ターミナルタウン (文春文庫)

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  • 文藝春秋 (2016年10月7日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (544ページ) / ISBN・EAN: 9784167907112

みんなの感想まとめ

衰退した町の復興をテーマにした物語は、鉄道とともに生きてきた人々の心の交差点を描いています。登場人物たちの視点を通して、影を失った男や消失した列車、見えないタワーなど、現実と少しずれた「ありそうでない...

感想・レビュー・書評

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  • かつて鉄道によって栄えた「静原街」
    乗り換え路線の廃止、高速列車が通過する事になり、町は衰退の一途を辿っていった。三崎流町おこし小説。

    三崎亜記さんの他作品に出てくる「都」や本物の象が引退後の職として遊具となる「象さんのすべり台」、人が消える「消失」の現象(今作では列車ごと消える)、有り得なさそうな職業などが登場します。
    現実の中には微妙に現実とは違う「ありそうでないモノ」を散りばめてくるので毎回ネタの濃さ、複雑さにむせ返ってます(褒め言葉)

    衰退した町の復興という題材ではあるものの、物語に配置された要素
    「処置」として影を失った男や、無いのに有るとされているタワー、トンネルとは違う「種」から育てて作り上げる隧道と呼ばれる設備、それを育て上げる職人達など、今回も濃いめです。

    影なき者、新参者、町長、町長と対立する隧道師、類稀なる才能を持ちながら町のために暗躍する若者、そして全てを見つめてきた駅長…
    各章、登場人物一人に焦点を当てて進み、町の過去、謎、現在と未来について少しずつ全体像(鉄道風にいうと路線図)が見えていく構成でした。

    「列車」や「駅」はモチーフとして人々が交差する要素が強くなりますが、交差する中で心の支え(終着)となるような町の姿になっていく過程が描かれているように感じました。


  • 終着駅として鉄道と共に発展してきた静原町。衰退、再興を巡り、町民や元町長、駅長等各登場人物の視点で話が進む。三崎ワールド全開で今回も設定がなかなか。隧道と呼ばれる生きた闇のトンネル、影なき者、見えないが「ある」タワー、鉄道原理主義者。設定に慣れるのに時間がかかるが入っていくと町の興亡に揺れる人々の姿が見えてくる。町の未来を考え、清濁併せ飲む町長の姿にリーダーとして強さと辛さを感じた。町長の犠牲と残された町民の決意の上に町は発展する方向に。駅に捨てられ駅に育てられたという天才丸川も頭がよくカッコいい。

    全ての立場の者が納得できる、不満のない落とし所など存在しない。状況を冷静に見極めたなら大義を達成するために敢えて鉾を収める判断も必要。それは妥協や日和見ではなく、戦略であり、次へとつなげるための一歩。一つの町を束ねる立場に立つ者は、正義と悪、正しいと正しくない、そんな二元論ではどこへもたどり着けない。自らの信念に従って、清濁併せ飲んで進まなければ町民を路頭に迷わせるだけだ。

  • 面白かったです。
    鉄道と共に生きてきたけれど、乗り換え路線の廃止でほとんどの電車が通過するようになって寂れた町のお話でした。
    光陽台ニュータウンや、象さんすべり台のあった公園、駅を通り過ぎる下り451列車の光…と、これまでの三崎作品に出てきたワードがたくさんあって嬉しいです。
    80kmの駅、影を無くした「影無き者」、見えないタワー、隧道を種から作る隧道士、鉄道原理主義者や鉄道愛好者、という不思議な要素も三崎さんっぽいです。
    それぞれの登場人物の視点でお話が進んでいくので、この人はこういう考えを持っていたのか…と思わされます。
    消失した下り451列車の結末はじーんとしました。短い短編がこんなにふくらんだお話になるなんて。
    でも町長さんはもっと別の方法があったのではないか、と悲しくなりました。

    町興しの光と影をみました。
    良い方法、悪い方法…リアリティありました。
    町に留まる人、町を出ていく人…でも、彼らのターミナルタウンはずっとここなのだろうな、と思いました。

  • 再読。「異なる位相、異なる入口から入って、異なる路線を辿って何度もこの作品を味わいなおすことができるでしょう。(解説より抜粋)」多くの視点やテーマを盛り込みながら、やり過ぎ感がなく、器にきちんと収まっているところがスゴイ。

  • そこかしこに「喪われた」何かが存在していて、本当は読んでいてしんどくもあった。

    影を失った男の話もそうなのだけど、見えないタワーであったり、活気を失った町であったり。
    そうしたモチーフが、三崎亜記らしいシステムで彩られていくといった感じ。
    ただ、他作品との大きな差というのは見られないようにも思う。
    喪われた人々は、こちら側の人々には見えても、触れることが出来ないというシチュエーション。
    それは、思い出とか、幻想と呼ぶにはあまりにも生々しくて切なくなる。

    けれど、いつもこの三崎亜記的消失が、いつか自分にも起こるのではないか。
    いや、既に消失しているのだけれど、そのことに気付いていないだけなのではないか。

    と、ほんの少し読んでいて不安を覚えるのだった。

  • 2020/01/25

  • 三崎作品の中でも最大級のボリュームがある長編ですが、それにもかかわらず最後まで緻密に設計された非常に完成度の高い作品です。
    隧道および隧道士と影無き者が今回の三崎ワールドで産み出された非現実要素であり、また旧都や歩行技師が登場することで他の作品とも緩やかに繋がっている。
    地方都市再生という現実的な課題を取り込むことで物語の非現実性とのズレを巧みに融合させて、違和感なく読者が物語世界に入ることができる。
    個人的には三崎作品の中でもベストな一冊だと思います。

  • ま る か わ ( °-° )
    って感じです(笑)
    読めば分かります。
    面白かったのは、「ぞうさん滑り台」「隧道」みたいな世界観です。
    鉄道の名前とか、自治体の名前とか、ややこしいのでそこは読みにくかったですが、日常とファンタジー的なものが混じってる。
    そんなところが好きでした、

  • この日本ではない州に分かれた日本に、トンネルができる前は種から育てて隧道を作るそんな隧道士が集まる地域での町おこしや秘密のタワーなどこの世界を受け入れるまでに時間がかかったが途中からサクサク読める。丸川君の話が1番面白く読めた。

  • 独特な世界観が好きなので、面白く最後まで一気に読むことができた。

  • 三崎氏らしい独特の世界観。
    ただ本作は、「隧道を種から育てる隧道士」と
    「影を失った者」という異様な設定以外は、
    割とまとも(失礼!)か(^ ^;

    事故で乗客もろとも行方不明になった列車が、
    光だけの存在となって毎日同じ時間に線路を通る...
    というファンタジー要素も入ってくるが、
    この程度は過去に何度も描かれている。
    代表作は「X電車で行こう」とか?

    前提となる設定・世界観は「異常」だが、
    その中で描かれていることは「政治の駆け引き」や、
    「家族を喪った哀しみと復讐」「人生の進路」
    「地方都市の過疎化」「世代交代」などなど
    しごく「まとも」なストーリー。
    そのため、異様な世界観の中でも
    うっかり感動させられてしまうのが三崎節(^ ^;

    ただ、今回は、設定の「後出し感」が
    やや強いような印象で...(^ ^;
    そのためか、説明くさい描写が多い気も(^ ^;
    その分★一つマイナスしてみました(^ ^;

  • 過去にはターミナルタウンとして栄えたが、
    高速鉄道の通過駅となるに従い鄙びた町のお話。

    とは言うもののそこは三崎亜記作品。
    現実の日本とは似て非なる世界観に誘ってくれる。

    元公務員である作者の、お役所・国が行う権謀術数の描き方も健在。

    個人的には丸川君がお気に入り。

    今後の楽しみとしては、同作者の他作品とのリンク。
    「象さんすべり台」は他の作品にも登場するし、
    北州や旧都、開南市、中津原といった地名が今後も他作品で再登場してくれるのを願う。

  • 2017 4/17

  • いつもながら不思議な世界観の中で展開されるお話。

    影を失った人。首都で自分の居場所を見つけられなかった人。恋人を失った人。駅の役割を失った駅と駅長さん。ないものをあると思い続ける人々。テーマは「喪失」ということなのだなあと。それぞれが喪失したものに少しずつ向き合い、何かを取り戻していく過程を描いているのでしょう。

    町長さんが選んだ選択に言葉が出ない。ちがう道があったのではないかと思ってしまう。

  • 停まる列車はないのに駅。その終着駅の街、ターミナルタウン。ないのにあることになっているタワー。住民がいないのに閉鎖されないニュータウン。訪れる人のいない商店街。閉鎖されて行き来できない自由通路。
    そういう矛盾をかかえた存在が本書の舞台。三崎亜記らしい「ごく普通の日常なのに一箇所だけ異様」な状況を楽しませてくれる。クライマックスのタワーの「ないのにある」を解決するシーンは一発逆転奇想天外それでいてそれしかなかったという悲しみと安堵のカタルシスになっていて、さすが三崎亜記、と嬉しくなる。
    ただし、登場人物たちが極端な性格付けをされていて、そのキャラのおかしさでストーリーを進めているようなところがある。テレビアニメっぽいというかラノベっぽいというか、安っぽいところがあり少々残念。

  • 現実的な世界と現実的な世界を掛け合わせて作る非現実的な世界観に魅せられます。
    魔法やしゃべる動物は出てこないけれど立派なファンタジーです。
    各章ごとに主となる登場人物が変わり、物語を進めていく形式をうまく使われています。少しづつあらわになってくる物語の輪郭に一気に引き込まれました。
    隧道とても気になります。闇を育てるという発想がとても素敵です。

  • 何時もの首都・旧都・北端連合州などが存在する三崎ワールド。
    主要鉄道が廃線となり、高速鉄道も止まらなくなって凋落の一途を辿る鉄道の町・静原町をめぐる各州や接続会社の暗躍が描かれます。
    描き方によっては「下町ロケット」のような話になるところ。しかしそこは三崎さん。例によって不思議な世界になってしまいます。
    これまでの物語に出てきた「歩行技師」なども出てきます。そこに今回登場するのは「影無き者」や「隧道師」。影無き者は本当に物理的に影が無くて政府に管理されているし、隧道師は種から隧道を育てる人々。
    現実の世界の中にそんな不思議な設定を一杯詰め込んで、何とも言えない独自の世界を作り出していきます。
    ほかの人のレビューにもあるように「喪失」がテーマなのでしょうね。

    三崎さんにしては珍しい500ページを超える長編です。しかし、上思議な世界をこの長さで維持し続けるのは少々辛そうです。やはり基本は短編作家さんなのだと思います

  • 三崎亜記の長編小説が文庫化。
    随所に著者の他作品でも重要なテーマになっている、『喪失感』が見え隠れする。現実とは少しずれたところでストーリーが進むのもお約束。
    読み応えのある長編で楽しめたのだが、三崎亜記は、矢張り本質的には短編作家なのでは……とも思う。好みの問題だろうけども。

  • 【新感覚町興し小説の誕生】かつてターミナルだった駅をほぼすべての電車が通過するようになり衰退した静原町――鉄道を失った鉄道城下町は復興できるのか?

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著者プロフィール

1970年福岡県生まれ。熊本大学文学部史学科卒業。2004年『となり町戦争』で第17回小説すばる新人賞を受賞しビュー。同作は18万部のヒットとなり直木賞にもノミネートされた。著書に『廃墟建築士』『刻まれない明日』『コロヨシ!!』『決起! コロヨシ!!2』など。

「2021年 『博多さっぱそうらん記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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