火花 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 315
  • Amazon.co.jp ・本 (180ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167907822

感想・レビュー・書評

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  • 又吉直樹『火花』文春文庫。第153回芥川賞受賞作の文庫化。文庫化にあたり、受賞記念エッセイ『芥川龍之介への手紙』を収録。個人的には又吉直樹が書いた小説ということを頭から消し去って読んだ時、芥川賞に価する小説かと考えると、そこまでの小説ではないように思った。無論、読み手により価値の受け取り方は違うと思うが。

    自伝的私小説といった感じの青春小説。恐らく自身をモデルとしたと思われる売れない芸人の徳永は先輩芸人の神谷と出合い、迷いながらも、進むべきを道を模索する。

    若さ故の怖さ知らずで無謀な行動、焦燥と挫折、夢や希望といった忘れかけていた古い記憶を呼び覚ましてくれる小説だった。ストーリー、文書ともに、さすがに秀でたものを感じるが、歯切れの悪いラストが少し残念であり、せっかくの秀でたものを全て台無しにしているように思う。

  • なんだかんだ読まずに来ましたが、ようやく読むことにしました。読まないで判断なんかしないぜとかなんとか言いながら、やはり芸人で人気にあやかっての受賞なのではないかと勘繰っていた自分に気が付きました。誠にすみません。
    自分の中にくすぶっている何かを吐き出したいという文章で、ある意味上手い下手を超えた所に有る表現としての本気がここには有ります。ファーストアルバムにしかないパワーに似た物と言ってもいいかもしれません。酷評している人が沢山いるのもわかります。ラストでちょっとへっぽこな所もあるかもしれません。でもこれを否定する根拠が誰にあるのか僕にはちっともわかりません。
    お笑いの世界というものがどんなものか分かりませんが、笑いを突き詰めていくと狂うしかないのはギャグ漫画の世界を見ていても明らかで、そんな中から文学として見せてくれた窓が今まであったでしょうか。これがもし何分の一でもお笑いの世界を表しているならとても美しい世界です。ぱっと消えてく火花みたいに、リスクだらけの夢を追いかける夢と絶望だらけの世界を駆け抜ける沢山の若者やおっさんやおばさんたち。そんな世界を垣間見せてくれたとても美しい物語でした。

  • 面白かった。

    純粋で粗いものと、世間との折り合い、と見えました。

    神谷さんはすごいのだけど、それでいいのだろうか、と思う自分はやっぱりもう子どもではないんだと思った。

    どうか、世間、というものをただ敵と見ないで、
    と思っていたので、
    ラストはほっとしました。
    網を細かくすると余計なものも掬うけど、それも抱えて生きていく。
    何者かに、神になる必要はないんだと思う。

    最後の漫才は素晴らしかった。
    ところどころ本気で笑える掛け合いも、さすがでした。

  • いわゆる大人として折り合いをつけ成長していく「僕」と清々しいまでに純粋な人間性を貫く「神谷さん」との対比によって、人が大人になることを考えさせられると同時に、忘れかけていく大切な基本的なことを思い出させる作品。(と私は感じた)

    個人的に好きだった神谷さんの台詞をピックアップ。特にネットで書き込んだ経験のない(これが初)私にとって多分、この本で出てくるような批判はしてないけど、無意識のうちに心の中のどこかで人を批判しているんだなと。これを読んでドキッとした。
    「レヴェルってなに?土台、俺達は同じ人間だろ?/人が嫌がることは、やったらあかんって保育園やからな。/ありがとう。ごめんなさい。いただきます。ごちそうさまでした。/そういう俺らを馬鹿にするのは大概が保育園で習ったこともできないダサい奴等やねん」


    「他を落とすことによって、今の自分で安心するという、やり方やからな。その間、ずっと自分が成長する機会を失い続けてると思うねん。可哀想やと思わへん?あいつ等、被害者やで。」

  • 「火花/又吉直樹」
    純文学…読解力がないのか、想像力に欠けるのか、期待値が高過ぎたのか…。
    正直、私には良く分からないまま終わってしまった。
    ひとつのことに人生をかける生き方、先輩後輩と云う圧倒的な関係性、誰かをリスペクトし追いかけこだわり続ける日々。
    そのどれもが、私とは相対する登場人物に寄り添えるものがなく「面白いと思えることが一人ひとり違う」と文中で主人公が言ったとおり、私には面白さ、ワクワクさ、感動が湧いてこない作品だった。
    でも、賞をとってるのだから、私の方がマイノリティーなのだろうと思わざる得ない。笑

  • 又吉先生の芥川賞受賞作品

    純文学という類にカテゴライズされるらしいけど、そんなの知らないのでただ普通に読んでみたつもり。
    話題図書はそれなりに読む価値があると思っている。

    神谷の人生哲学が生涯芸人であり、主人公と先輩の神谷の約10年を書いた物語。
    20代の、人生とは?を妙に考え出して奔走するあたりが少しでも自分ないし同世代にも共通するものがあって、儚く何とも表現しにくい寂しさがあった。

    141ページの焦りと葛藤を表した文章がぐっとくる。
    コンビ解散のラスト漫才がぐっとくる。

  •  売れないコンビ芸人「スパークス」の徳永は、「アホンダラ」の神谷という先輩芸人を師匠と仰ぎ日々面倒を見てもらっていた。神谷の魅力、才能、笑いとの向き合い方、そして生き方に憧れ尊敬しつつも、同時にその純度に息苦しさも感じていた。神谷との出会いで漫才師として確実に成長していく徳永だったが、全身全霊で漫才師として生きる神谷の姿に「自分らしく生きる」ということの意味を教わり、新たな道を歩む決意が芽生える。世間と向き合う凡才と、笑いと向き合う異才の二人が、互いを励みに、互いを鏡に、笑いを追求し悶え葛藤する人間ドラマ。お笑い芸人ピース・又吉直樹のデビュー作にして第153回芥川賞受賞作。

     文庫化を待ち購入。予想以上に面白く、読みやすく、笑いの追求により心理の深みにはまっていく様子が興味深かった。徳永と神谷のエピソードを積み重ねることで二人の距離感や互いに抱く感情がおぼろげに見えてくるという書き方がとても良い。情景描写も巧みで、芸人を本職とした人間が書いた小説とは到底思えない。デビュー作でいきなり芥川賞受賞なのに著者の筆力を疑問視する声がほとんど挙がらなかった理由がほぼわかった。
     ラストで行方不明になった神谷と再会するシーンでは、徳永とともに言いようのない哀しみが胸に溢れてくる。さらにその後の悲哀を経た滑稽さには、愛おしさすら覚える。本文にある通り、「生きている限り、バッドエンドはない」のだ。
     タイトル「火花」は、文庫版巻末・芥川賞受賞記念エッセイ「芥川龍之介への手紙」にある、著者の昔のコンビ名「線香花火」に関係しているのだろう。このコンビ名は、線香花火のような小さな一瞬の輝きにこそ永遠が宿るのではないか、そしてそのような小さな輝きを連続で起こし続けることが最善ではないか、という考えから付けられたものらしい。とするならば、「火花」は線香花火よりもはるかに小さな一瞬の輝きである。徳永と神谷が散らす火花は、儚く、他者にとっては取るに足らないほど小さな光かもしれない。しかしどんなに小さくとも、確実に「輝き」ではある。その極小の輝きに全身で取り組んだ男達の物語なのであろう。花火はその儚さから美しいとされる。では花火よりも儚い火花は?無論、美しいのである。

  • どうも元から読書なんて得意じゃないのに頭がアホになって尚更難しい本が読めないので、これくらいなら読めるんじゃないかな、とか思って読む

    クンデラとかオースターとか、先送りにしてきたフォークナーとか、カフカとか読みたいものはいっぱいあるのに今はちょっときつい

    最初の行からちょっと気負い過ぎな素人感を感じつつ、芸人論をかます青春小説

    人生を一本の筋で通す、ということのためには、人生って結構、長いよなぁ、と思う三十代半ばのおっさんにはしみる
    10年、というのは、すごく大事なひとつのスパンだよね

  • 熱海で開催されたお笑いの舞台。
    駆け出しの漫才コンビ「スパークス」の徳永は、ネタも披露しないのに圧倒的に大人気の花火に完敗だった。ただ、同じ舞台に立っていた「あほんだら」の神谷という男に深く感銘を受ける。『笑い』に対しどこまでも純粋で貪欲になれる男を見た瞬間、徳永は神谷に弟子入りを申し出ていた。

    なんていうはじまりのお話。
    徳永が神谷にどうしようもなく惹かれ続けた年月のお話。
    とっても薄い本なのですが、前半乗り切れず、後半一気に読んでしまった。薄いのにちゃんと波があった。
    スパークスが少しずつ売れて世界がひろがったあたりからグンと読みやすくなりました。
    神谷さんがどこまでも真摯に「お笑い芸人」であり、何をおいても笑いを追求できる人であり、故に世間からは理解されないというなんとも愛らしく面倒な人。徳永がそんな神谷に惹かれて止まない気持ちもわかるし、といって彼になりたくともなれないこともわかっているのも十分わかる。
    全体的に理屈っぽい文章が並ぶのですが、それでも人間失格を彷彿とさせる赤裸々さなどが随所に転がっており「あぁ、わかるわかる」と共感してしまいました。
    「芥川龍之介への手紙」は書簡の形式をとったエッセイなのですが、それもまた「わかるわかる」であり「理屈っぽぃ」でありました。
    どちらの作品も常識を頭で理解しつつ、全身丸め込まれない(丸め込まれる方がきっと楽だろうに)厄介な視点から生まれたお話なのだろうなと思いました。
    駆け出しの芸人さんたちの雰囲気などは、作者さんが芸人さんであるからか、描写が迫ってくるようでした。

  • ドラマを観て、この作品はどうしても原作を読まなくてはいけないと思った。
    又吉さんが、又吉さんの言葉で綴る、この作品を読まなくては、私は本当に『火花』という作品を知ったということにはならないと。

    痛いほど想いが伝わって来るようだった。
    通勤時間が長いから、電車で読んでいたことを後悔するほど、電車の中でボロボロと涙が溢れて止まらなくて。
    若い女が文庫本片手にティッシュを目に押し付けてる姿は本当に不審すぎたと思う。

    期待以上の作品だった。
    有名な芸人が芥川賞を取ったから話題になってるんだろうと、作品に触れるまでは思っていた。
    でもこれは芸人だから、又吉さんだから書けた作品で、いやむしろ作品というよりは誰かに送られた手紙のようだと思った。
    それほどにリアルで、引き込まれた。

    何も聞かずに、知らずに、読んででほしい。
    映画やドラマを観た人は、余計に読んでほしい。
    筆者からの素直な想いがダイレクトに届くと思うから。

    • kaz3958さん
      老人と海、以来久々に再読したい本に巡り会い、今入院生活で読み返しています。読めば読むほど味のあるスルメのように、一文一文に込められた作者の想...
      老人と海、以来久々に再読したい本に巡り会い、今入院生活で読み返しています。読めば読むほど味のあるスルメのように、一文一文に込められた作者の想いが伝わってきます。
      作品というよりは誰かに当てた手紙のようだというコメントに共感しました。
      2018/07/01
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著者プロフィール

又吉 直樹(またよし なおき)
1980年、大阪府寝屋川市生まれ。お笑いコンビ「ピース」のボケ担当。第153回芥川龍之介賞受賞作家。2009年6月せきしろとの共著、自由律俳句集『カキフライが無いなら来なかった』を刊行し、これが初の書籍となる。2010年12月に続編である『まさかジープで来るとは』、2011年11月初の単著『第2図書係補佐』をそれぞれ刊行。
2015年1月7日に『文學界』2月号に初の中篇小説『火花』を発表し、純文学作家としてデビュー。3月に文藝春秋から『火花』が単行本化されて発売。同作が第28回三島由紀夫賞候補となり、第153回芥川龍之介賞受賞に至る。2016年にNetflixと吉本興業によってネット配信ドラマ化、2017年板尾創路監督により映画化された。
2017年、『劇場』刊行。2018年9月、毎日新聞夕刊で新聞小説「人間」を連載決定。

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