死神の浮力 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 5696
感想 : 401
  • Amazon.co.jp ・本 (538ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167906474

作品紹介・あらすじ

シリーズ累計115万部、大ヒット作待望の文庫化!娘を殺された作家は、無罪になった犯人への復讐を計画していた。人間の生死を判定する〝死神〟の千葉は、彼と共に犯人を追うが――。

感想・レビュー・書評

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  • 死神の千葉さん、再来!
    ミュージックをこよなく愛し、渋滞を憎む。そんな彼は参勤交代が嫌いだったという(笑)
    死神の仕事は、調査対象を観察し、「可」か「見送り」か判定すること。もし「可」ならば、8日目に対象は死ぬことになるが、今回は特例があるらしい。

    たっぷりの長編で、前作を上回るトンチンカンな千葉節を堪能できる。
    そして、千葉の死神的能力も遺憾なく発揮される。素手に触れた人を昏倒させ、拷問にも顔色ひとつ変えず、超聴力で聞こえるはずのない声を聞き、自動車と同じスピードで自転車を漕ぎ…

    もっとも、飄々としたやり取りに笑えても、あらすじは重くて苦しい。

    千葉の調査対象になったのは作家の山野辺。山野辺夫妻は、小学生の一人娘を無惨に殺され、犯人の本城への復讐を計画していた。
    本城はゲームのように人を支配して「理不尽な不幸」を楽しむサイコパスだった。そもそも裁判の証拠すら本城が計画的に作ったものであり、無罪となって釈放された後、山野辺夫妻を出し抜いていたぶろうとする。
    千葉は山野辺夫妻に接触し、復讐のための7日間を共に行動する。

    時々挿入される娘の生前のエピソード。夫妻は娘を思って涙を流す。癒えない悲しみには胸が痛くなる。
    「人は必ず死ぬ」けれど、こんな事件で、子が親より先に死ぬのは本当にやるせない。
    山野辺のお父さんのように、「じゃあ、俺が先に行って、怖いかどうか見てこよう」って、言わせてほしい。

    本城もまた死神の調査対象となっていることがわかっていて、どういう結果になるのか、夫妻の復讐は果たせるのかと、最後までページを捲る手が止まらなくなる。
    仇を討てばそれでよいという将軍の言葉、娘の描いた絵本の内容、記者が投げつけたなつみ饅頭、情報部のミスによる還元キャンペーン、そしてタイトルにもある「浮力」等々、あぁ、こんな最初から伏線が張られていたのだなと、毎回驚いてしまう。
    伊坂さんらしく、スピーディーな展開と、キレのある台詞が最初から最後まで楽しめる。重いけれどおすすめだ。

    ★4.5

  • 対象の人物を調査し、
    死ぬかどうか「可」「否」を判断する
    死神が主人公のシリーズ二作目
    今回は長編(前作は短編集だった)

    主人公の千葉(死神には配属される地域の、あたりに馴染みのある地名をつける事が多いらしい)は、娘を殺されてしまった男を調査することになり、犯人への復讐に同行することになる。
    彼が調査する日はだいたい雨が降っている。

    伊坂幸太郎さんの作品では
    自分の脳内で「音楽がかかる」作品が
    何作か(斉藤和義や、サンボマスター
    ビートルズとか色々)
    「死神」シリーズもその一つ

    私の場合は「ジョン・コルトレーン・アンド・ジョニー・ハートマン」の
    「They Say It's Wonderful」で

    「ラッシュライフ」を読んだ後に題名と同名の曲の入ったアルバムを買いに行ったこと、この曲が使われているauのcmが雨の場面だった事
    そのせいかいつも同じ曲が頭をよぎる。

    死神達が長い間人間を観察し
    昔のことには詳しいのに、現代のことだと勘違いを起こすのがなんだか違和感があったが、そんなに人間に興味がないからなのだろうと納得する。

    何というか…「死神の精度」のときとは違い長編なので仕方がないのだが、長い…(前作の時はむしろ、早く感じたり…バリエーションを楽しんでいた)
    千葉が話す「以前に、人間達を観察したときに仕入れた知識」の説明が何回も入ってくるのが、ちょっと読んでて辛かった。また、調査対象の男も同様の振り返りがあり扱うテーマに沿った内容であるものの「知識披露」の繰り返しの様に感じてしまった。
    なんかリズムを崩してるような…

    読んでる間、小雨が降り続いてる様なモヤモヤ感

    「どのような基準で可否を判定するのか?」明確な基準がないまま判定している状態が何年も続いているのが不思議、なのに仕事に対しては「ちゃんとしなくては」という千葉、他の死神達よりも真面目
    彼らの考え方を想像するのがなかなか楽しい。
    不明なとこが多いけど。

    死神達は、音楽を好む。
    隙あらばカーラジオやラジカセなどで音楽を聴こうとする千葉
    この本は連休中、外出先に持ち歩いて読んでいて、隙あらば本を読もうとして妻に怒られてしまったので、なんか少しだけリンクしていた。

  • あの時の父はこう言った。「じゃあ、俺が先に行って、怖いかどうか見てこよう」(489p)

    私の父親は、そんな優しいことは言ってくれなかった。ある日見舞いに行くと、「死んでいくとはこういうことなんだな。やっとわかったよ」と悟ったようなことを言っていたかと思えば、ある日行くと「痛い、怖い、怖い、痛い。そばにいておくれ」と泣きつき、ある日行くと「ありがとう」と生涯言ったこともないような殊勝なことを言っていた。ある日行くと昏睡状態に入っていて、二度と目を覚まさなかった。

    伊坂幸太郎の死神千葉シリーズは先が見えない。先が見えないからこそ、死は怖く、いつの時代も人間にとっては最大の難問になっている。

    でも、この本を読んで私は「はっ」と思った。父はあの三ヶ月間で、行って帰ってきてくれていたんだ、と。

    • kuma0504さん
      まことさん、ありがとうございます。
      実は、書評を書き出した段階では、「私の父親は、そんな優しいことは言ってくれなかった」というのがテーマだっ...
      まことさん、ありがとうございます。
      実は、書評を書き出した段階では、「私の父親は、そんな優しいことは言ってくれなかった」というのがテーマだったんです。
      でも、8年前のあの時のことを思い出して書いていると、はっと、気がついてしまいました。
      膵臓癌の父親の看護は、とても大変だったけど、とっても貴重な体験をさせてもらったとホントにあの時思っていました。もちろん、後悔もたくさんありますが、それも時間が癒してくれます。
      3日後に父親の十三回忌があります。
      2020/03/25
    • まことさん
      kuma0504さん♪

      この作品を、先に逝く父親と、子供の物語としてとらえたところが素晴らしいと思います。
      kuma0504さん♪

      この作品を、先に逝く父親と、子供の物語としてとらえたところが素晴らしいと思います。
      2020/03/25
    • kuma0504さん
      まことさん、
      肝心の小説の中身の方は、今すっかり忘れております(^_^;)。
      まことさん、
      肝心の小説の中身の方は、今すっかり忘れております(^_^;)。
      2020/03/25
  • 前回は短編だったけれど、今回はがっつり長編てしたね。
    死神なのを隠し人間に合わせて取り繕う態度や会話のやりとりが相変わらずちょっとズレていて面白おかしいです。
    視点が千葉さん側、山野辺さんとコロコロ変わりながら進んでいきます。

    サイコパスとのやり取りでヤキモキする部分もありますが、突拍子もない千葉さんのやり取りで流れが変わったりします。

    復讐心に燃える家族とのやりとりはありつつも、ちょっと気が抜ける。面白かったです。

  • サイコパス、本城に愛娘を殺された山野辺夫妻の復讐劇。山野辺さんの死は「可」かどうか死神千葉さんが調査に取り憑く?お話。

    前作に続き人間とはズレた感性の千葉さんの言動が、たまらなく面白い。
    次々と本城から仕掛けられる罠、緊張感ある中の千葉さんが繰り出す言動...
    死神界の寿命還元キャンペーンがこんなオチになるとは⁉︎

    山野辺さんのお父さんが、本当に怖いかどうか先に見てくるの件は何かウルっとしました。
    後半の本城を追いかけるカーチェイス?はドキドキでした‼︎

    オモシロかったです♪

  • しばらく避けていた伊坂作品だったけど、やっぱり面白く読めた。
    千葉のピントのずれ方、今までになく体を使った活躍。
    敵である本城が20年寿命が延びたと明かされて、絶望的になったけど、オチが秀逸。

  • 伊坂幸太郎 著
    「死神の精度」の続編らしいが…私はこの「死神の浮力」から読みました。
    最初の始まりは どういう事なんだろう?と意味が分からず読み進めてゆく展開
    架空の死神 千葉さん、架空の存在だということを完全に忘れてしまうような ストーリーの面白さ ミステリーでもファンタジーでもなく しかし 人間の人生のシリアスなあるあるが散りばめられて 改めて教訓になったような作品だった。

    本書の中では25人に1人いる、良心を持たないサイコパスの本城崇VS娘を奪われた 山野辺という形になっているが
    そこに 千葉という死神がコミカルかつシリアスに物語の全体像を捉えている
    一般人、悪を楽しむもの、善悪の外にいるものの三者の意識のズレが物語を複雑に展開してゆく。
    山野辺には「マリアビートル」を彷彿してしまう様が幾度もあり ニヤリ( ̄ー ̄)笑えてしまったが…肝心な時に思いもよらぬ失敗を懲りずに繰り返してしまう まさに鈍臭く 人間らしいというか…?。
    私自身も理不尽な目に遭ったり 相手からの自然な誘導にまんまとのせられ勘違い 失敗を起こし悔しい思いをした時、「絶対 今度は同じ轍を踏むまい!」と自分に言い聞かせて
    成功した場合もあれば、また 同じ轍を踏んでしまった事も幾度もある(相手もより強力になっているのだ)
    失敗から学ぶことはあれ 同じ失敗を繰り返してしまうのも人間本来のものなのか…
    昨今の ウィルス問題も然り、人は見えないものに恐怖を抱き 翻弄されるもの
    死神の千葉さんが救いとは…。
    死期を悟った山野辺の父が怖がりの息子に「先に行って、怖くないことを確かめてくるよ」って言った言葉には胸が熱くなった。
    「人間は、その日を摘むこと、日々を楽しむことしかできないんだ。というよりも、それしかないんだよ。なぜなら」なぜなら、人間はいつか死ぬからだ。

  • 2020年10月16日読了。

    『死神の精度』の主人公、『死神』千葉の長編作品。

    今回の仕事の対象者は、一年前にある男に娘を殺され失意のどん底であった、作家の山野辺遼。

    逮捕された犯人の男・本城崇は山野辺家の近くに住む顔馴染みの青年だった。
    娘を殺害する様子を録画した動画をメールで送ってきたり、明らかに犯人であるのだが、その動画も痕跡が残らないように細工が施されていたり、巧妙に人を騙す能力に長けていて、一審では証拠不十分で無罪判決となってしまう。
    本城は、感情を持たず良心も欠如・罪悪感など皆無で自己顕示欲の強い、まさに『サイコパス』であった。

    そんな本城に、山野辺は周到に計画を練り、妻の美樹と共に人生をかけて娘の仇を討つ復讐を実行しようとしていた。
    そこに現れた『死神』千葉は、仕事である調査を行うために山野辺夫妻と行動を共にする事になる。


    『死神の精度』に続き、相変わらずとんちんかんな千葉のキャラが濃い。
    スタンガンも効かないし、千枚通しであちこち刺されて肉をえぐられても顔色ひとつ変わらないし、普通のママチャリで車に追いつくし…流石死神ってところですか。

    過去に読んだ伊坂幸太郎作品の中で、一番重い話だったような気がする。
    時々娘を思い出し、悲しい涙や顔を綻ばせながらも涙を流すシーンはグッとくるものがあった。
    だが、千葉と山野辺夫妻とのやりとりがチグハグだらけな事で、シリアスな内容なのにむしろコミカルさを感じる場面も多かった。

    読む時間がとれず、間を空けて読んでいたのであまり世界観に入り込めなかった…。
    『死神vsサイコパス』なんて謳い文句にすごく期待していたので、もっとちゃんと読めば良かったと軽く後悔。

  • この本のユーモアが好き。
    死神という設定だから許される笑いがあって、死神の独特のテンポにハマってしまう。

    読んだ後味は爽快!
    腹が立って本を投げたくなるような犯人・マスコミ・世間と、冷や冷やしてこちらが諦めかけるような展開と、やっぱりそうだよね!?そうじゃなきゃ!!と叫びたくなる結末!

  • 死神千葉のズレ具合が大好きです。噛み合わない会話に癒されます。空気を読まなくてはいけない日常に疲れているからか、マイペースにぐんぐん進んでいく千葉の姿が読んでいて心地いいです。クライマックスのカーチェイスは、そのミスマッチな画を想像して笑いました。是非とも映像化して欲しいです。千葉は、高橋一生か、滝藤賢一か、松山ケンイチなどに演じてもらえたら、感無量です。

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著者プロフィール

1971年、千葉県生まれ。2000年『オーデュボンの祈り』で第5回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞し、デビュー。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞、「死神の精度」で第57回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。08年『ゴールデンスランバー』で第5回本屋大賞および第21回山本周五郎賞を受賞。20年『逆ソクラテス』で第33回柴田錬三郎賞を受賞。他の著書に『砂漠』『AX アックス』『ホワイトラビット』『シーソーモンスター』『クジラアタマの王様』『ペッパーズ・ゴースト』などがある。

「2021年 『文庫 フーガはユーガ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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