決定版 鬼平犯科帳 (3) (文春文庫) (文春文庫 い 4-103)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (372ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167907655

作品紹介・あらすじ

池波正太郎の鬼平誕生50年を記念して、不朽のベスト&ロングセラー「鬼平犯科帳シリーズ」全24巻を、さらに読みやすくなった決定版で順次刊行。何度読んでも新鮮な「鬼平」に親しむ、最良のチャンス到来といえる。第三巻収録作品は、「麻布ねずみ坂」「盗法秘伝」「艶婦の毒」「兇剣」「駿州・宇津谷峠」「むかしの男」。巻末の「あとがきに代えて」は、池波正太郎自身による解説・長谷川平蔵。必読の佳品である。

感想・レビュー・書評

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  • 鬼平シリーズ第三作。

    今回は火盗改方を解任となった平蔵が、父の墓参のために京へ行くの巻。
    とはいえ、のんびりした旅になることはなく、行く先々で悪党に出会い、事件に遭遇し、時に命を狙われ危険な目に遭いながらも見事解決していく。

    このシリーズでは平蔵は度々火盗改方を解任されているが、平蔵の失敗があったわけではなく、時には政治的思惑があったり、今回のように大きな事件がなく休暇代わりの解任というのもある。

    先に書いたようにこの休暇を利用して、京にある父の墓参りに行くことにした平蔵がお供に選んだのは前回登場回数が多かった木村忠吾。
    危なっかしい忠吾だが、なんだかんだで平蔵は気に入っているようだ。
    だがせっかく平蔵にアピールする機会だというのに、忠吾はまたもや女性に現を抜かす。
    しかもその女がなんと盗賊の一味で、平蔵若かりし頃にかかわり合いがあって…。

    ここまで来ると、忠吾がどこまでだらしないのか、お間抜け振りを見せてくれるのか、期待すら感じて来た。
    何しろ平蔵に釘を刺されても刺されてもフラフラと女の元へ向かって行くのだ。もうそういうモノだと諦めるしかない。
    だが最後の最後で踏みとどまり、同心としての役目も何とか果たすのだから、悪運が良いというか、何と言うか。
    それに今回の旅でかなり痛い目に遭ったので、少しは目が覚めたようだが、それもいつまで続くのか、それともこの旅を機に覚醒してくれるのか。

    今作で印象的だったのは岸井左馬之助との友情。左馬之助の幼馴染が悪党として現れ、心配のあまりに追いかける左馬之助の影で、平蔵は忠吾と共に幼馴染が起こした事件と向き合う。
    平蔵に心配を掛けまいと幼馴染のことを打ち明けない左馬之助と、左馬之助を傷付けまいと何も言わない平蔵。
    二人の互いを思う気持ちが良い。

    もう一つは平蔵の妻・久栄。
    ドラマではキレイで平蔵を支えるよき妻という印象的しかないが、意外に肝が座りかつ冷静な判断が出来る、さすが火盗改方の妻という一面を見せてくれる。
    『女は、男しだいにございます』
    という通り、久栄は平蔵と出会い共に生きるうちにこのような新たな一面を身につけたのだろうが、平蔵もまた久栄がいるから心置きなくお役目に邁進出来るのではないか。
    こうして見ると、やはりお似合いの夫婦だ。

  • ▼「鬼平犯科帳3」池波正太郎、文春文庫。初出は1967−1989、月刊誌「オール讀物」連載。江戸時代に実在した「火付盗賊改・長谷川平蔵」を主人公として、だけど当然ほぼほぼ完全なるフィクションで、平蔵とその仲間、そして捕物相手になる盗賊たちを描いた連作短編警察小説であり、戦後を代表する捕物帳小説。このシリーズは文春文庫で全24巻なんですが、数年前に僕は電子書籍で「全巻セット合本版」を買ってしまっています(確かその時、割引キャンペーンをしていたから)。最近、突然自分的な鬼平ブームが来てしまいました(まあそう言うのは必然で訪れることはあまりないでしょうが)。

    ▼電子書籍でまとめ買いしたのはこの手のものは必ず(自分が好きなものであれば)再読するからです。再読を楽しむ前提だと、電子便利ですから・・・。そしてどうして再読するかというと、こういう「話の運び」自体に味があるエンタメ小説、それもミステリ系って、すぐに中身を忘れます。いや、忘れないと言う人もいるかも知れませんが僕は忘れます。だからしばらく、下手をすると1年もすればまた楽しめてしまう。

    ▼なので、もうこれも読み終えてしばし経ったのでだいぶ忘れてしまいましたが・・・。
    ・麻布ねずみ坂
    ・盗法秘伝
    ・艶婦の毒
    ・凶剣
    ・駿州・宇津谷峠
    ・むかしの男
    の6篇。この巻の中身は、【盗法秘伝】から【駿州・宇津谷峠】までが平蔵、江戸を離れています。一時的に盗賊改を休み、父の墓のある京都へ旅をした。その道中と上方でのお話。
     どれも面白かった記憶が。【凶剣】あたりは単純なサスペンスとしてもドキドキで(助けが現れるあたりは、おおっとそうくるのかよ、と思ったけれど)、【むかしの男】は妻・久栄の過去話であり人情噺。人情噺的な鬼平エピソードの特色は、人間の業の深さを描くんだけど、描き方はそんなにくどくない。だから読者は彼岸のものとして安心して楽しめる。読者自身は鬼平と同じ側に気持ちの陣地は作っていますから。そして解決には強引な救いを載せずに、ものすごいトリックやどんでん返しで彩らずに、悲劇的な地獄落ちも多数。それでも陰惨にならないのは、そういった悲劇が全てアウトローの側として描かれるし、どれだけ小説がアウトローに寄り添っても最後は主人公力学で平蔵の側に戻るからですね。
     この辺りの構造はメグレ警視も新宿鮫もフロスト警部もフィリップ・マーロウも全部同じで、元を辿ればシャーロック・ホームズもそういう世界構造になっていますね。
     

     あと【盗法秘伝】は、志ん朝ファンとしては、嬉しい一編。落語家古今亭志ん朝さんは1969−1972に、現テレビ朝日系列で放送された「鬼平犯科帳」でレギュラー同心・木村忠吾を演じました(このシリーズは主演が八代目の松本幸四郎さんでした。それはつまり、「松たか子の父」である九代目幸四郎の父であり、1989−2005期間にフジ系の「鬼平犯科帳」で主演を担った二代目中村吉右衛門の父でもあります)。
     その志ん朝さんが「鬼平犯科帳」朗読の録音を数篇残しており、【盗法秘伝】はその一つ。

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  • 鬼平京都へ行く。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    火付盗賊改方とは、放火・盗賊犯を捕らえるための一種の特別警察。町奉行所にはない機動性を備え、果敢な探索、逮捕、処置を許されていた。平蔵の魅力全開の第三巻は、「麻布ねずみ坂」「盗法秘伝」「艶婦の毒」「兇剣」「駿州・宇津谷峠」「むかしの男」の六篇を収録。巻末の「あとがきに代えて」は、著者による長谷川平蔵解説である。

  • 火盗改長官を辞めて京都へ実父の墓参りを兼ねてののんびり旅行~のはずが、老盗賊に見込まれて弟子になりかけたり、事件に巻き込まれたり、友人の事件に巻き込まれたりと相変わらずの働きぶり。
    早死にしそうな生き様です。

  • 中村宗仙が主役?の「麻布ねずみ坂」には、麻布.飯倉片町が出てきます。

  •  池波正太郎 「鬼平犯科帳 3」、2017.1発行。6話が収録。今回は木村忠吾の出番多し。第2話「盗法秘伝」では、平蔵が大泥棒と共に行動、最後は粋なはからいを。第6話「むかしの男」では、平蔵の妻久栄のむかしの男への凛とした振る舞いが。

  • 長年に渡り休暇も取らず命がけで働き続けてきた平蔵やその部下達は、慰労の意味で、火付盗賊改方を解任となる。平蔵は、これを機会に以前父が京都町奉行のとき、2年間過ごしており、在任中に死亡した父の墓参りもあり、京都への旅に出かける。

  • 面白すぎるぞ

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著者プロフィール

大正十二(一九二三)年一月二十五日、東京市浅草区聖天町生まれ。昭和十(一九三五)年、下谷区西町小学校卒業、株式仲買店勤務。昭和十四年より三年ほど証券取引所にあった剣道場へ通い、初段を得る。旋盤機械工を経て昭和十九年、横須賀海兵団入団。敗戦の翌年、東京都職員として下谷区役所の衛生課に勤務。昭和二十三年、長谷川伸門下に入る。昭和二十五年、片岡豊子と結婚。昭和二十六年、戯曲「鈍牛」を発表し上演。新国劇の脚本と演出を担当する一方、小説も執筆。昭和三十年、転勤先の目黒税務事務所で都庁職員を辞し、作家業に専念。昭和三十五年、『錯乱』で直木三十五賞受賞。『鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛人・藤枝梅安』の三大シリーズや『真田太平記』等、数々の小説で人気を博す一方、食や映画、旅に関する著作物も多く上梓した。受賞歴はほか吉川英治文学賞、大谷竹次郎賞、菊池寛賞等。平成二(一九九〇)年五月三日、入院していた東京都千代田区神田和泉町の三井記念病院で死去。小社では同じく単行本未収録のエッセイ集『一升桝の度量』(二〇一一)と初期戯曲集『銀座並木通り』(二〇一三)を刊行している。

「2022年 『人生の滋味 池波正太郎かく語りき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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