逢沢りく 下 (文春文庫 ほ 22-2)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167906962

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  • 全2巻。まるで芥川賞作家の小説のような、単館系映画の作品ような雰囲気を持っているが、流暢な文体も無ければ、凝った映像と編集もないマンガで、コレを表現出来たことに驚いた。

    仮面夫婦の両親のもと、感情を無くした14歳の美少女りくを気持ち悪くなった母親が、大阪の親戚に一時的に預けるという話。ある意味母親が1番のモンスター。りくは合わせ鏡に過ぎない。

    第19回(2015年)手塚治虫文化賞マンガ大賞受賞。島本和彦『アオイホノオ』、松井優征『暗殺教室』、荒川弘『銀の匙 Silver Spoon』、大今良時『聲の形』、漫画・近藤ようこ/原作・津原泰水『五色の船』、コージィ城倉『チェイサー』、岸本斉史『NARUTO-ナルト-』、洞田創『平成うろ覺え草紙』を抑えての受賞だ。どんな傑作なのか見てみたかった。どうやら私と同様、審査員はまるきりの変化球にきりきり舞いしたようだ。見たことのない異作だった。

    本来のペン描きを捨てて、鉛筆描き一つに絞った世界観。それは、小学生や中学生が漫画を描き始めて、最初にノートに始めたあの手触りである。そういう意味では、私も未だに持っているノートがある(少年の頃はマンガ家志望だった)。稚拙だけど、1番本気の魂が入った作品になる。

    もちろん、ほしよりこは大人だから、逢沢りくから見た世界だけではなく、次第とお父さんやお母さんから見た残酷な世界観をも描き、反対に大阪のコテコテの世界も対になるように描く。「号泣必至」と宣伝文は書くが、途中で涙を忘れたりくのように、私の涙はなぜか出て来ない。自由自在に涙を出すことができていたりくは「大人ってとんでもないウソつきなんだから」と、5歳の時ちゃんに繰り返し云う。私の涙が出ないのは感動しなかった「印」じゃない。りくが途中で出せなくなったのも、心が動かなかったわけじゃなくて、反対に心が動かされてそれを表現する手段が見つからなかったためだと、誰でもわかるように、世界を作っていた。

    人間は嘘をつく動物だと知っているりくは、いつの日か愛情表現でウソ(ギャグ)を言い合っている関西弁を自由自在に操れるようになると思う。

  • 関西の人たちとの会話、面白い!

  • ・小説と漫画の間のような初めてみる形式の本だった。スパに置いてあってたまたま手に取ってみたが、スラスラ読めた。

    ・作中で描かれる関西人の温かみ、自分は好きだ。関西もそうだけど今までと全く違う土地に住むのも自分の価値観が変わりそうでいいなと思った。

    ・最後のシーンは、なんだかんだ今まで親に大事に守られてきたりくが、自分が変わっていくことへの不安からなのか。何にせよ本心が出せたのはよかったのではないか。

  • コマから文字がはみ出るほど関西弁で喋り倒している大阪のおばちゃんが好き。
    心に1人大阪のおばちゃんを置いたら強いマインドで生きていけそう。
    実際に大阪のおばちゃんに会ったことはないですが...

  • 大切な友だちに読んでみてと言われた本

    読み進めるほど主人公に対して私は好きになれない、逢沢りく
    という気持ちしかなかったのだけど

    関西弁が出てきたあたりから、心地の良い笑いが顔を出し始め
    お母さんが好きでいてくれた男の人に諭されるシーンで
    まず一度まさかというほど胸を揺さぶられ

    3ページくらいまえまで全然そんな気持ちなかった
    というテンションのまま

    ラストのページで号泣しました。

    総じてあたたかくてとっても素敵な作品です。
    みんな傷ついてるし、分かりたいと思ってるし、側にいたいと思ってる。

    この作品を評する言葉に優しいとかあたたかいと使ってしまうのはきっとそういうことなのだと思います。

  • ほしよりこさん とてもすき
    一瞬泣いた
    あいざわりくの絶望とうつくしさと
    少年のかわいいこと。

  • 関西弁のやりとりは話し声で聴こえてくるくらいテンポが良く、普通に笑える。
    最後はそんな大きな展開ではないと思うのに、心がぎゅっとなりました。
    漫画だけど小説を読み終わったような、不思議な感覚になりました。

  • しつこいほどの鳥いじりがGOOD

  • 途中から泣けてきた、、、 
    また読み返したいと思う

  • 心優しい関西の家族や学校生活から徐々にりくの気持ちに変化が現れる様子をみながら、最後はこちらまで心がほぐれるようだった。
    時ちゃんがりくに鳥が話している関西弁を真似させることや、りくはあれほど動物に嫌われていたのに最後の場面で登場するカニはじっとりくを見ていることなど、動物を通してもりくの変化が表現されている。
    境界性パーソナリティ障害という病気が家庭にどんな影響を及ぼすのかが分かる物語でもある。
    何度も読み返しているが毎回新しい発見があり、この物語に出会えて本当に良かったと思う。

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著者プロフィール

1974年生まれ。関西在住。2003年7月より、「きょうの猫村さん」をネット上で連載。2005年7月に初の単行本『きょうの猫村さん 1』を出版し、日本中の老若男女を虜に。2015年には『逢沢りく』で手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞した。著書に『きょうの猫村さん』『カーサの猫村さん』シリーズのほか、『僕とポーク』『山とそば』『B&D』がある。

「2017年 『2018年「きょうの猫村さん」卓上カレンダー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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