永い言い訳 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 190
  • Amazon.co.jp ・本 (341ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167906702

作品紹介・あらすじ

妻が死んでも泣けない男のラブストーリー。映画化話題作

予期せず家族を失った者たちは、どのように人生を取り戻すのか――。人を愛することの「素晴らしさと歯がゆさ」を描ききった物語。

感想・レビュー・書評

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  • 持つべきものは家族。途中、何度も胸が熱くなった。大宮ではなく津村側になってしまっている現実の自分の姿に置き換え、後悔しながら読んだ。もはや手遅れかとは思うが、我々はまだ二人とも生きている。作者の他の作品も読んでみようと思う。

  • 妻が死んでも泣けなかった男が大宮家との出会いを通して心情が変化していく。その様子が丁寧に描かれています。

    幸夫も陽一も不器用だなぁ…と思いつつ、
    でもそこに人間味が感じられて物語に温かみが増しているような気がします。

    自分を大事に思ってくれる人を、簡単に手放しちゃいけない。ぼくみたいに、愛していい人が、誰も居ない人生になる。
    真平へのセリフですが、幸夫自身への戒めでもあり、私もハッとさせられました。

  • ある日突然妻が死んだ。

    親友と旅行中バスの事故で突然妻が死んでしまうが、そのとき夫は愛人といた。

    冷めきった愛のない夫婦。

    愛する妻を失い悲しみに更ける夫を演じる作家のぼくは、ともに亡くなった妻の親友家族とひょんなことから一緒に過ごすようになる。

    妻夏子と親友ゆきの死について、それぞれの視点で語られるが、言うことがまったく食い違っていて、それがとてもリアルで面白かった。

    妻はぼくのことを一体どう思っていたのか、周りの人たちの話を聞くと、「夏子さんはいつも幸夫くん、幸夫くんって言ってましたよ」的な、いいことばかりだったので、実は妻はぼくを愛していたのか?とも思ったが、ある日妻の遺品の携帯の未送信メールを見て愕然とする。


    《もう愛してない。ひとかけらも。》


    私はここで、不覚にも笑ってしまった。
    現実はいつも厳しい(笑)

    クールで冷めた関係しかつくれない人や、相手の心の中にズカズカ入りこんで相手にもとことん自分を知ってもらいたい人。相手がいないとなにもできない依存型の関係...
    当たり前だけどいろんな人がいる。

    この物語は、読み手によっても感想が全然違うんだろうな。
    いつか、真平くんとか、灯ちゃんとかの語りでスピンオフ小説とか書いてくれたらいいな。
    その時幸夫が、どうなってるのかも知りたいし(相変わらず滑稽なダメおじいさんでいてほしい)笑

  • 映画のキャッチコピーが

    妻が死んだ。
    これっぽっちも泣けなかった。
    そこから愛しはじめた。

    なんだかお涙頂戴的な匂いがぷんぷんしましたが、
    そこは西川美和さんです。
    愛するということはそんなに綺麗なことじゃない。

    みえてるものをちゃんとみるほうが本当はむつかしいことなんだよ

    2015年 文藝春秋
    カバー写真:上田義彦
    デザイン:後智仁

  • 人気作家の津村啓こと衣笠幸夫は、妻が旅先で不慮の事故に遭い、親友とともに亡くなったと知らせを受ける。悲劇の主人公を装うことしかできない幸夫は、妻の親友の夫・陽一に、子どもたちの世話を申し出た。妻を亡くした男と、母を亡くした子どもたち。その不思議な出会いから、「新しい家族」の物語が動きはじめる。

  • 自分の心を大切に、他人の心も大切に

    言い訳めいた男の話は共感できるところもあり面白かった。
    近しい人が亡くなった時自分はちゃんと悲しめるのか、もし悲しめなくても他を否定してはいけない。
    自分の感情を受け入れ、かつ他人の感情に寄り添えていけたらいいと思う

  • 映画のほうは、まだ未観なのですが、この小説版、ちょっともう、困っちゃうほど面白いです。本当にもう、困っちゃうほどに。なにが困っちゃうかというと、もしかして、後日、映画版を観たとして、その映画版より、こっちの小説のほうが、おもろいなあ、とかいう感想を抱いちゃったら、本当に困ってしまいます。

    誰が困るかといいますと、それは紛れもなく自分一人だけであり、困っちゃうのは自分だけの問題であり、他には誰にも迷惑をかけることはないので、困る、なんて言葉を使う必然性は何一つないはずなのですが、それでも、まあ、困っちゃうのです、自分は。

    で、困っちゃう、というのは、ある意味、嬉しすぎて困っちゃう、という、これまた何とも困った心情なのですよね。困り喜び。なんじゃそら、というなんともマゾ的な思いだよなあ、本当になあ。

    西川美和さん、本業は映画監督のはずなのに、なんでもう、これほどに小説も見事なのか。驚愕。おっそろしいほどの才能ですね。映画監督としても、小説家としても、どっちも超一流かい、っていうね。とんでもねえです、ホンマ。

    で、どっちも超一流なんだろうなあ、と思ってしまうくらいに、自分は、西川さんの映画がホンマに好きですし、この小説も、めちゃんこ好きなのです。ただ単に、自分の価値観に、びっくりするほどハマった、という、それだけなのかもしれませんが。でも、間違いなく、そんな自分の価値観のなかで、西川美和、という人は、あまりに素晴らしい映画監督であり、あまりに素晴らしい小説家なのだ、と、この小説を読んで、完全に、完璧に、実感してしまったのです、うんうん。

    主人公、津村啓こと衣笠幸夫、ええキャラですよねえ。自意識過剰系男前ダメ人間、優男タイプ。
    映画「ゆれる」も、めっちゃんこ大好きなのですが、あちらの主人公、早川猛(たける)は、自意識過剰系?男前ダメ人間、オラオラタイプ?か?西川監督、こういう男、描かせたら、上手いですよねえ~。うむ?どういう男だ?とも思いますが、やっぱ、男前は得だよなあ。西川監督、男前、好きなんだろうなあ。そらそうだよなあ。男前が好きじゃない女性はいない。でしょうし、美人が好きじゃない男はいない、でしょうし。そらそうだよなあ。

    津村啓こと衣笠幸夫を演じるは、本木雅弘。もっくん、どんな演技してるんだろうなあ。ああ、映画観たいな、観たいなあ。観るの、楽しみだよなあ。ちょっと話ずれるけど、西川監督、またいつか、オダギリジョー主演で、映画一本撮って欲しいよなあ。映画「ゆれる」のオダギリジョーは、本当に本当に、最高のハマり役だったもんなあ、、、ちなみに、「永い言い訳」映画版の、大宮陽一役の竹原ピストルも、すっげえ興味あります。どんな演技してるんやろ?気になりまくりですね。なんせ、あの野狐禅の、竹原ピストルです。弾き語り系ロックンローラーに興味あるなら、なら憧れないはずはないぜ、の、あの竹原ピストル。が、演技を、しているらしい?気になりまくりやで。

    それにしても、凄いですよね。全然愛していなかった妻の事故死、という衝撃的なプロローグから、これほどまでにお見事な、ぐうの音も出ないほどにお見事な、人間の清濁全て表したような、とんでもねえ物語を、生み出すとは。西川さんの「表現したい欲求」の凄さと、その、「何かを表現するときのレベルの高さ」の凄さ、恐ろしいことですよ。もう、何故にこれほどに見事な物語を、これほどにうまく、作品としてパッケージングして、誰かに伝えることができるのかしらね?凄いですもう。すごいんだなあ。

    物語の最終盤、とある大事件が起こった後、津村(衣笠)が、真平と灯(あかり)の元へ行こう!って、家を飛び出すシーンがあるやないですか。文庫本309ページのところです。あっこって、もうまんま、太宰治の「走れメロス」やないですか。うっへえ!そこで太宰!そこでメロス!もうね、その西川さんの、そこでそれもってくる!みたいな、あのセンス。あの絶妙感。これしかねえ!って感じ。めちゃんこ素晴らしい。大好きです、あっこの描写。

    あと、この小説の展開。様々な登場人物のそれぞれの主観目線で話が進んでいく章と、いわゆる第三者的目線で話が進んでいく章と、交互に織り交ぜられながら進んでいく展開なのですが、誰かの主観目線の章では、章の最初に、その人物の名前が書いてあります。そうでない、第三者的ナレーター的目線の章の最初に書かれている、なんだかよくわからない筆記体の文字、みたいなやつ。一文字っぽい、あれ。あれ、一体、何を意味しているのでしょう?そこが読んでて、最後まで分からなくって、なんだかちょっと、悔しかったです。あれ絶対、なんらかの意味があると思うのですが、、、西川さん、自分には、分かりませんでした。悔しかったです。むう。

  • すでに取り返しのつかなくなった夫婦が、本当に取り返しのつかない状況に陥る。妻が死ぬ。愛のなさがゆえに悲しみを抱くことすらできない、という後悔すら意味をなさない状況で、残された夫たる《ぼく》は、縁あってかつての同級生だったという大宮陽一の家に通い、留守をつとめ、大宮家の二人の子と心を通わせることになる。
    けれど《ぼく》が取り戻すのはまっとうな幸福ではない。遅すぎた妻への愛情などでは決してない。
    物語の始めから終わりまで《ぼく》は醜い言い訳を、繰り返す。けれどその言葉の質は少しずつ変わっていくのだ。ただ言い逃れしようのない《愛するべき日々に愛することを怠ったことの代償》のなかで、この先も永遠に続くであろう言い訳が、いつか真摯に、誠実に語られる日が来ることを願う。
    クズな僕たちはそんなふうにして生きていくほかないのかもしれない。

  • 本のあらすじや、本の帯で書かれている内容は、清々しいようなイメージだったけど、そんな爽やかな本じゃないと思う 笑
    重くて、ちょっと、光がある感じ。
    あ、でも、映画は爽やかだった。

    妻・夏子を突然のバス事故で失った、人気作家の津村啓。
    妻が亡くなっても、涙を流すこともない。
    同じ事故で母親を失った大宮家と出会うことで、少しずつ変化が生まれてくる。
    突然家族を失った者たちは、どのように人生を取り戻すのか。




    はぁー。西川美和作品は、読了後の疲れがすごい。
    人の内面を書くのが本当に、本当に、上手。
    ドラマを見たりや小説を読んでいる感じではなく、誰かの人生を見てる感じ。
    キラキラした内面じゃなくて、ドロドロしていて、自分の内面と重なる部分も多々あった。
    そうそう、人間って、そんなキレイなもんじゃないよねって思わされる作品。

    ストーリーは全く異なるけど、「夢売るふたり」と同じような感覚。
    不幸の中に少しだけ光があって、その小さな光でも生き続けることができるんだって感じられる作品です。

    最後の方は、自分がなんで泣いているのかわからず、涙を流してた。
    家で読んで良かった笑

    映画は、池松壮亮が良かった。
    本と映画だと、印象が異なると思う。
    本を先に読んだからか、本の方が丁寧に描かれている気がしました。
    映画でも、ビーフシチューの件やってほしかったな。

    ★自分が意識しているより、ずっと早く、ずっと遠くへ、過去は飛び去って行く。手の届かない、遥か彼方に。

  • 以前から気になっていた作品。
    伴侶を突然の事故で亡くしても、悲劇の夫を演じるだけで泣けない主人公。
    一方、妻が事故に遭い、その遺族説明会で怒りわめき狂う男。
    妻を亡くした二人の男、そして母を亡くした子供たちが出会うことで、化学反応が。
    やがて、自己中の主人公は、初めて妻のために涙する。
    そこへ到るまでを、時に一人称で、時には三人称で、視点を変えた複数の語りが、まるで『藪の中』のように綴られる。
    そして、「長い」ではなく「永い」の意味するところは・・・

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著者プロフィール

1974年広島県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。在学中から映画製作の現場に入り、是枝裕和監督などの作品にスタッフとして参加。2002年脚本・監督デビュー作『蛇イチゴ』で数々の賞を受賞し、2006年『ゆれる』で毎日映画コンクール日本映画大賞など様々の国内映画賞を受賞。2009年公開の長編第三作『ディア・ドクター』が日本アカデミー賞最優秀脚本賞、芸術選奨新人賞に選ばれ、国内外で絶賛される。2015年には小説『永い言い訳』で第28回山本周五郎賞候補、第153回直木賞候補。2016年に自身により映画化。

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