名画と読むイエス・キリストの物語 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
4.30
  • (18)
  • (17)
  • (4)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 227
感想 : 14
  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167907563

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  絵が好きで美術館にはよく行くため、宗教画を鑑賞する機会は多い。けれども、キリスト教文化圏で育ったわけではないので、教養程度には知っていても、とっつきにくさは拭えず、なんとなく聖書の中にこういうエピソードがあるという曖昧な感想で終わってしまうことが多い。有名な磔刑図や受胎告知、最後の晩餐あたりはともかくとしても、十二使徒や聖人などとなると、名前が似通った人物も多く正直お手上げである。

     カナの婚礼……聞いたことはなんどもあるけど、婚礼っていうからには、結婚式なんだよね。
     洗礼者ヨハネ……サロメに首を所望された人。福音書の人とは別らしいけど……。
     嬰児虐殺……ヘロデ王という人がなんか知らんがやらかしたらしい。
     東方の三博士……ガレット・デ・ロワの人たち!
     
     みたいな感じで、すこぶる適当な知識のまま放置してきたというのが、現状だ。我ながら情けないとは思いつつも、聖書を読むのは敷居が高いため、読む気にはどうもなれず(そして、この際いつも言い訳として持ち出すのが信者じゃないということ)、いつまでたっても、浅い知識にとどまり続けていた。
     そんな折にふと見つけて読んでみたのが本書。タイトル通り名画とともに受胎告知から十字架上での死、復活と昇天に至るまでのイエス・キリストの生涯をたどっている。イエスが生きた時代のパレスチナ周辺の地理的・歴史的な説明に加え、イエスの人間的な側面に焦点を当てて、物語として記述されているため、非常に読みやすく素人にもわかりやすい。本書に描かれるイエスの苦悩や悲しみはとても人間臭く、感動的でさえある。
     有名な絵がたくさん取り上げられており、誰もが一度は見たことのある絵も多い。この絵はこういう文脈で起きた出来事を描いているのかということがわかれば、今以上に楽しめることは言うを俟たないだろう。
     一点難点があるとすれば、文庫サイズのため絵が小さいということだ。だが、これは携帯できるという利点の裏面でもあるので、よしとするほかない。本書は新約聖書で語られる内容のみなので、旧約と聖人については他書をあたることで、さらに知識を深めたいと思う。
     おかげさまで、とっつきにくいところのある宗教画もこれまで以上に楽しめそう。著者に感謝。本書を携えて美術館に行こうと思う。

  • 西洋絵画を楽しむために、新約聖書のイエス・キリストの生涯を名画とともにめぐる本。

    当時の世相の解説の中にイエス・キリストの生き様がドラマティックに語られている。
    中野さんによっていくつもの名シーンがさらに印象的なものになっており、『あ、聞いたことのあるシーンはそういうことからだったのか』と理解することができた。
    クリスチャンでもなく、聖書を読んだこともない私としては、さまざまな登場人物がこんなにも人間くさい思いを抱いて苦悩し、悲しみ、また希望を持ち、生きていたのか、と驚きの連続だった。

    キリストを弾劾した者たちや使徒の思惑や心理は、今現在の人の思考と何ら変わっておらず…普遍的なものであろうことがわかる。

    表紙のベラスケス描くキリストの磔刑図は、悲しさがそこかしこに存在しているものの、ただただ美しい。

  • 西洋絵画の背景にごく当たり前に控えるキリスト教。この世界宗教は、日本人にはわかりづらいところがある。そこで、絵画の背景を読み解いてきた著者が、日本人の西洋絵画理解の難敵キリスト教、特にその神の子とされるイエスを解説する。

    とまぁ、そんな一冊でした。
    中野京子さんの著作は今回が初めてです。
    平易にイエスの一生を辿っていてわかりやすい内容でした。

    読みながら遠藤周作みたいだなぁと思っていたら巻末に主要文献としてまっさきに挙げられていたのが遠藤周作「イエスの生涯」で、ですよねー、と納得。
    ただ個人的には遠藤周作の「イエスの生涯」には思い入れがあるのでちょっと複雑。

    「イエスの生涯」って、日本人であると同時に基督者である遠藤周作が、彼の信仰と、そして信じながらも信じきれないという、その葛藤のなかで決死の思いで辿りついた彼の「祈り」の吐露だと思うのですよ。なので、あとがきで開口一番「わたしはクリスチャンではありません」とあっさり断言できるかたが、あれをまるで史実のように、聖書の一般的な解釈のように読んで、そしてまたまるで事実かのように、種明かしかのように語って聞かせていることにものすごい違和感を覚えました。

    もちろん挙げられている文献は「イエスの生涯」だけではなく、総合的に読んだうえでその着地点だったのだとは思いますが…(「ふしぎなキリスト教」も挙がっていて、こちらも「ですよね、わかる」となりました)。

    全体としてはとても楽しい読書でした。
    もう少し絵画の具体的な見どころ説明が入っていたらよかったな~と思いながらも、今回は絵画の解説ではなく、絵画の背景に流れるキリスト教の世界観の解説ということなので、絵画の解説は著者の別の著作に期待します。

    (巻末の末盛氏の解説、もうちょっとこう…もうちょっとこう! とむずむずしました)

  • 読みやすくわかりやすい本だった。1点1点の絵の解説というより、イエス・キリストの物語の挿絵に名画が使われているという感じで読み進めやすかった。
    取り上げられているエピソードは知っていることが多かったが、それを画家はどう描いたか、その背景としてそれを描かれたころには、一般的にどのようにとらえられていたのか、どのように解釈されていたのか、そういった面も伺うことができたのも面白かった。
    加えて、地図が載っていたのも興味深かった。実在の場所で実際にあったこととして、イエスの生涯が伝えられているということが実感できた。
    それと同じ場面を、別の画家が描くと描き方も変わるというのも面白い。たとえば「最後の晩餐」もレオナルド・ダ・ヴィンチとドメニコ・ギルランダイオで配置や描き方が違う。こういう比較をもっと観たい。

  • 2016/12/04
    ダンブラウンの天使と悪魔を読み終えて、キリスト教のことがものすごく知りたくなって、聖書を読もうかと思って手にとってみたら、難しすぎて買うのを断念!そして代わりに選んだのがこの本。キリストの生い立ちが名画とともに分かりやすく物語のように紡がれていて、1日で読めた。キリスト教をどうこうという前に、キリストの生い立ちは物語としておもしろい。って書いちゃうと語弊があるか…でも、これを読んで日本がいかに恵まれている環境にあるか思い知らされた。過酷な状況下に置かれた人々にとって、慈愛に満ちたキリストの教えは唯一の救いだったのだろう。もちろんいろんな解釈があるだろうから、これからも宗教関連の本や映画を読んで理解を深めたい。

  • 人間としてのキリストをドラマチックに描いておりだからこそ没入できる。そして最後は人間を超越した神としての復活。

  • 絵そのものの解説というよりも、絵を楽しむための基礎知識、キリスト編みたいな感じの本。中野京子さん、クリスチャンじゃないって書いてたけど、それでよくここまで書けるなあ。勉強になった。

  • 宗教の本ではないが 宗教の本より染み込んでくる

  • はじめに
    第1章 幼子イエス
    第2章 洗礼
    第3章 荒野の修行
    第4章 伝道
    第5章 奇蹟
    第6章 女たち
    第7章 使徒たち
    第8章 エルサレム
    第9章 最後の晩餐
    第10章 ゲッセマネ
    第11章 裁判
    第12章 磔刑
    第13章 復活
    あとがき
    用語解説
    主要文献

  • 絵画、地図、人物一覧があり、非常に読みやすい。内容か理解しやすい。
    ヨーロッパの美術館には必ずキリスト教の宗教絵画があるので、ヨーロッパ旅行の前に読むのがオススメ。
    宗教絵画はかなり多くあるけれども、内容に興味を持たないと、印象に残らないので。
    忘れた頃に、ヨーロッパで美術館に行く前に、持ち歩くか読み返したい。

全14件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

作家

「2021年 『美貌のひと 2 時空を超えて輝く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

中野京子の作品

名画と読むイエス・キリストの物語 (文春文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする
×