山桜記 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2016年7月8日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784167906498

作品紹介・あらすじ

全七作からなる歴史小説短編集。

豊臣秀吉による朝鮮征伐の前半・文禄の頃、一通の文箱が博多の津に打ち上げられ、秀吉の許に届けられた。中の手紙は半島に渡った夫を思う妻のものであった。興味を持った秀吉はその女を名護屋に呼び寄せたが……(「汐の恋文」)。

関ヶ原の戦いの前に大坂方の人質になるのを拒み、火を放って果てた細川ガラシャ。その嫁である千世はガラシャと死を共にせず生き残った。細川忠興の嫡男・忠隆は、父の命に背き千代を離縁せずにいたため、遂には廃嫡されてしまう。しかしその後も忠隆は千世と共に暮らし続ける(「花の陰」)。

戦国時代や江戸時代の女性・夫婦の旧来の像に著者独自の新鮮な解釈を投げかける、珠玉の短編集。

みんなの感想まとめ

戦国時代から江戸時代初期にかけての女性たちの姿を描いた短編集は、特に「妻」という立場に焦点を当て、彼女たちの覚悟や愛情を深く掘り下げています。各短編は、歴史的背景を持ちながらも、著者独自の解釈が加えら...

感想・レビュー・書評

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  • 戦国時代から江戸時代初期にかけての女性、特に「妻」の姿・生き方を描いた短編7作。
    仙台藩から柳川藩に嫁いだ鍋姫の目を通して伊達騒動を扱った『牡丹咲くころ』が、特に印象深い。
    伊達騒動については、従来悪役とされていた原田甲斐を主人公に、深謀遠慮で仙台藩を守った忠義の人とした山本周五郎の『樅の木は残った』が有名である。
    葉室麟は、鍋姫と原田甲斐とのほのかな交情を描きながら、姫の婚姻も仙台藩を守るための、甲斐の画策によるものだとしている。
    他の作も含めて、どこまでが史実で、どこからが著者の構想によるものかは、判別しがたいが、いずれにしても人の心の美しさ・真情を想起させてくれる物語となっている。

  • 戦乱の時代の中、女性が主人公の武士の妻の覚悟を感じられる7作の短編物語


    「汐の恋文」
    朝鮮出兵で半島にわたった夫へに届かなかった恋文。それが結果的に秀吉の手に。秀吉からの呼び出しに応じた菊子は秀吉に対峙します。秀吉は、菊子の身代わりとして夫の帰国を命じる。夫は帰ってくるのか?
    とても強い夫婦の絆を感じる物語。

    「氷雨降る」
    キリシタンの大名の晴信は大八に騙され、結果家康に言上するも、晴信も処罰されることに。
    その最後に立ちあった妻と埋葬の日に起きた出来事

    「花の陰」
    関ヶ原の戦いの前後で、屋敷に火をかけられたときに、逃げずにその場で果てた細川忠興の正室ガラシャ。一方で、ガラシャを置いて逃れた息子嫁の千世。汚名を着せられた千世の生活、そして、その日ガラシャと千世の間に託された言葉とはってな感じ
    また、忠興の息子忠隆と千世は大名をすて、二人で共に生きることに、しかし、生まれた娘の将来を思い、結果離縁する二人。
    これもいい話

    ほか、
    「ぎんぎんじょ」
    家のため耐える女性像
    ぎんぎんじょとは穏やかで慎み深くあれということ

    「くのないように」
    父親が徳川家に殺されたと思っている八十姫の生き様

    「牡丹咲くころ」
    身分の違う家同士の婚姻の中を生きた女性の話

    「天草の賦」
    天草四郎を逃がそうとした女性の話

    といった物語。

    短編ですが、お勧め

  • 戦国の世を生き抜いた武将大名夫婦を主人公にした短編集。巻末解説で澤田瞳子も書いている通り、短編小説としての面白さも去ることながら、葉室小説の核心はその美しさにある。

    その美しさも絢爛豪華というものではなく、キレのある素とした美しさ。読んで心が洗われる清涼感のある美しさである。

    きちんと生きる、筋を通して生きる、真心を行動に表す…そういった少し古いかもしれないがきっと普遍的で道徳的な大切なことを、葉室小説に教えられることは多いが、この短編集もその例に漏れない。

    ここ1年以上世界は窮屈で生きづらく我々の心は荒み切っているけれど、そんな中でもきちんと生きていこうと、改めて思えた貴重な読書時間を与えてくれた。

  • 葉室麟初の短編集で全七作。
    戦国時代、江戸時代の女性、姫君にスポットライトを当てていて、どの作品も楽しめました。
    ぎんぎんじょ、牡丹の咲くころ、汐の恋文が特に印象深かった。
    文庫ではなく単行本で読んだのですがカバーが可愛らしく印象的でした。

  • 武家社会の夫婦の姿を描いた、7作の短編集です。
    どの作品も、「人の心の美しさ」が感じられる良作ばかりで、解説の澤田瞳子さんも「この作品の感想は“、ああ、美しいなあ”という詠嘆である。」と書いていらして、まさにその通り。と思いました。
    個人的には、「ぎんぎんじょ」「牡丹咲くころ」が好きでした。

  • 夫婦や、言い交した相手との関係をテーマにした、短編集。
    舞台は、戦国~江戸時代。武家の婚姻には、何らかの意図が組み込まれるもの。その中で、女性たちがなにを考え、どう生きていくのか。すべてが女性目線で、かわいらしい装丁も作品にぴったり。
    男女の絆を感じる話が多く、読後感もよかった。

  • 一見女性が主人公だと思えない物語もあるけど、女性を芯に据えた短編集です。
    ガラシャと千世の姑と嫁は…あぁ、そうかもね~とすごくシミジミ。
    以前だったら、実家へ逃げた千世より苛烈な最後だったガラシャばかりに目が行ってたけど、今ならガラシャに対してもう少し考えを柔軟にできなったのかなぁとか思ったり。

  • 短編集

  • 夫婦となると、もともと他人ゆえ心が通わねば共に暮らすのは無理でございましょう。いずれかが力を失うたからと見捨てるのは夫婦とは申しません。ひたすら心の結びつきに頼って世の荒波を渡ればならないのですから、夫婦ほど強いつながりは無いのです

  • 戦国時代から江戸初期にかけて、九州を舞台に生きた武士の妻たちの短編集。
    「花の陰」が良かった。

    男だらけの話だと文章は漢字だらけで堅くなるのに、女が入ると仮名が増えて、柔らかくなるのは必然なのだろう。
    短編は、その話の世界観に入るまでが面倒だけど、その分たくさんの話に触れられるところが好き。

  • 意外な風合いは白書的…短編。静かに語る夫婦像と女性像。渋すぎる美しい言葉が散りばめられた良作

  • イマイチ好きなタイプの内容ではなかった。かなりロマンチック路線だったかな・・・

  • 【戦国の世に秘められた夫婦の情愛】命の危険を顧みず、男は妻のために出兵先の朝鮮半島から日本へ還った(「汐の恋文」)。戦国時代の夫婦の情愛を描く珠玉の短編集。

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著者プロフィール

1951年、北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て、2005年、「乾山晩愁」で歴史文学賞を受賞しデビュー。07年『銀漢の賦』で松本清張賞を受賞し絶賛を浴びる。09年『いのちなりけり』と『秋月記』で、10年『花や散るらん』で、11年『恋しぐれ』で、それぞれ直木賞候補となり、12年『蜩ノ記』で直木賞を受賞。著書は他に『実朝の首』『橘花抄』『川あかり』『散り椿』『さわらびの譜』『風花帖』『峠しぐれ』『春雷』『蒼天見ゆ』『天翔ける』『青嵐の坂』など。2017年12月、惜しまれつつ逝去。

「2023年 『神剣 人斬り彦斎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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