太陽の棘 (文春文庫 は 40-2)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167907266

感想・レビュー・書評

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  • GW初日、朝から手にしたのは大好きなマハさんの「太陽の棘」。

    沖縄県立博物館・美術館で開催された、スタインバーグ博士所有のニシムイ・コレクションからマハさんが選んだ肖像画が表紙に使われていますが、
    (情報が間違っていたらスミマセン)
    これまでのマハさんのアートや画家を題材にした作品ではモネ、ピカソ、ゴッホ、ムンクなど世界的にも有名な作品が表紙を飾ってきました。

    本作でフォーカスされるのはそんな世界的に有名な画家や作品ではありません。

    沖縄戦後に荒廃した沖縄地域の芸術・文化の復興拠点とすべく美術家集団が集まったニシムイ美術村を中心に戦後の沖縄を舞台に米軍従軍医師・エドワード(通称エド)の視点で描かれています。

    沖縄戦の悲劇、終戦直後の沖縄の人々とアメリカ人、沖縄の人々と内地の日本人の関係、おそらくどこに視点を置くかで物語の見え方は大きく違ったものになっていたと思います。

    どちらにしても辛く苦しいイメージが強くなりがちですが、やはりマハさん。

    辛いシーンも確かにありましたが、絵画を通じてそんな時代の心温まる物語。

    最高です。





    結婚を直前に控え、太平洋戦争終結直後の沖縄へ軍医として派遣された若き医師エドワード(エド)・ウィルソン。幼いころから美術を愛し、自らも絵筆をとる、心優しき男だ。心ならずも軍医として厳しい研修ののち沖縄に派遣されたエドは、父にねだって送ってもらったポンティアックを操って、同僚の友人たちと荒廃した沖縄の地をドライブすることだけが楽しみとなっていた。
    だがある日、彼らは美術の桃源郷とでも言うべき、不思議な場所へと行き着く。そこで出会ったのは、目を輝かせた画家たち。セザンヌや、ゴーギャンのごとき、誇り高い芸術家たちであった。
    その出会いは、エドと画家たちの運命を大きく変えていく――。

    内容(「BOOK」データベースより)
    終戦後の沖縄。米軍の若き軍医・エドワードはある日、沖縄の画家たちが暮らす集落―ニシムイ美術村に行きつく。警戒心を抱く画家たちだったが、自らもアートを愛するエドは、言葉、文化、何よりも立場の壁を越え、彼らと交流を深める。だがそんな美しい日々に影が忍び寄る―。実話をもとにした感動作。
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    原田/マハ
    1962年、東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。商社勤務などを経て独立、フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2006年、『カフーを待ちわびて』で日本ラブストーリー大賞を受賞し、作家デビュー。12年、『楽園のカンヴァス』で山本周五郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • 本作は、サンフランシスコ在住の精神科医、スタンレー・スタインバーグ博士が精神科医として1948年から1950年まで沖縄アメリカ陸軍地に勤務し、ニシムイ美術村の芸術家たちと交流した記憶をもとに書かれた創作です。
    スタインバーグ博士のニシムイ・コレクションは2009年沖縄県立博物館・美術館へ里帰りを果たしたそうです。その展覧会を作者の原田マハさんが、鑑賞されたことにより創られた物語。

    84歳となった、ドクター・ウィルソンがサンフランシスコで24歳の時に勤務した沖縄の精神科の診療所を回想するところからこの物語は始まります。
    沖縄のニシムイにある芸術家の集落(コロニー)でゴッホでもゴーギャンでもない若き七人の画家たちと出会い、生きるために描いているセイイチ・タイラや天才肌のヒガとの交流を、厳しい沖縄の社会情勢と青い海を背景に生き生きと描いています。若さと熱い情熱が感じられる物語でした。

    • やまさん
      まことさん
      こんばんは。
      やま
      まことさん
      こんばんは。
      やま
      2019/11/09
  • 自分の顔をまじまじと見る勇気。それを作品として他者に送れる。そういった感覚が無いので読んでて良い体験になりました。

  • 戦後沖縄に駐在していたアメリカ軍精神科医のスタンレー・スタインバーグさんが、交流のあった沖縄のニシムイの画家達の作品を保存していた
    それを沖縄県立美術館に里帰りさせるというTV番組「日曜美術館」の特集を観ていた原田マハさんが、彼の承諾を得てニシムイの思い出を小説にし、90歳を越える彼の元へ送るという奇跡の様な話!

    物語は実話ベース
    肖像画や風景画などを売って生計を立てながら、独自の創作活動をしていたニシムイの若手画家たちと、戦後間もない沖縄に送り込まれたアメリカ軍精神科医エドことスタンレー・スタインバーグさんとの友情が描かれている

    沖縄の人にとって憎いアメリカ軍
    米軍人にとっても民間人を殺してしまったというトラウマ
    しかし芸術は言葉や国境、人種の垣根を越えて、人と人を結びつける力を持っていた
    主人公エドと画家タイラを結びつけたものはアートだった
    強い絆で結ばれた二人
    そんな事が実際あったなんて凄い
    そんなある日、ある事件が。。。

    同じ日本にいながら、沖縄の事をあまり知らないと気付いた
    沖縄の人の気持ちはこの作品を読んでもわからないが、せめて沖縄の歴史をもっと知る努力をしなければいけないと思った

    カバー画は、ニシムイの日本人画家タイラこと玉那覇正吉さんが描いた、アメリカ軍精神科医エドことスタンレー・スタインバーグの肖像画である
    インパクト有り

  • 太平洋戦争終結直後の沖縄へ軍医として派遣された若き医師エド・ウィルソンの沖縄での美しい物語。

    父に送ってもらった真っ赤なポンティアックで同僚とドライブに出かけた時、たまたま見つけた美術村の人との交流。

    実話を元にした感動作とのことだったが、終始温かい気持ちに包まれるような、そんな美しい物語だった。


    ディズニーのアラジンもそうだが、友情って、愛情を描くより素敵な時ってあるなぁ。。。と。

    そんなほっこりと、温かい気持ちにさせてくれた本でした。

    ミステリ好きの、起伏の激しい小説が好みの私には少し大人しすぎたかも。。。(^_^;)

  • 表紙の肖像画が印象的な、原田さんのアートフィクション。

    終戦直後の沖縄へ軍医として派遣された、若き精神科医のエドワード。
    ある非番の日、島内を同僚とドライブしていたエドワードは、〈ニシムイ・アート・ヴィレッジ〉という画家たちが暮らす集落に辿り着きますが・・・。

    冒頭で「アート“フィクション”」と書きましたが、この作品は実話がベースとなっているとのことです。
    表紙の肖像画のモデルとなった、スタンレー・スタインバーグ博士と、この絵を描いた玉那覇正吉さんをはじめとした〈ニシムイ美術村〉の芸術家たちとの交流が実際にあったということが、この物語の内容に深みを与えているように思います。

    勿論、アメリカ軍人と沖縄の芸術家たちとの単なる“友情物語”という綺麗ごとだけでなく、太平洋戦争の本土決戦で焦土化した沖縄の人々の厳しい現実(“食べていく”為に、米国軍人相手の商売をせざるを得ない等・・)も書かれています。
    物語の中で、ニシムイの芸術家の一人でアルコール依存症になってしまったヒガが“ヤマト(日本)とアメリカ”への怒りを吐露していたように、沖縄の人々からすれば“ヤマト(日本)とアメリカが勝手に自分たちの土地(沖縄)を戦場にしてこの美しい故郷をボロボロにされた”といえるわけで、その心中たるや察するに余りあるものがありますね・・。
    このような複雑な背景がありながらも、“アートを愛する心”という共通の思いが言葉や文化、そして立場をを越えて両者を結びつけていく展開に胸が熱くなりました。

    読後感も清々しく、本書によって沖縄にこのような、アーティストたちのコロニーが実在したということが知れて良かったな、と思いました。

  • 終戦直後の、アメリカ支配下の沖縄が舞台。
    米軍精神科医のエドやその同僚と、首里の丘に「ニシムイ美術村」を作って寄り集まって住んでいる画家たちの交流が主なストーリー。

    謝辞を読むと、実際にサンフランシスコ在住で沖縄米軍基地で精神科医として戦後過ごした人物に取材して書かれたようなので、実話をもとにしたものだった。

    支配するものされるもの、勝ったもの負けたもの、、、そういったものは芸術を前にした交流においては意味をなさなくなる。
    また、沖縄は確かに日本の一部なのに沖縄人はまるで日本を憎んでいるかのようであり、犠牲者をたくさん出したアメリカのことを解放者として受け入れている節がある…との文章に、沖縄の複雑な立ち位置が垣間見えた。

  • 図書館本。

    戦後の沖縄とアメリカ軍。軍医とニシムイで絵を描き続けている日本人たち。
    芸術とはさもありなん。
    芸術を介して交流を深めあい、別れが訪れる。
    実話ベースのストーリー。

  • 原田マハ『太陽の棘』文春文庫。

    Twitterでフォロワーの方からお薦め頂いた作品。『楽園のカンヴァス』『本日は、お日柄もよく』『暗幕のゲルニカ』と並ぶ良い作品だった。

    戦後間もなく、アメリカに支配された沖縄を舞台に米軍従軍医師と現地の画家仲間たちとの交流を描いた感動の物語。

    日本に返還された今もなお、米軍による占領、或いは侵略の続く沖縄。誰もが平和を望み、平穏な日々を願っているはずなのだが、国家や一部個人の論理はそれを許さないのは何故なのか……

    原田マハの描く沖縄はさらに厳しい環境であるはずなのに、日本とアメリカの国境をも超越した繋がりを感じさせる。それがこの疑問への答えなのかも知れない。

  • 従軍精神科医として、アメリカ占領下の沖縄に赴任したエドワード・ウイルソン(エド)と、タイラ等ニシムイ・アート・ヴィレッジの画家たちの交流を描いた、実話ベースの作品。

    占領下の沖縄に駐留する米軍兵士は、悲惨な戦闘体験から精神を病む者も多く、「アンコールに溺れ、薬物に手を出して、気を紛らわそうとする者もいる。その結果、暴力沙汰を起こしたり、うつ状態に陥って兵役につけなくなったりなったりすることもある」。強姦事件など日常茶飯事。こうした問題兵士達の面倒を見るのがエド達の役目だった。多忙な日々を送るエド達が、オフに那覇周辺をドライブしていてたまたま行き着いたのが、NISHIMUI ART VILLAGEだ。地元出身の画家達が、アートで沖縄復興を果たそうと立ち上げた貧しいアート村だった。アートをこよなく愛するエドは、タイラ達とたちまち意気投合し、深く交流するようになる、というストーリー。

    戦争の傷痕や米兵との軋轢がチクチクと読み手を刺してくるが、美しい文章とアートへの情熱がそれを上回る、いい作品だった。

    本作から素敵な文章を幾つか。

    「ここの空の、張り裂けそうな青さ。じくじくとしめった空気、熱波とともに舞い上がる土埃。日の出とともに始まる、壊れた楽器のような、幾千万のセミの声。こんな赤があるのか、というほど赤い花。何もかもが、大仰で、派手で、デリカシーがなく、かすかに凶器を含んでいるような……」。リゾート地として見ると、色鮮やかな原色の沖縄はとても魅力的だが、荒廃した当時の気分を通して描くとこうなるのか!

    「彼らは、からからに乾いた焦土に根を張って、いまにも枯れかけていた森の木々なのだ。美術という名の雨に打たれて、枝を伸ばし、葉を広げ、生き延びようとする木々が、生命の息吹に満ちた森が、どれほど美しいか。そして私は、その森に魅せられて迷い込んだちっぽけな鹿のようなものだった」。エドの目線でニシムイの人々の魅力を語り尽くしている。

    「靜かな強さをもって、日光が島を照らしている。群青の海はさんざめき、幾千万の魚たちがいっせいに飛び跳ねるように、白い波頭がちらちらと弾けている」。エドが本国に帰る際、輸送船から見た沖縄の海の美しさ、目に浮かぶようだ。


    沖縄人(うちなんちゅう)には、侵攻してくる米軍に対し日本軍の楯として使われ、惨殺されたことに対する恨み、暴行事件が後を絶たない(しかも被害者側は泣き寝入りせざるを得ない)占領米軍兵士への恨みが複雑に絡まっている。佐藤優氏の解説によれば、沖縄人の感情を正面からとらえようとした作品は大抵破綻するという。が、本作では、題材として(言語化されない)アートを取り上げたこと、米軍の軍医という中立者の目線で描いたこと、沖縄人として沖縄戦を体験しなかったニシムイの画家たちを扱ったことで、破綻を上手く免れているのだという。なるほど。

    確かに本作には、米軍占領下の沖縄の状況が、読んでいて辛くなりすぎない程度に上手く描かれていて、読後感も良かった。いくつもの工夫が施された作品だったんだな。文庫本の解説も、(久々に)有り難かった。

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

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