辞書になった男 ケンボー先生と山田先生 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 20
  • Amazon.co.jp ・本 (375ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167906856

作品紹介・あらすじ

「三省堂国語辞典」略して「三国(サンコク)」。そして 「新明解国語辞典」略して「新明解」(赤瀬川原平著『新解さんの謎』でブームとなった辞書である)。二冊ともに戦後、三省堂から刊行された辞書で、あわせて累計4000万部の知られざる国民的ベストセラーだ。しかし、この辞書を作った(書いた)二人の人物のことは、ほとんど知られていない。 「三国」を書いたのが、ケンボー先生こと見坊豪紀(けんぼう・ひでとし)。 「新明解」を書いたのは、山田先生こと山田忠雄(やまだ・ただお)。 二人とも国語学者だが、「三国」と「新明解」の性格はまったく異なる。 「三国」が簡潔にして、「現代的」であるとすれば、「新明解」は独断とも思える語釈に満ち、「規範的」。そこには二人の言語観・辞書が反映されている。 本書は、二人の国語学者がいかにして日本辞書史に屹立する二つの辞書を作り上げたかを二人の生涯をたどりながら、追いかけたノンフィクション。二人が辞書の世界に飲みこまれていくさまは壮絶ですらある。 著者・佐々木健一は、同じテーマで「ケンボー先生と山田先生」(NHKBS)という番組を制作したディレクター。同番組はATP賞最優秀賞、放送文化基金賞最優秀賞を受賞。番組には盛り込めなかった新事実やこぼれおちた興味深いエピソード、取材秘話なども含めて、一冊の本にまとめた。本書で日本エッセイスト・クラブ賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 著者、佐々木健一氏は本書で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞されたそうです。
    平成25年4月29日、NHK-BSプレミアムの特番。
    「ケンボー先生と山田先生~辞書に人生を捧げた二人の男」という番組の取材内容に新たな証言や検証を加えて構成したものだそうです。

    ケンボー先生というのは『三省堂国語辞典』を編纂した見坊豪紀(けんぼうひでとし)氏のことで、山田先生というのは、『新明解国語辞典』を編纂した山田忠雄氏のことです。
    二人は東大の同級生で二人とも三省堂の社員でした。
    最初はケンボー先生の助手として山田先生と二人で、『明解国語辞典』を作っていたそうです。それが途中から、簡単に言うと山田先生の反乱で袂を分かち、ケンボー先生は『三国』を、山田先生は『新明解』を別々に作るようになったそうです。
    二人の辞書にはそれぞれ独自のカラーがあり、『三国』は用例採集を1日に15時間もしていたケンボー先生の「現代語事典として説明が平易でそれがよくこなれている」と、国語学者の大野晋氏にいわしめた、オーソドックスな辞典。
    『新明解』は山田先生のカラーが強く出た辞書のことばの”堂々めぐり”を打ち破る辞書界への挑戦状。「ことば」の”表”と”裏”の意味を明らかにした画期的な辞書で悪く言えば、個人的すぎる内容の語釈があること。逆にその語釈が面白いということで日本で最も発行部数の多い辞書だそうです。
    辞書と言えば『広辞苑』と多くの人が思っているのは誤りだそうです。

    今持っている辞書の他に、どちらかを買うなら、一体どちらにしたらいいのか読みながらさんざん悩みました。
    どちらも、欲しい気もしますし、私は辞書を読むほどのマニア(勉強家)ではないので今持っているもので十分な気もしました。
    ただ、辞書を読むなら語釈が個性的な『新明解』が面白そうで、学生さんなら『三国』が基本かと思いました。

    ケンボー先生と山田先生は、友情と引き換えに強烈な個性を辞書に輝かせました。

    • KOROPPYさん
      こんにちは。
      こちらこそいつも「いいね!」ありがとうございます。

      辞書関係の本って、ほんと面白いですよね。
      興味のある本が重なって...
      こんにちは。
      こちらこそいつも「いいね!」ありがとうございます。

      辞書関係の本って、ほんと面白いですよね。
      興味のある本が重なっていて、うれしいです。
      これからも本棚を参考にさせていただきますね^^
      2019/10/02
    • まことさん
      KOROPPYさん♪
      お返事ありがとうございます(*^^*)
      こちらこそ、KOROPPYさんのレビュー、楽しみにしています♪
      KOROPPYさん♪
      お返事ありがとうございます(*^^*)
      こちらこそ、KOROPPYさんのレビュー、楽しみにしています♪
      2019/10/02
  • 『新明解国語辞典』の山田忠雄。
    『三省堂国語辞典』の見坊豪紀。
    ふたりの辞書編集者を追ったドキュメンタリー。

    おもしろかった!
    NHK特番が元なだけあって、検証が深い。
    彼らの信念や功績を追うことで、辞書の歴史・問題点・特色などもひもといていく。
    辞書の世界が深まる1冊。

    もともとは一緒に『明解国語辞典』をつくっていたふたりが、なぜ決別したのか。
    ふたりの確執もゴシップ的ではなく、あくまで辞書編集者としてのこだわりに付随する結果、という書き方。
    『新解さんの謎』でも取り上げられた「一月九日の時点」の謎も解決して、びっくり。

    小口にツメ(インデックス)がついているなど、辞書風のつくりも凝っていて楽しかった。

    • まことさん
      KOROPPYさん♪おはようございます!
      いつも、レビュー楽しく拝見しています。
      そして、毎回「いいね!」ありがとうございます!
      この...
      KOROPPYさん♪おはようございます!
      いつも、レビュー楽しく拝見しています。
      そして、毎回「いいね!」ありがとうございます!
      この本、なんか既視感があると思って読んでいたら、KOROPPYさんのレビューを既に拝見していました。
      辞書の世界は奥が深くて面白いですね!
      また、何か面白い本があったらご紹介ください(*^^*)
      石山茂利夫さんの本も面白かったです♪
      (つい先日レビューされていらした方は図書館になかったのであきらめました)
      2019/09/29
    • KOROPPYさん
      >まことさんへ
      お返事遅くなってすみません。
      こちらこそいつもありがとうございます。
      そう言っていただけて、うれしいです!

      辞書...
      >まことさんへ
      お返事遅くなってすみません。
      こちらこそいつもありがとうございます。
      そう言っていただけて、うれしいです!

      辞書関係の本は、知的好奇心を刺激されますよね^^
      またおもしろい本がありましたら、随時アップしていきます。
      2019/10/02
  • 三省堂の三国と明解を作り上げた先生方の本。これは私の周りのことではあるけれど、○○対▲▲という個人間の対立(というよりは衝突?)には必ず第三者の横槍というか意向が入っている事が多い。この場合は三省堂という会社の意向が多大にあったと言える。この第三者が徹底的に2人の道を分離させた。
    それにしても、膨大な言葉を扱う辞書を作り上げるというのは途方もない事業。特に今のようにデータ化が当たり前にある時代ではないのだから。そういった事業に携わる人らしく2人とも(というかその周りの人たちもではあるが)個性が強い。三浦しをんの「舟を編む」に出てくる人たちの個性の強さよりも更にアクが強い。
    取り急ぎここまで。

  • 数年前にNHKで放送していた番組は見ていたけど、番組放送後に判明した事実なども補完されていて面白かった。
    見坊先生の言葉に対する姿勢が、辞書は言葉を正すものではないというOEDの姿勢とまったく同じというのが面白い。

  • 興奮をもって読んだ。三省堂国語辞典・新明解国語辞典それぞれの主幹編集者・見坊豪紀と山田忠雄。見坊は145万にも及ぶ用例採取で,山田はその独特な語釈で知られる。2人は元は明解国語辞典をともに作ってきた間柄であったが,あることをきっかけに決裂しそれぞれ三国・新解という2つの国民的辞書を生み出した。この本はテレビ番組制作を機に行った関係者・家族への取材を元に,2辞書の歴史,決裂の事情とその後を物語る。国語辞典のあるべき姿についての主張,スタイルの違いはあるものの,仕事に対する思いは執念ともいうべきあついものであった。

  • 国語辞書はどれも同じ、一冊あれば十分。と思っていたが、そうではなかった。どの国語辞典にも「個性」があり、その個性とは書き手の「人格」に他ならい、極めて人間味の溢れるものである事を知る事が出来たのは、大きな収穫。さらに、ケンボー先生と山田先生という、二人の辞書編纂者の生き様も大変面白かった。

  • 2017.12.11 朝活読書サロンで紹介を受ける。

  • 昭和に誕生した2冊の国民的国語辞典「三省堂国語辞典」「新明解国語辞典」。この2冊の源流というか母胎は
    昭和18年に出版された「明解国語辞典」。
    この2冊「客観」と「主観」、「短文」と「長文」、
    「現代的」と「規範的」、とにかく編集方針から
    記述方式、辞書作りの哲学、それらすべてが性格が
    異なり、似ても似つかぬ姉妹辞書が同じ親から誕生。
    「辞書なんてどれも一緒である」は、この二冊限っては
    小説同様「文は人なり」の言説が辞書にも通じること
    なんだと教えてくれる。そこには編纂者の思いや性格が
    ありありと滲み出ているからに他ならない。

    本書は「明解国語辞典」を共に編纂してきた東大の
    同級生であり、理想の国語辞典を目指し手を携えてきた
    良き友であった見坊豪紀と山田忠雄がなぜ袂を分かち、
    見坊(ケンボー)先生は「三省堂国語辞典」を、
    山田先生は「新明解国語辞典」を作ったのか。

    著者はわずかな手がかりを頼りに丹念に取材を進めるも
    難航。ある日、思いもよらない証拠にぶち当たる。
    それは、辞書に記載したある言葉の用例が昭和辞書史の
    謎を解く鍵だった…

    辞書界を揺るがせた最大の謎を上質なミステリーを
    読んでいるかのような知的興奮を覚える一冊。
    秋の夜長にどうぞ。

  •  ちょっと変わった辞書として有名な、新明解辞典(以下新明解)、そして学生向けに作られた三省堂国語辞典(以下三国)、それぞれの辞書を作ったのは2人の男だった。
     山田先生は新明解を作り、ケンボー先生は三国を作った。
     けれども、最初は、明解国語辞典を2人で作っていた。

     辞書といえば言葉の定義がはっきりとしていて、誰が作っても同じというかわかる内容となっているイメージだが、新明解は割と恣意的な説明が多い。それに比べ三国は簡潔に平易に説明をされている。

  • ドラマだった。番組も見てみたい。しかし、新明解がそんなに売れているとはしらなかった。

  • 辞書編纂者の偉人「見坊豪紀」その人物像がよくわかる。それだけではない。この偉人は、もう一人の偉人「山田忠雄」がいてこの人がいなければまた、ケンボー先生も偉人足りえなかったことがよくわかる。なかなかの快作です。

  • テレビ映像では感じ 見られない 辞書を題材にした 人間物語 最高

  • サンキュータツオ経由で本書の存在を知り、長く気になっていた。
    思い切ってもとになったテレビ番組を見てみたら、これが一大ミステリースペクタクル!
    大興奮して本書を読んだ次第。

    「明解国語辞典」
    金田一京助の名義のもとに、ケンボー先生がほぼ単独で作り、山田先生が「助手」を務めた。
    ふたりの理想は食い違い、改訂のタイミングを巡って三省堂編集者の作為も悪く作用して、仲たがい。

    「三省堂国語辞典」
    独特な性格も相俟って言葉の海に飲まれてしまったともいえるケンボー先生。
    辞書は鑑となる前にまずは鏡であるべきだと考え、凄まじい量の用例を収集した。

    「新明解国語辞典」
    「学生のひねたような」山田先生が、文明批評であるべきとしてビアス「悪魔の辞典」のベクトルで推し進めた。
    「見坊に事故あり」という序文が離別の引き金になってしまったという歴史。
    いわば編集主幹の「乗っ取り」。

    これが関係者の証言だけでなく、各々の辞書の例文の中に手がかりが求められるのが、大変面白い。
    「新解さんの謎」で知ったただの笑える例文かと思いきや、人生がかかっていたのだ。

    ふたりの性格や超人的な体力に、読んでいて魅了される。
    本の後半に「柔の見坊」「剛の山田」という一見の印象を覆す記述(ケンボー先生のほうが強情、山田先生は卓球好きで面倒見がいい、など)もあり、
    辞書のスタイルも別ベクトルだが見方によっては表裏一体な部分もある、という着地が、もうできすぎたミステリーのように面白かった。

    共同作業ができなかったからこそよかった、と人生の終盤に零していたという記述もあったが、
    これこそ世界の豊かさというものだ。

  • ケンボー先生曰く言葉は生まれた時から古くなる。

    だからこそ145万語というワードハンティングをして確証をとってから実証をするというのは言葉を古くさせないためである。

    対して山田先生は
    新明解の文例の特異さだけが注目されているが
    まずは堂々めぐりをやめさせたかった。
    右とは左ではないもの
    左を引くと右ではないものという説明しているようで説明していない。

    それを単語をスケッチ、
    写生することによって捉える。

    どちらも言葉の重み、
    動きを分かってるからこそ
    同じ心意気なのに方法論が違うために
    二頭合間見えず。

    一緒に出来なかったからこそ日本は世界に誇る個性のある辞書が生まれたのである。

  • テレビのドキュメンタリー番組の取材・製作にもとづいた読み応えのあるノンフィクション。出版元や交流のあった編集者はじめとする関係者の貴重な証言にもとづいて「三省堂国語辞典」と「新明解国語辞典」という個性的な2つの国語辞書の生まれた経緯を追い、辞書に生涯を捧げたと言っても過言ではない二人の人物を掘り下げている。
    多くの人が辞書に期待するような「唯一絶対の語釈」「意味の正解」などないのだ、ということを地でいくすれ違いエピソード、その痕跡がそれぞれの辞書に残っている驚き。仕事柄あっというまにひきこまれてぐいぐい読めた。

  • 一冊、面白く読んだ。
    山田忠雄と、見坊豪紀(ひでとし)という、不世出の二人の辞書編纂者の生涯を追った本。
    一時は共に学び、ともに仕事をした二人が、個性の違いや、大人の諸事情により、やがて袂を分かっていく。
    少し切ない部分もある。

    さて、赤瀬川さんの『新解さんの謎』もあって、新明解にはなじんできた。
    山田先生の、タラの語釈に、「美味、うまい」とすればよい、と主張し、編纂仲間の金田一春彦さんに笑われて激高したエピソードが強烈な印象を放っている。
    あの独特な語釈は、実際、奇を衒ったものではなく、純粋にそれがいいと思ってなされたものだった、ということに、やはり衝撃を受けた。
    そして、山田先生は、ビアスの『悪魔の辞典』をイメージしていたとは。
    先ごろ話題の『暮しの手帖』商品テストで国語辞典が取り上げられ、問題化した辞書の盗用体質に、新明解は決別する辞書たらんとしたことも。
    古語辞典を引いていて思うのは、この言葉ってどういう場面で、どんなニュアンスで使われていたんだろうということ。
    だって、形容詞の訳語は下手をすると大方「趣がある」か、「はなはだしい」か、「不快だ」になってしまう。
    どう違うのか、とじりじりしてしまう。
    新明解はそういった色合いを記述しようとし(てああなって)いったのだという。
    本当に、表面的にしかこの辞書のことを知らなかった。

    一方、『三省堂国語辞典』のケンボー先生。
    実は今まで一度も三国を手にしたことがない、と思う。
    きっとこれと先に出合っていたら、自分の中の基準になっていた気がする。
    今は飯間浩明さんが仕事を引き継いでいるそうだ。
    十四万語の用例に裏付けられた、簡明な辞書。
    たっぷりの野菜や肉類を煮込んで濾して作った、その割に驚くほどあっさりした味わいのコンソメスープのような辞書?
    やはり一度手に取ってみたい。

    山田先生こと忠雄が山田孝雄の子だったことも、初めて知った(が、それほど驚かなかった)。
    むしろ驚いたのは、今を時めく日本語学者の今野真二さんが山田先生の甥御さんだったということ。
    金田一一家といい、山田家といい、日本語学者もお家芸なのかな?

  •  辞書の話はおもしろい。だから導入部を読んで期待したのだがさて。「新明解」こと新明解国語辞典の山田忠雄と「三国」こと三省堂国語辞典の見坊豪紀の相克の物語。元々東大の同級生であった二人が最初は協力して画期的な明解国語辞典を編纂し、その後に袂を分かってそれぞれの道へ向かった。その原因がちょっとした行き違いであったか、思い込みであったか、はたまた驚いたことに三省堂の方針であったか、というところにかなりの部分が割かれている。テレビ番組の取材で初めて明らかになったことも多く、その書籍化したものが本書なのだからそれは当然なのだけど、テレビ的な下世話な興味感が拭えない。そんなことはどうでもいいとはいわないが、すでに鬼籍に入られた両人同士の過去の経緯はともかく、辞書編纂に生涯をかけた二人のすさまじいまでの行きざまの方にただただ圧倒される。そっちの方をもっともっと読みたい。

  • 【辞書は小説よりも奇なり】一冊の辞書を共に作っていた二人の男はやがて決別し、二冊の国民的辞書が生まれた。「三国」と「新解さん」に秘められた衝撃の真相。

  • 辞書編纂の人間臭い裏話。

    ほぼ学者のような二人の編纂者にサラリーマンの出版社員が絡んで、二人の関係は修復することがなかった。

    ただ、いずれにしても二人の関係は、遅かれ早かれ破綻することになったのだろう。

    完成した作品である辞書を楽しんでみよう。

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著者プロフィール

佐々木健一

1943年,東京都生まれ.東京大学文学部卒業.同大学院人文科学研究科修了.東京大学文学部助手,埼玉大学助教授,東京大学文学部助教授,同大学大学院人文社会系研究科教授,日本大学文理学部教授を経て,現在,東京大学名誉教授.美学会会長,国際美学連盟会長,日本18世紀学会代表幹事を歴任.専攻,美学,フランス思想史.

「2019年 『美学への招待 増補版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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