- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167907266
感想・レビュー・書評
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本作は、サンフランシスコ在住の精神科医、スタンレー・スタインバーグ博士が精神科医として1948年から1950年まで沖縄アメリカ陸軍地に勤務し、ニシムイ美術村の芸術家たちと交流した記憶をもとに書かれた創作です。
スタインバーグ博士のニシムイ・コレクションは2009年沖縄県立博物館・美術館へ里帰りを果たしたそうです。その展覧会を作者の原田マハさんが、鑑賞されたことにより創られた物語。
84歳となった、ドクター・ウィルソンがサンフランシスコで24歳の時に勤務した沖縄の精神科の診療所を回想するところからこの物語は始まります。
沖縄のニシムイにある芸術家の集落(コロニー)でゴッホでもゴーギャンでもない若き七人の画家たちと出会い、生きるために描いているセイイチ・タイラや天才肌のヒガとの交流を、厳しい沖縄の社会情勢と青い海を背景に生き生きと描いています。若さと熱い情熱が感じられる物語でした。 -
自分の顔をまじまじと見る勇気。それを作品として他者に送れる。そういった感覚が無いので読んでて良い体験になりました。
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戦後沖縄に駐在していたアメリカ軍精神科医のスタンレー・スタインバーグさんが、交流のあった沖縄のニシムイの画家達の作品を保存していた
それを沖縄県立美術館に里帰りさせるというTV番組「日曜美術館」の特集を観ていた原田マハさんが、彼の承諾を得てニシムイの思い出を小説にし、90歳を越える彼の元へ送るという奇跡の様な話!
物語は実話ベース
肖像画や風景画などを売って生計を立てながら、独自の創作活動をしていたニシムイの若手画家たちと、戦後間もない沖縄に送り込まれたアメリカ軍精神科医エドことスタンレー・スタインバーグさんとの友情が描かれている
沖縄の人にとって憎いアメリカ軍
米軍人にとっても民間人を殺してしまったというトラウマ
しかし芸術は言葉や国境、人種の垣根を越えて、人と人を結びつける力を持っていた
主人公エドと画家タイラを結びつけたものはアートだった
強い絆で結ばれた二人
そんな事が実際あったなんて凄い
そんなある日、ある事件が。。。
同じ日本にいながら、沖縄の事をあまり知らないと気付いた
沖縄の人の気持ちはこの作品を読んでもわからないが、せめて沖縄の歴史をもっと知る努力をしなければいけないと思った
カバー画は、ニシムイの日本人画家タイラこと玉那覇正吉さんが描いた、アメリカ軍精神科医エドことスタンレー・スタインバーグの肖像画である
インパクト有り -
太平洋戦争終結直後の沖縄へ軍医として派遣された若き医師エド・ウィルソンの沖縄での美しい物語。
父に送ってもらった真っ赤なポンティアックで同僚とドライブに出かけた時、たまたま見つけた美術村の人との交流。
実話を元にした感動作とのことだったが、終始温かい気持ちに包まれるような、そんな美しい物語だった。
ディズニーのアラジンもそうだが、友情って、愛情を描くより素敵な時ってあるなぁ。。。と。
そんなほっこりと、温かい気持ちにさせてくれた本でした。
ミステリ好きの、起伏の激しい小説が好みの私には少し大人しすぎたかも。。。(^_^;) -
表紙の肖像画が印象的な、原田さんのアートフィクション。
終戦直後の沖縄へ軍医として派遣された、若き精神科医のエドワード。
ある非番の日、島内を同僚とドライブしていたエドワードは、〈ニシムイ・アート・ヴィレッジ〉という画家たちが暮らす集落に辿り着きますが・・・。
冒頭で「アート“フィクション”」と書きましたが、この作品は実話がベースとなっているとのことです。
表紙の肖像画のモデルとなった、スタンレー・スタインバーグ博士と、この絵を描いた玉那覇正吉さんをはじめとした〈ニシムイ美術村〉の芸術家たちとの交流が実際にあったということが、この物語の内容に深みを与えているように思います。
勿論、アメリカ軍人と沖縄の芸術家たちとの単なる“友情物語”という綺麗ごとだけでなく、太平洋戦争の本土決戦で焦土化した沖縄の人々の厳しい現実(“食べていく”為に、米国軍人相手の商売をせざるを得ない等・・)も書かれています。
物語の中で、ニシムイの芸術家の一人でアルコール依存症になってしまったヒガが“ヤマト(日本)とアメリカ”への怒りを吐露していたように、沖縄の人々からすれば“ヤマト(日本)とアメリカが勝手に自分たちの土地(沖縄)を戦場にしてこの美しい故郷をボロボロにされた”といえるわけで、その心中たるや察するに余りあるものがありますね・・。
このような複雑な背景がありながらも、“アートを愛する心”という共通の思いが言葉や文化、そして立場をを越えて両者を結びつけていく展開に胸が熱くなりました。
読後感も清々しく、本書によって沖縄にこのような、アーティストたちのコロニーが実在したということが知れて良かったな、と思いました。 -
終戦直後の、アメリカ支配下の沖縄が舞台。
米軍精神科医のエドやその同僚と、首里の丘に「ニシムイ美術村」を作って寄り集まって住んでいる画家たちの交流が主なストーリー。
謝辞を読むと、実際にサンフランシスコ在住で沖縄米軍基地で精神科医として戦後過ごした人物に取材して書かれたようなので、実話をもとにしたものだった。
支配するものされるもの、勝ったもの負けたもの、、、そういったものは芸術を前にした交流においては意味をなさなくなる。
また、沖縄は確かに日本の一部なのに沖縄人はまるで日本を憎んでいるかのようであり、犠牲者をたくさん出したアメリカのことを解放者として受け入れている節がある…との文章に、沖縄の複雑な立ち位置が垣間見えた。 -
図書館本。
戦後の沖縄とアメリカ軍。軍医とニシムイで絵を描き続けている日本人たち。
芸術とはさもありなん。
芸術を介して交流を深めあい、別れが訪れる。
実話ベースのストーリー。 -
原田マハ『太陽の棘』文春文庫。
Twitterでフォロワーの方からお薦め頂いた作品。『楽園のカンヴァス』『本日は、お日柄もよく』『暗幕のゲルニカ』と並ぶ良い作品だった。
戦後間もなく、アメリカに支配された沖縄を舞台に米軍従軍医師と現地の画家仲間たちとの交流を描いた感動の物語。
日本に返還された今もなお、米軍による占領、或いは侵略の続く沖縄。誰もが平和を望み、平穏な日々を願っているはずなのだが、国家や一部個人の論理はそれを許さないのは何故なのか……
原田マハの描く沖縄はさらに厳しい環境であるはずなのに、日本とアメリカの国境をも超越した繋がりを感じさせる。それがこの疑問への答えなのかも知れない。