検察側の罪人 上 (文春文庫 し 60-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (362ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167907846

感想・レビュー・書評

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  • 星3.5


    蒲田の老夫婦刺殺事件の容疑者の中に時効事件の重要参考人・松倉の名前を見つけた最上検事は、今度こそ法の裁きを受けさせるべく松倉を追い込んでいく。最上に心酔する若手検事の沖野は厳しい尋問で松倉を締め上げるが、最上の強引なやり方に疑問を抱くようになる。

    大好きな雫井さんの長編
    いくら大切に思っていた下宿先の娘さんを殺した犯人がわかったからと言って、自分が真犯人を殺害してまで犯人である松倉を今回の事件が無実にも関わらず強引に犯人に仕立てるの…。
    心に引っかかるものがあった
    雫井さんは何を訴えたいのだろう…。

    下巻が楽しみです。

  • 蒲田の老夫婦刺殺事件の容疑者の中に時効事件の重要参考人・松倉の名前を見つけた最上検事は、今度こそ法の裁きを受けさせるべく松倉を追い込んでいく。最上に心酔する若手検事の沖野は厳しい尋問で松倉を締め上げるが、最上の強引なやり方に疑問を抱くようになる。

    「法という剣でもって悪人を一刀両断にする。それこそが検事だと」

    正義とは何か。
    時効制度。
    冷酷な取り調べ。
    冤罪?

    みんな、犯人を松倉と確信しているのか、犯人であってほしいと思っているだけか。

    最上に発破をかけられ、松倉の取調べで悪魔のように罵詈雑言の限りを尽くす沖野。読んでいて泣きたくなった。沖野の心はもう壊れかけてるよ。

    時効になっても罪は消えない!さばきを逃れた犯人を絶対に許せないと思う最上の心はもっと壊れて…。

    こんなラストで下に続く… どうなるん?

  • 「君たちは、その手に一本の剣を持っている。法律という剣だ。法治国家では最強の武器と言っていい...しかし、君たちの剣は、まだ道場剣だ。実務では生身の相手の真剣勝負となり、型通りの剣裁きなどできない...事件が百あれば、百通りの対応が求められる。やがて自分が取るべき太刀筋を見えてくる...悪人の面をたたき割る。それこそが検事の醍醐味だと思って貰っていい」・・・司法修習生に最後の講義を行ったベテラン検事・最上毅(モガミタケシ)と、師弟関係にある若手検事・沖野啓一郎が、「正義」の在り方を問う熾烈な検察小説。

  • 雫井さんの作品を読むのは、火の粉に続いて2作目かな。

    少し前に、太田愛さんの書いた”幻夏”を読んでなぜ、冤罪が起こるのか?という流れを知ったが、これもそれと同じで検察側の人間が冤罪を作り出している。

    本来ならば、法の下において正しい手順で裁判を迎えなければいけない検察官の最上が、自分の個人的な感情(正義感?)とエゴで暴走していく姿は正直、気分が悪い。だからと言って、ここに出てくる弓岡や松倉が良いのか。と言われれば当然、そんなはずはない。彼らも罪をおかした罪人なのだから。

    読んでいて気持ちの良い小説ではないけれど、ページをめくる手が止められなくて上巻を一気に読んでしまった。下巻では、沖野と最上、そして松倉の関係性がどう変化していくのか先が気になるところである。

  • 古本屋で目についたから買った一冊。

    上下の2冊の本だが、なんとなく一冊で終わる話じゃないかね?どう話が進めば2冊目に行くんだろうと思いつつ読み進めた。

    本の裏表紙に互いの正義と書いてあるが、犯罪を犯してまで、罪を人に擦りつけてる時点でもう正義ではないような気もする。

    裏表紙のあらすじに慟哭のラストと書いてある。
    どの様なラストになるか下巻が楽しみになる小説でした。

  • 映画化されるというので手に取った一冊ですが、公開日には日本にはいないため映画を観れるのはいつになることやら... 検事同士の対立だとばかり思って読み始めたのですが、新たな犯罪が起こり、展開が気になります。ベテラン検事の正義と犯罪の狭間で逡巡する姿が意外にあっさりしていたような気もしたんですが、それだけ展開の時間が早かったということでしょうね。下巻に続く。

  • 上下巻読んでの感想。
    人の心とはどうしてこんなにも複雑なのだろう。
    法の番人として自分の職務に誇りを持っていただろう最上。
    だが、法の網をくぐり抜け何の罪も受けずに生きてきた犯人を目の前にして、最上の中で何かが壊れていく。
    以前にも殺人を犯している。
    そして、捕まらずに時効を迎えている。
    そんな人間ならば今度も殺人を犯していてもおかしくはない。
    きっと犯人だ。犯人に違いない。
    最上の思いは犯人であってほしいという願望にも似たものだったように思う。
    本当に逃げ切るつもりだったなら、もう少し計画をきちんと立てたのではないだろうか。
    過去の犯人を法廷の場に引きずりだしたい。
    きちんと法の裁きを受けさせたい。
    その思いだけが突っ走ってしまったような気がする。
    現実味がないようにも思う。
    けれど、作られた小説やドラマを簡単に超えてしまうものが現実ではないだろうか。
    沖野の青臭い正義感。
    どんな人間でもやっていないことで裁かれてはならない。
    たぶんそれは正しいのだろう。
    でも捕まらずに逃げおおせただけで罪はなくなるのだろうか。
    どこかで線引きをしなければならないのはわかる。
    でも、殺人に関しては時効が必要だとはあまり思えない。
    沖野の苦悩はそのまま困惑と戸惑いと矛盾と・・・いろいろなものを読んでいた者に考えさせる結末だった。

  • 沖野頑張れ!沖野頑張れぇーーー!!

  • 最上さんの決断、ドストエフスキーの罪と罰を読んでいるような気分になりました。

  • 面白かった
    キムタク×ニノの映画原作
    映画も見ましたが、こちらは「正義」のあり方を問う作品となっています。

    上巻では
    蒲田の老夫婦殺人事件の容疑者として、過去の殺人事件の容疑者だった松倉の名前が上がります。
    しかし、過去の殺人事件はすでに時効。
    この過去の殺人事件の被害者を知る最上検事は今度こそ法の裁きを受けさせるべく、若手検事の沖野を使って松倉を追い込んでいきます。
    沖野の厳しい尋問で、過去の殺人事件を吐露した松倉
    しかし、蒲田の事件については完全否定します。
    物証もないまま、なんとか、松倉を蒲田の事件の犯人として死刑にしたい最上
    そんな最上の強引のやり方に疑問を持ち始めた沖野
    そんな中、蒲田の老夫婦殺人事件の真犯人と思われる人物が浮上します。
    そして、最上はその人物にアクセスして、事件の凶器を手に入れるとともに、その人物を殺害することに

    最上の正義は、時効だろうが殺人を犯した人物には裁きをということだと思います。
    松倉には冤罪とはいえ、別件での裁きを
    蒲田の真犯人には自らの裁きを

    その正義は貫けるのか..
    下巻ではどうなるっていうところです

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著者プロフィール

1968年愛知県生まれ。専修大学文学部卒。2000年、第4回新潮ミステリー倶楽部賞受賞作『栄光一途』で小説家デビュー。04年に刊行した『犯人に告ぐ』で第7回大藪春彦賞を受賞。他の作品に、『火の粉』『クローズド・ノート』『ビター・ブラッド』『殺気!』『つばさものがたり』『銀色の絆』『途中の一歩』『仮面同窓会』『検察側の罪人』『引き抜き屋1 鹿子小穂の冒険』『引き抜き屋2 鹿子小穂の帰還』『犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼』『犯人に告ぐ3 紅の影』『望み』などがある。

「2021年 『霧をはらう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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