良い人だな。

    蛇(くちなわ)の道行(みちゆき)
    生まれ変わっていたとして、その鼠に罪があるんだろうか。
    調伏すべきだったとは思わないけれど、それが自然の一つのありようかと
    言われるとちょっとな

    月の路
    琵琶湖クリージング行ってみたいな。
    弁財天と泣沢女神かぁ

    蝦蟇念仏
    いつかまた会見ゆるのか

    仙桃奇譚
    子のことを想うまでなら良い話であったのにな
    桃を抱いた木はとても幻想的だな

    首をかたむける女(ひと)
    いいな、綺麗だし幸福で清らかな感じがするな。
    初雪の夜にはどこかの上手の夢の中に天女たちが現れたのかもしれないな。


    博雅と天一神様って会っていなかったかしら。
    見た目までは描写されていなかったかも。

  • 青いお猿さんがちょこちょこ出てくるのでサブタイトルが「蒼猴の巻」なんですね。

  • 陰陽師シリーズである。
    花びら一枚一枚が仏に見える博雅と、それに関心する清明といつも通りで短編10本。

    深く掘りさげてないけど、基本的には古の物語をベースに作っているだろうから、そこも調べると楽しいかも。

  • 博雅が行かない回があったね。

  • シリーズ11作目

    風流なものと人間臭いものと.晴明様は静かで優しい.準レギュラー陣も好き.大渡りを物凄く見てみたいと思った.

    好き:月の路/仙桃奇譚/首をかたむける女/天一神

    *2019.11

  • 「鬼市」どこであろうと買い物したらちゃんとお金は払おうな。
    「役君の橋」珍しく一緒に行こうできないであわあわする博雅。
    「からくり道士」いや志和殿のカラクリ凄すぎでしょ・・・。そして萌えキャラすぎる。
    「蛇の道行」幾度生まれ直して、いとしいのか憎いのかももう分からない。かなしいし、切ないな・・・。
    「月の路」突然の百合にびびった・・・。しかし青猿お前・・・切ないやん・・・。
    「蝦蟇念仏」青猿お前息長えな・・・と思ったら、なるほど今巻のタイトル・・・と納得。
    「仙桃奇譚」孫悟空ネタまでやるか、陰陽師シリーズ。
    「安達原」これもなんか・・・切なかったな・・・。あとオチが意外と夢枕節では珍しいなと思った。
    「首をかたむける女」今巻のこばなし枠。博雅が相変わらず爆モテ。
    「舟」別におどろおどろしくないよ!

  • 飛んでこの巻です。 ゆ、百合!神様でさらっと百合。ありがたやありがたや。 言葉にするのは野暮ってもんですね。

全45件中 1 - 20件を表示

著者プロフィール

1951年、神奈川県出身。第10回日本SF大賞、第21回星雲賞(日本長編部門)、第11回柴田錬三郎賞、第46回吉川英治賞など格調高い文芸賞を多数受賞。主な著作として『陰陽師』『闇狩り師』『餓狼伝』などのシリーズがあり、圧倒的人気を博す。

「2016年 『陰陽師―瀧夜叉姫― ⑧』 で使われていた紹介文から引用しています。」

夢枕獏の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×