- 文藝春秋 (2016年11月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784167907266
感想・レビュー・書評
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本作は、サンフランシスコ在住の精神科医、スタンレー・スタインバーグ博士が精神科医として1948年から1950年まで沖縄アメリカ陸軍地に勤務し、ニシムイ美術村の芸術家たちと交流した記憶をもとに書かれた創作です。
スタインバーグ博士のニシムイ・コレクションは2009年沖縄県立博物館・美術館へ里帰りを果たしたそうです。その展覧会を作者の原田マハさんが、鑑賞されたことにより創られた物語。
84歳となった、ドクター・ウィルソンがサンフランシスコで24歳の時に勤務した沖縄の精神科の診療所を回想するところからこの物語は始まります。
沖縄のニシムイにある芸術家の集落(コロニー)でゴッホでもゴーギャンでもない若き七人の画家たちと出会い、生きるために描いているセイイチ・タイラや天才肌のヒガとの交流を、厳しい沖縄の社会情勢と青い海を背景に生き生きと描いています。若さと熱い情熱が感じられる物語でした。 -
自分の顔をまじまじと見る勇気。それを作品として他者に送れる。そういった感覚が無いので読んでて良い体験になりました。
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戦後沖縄に駐在していたアメリカ軍精神科医のスタンレー・スタインバーグさんが、交流のあった沖縄のニシムイの画家達の作品を保存していた
それを沖縄県立美術館に里帰りさせるというTV番組「日曜美術館」の特集を観ていた原田マハさんが、彼の承諾を得てニシムイの思い出を小説にし、90歳を越える彼の元へ送るという奇跡の様な話!
物語は実話ベース
肖像画や風景画などを売って生計を立てながら、独自の創作活動をしていたニシムイの若手画家たちと、戦後間もない沖縄に送り込まれたアメリカ軍精神科医エドことスタンレー・スタインバーグさんとの友情が描かれている
沖縄の人にとって憎いアメリカ軍
米軍人にとっても民間人を殺してしまったというトラウマ
しかし芸術は言葉や国境、人種の垣根を越えて、人と人を結びつける力を持っていた
主人公エドと画家タイラを結びつけたものはアートだった
強い絆で結ばれた二人
そんな事が実際あったなんて凄い
そんなある日、ある事件が。。。
同じ日本にいながら、沖縄の事をあまり知らないと気付いた
沖縄の人の気持ちはこの作品を読んでもわからないが、せめて沖縄の歴史をもっと知る努力をしなければいけないと思った
カバー画は、ニシムイの日本人画家タイラこと玉那覇正吉さんが描いた、アメリカ軍精神科医エドことスタンレー・スタインバーグの肖像画である
インパクト有り -
表紙の肖像画が印象的な、原田さんのアートフィクション。
終戦直後の沖縄へ軍医として派遣された、若き精神科医のエドワード。
ある非番の日、島内を同僚とドライブしていたエドワードは、〈ニシムイ・アート・ヴィレッジ〉という画家たちが暮らす集落に辿り着きますが・・・。
冒頭で「アート“フィクション”」と書きましたが、この作品は実話がベースとなっているとのことです。
表紙の肖像画のモデルとなった、スタンレー・スタインバーグ博士と、この絵を描いた玉那覇正吉さんをはじめとした〈ニシムイ美術村〉の芸術家たちとの交流が実際にあったということが、この物語の内容に深みを与えているように思います。
勿論、アメリカ軍人と沖縄の芸術家たちとの単なる“友情物語”という綺麗ごとだけでなく、太平洋戦争の本土決戦で焦土化した沖縄の人々の厳しい現実(“食べていく”為に、米国軍人相手の商売をせざるを得ない等・・)も書かれています。
物語の中で、ニシムイの芸術家の一人でアルコール依存症になってしまったヒガが“ヤマト(日本)とアメリカ”への怒りを吐露していたように、沖縄の人々からすれば“ヤマト(日本)とアメリカが勝手に自分たちの土地(沖縄)を戦場にしてこの美しい故郷をボロボロにされた”といえるわけで、その心中たるや察するに余りあるものがありますね・・。
このような複雑な背景がありながらも、“アートを愛する心”という共通の思いが言葉や文化、そして立場をを越えて両者を結びつけていく展開に胸が熱くなりました。
読後感も清々しく、本書によって沖縄にこのような、アーティストたちのコロニーが実在したということが知れて良かったな、と思いました。 -
心が震える作品。過去の大切な時間を想うときの心がチクっとするような切なさ、まさにそれがこの小説に詰まっている。
プロローグでは医師エドが沖縄で仲間と過ごした日々に思いを馳せるが、本編を読むとエドの過去を追体験をするので、必然的にまたプロローグを読み返して改めて感慨に耽りたくなる。
この小説の良いところは、特に大事件が起きる訳でもなく、ページ数も少ないのだけど、エドが芸術家たちと触れ合う日々を追いながら読者にも特別な時間の流れが感じられること。
最後は胸がいっぱいになり、涙がとめどなく流れた。
こんな思いを体験できるなんて、だから読書はやめられない。 -
太平洋戦争終結直後の沖縄へ軍医として派遣された若き医師エド・ウィルソンの沖縄での美しい物語。
父に送ってもらった真っ赤なポンティアックで同僚とドライブに出かけた時、たまたま見つけた美術村の人との交流。
実話を元にした感動作とのことだったが、終始温かい気持ちに包まれるような、そんな美しい物語だった。
ディズニーのアラジンもそうだが、友情って、愛情を描くより素敵な時ってあるなぁ。。。と。
そんなほっこりと、温かい気持ちにさせてくれた本でした。
ミステリ好きの、起伏の激しい小説が好みの私には少し大人しすぎたかも。。。(^_^;) -
2025.6冊目読了
大好きな原田マハさんの著書の中でも
随分長く積読していた本。
テーマが戦争(戦後)なので元気な時に読みたいと
思っていました。
心配はよそに、重すぎることも無く
軍医と戦後沖縄の画家との交流を描いた実話。
アートを通して、わかりあってゆく……
ラストは、BEのようでHEのようで。
読み手によるかと思いますが私は決して
バットではないと思いました
必ずやいつか再会出来たと想像します。
原田マハさんだからこそ書けたアート小説
だと思います。 -
終戦直後の、アメリカ支配下の沖縄が舞台。
米軍精神科医のエドやその同僚と、首里の丘に「ニシムイ美術村」を作って寄り集まって住んでいる画家たちの交流が主なストーリー。
謝辞を読むと、実際にサンフランシスコ在住で沖縄米軍基地で精神科医として戦後過ごした人物に取材して書かれたようなので、実話をもとにしたものだった。
支配するものされるもの、勝ったもの負けたもの、、、そういったものは芸術を前にした交流においては意味をなさなくなる。
また、沖縄は確かに日本の一部なのに沖縄人はまるで日本を憎んでいるかのようであり、犠牲者をたくさん出したアメリカのことを解放者として受け入れている節がある…との文章に、沖縄の複雑な立ち位置が垣間見えた。 -
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図書館本。
戦後の沖縄とアメリカ軍。軍医とニシムイで絵を描き続けている日本人たち。
芸術とはさもありなん。
芸術を介して交流を深めあい、別れが訪れる。
実話ベースのストーリー。 -
原田マハ『太陽の棘』文春文庫。
Twitterでフォロワーの方からお薦め頂いた作品。『楽園のカンヴァス』『本日は、お日柄もよく』『暗幕のゲルニカ』と並ぶ良い作品だった。
戦後間もなく、アメリカに支配された沖縄を舞台に米軍従軍医師と現地の画家仲間たちとの交流を描いた感動の物語。
日本に返還された今もなお、米軍による占領、或いは侵略の続く沖縄。誰もが平和を望み、平穏な日々を願っているはずなのだが、国家や一部個人の論理はそれを許さないのは何故なのか……
原田マハの描く沖縄はさらに厳しい環境であるはずなのに、日本とアメリカの国境をも超越した繋がりを感じさせる。それがこの疑問への答えなのかも知れない。 -
戦後沖縄の特殊な事情、どんな境遇でも描き続けるニシムイ村の画家たち。テレビで陽気に振る舞う沖縄の方達の心の影の部分を垣間見たように感じた。太陽の棘。
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安定の原田マハ。史実を基に書かれたと知ったのは読了後だ。自分の無知を痛感する。
しかし、読了後に知って良かったかもしれない。先入観なく読めた上、こんな小説みたいな交流が現実にあったという衝撃と共に、私の記憶と心に深く刻まれ、印象深い一冊となった。
本当、自分は沖縄については何も知らないと思う。多少の歴史知識はあるものの、観光地やリゾート地としての沖縄のイメージが強い。
第二次世界大戦の悲しい歴史、現在進行形の米軍基地問題。関心を持たなければ、雑多なニュースの1つとして通り過ぎていく。
今回、アートという観点から戦後の沖縄を見られたことは、新しい沖縄を知るきっかけになった。
しかし、原田マハ小説を読むとアートの素晴らしさを感じる。 -
面白かった
実話をもとにした心に刺さる作品
終戦後の占領下の沖縄での物語。
ストーリとしては、
米軍の若き精神科医エドワードは沖縄に赴任。ある日、沖縄の画家たちが暮らす集落ニシムイ美術村に行きつきます。
そこで、タイラをふくむ画家たちとの交流の物語。
当時の沖縄の状態、状況を踏まえて、アートを介して、言葉、文化、お互いの立場を超えて、絆を深めていきます。
しかし、そんな彼らとの間に大事件が..
そして、ラストシーン。これがぐっと刺さった。
まさに太陽の棘
お勧め -
米軍の若き軍医と、言葉、文化、立場の壁を越え、沖縄の画家達と深めていく友情。
この作品を通じて、月並みだけれど、戦争によって勝った方も負けた方も、あらゆる面で犠牲となった人々がいることを思い知らされる。 -
終戦直後、占領下の沖縄に赴任してきた若き精神科医エド。迷い込んだ山の中のニシムイアートヴィレッジのタイラや他の画家たちとエドの絆を描く。
「太陽の棘」の意味は、途中のアランの言葉に含まれるのかと思ったら、最後の最後に刺さってきた。
全員いつかは帰ることになるのだろう。そうならなくちゃいけないだろ。おれらのためにも、、、沖縄のためにも。
この言葉は今も実現されていない。
解説より
タイラは、「エドが沖縄と沖縄人を理解できない」ということを理解している。その上で二人の友情は成立している。
原田マハ氏は、小説家の優れた才能と人間的な暖かさにより、どんなに善意の人間であっても、理解できない事柄があることを明らかにした。 -
原田マハを読むのはこれで7冊目になる。
アートをテーマにしているということは、楽園のカンヴァスや暗幕のゲルニカのようなテイストなのかなと予想しながら読んだ。
中盤までは、星3つな気分で読んだ。面白いのだけど、上述の名作に比べると普通っぽさが否めない。
「アート、沖縄、戦争と平和」と言ったテーマで書かれる本書。まさしく原田マハの得意分野…?! 失礼ながら、まるで片手間でさらりと書いてしまったような印象を受けた。
それは本書のボリュームの少なさも手伝っているかも知れない。
だけど終盤ではぐぐっと評価が上がり、なんだかんだ良い本だった。短いながらにしっかりと内容がある。
それまでの伏線(鏡とか、山から船が見えることとか)はさらりと回収されるし、主人公とニシムイの芸術家たちの関係性もとても良かった。
ラストシーンでは不覚にもホロリときてしまった…w 感動作と銘打つだけのことはある。
また、文庫本ならではの良さとして、解説も良かった。原田マハの文章が優しくて暖かいだけに、佐藤優のゴツっとした解説文は印象に残る。原田マハがわざわざ説明しなかった小説の背景的な部分がさらりと説明されていて勉強になった。 -
実在した沖縄のニシムイ美術村を知れただけでも、読んで良かったと思える。
純粋に美術史としてニシムイ美術村を知りたいと思うなら、もちろんこちらの作品はフィクションも入っているだろうし、良くはない。
だけどより多くの人にニシムイ美術村を知ってもらい、興味を持ってもらうなら、この小説のようにフィクションも交えて、少し俗っぽいストーリーに仕立てる方が効果的。
美術史の専門書や、文学的すぎる小説だと美術のの敷居は低くならず、沢山の人には届かない。
だから原田マハさんが書く全てのアート小説は、朝ドラ風なストーリーで、誰にでも読みやすく、美術に親しみを持てるし、美術への興味が湧いてくる。好き嫌いはあれど、そういう意味でとても大事な役割を果たしていると思う。
美術の敷居がもっと低くなることを願っている私からしたら、とても嬉しい。
それにしても、戦後のかなり早い時期、まだ荒れ果てている沖縄に美術村を作り、アート作品を生み出していた作家の人たちにはとても驚かされる。やはり創造するということと、人間というのは切っても切れないということの証明だと思った。
そして、戦後すぐに米軍人と交流し、心を通わせることができたニシムイ美術村の人たち。芸術の力なしに、これは不可能だったのだろうと思う。そう思うと、国境もなく言葉も必要としない芸術の力に改めて驚かされる。
著者プロフィール
原田マハの作品
