火花 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
3.32
  • (117)
  • (304)
  • (377)
  • (144)
  • (41)
本棚登録 : 3551
レビュー : 378
  • Amazon.co.jp ・本 (180ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167907822

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 又吉直樹『火花』文春文庫。第153回芥川賞受賞作の文庫化。文庫化にあたり、受賞記念エッセイ『芥川龍之介への手紙』を収録。個人的には又吉直樹が書いた小説ということを頭から消し去って読んだ時、芥川賞に価する小説かと考えると、そこまでの小説ではないように思った。無論、読み手により価値の受け取り方は違うと思うが。

    自伝的私小説といった感じの青春小説。恐らく自身をモデルとしたと思われる売れない芸人の徳永は先輩芸人の神谷と出合い、迷いながらも、進むべきを道を模索する。

    若さ故の怖さ知らずで無謀な行動、焦燥と挫折、夢や希望といった忘れかけていた古い記憶を呼び覚ましてくれる小説だった。ストーリー、文書ともに、さすがに秀でたものを感じるが、歯切れの悪いラストが少し残念であり、せっかくの秀でたものを全て台無しにしているように思う。

  • なんだかんだ読まずに来ましたが、ようやく読むことにしました。読まないで判断なんかしないぜとかなんとか言いながら、やはり芸人で人気にあやかっての受賞なのではないかと勘繰っていた自分に気が付きました。誠にすみません。
    自分の中にくすぶっている何かを吐き出したいという文章で、ある意味上手い下手を超えた所に有る表現としての本気がここには有ります。ファーストアルバムにしかないパワーに似た物と言ってもいいかもしれません。酷評している人が沢山いるのもわかります。ラストでちょっとへっぽこな所もあるかもしれません。でもこれを否定する根拠が誰にあるのか僕にはちっともわかりません。
    お笑いの世界というものがどんなものか分かりませんが、笑いを突き詰めていくと狂うしかないのはギャグ漫画の世界を見ていても明らかで、そんな中から文学として見せてくれた窓が今まであったでしょうか。これがもし何分の一でもお笑いの世界を表しているならとても美しい世界です。ぱっと消えてく火花みたいに、リスクだらけの夢を追いかける夢と絶望だらけの世界を駆け抜ける沢山の若者やおっさんやおばさんたち。そんな世界を垣間見せてくれたとても美しい物語でした。

  • 面白かった。

    純粋で粗いものと、世間との折り合い、と見えました。

    神谷さんはすごいのだけど、それでいいのだろうか、と思う自分はやっぱりもう子どもではないんだと思った。

    どうか、世間、というものをただ敵と見ないで、
    と思っていたので、
    ラストはほっとしました。
    網を細かくすると余計なものも掬うけど、それも抱えて生きていく。
    何者かに、神になる必要はないんだと思う。

    最後の漫才は素晴らしかった。
    ところどころ本気で笑える掛け合いも、さすがでした。

  • いわゆる大人として折り合いをつけ成長していく「僕」と清々しいまでに純粋な人間性を貫く「神谷さん」との対比によって、人が大人になることを考えさせられると同時に、忘れかけていく大切な基本的なことを思い出させる作品。(と私は感じた)

    個人的に好きだった神谷さんの台詞をピックアップ。特にネットで書き込んだ経験のない(これが初)私にとって多分、この本で出てくるような批判はしてないけど、無意識のうちに心の中のどこかで人を批判しているんだなと。これを読んでドキッとした。
    「レヴェルってなに?土台、俺達は同じ人間だろ?/人が嫌がることは、やったらあかんって保育園やからな。/ありがとう。ごめんなさい。いただきます。ごちそうさまでした。/そういう俺らを馬鹿にするのは大概が保育園で習ったこともできないダサい奴等やねん」


    「他を落とすことによって、今の自分で安心するという、やり方やからな。その間、ずっと自分が成長する機会を失い続けてると思うねん。可哀想やと思わへん?あいつ等、被害者やで。」

  • 神谷はその字面の通り徳永にとっての神であり、夢であった。お笑いや芸人という特殊な職業が取り上げられているため理解できない部分も多々あるが、読後の感情はたくさんの人が思春期や青年期に少なからず体感したものなんじゃないかと思う。夢を諦めることは卒業に似ている。信じてきたものが、憧れてきた夢が、ほんとうは思っていたような崇高なものではなかったとわかったとき、人は大人になるのかもしれない。

  • 良かった。芸人?直木賞じゃないの?と思っていたのだが、これは芥川賞だと思う。

    「お笑い」は私にとっては楽しむため、笑うためのものなので、こんな風に分析的に考えたことは無かった。ネタを考える大変さやコンビで呼吸を合わせる難しさは何となく想像できていたが、こんなに哲学的で奥深いものだと思ったことがなかった。

    常識を飛び越えて破綻寸前のものを見せるために、自分の人格が侵されていくというか、自分の生活や人生とのバランスが崩れていく感じが、とても痛々しくて、また主人公がそこまで出来ないと苦しみもがく様子も切なかった。

    でも人生とっくに折り返してしまった身からすると、例え傷だらけでもそんな風にすべてをかけられる青春真っ只中の彼等が、キラキラと眩しく愛おしかった。

    続編が読みたいなぁ。

  • 第153回芥川賞受賞作品
    純文学と言う事ですが、自分には全く合いませんでした。純文学ってこういう物?

    確かに文学的な表現があちこちに出てきますが、残念ながら、その表現している映像が浮かびません(涙)
    そして、なによりストーリ展開。
    結局、漫才師を目指した青年の物語っていう感じなのでしょうが、そこから、メッセージを感じ取ることが出来ませんでした。

    ストーリとしては、売れない漫才師の徳永が、天才肌の先輩芸人の神谷と出会います。その神谷との付き合いの中で、売れない芸人の生活、自分を表現するという事、そして笑いとは何かを語っていきます。笑いについて、真剣に取り組む姿勢は感じられました。
    しかしながら、本書で語られている神谷のエピソードや行動にも、徳永の行動にも共感が持てません。さらに、本書で語られているような「笑いとはなにか」とか、考え方とか、その生きざまみたいなモノは、正直どこかで聞いたことのある様な内容で、本書で初めて知る様なものでもありません。
    結局、本書を通じて、何を語りかけたかったのかを読み取ることが出来ませんでした。
    ストーリに引き込まれるところもありませんでしたし、登場人物に共感を持てるところもありませんでした。

    純文学って難しい(笑)

    やっぱり純文学より、エンターテイメント小説、ミステリー小説が好き!!

  • 「劇場」に衝撃を受け速攻買いに走った。こちらも本当に傑作だと思う。

    「劇場」でも又吉の笑わせ力は冴えわたっていたが、「火花」はなにしろ主人公が売れない漫才師という設定だから手加減なし。冒頭から大喜利で「自分が飼っているセキセイインコに言われたら嫌な言葉はなんや?」(P.8)だから公共の場では到底読めない。それでいて文体やリズム感は思いっきり純文学。

    主人公は、先輩漫才師のセンスを天才と感じ師と仰ぐ。しかし、突き抜けすぎている先輩を横目にテレビで少しずつ頭角を現すのは主人公の方だった。本当は自分よりもずっと才能のある先輩こそ社会に認められてほしいのに、不器用すぎてそれができないことをもどかしく思う主人公の心が温かく切ない。

    私は名画「アマデウス」を思い出した。社会性ゼロの天才モーツアルトと、宮廷音楽家としての地位は盤石なサリエリ。天才を見抜く眼力はあっても自分自身は凡庸な才能しか与えられなかったことにサリエリは苦悩し、モーツアルトに嫉妬する。あれはあれですごい映画だったが、「火花」には「憧れ」はあっても「嫉妬」が出てこないのがすがすがしい(一方で「劇場」はその辺を容赦なく書いている)。

    その行きつく果て、主人公が先輩に切れるシーンは超名場面。「ジェンダー」と「笑い」というデリケートなトピックでここまで書けるのはすごい。

    この歳になって「新刊出たら発売日に買おう」という作家に再び出会えるとは。村上春樹「羊をめぐる冒険」、村上龍「コインロッカー・ベイビーズ」、いずれも第3作が決定的だった。文春、新潮と交互に出すところもなんか春樹っぽい。楽しみ。

  • 「火花/又吉直樹」
    純文学…読解力がないのか、想像力に欠けるのか、期待値が高過ぎたのか…。
    正直、私には良く分からないまま終わってしまった。
    ひとつのことに人生をかける生き方、先輩後輩と云う圧倒的な関係性、誰かをリスペクトし追いかけこだわり続ける日々。
    そのどれもが、私とは相対する登場人物に寄り添えるものがなく「面白いと思えることが一人ひとり違う」と文中で主人公が言ったとおり、私には面白さ、ワクワクさ、感動が湧いてこない作品だった。
    でも、賞をとってるのだから、私の方がマイノリティーなのだろうと思わざる得ない。笑

  • 又吉先生の芥川賞受賞作品

    純文学という類にカテゴライズされるらしいけど、そんなの知らないのでただ普通に読んでみたつもり。
    話題図書はそれなりに読む価値があると思っている。

    神谷の人生哲学が生涯芸人であり、主人公と先輩の神谷の約10年を書いた物語。
    20代の、人生とは?を妙に考え出して奔走するあたりが少しでも自分ないし同世代にも共通するものがあって、儚く何とも表現しにくい寂しさがあった。

    141ページの焦りと葛藤を表した文章がぐっとくる。
    コンビ解散のラスト漫才がぐっとくる。

全378件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

又吉直樹(またよし なおき)
1980年、大阪府寝屋川市生まれ。お笑いコンビ「ピース」のボケ担当。第153回芥川龍之介賞受賞作家。2009年6月せきしろとの共著、自由律俳句集『カキフライが無いなら来なかった』を刊行し、これが初の書籍となる。2010年12月に続編である『まさかジープで来るとは』、2011年11月初の単著『第2図書係補佐』をそれぞれ刊行。2015年1月7日に『文學界』2月号に初の中篇小説『火花』を発表し、純文学作家としてデビュー。3月に文藝春秋から『火花』が単行本化。同作が第28回三島由紀夫賞候補となり、第153回芥川龍之介賞受賞に至る2016年にNetflixと吉本興業によってネット配信ドラマ化2017年板尾創路監督により映画化された。2017年『劇場』刊行。2018年9月、毎日新聞夕刊で新聞小説「人間」を連載し、毎日新聞出版から2019年秋に発売予定となる。

火花 (文春文庫)のその他の作品

火花 (文春文庫) Kindle版 火花 (文春文庫) 又吉直樹
火花 単行本 火花 又吉直樹
火花 Audible版 火花 又吉直樹

又吉直樹の作品

火花 (文春文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする