- 本 ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167907822
感想・レビュー・書評
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私は芸能人の書いた小説を評価してこなかった。出版業者が話題作りに、3割がた下駄を履かせて賞を与えていると感じたからだ。実際、過去の作品ではそういった作品は多く存在したと思う。故に又吉直樹の「火花」も忌避していた。しかし、読んでみて驚いた。巧みな表現を捻り出そうして、何を書いているのかわからない文章や無理な比喩表現を使うことなく、世間とのズレに困惑しながら憧れの神谷先輩をちゃんと描き切っていた。ただ、神谷先輩以外との絡みが弱く、感動までには導いていなかったが… 。
やはり、食わず嫌いはダメだと猛省した一冊でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
今更なくらい有名な本、出た時に読むとミーハーかと反抗して読まなかったけど普通に面白かった。
純文学よりかは青春小説っぽくて楽しい。
人物描写が上手すぎる。
神谷がとにかく最高、馬鹿だし、あほだし、カッコイイしかっこ悪いしでとにかく強烈。
そういえば又吉は関西弁だったと読んでて思い出した。流石ですね。 -
お笑い(漫才)は大好きでよく見ます。
ピースの漫才はちゃんと見たことないけど、何故か又吉さんのことは昔から好きな部類に属しています。
又吉さんの小説にずっと興味はあったが、芥川賞系はあまり得意ではないのでなかなか手が伸びなかったが、やっと読む機会に恵まれました。
結果、火花好きかも。純文学?には疎い私が読みやすかったし、期待以上だったので又吉さんの文学的センス好みかもしれない。
正直、The現実思考の女の自分からすると神谷さんの良さはほとんどわからないが、徳永と神谷さんの関係性には惹かれるものがあった。
いちばん好きなのは、やはりスパークスのラスト漫才のシーン。ちょっとでも好きだった芸人さんがラスト舞台にこんな漫才されたらぼろぼろ泣いてしまうにきまってる。
哀愁ただよわせてるなぁ〜。芸人の苦悩が文章にしみてて好きでした。
又吉さん、面白かったので他も読んでみよう。 -
なんだかんだ読まずに来ましたが、ようやく読むことにしました。読まないで判断なんかしないぜとかなんとか言いながら、やはり芸人で人気にあやかっての受賞なのではないかと勘繰っていた自分に気が付きました。誠にすみません。
自分の中にくすぶっている何かを吐き出したいという文章で、ある意味上手い下手を超えた所に有る表現としての本気がここには有ります。ファーストアルバムにしかないパワーに似た物と言ってもいいかもしれません。酷評している人が沢山いるのもわかります。ラストでちょっとへっぽこな所もあるかもしれません。でもこれを否定する根拠が誰にあるのか僕にはちっともわかりません。
お笑いの世界というものがどんなものか分かりませんが、笑いを突き詰めていくと狂うしかないのはギャグ漫画の世界を見ていても明らかで、そんな中から文学として見せてくれた窓が今まであったでしょうか。これがもし何分の一でもお笑いの世界を表しているならとても美しい世界です。ぱっと消えてく火花みたいに、リスクだらけの夢を追いかける夢と絶望だらけの世界を駆け抜ける沢山の若者やおっさんやおばさんたち。そんな世界を垣間見せてくれたとても美しい物語でした。-
ありがとうございます!去年のM1で錦鯉が王者になりましたが、夢をあきらめないというのは簡単に言うけれど、とてつもない自己のすり減らし方なんだ...ありがとうございます!去年のM1で錦鯉が王者になりましたが、夢をあきらめないというのは簡単に言うけれど、とてつもない自己のすり減らし方なんだろうなと思います。自分で限界を決めるしかない中で、どこまでも自分をぶつけ合って一瞬の火花を飛ばす。いつか着火して燃え上がると信じて毎日研鑽している芸人さん達、本当にすごいです。年取ってくるとお笑いの背後に見える人間性迄見てしまって素直に笑えない瞬間もありますね(;^_^A2022/03/15
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そうですね!個人的にはオズワルドを応援していたのですが、錦鯉が優勝した時はこちらも思わずホロリとしたし、感動でしたね!!そうですね!個人的にはオズワルドを応援していたのですが、錦鯉が優勝した時はこちらも思わずホロリとしたし、感動でしたね!!2022/04/22
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今更ながら、約5年前に話題になった本書を読んでみました。きっかけはYou Tube。又吉さんと児玉さんの文章読解や、有隣堂チャンネルでのコメントが面白かったから。(このレビューを又吉さんがご覧になるかわかりませんが、私もサルゴリラ児玉さんの語彙センスにハマった1人です。)
さて本書ですが、芸人さんが書いた芸人の物語なので〝笑う〟場面が多いかなと勝手に思っていましたが、反対に〝泣く〟場面の描写が印象に残りました。
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【本書より抜粋】
主人公の徳永のお母さんのセリフ
「なんで、あんたが泣いてるの?お姉ちゃん頑張ってるで」
先輩の神谷のセリフ
「徳永、なんでお前が泣いてんねん?」
そう言って、神谷さんは笑った。
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芸人さんの明るいトークの裏で、こんな世界もあるのかなとフィクションを楽しませてもらえた本でした。ちなみに、又吉さんの著書という先入観からか、本書を読んでいる間、又吉さんの落ち着いた声が私の脳内で再生されました。他の皆さんも同じだったかな‥。 -
陰鬱で閉塞感と孤立感に満ちているけれど、俯瞰的視点に基づいたとても静かで穏やかな語り口が、ままならない人生への慈しみと周囲への愛を感じさせて、貰い泣き。そして、社会における今なお解消できない歪みというか、課題というか、むしろ真理ですらあることを、「笑い」との関係性に託して突きつきた、ラストのあの「オチ」展開よ…。とても短いシーンなのだけど、けっこう圧倒されてしまった。やるなあ…。
売れない若手芸人・徳永の視点で、彼自身の人生と、彼が敬愛した特異な先輩芸人・神谷との10年間の軌跡を綴った、著者の又吉さんにとって私小説的な側面がありそうな本作。
徳永と神谷の関係は、事務所の垣根を越えた馬が合う先輩後輩、というには少しいびつで。
不安定な生活がいつまで続くか(続けられるか)わからない不安に付いてまわる閉塞感と孤独感の裏返しのようなある種の共依存、安らぎと言えば聞こえがいいけれど、無自覚な宗教性、というか「縋り」のようなものが感じられる。
でも、だからこそ、一番恐れていたであろう「その時」を受け入れて進んだ徳永の姿は胸に迫るものがあるし、10年のくびきを取り除いた感のあるあの「オチ」シーンには、ものすごくハッとしてしまう。そして、それでも二人の縁はそこで終わらなかった点にも。
明るく楽しいストーリーでは全くなく、どちらかというとエネルギーを削られるタイプのお話かもしれない。
でも、救いのないただの鬱展開でもない。
あの俯瞰視点と静かな語り口、そして、何気ないようで巧みに組み立てられた構成は一読の価値ありです。
(又吉さんって、エッセイでもそうだったけど、時間に限りのある漫才のネタづくりで鍛えたためなのか、自然なようで実は緻密に組まれた構成が特に秀逸なんです。いつかは、構成特化型の連作短編小説希望。)
「僕達は、二流芸人にすらなれなかったかもしれない。だが、もしも「俺の方が面白い」とのたまう人がいるのなら、一度で良いから舞台に上がってみてほしいと思った。「やってみろ」なんて偉そうな気持ちなど微塵もない。世界の景色が一変することを体感してほしいのだ。自分が考えたことで誰も笑わない恐怖を、自分で考えたことで誰かが笑う喜びを経験してほしいのだ。」 -
又吉直樹『火花』文春文庫。第153回芥川賞受賞作の文庫化。文庫化にあたり、受賞記念エッセイ『芥川龍之介への手紙』を収録。個人的には又吉直樹が書いた小説ということを頭から消し去って読んだ時、芥川賞に価する小説かと考えると、そこまでの小説ではないように思った。無論、読み手により価値の受け取り方は違うと思うが。
自伝的私小説といった感じの青春小説。恐らく自身をモデルとしたと思われる売れない芸人の徳永は先輩芸人の神谷と出合い、迷いながらも、進むべきを道を模索する。
若さ故の怖さ知らずで無謀な行動、焦燥と挫折、夢や希望といった忘れかけていた古い記憶を呼び覚ましてくれる小説だった。ストーリー、文書ともに、さすがに秀でたものを感じるが、歯切れの悪いラストが少し残念であり、せっかくの秀でたものを全て台無しにしているように思う。 -
ああすごい泣いちゃったなあ、
私がまだ青いからかもしれないけど、常に自分の中で創造と破壊を繰り返して刹那的に笑いを求める神谷がすごい眩しくかっこ良く見えてしまった。
けどもしかしたら全然かっこよくなんかなかったのかもしれないと読後の今になって思う。
彼はあまりにも自分に純真すぎるが故に屈折しまくっていた。
その屈折光が伝播した先にいたのが徳永。
徳永は独自の想像力で静かながらもどこか常に怯えて竦んでいるように感じられた。
だから恐れを知らない神谷との組み合わせは正直しっくり来ないというか、正解ではなかったように感じる。
互いに抱いていた思いは尊敬や畏怖だけではなくてきっと羨望、憎しみ、嫉妬、愛情と一口に言えるものではなかったんだろう。
けど不器用な2人の絶妙なそのアンバランスさはとても居心地が良かった。
数多の出会いや別れによって付いた傷だらけの、
その荒削りな人生が愛おしい。
お金や仕事、家族や恋人、社会的地位、それらによって形成される生活その全てを投げ打ってでも自分の信じた道を突き進むことは幸せなのか。
自分の手で夢を終わらすのは諦めなのか妥協なのか。
そもそも諦めるってなんだ、夢ってなんだ、なんのために生きてるんだと彼らがこちらに問いを投げかけてくるようで、終盤何度もページを捲るのをためらってしまった。
歪に生き続ける彼らを見て、結局そんな問いを思い浮かべたところで一生正解になんて出会えないんだろうなと思うとどこか寂しくもあり安心もした。
あほんだら、こんなん見せられたら生きるしかないじゃん。
「エジソンが発明したのは闇」
「エジソンを発明したのはくらい地下室」
という彼らのメールのやり取りがなんだかすごいお気に入り。
走り続けた先に光があるのかは分からないけど、走ったことで生じる風を心地良いと感じた人は少なからずいるし、私はこの本を読んで心にぼうっと希望みたいな、光みたいな何かが生まれた。
光があれば影があるけど今ならそのどちらも愛せる気がする。
筆者が漫才師だからか文章に血が通っているように感じられて良かった。
滲み出る又吉さんなりの漫才や人生に対する哲学に少し触れられた気がして嬉しい。
2010のM-1でのピースのネタ、ほんとに好きなんだよな。 -
又吉さんの本を初めて読みました。
1冊で諦めてしまいそうですが、あともう1冊くらいは読んでみようと思います。きっと。
どれを読むか吟味します。
どんな作家さんでも作品によって面白かったり面白くなかったりしますものね。
期待しています。
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