検察側の罪人 下 (文春文庫 し 60-2)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167907853

感想・レビュー・書評

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  • 23年前の時効事件の犯行は自供したが、老夫婦刺殺事件については頑として認めない松倉。検察側の判断が逮捕見送りに決しようとする寸前、新たな証拠が発見され松倉は逮捕された。しかし、どうしても松倉の犯行と確信できない沖野は、最上と袂を分かつ決意をする。


    雫井さんが描きたかった、検事だからこその
    正義
    検事だからこそやらずにはいられなかった。
    やっぱり違和感を感じてしまいました。
    最上が今までの人生を、これからの人生を
    投げ打ってまでしなきゃいけなかったん
    だろうか…。
    家族の事をどれだけ考えていたんだろう。

    無実の罪で取り調べを受けている松倉に
    可哀想だと同情の気持ちが湧いていたのに、
    釈放された後の松倉の様子にも嫌な思いをした。
    何て言えば良いんだろう
    人間の質が悪い。
    治らないんだろうな

    切ないな

    雫井さんの優しいお話が好きです。

  • 時効で罪の償いから逃れた男を許すことができるのか。

    上を読み終わった時こんな事、あるわけがないと思った。あってはいけないと思った。
    だけど下を読み終わった今、もう何が正しいのかわからなくなった。沖野のように…。

    白川弁護士が出てきて面白くなってきたと思ったけど、最後の最後に…。
    白川も松倉もいやらしい。
    だけど、これが白川の弁護士としての正義。

    最上はきっと変わらない。もし、過去に戻れたとしてもまた同じことをするだろう。
    そこに個人的な感情が入っているのが嫌だった。
    だけど、これが最上の検事としての正義。

    沖野の正義はなんだろう?
    沖野は、検察の汚さを見ては違うと思い、弁護士のえげつなさを見ては違うと思う。

    色々思うこともあるけど、好きな作品でした。
    映画も観た。

  • 途中から涙がポロポロと溢れて読み終わってしばらくは、涙が止まらなかった。こんなにやり切れなくて複雑な思いをして泣いた本は初めてかもしれない。多分、読んでる間に私自身が沖野になってた(苦笑)
    読み手である私は、上巻で何がどうなって事が起こったのか知っているから、下巻で沖野が真相に一歩一歩近付いて行く姿に、早く!早く気付いてくれ!犯人はすぐ近くにいる!という思いが強かった。
    しかし、ラスト少し前から全てが白日の下に晒された後の展開を読むのが怖くて変な動悸を起こしたけれど結局、最後の最後を知りたくてページを捲る手は止められなかった。
    それぞれが起こした事は本当に、正義だったのか。でも、正義感があったからやったんだよね?!その正義感があやふやで脆くて、ふとすれば形、姿までをも変えてしまう。。。
    私もこの本を読んで、正義って何だろうって分からなくなった。正義って、何なんだろう。

  • 前半に比べて後半の方が面白かった。
    尊敬する先輩検事の最上に付き、がむしゃらにやって来た沖野だったが、ある時から最上に対しての不信感が止められなくなる。
    結局、沖野は検事を辞めることになる。
    そこから、最上に対抗する道を選ぶ。
    正義を信じてのことだったが、その先にあったラストは本当に求めていたものだったのか…

    2024.4.9

  • 蒲田の老夫婦殺害事件の容疑者が、23年前の時効事件の犯行を自供した...。捜査を強行する東京地検刑事部のベテラン検事・最上毅の執念に疑問を抱いた若手検事の沖野の苦悩と、互いの正義感を賭けた熾烈な闘いの行方に、ページを繰る手が一刻も止まらない。 「時効で罪の償いから逃れた男への代償..冤罪がもたらす惨苦...正義とはこんなにもいびつで、訳の分からぬものなのか!」沖野の全身から絞り出される慟哭のラストに胸絞めつけられる<雫井脩介サン>渾身の感動ミステリ-。

  • 加害者に更生の機会が与えられるのは、性善説がベースになっているから。さらに、育った環境や社会が悪いと甘やかし執行猶予を付けるのも量刑の相場となっている。
    そうした反省なき犯罪者の多くが、安易に再犯を重ね新たな被害者を生み出す。
    しかし、なぜこれ程加害者に優しい社会を維持する必要性があるのか、真剣に考えて欲しい。この仕組みで得をするのは、加害者と弁護士くらい。彼らは雇主と顧客の関係なので、再犯すればするほど、仕事が増えていく。そして、損をするのが被害者家族。死人に口なしとばかり、裁判でありえない抗弁をされたり、例え勝訴しても故人が生き返るわけでもなく、賠償金すら払われないケースさえある。このように被害者ではなく加害者側にとって有利な社会のまま放置するのにはわけがある。(人権を錦の御旗にする)弁護士にとっての人権という名の金づるは加害者であって被害者ではないから。もちろん彼らは、犯罪者の減刑のために雇われているので、被害者側の悲しみや苦しみを無視し、姑息な法廷戦術を平気で行う。仕事とはいえ、そこでは一般社会にあるべき良心や正義など期待できない。
    ってことで、このまま加害者優先社会でいいのだろうか?少年法や心神喪失による減刑などのあり方を含めて改めて問うべき。もちろん冤罪を防ぐための努力は必要です。
    さて、「正義とは何か」をテーマにした本書。下巻では、証拠捏造と殺人というワイルド7顔負けの私刑を行った検事の「正義」が問われる。結末は想定内だが、最終章が読ませる。とはいえ、沖野の最上弁護申し入れはやりすぎでしょう。
    おまけで星3つ。

  • 古本屋さんで目についから買った一冊。

    上巻下巻通して中盤からだんだん興味が湧いてくる展開だった。

    殺人を犯してまで貫く正義は正義でないと思うが、殺人を犯してまで罪を罰したい気持ちはなんとなくわかる。

    ラストはスッキリしなかった。
    単純に考えると罪を犯してない人は無罪、罪を犯した人が捕まるという事だけど、そこにその人に対する感情などが加わると、無罪の人には負の感情で罪を犯した人には同情のような感情が出てくる。
    そうゆう意味でスッキリしない。

    正義とは何かを考えた小説でした。

  • このとんでもない一線を越える気持ちになった背景に、自分の家族との溝もあったのだろうと思う
    その辺りもう少し描写があっても、と。

  • 以前読んだノンフィクションの『殺人犯はそこにいる』(清水潔著)のインパクトが大き過ぎて、この手の小説を読んでもどうしてもあの本に引っ張られてしまう。
    厄介なことに、小説は小説として割り切って読もうと、そういう努力をいちいち要するようになってしまった。

    そんな変なフィルターがかかっている頭で読んでも、これはなかなか凄い小説だった。
    まるでノンフィクションのような気すらしてくる。
    取材をもの凄くしっかりなさったのだろう。

    新しいことも教わった。
    公判前整理手続き後には、まず新しい証拠とか提出できないってこと。
    テレビドラマでは、しょっちゅう公判中に突然「裁判長!これを新しい証拠として提出します!」「認めます」ってやってるけど、アレはまず有り得ないってことなのね…
    とか、判事のところに検事が日参して顔をつないでいることとか。
    弁護士は後から就くのだから、全然公平じゃないではないか…
    (素人なので、判事って言葉が出てきて、そもそも判事と裁判官の違いって何だろ?ってところからまずは調べたのだけれども)
    素人ではあるが今まで色々読んだり調べたりしてきて、それなりに得た知識の復習になった点も多く、ああやっぱり弁護側は不利だなぁと思わせられた。

    小説の登場人物に対して勝手な突っこみをさせてもらうなら、彼は知識と立場を最大限に利用して私怨を晴らしたに過ぎない。
    そして、自分の逮捕が近いとわかってるだろうから、奥さんと離婚しておいてあげてよ、と思う。
    こんな奥さんと娘さんで、そりゃあなたは恵まれてるでしょうよ。
    娘さんも娘さんで、あなたこの状況でも私は恵まれてるなんて思えちゃうの?

    沖野、一番割が合わなくて辛いよね、可哀想。
    一番正義を貫いたのは沖野だと思うけど、とても虚しいという気持ちもわかる。
    でも沙穂と幸せになってください。
    私はこの小説の中で沙穂と、長浜(最上の事務官)が同率で好印象だから。

    麻雀を知らないので、上下巻とも、そこのシーンだけはさっぱりわからなかったが、読み飛ばしても問題無し。

  • 上巻を読んでいる時は、松倉も憎いが、検察の強引さや最上のしたことも、あってはならないとの思いが強かった。
    しかし、下巻に入り、沖野が真実に迫っていき、最上も追い込まれて行くうちに、苦しくなった。
    そして、ラストに近付くにつれ、涙が止まらなくなり、自分でも、どう考えたら良いのか複雑な気持ちになった。
    松倉が過去の罪から逃げられてしまうことや、白川の結局ビジネスとして弁護している部分があったり、やりきれないと思うことがいくつもあって。決して許されないこととは分かっているものの、最上の気持ちも分かるような気がしたり。
    本当に正義って何なのだろう?と改めて強く思った。普段、生きている中でも、正義だけでは社会が回らなかったり、人によって正義と思っていることが違ったり、正義を振りかざして誰かを過度に傷付ける人に腹が立ったり、、色んなことがあるけど。もし身近に本当に、最上のようなことがあったら、気持ちとしては、やはり松倉には地獄に落ちて欲しいしなあ。
    最上や沖野のその後が気になる。

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著者プロフィール

1968年愛知県生まれ。専修大学文学部卒。2000年、第4回新潮ミステリー倶楽部賞受賞作『栄光一途』で小説家デビュー。04年に刊行した『犯人に告ぐ』で第7回大藪春彦賞を受賞。他の作品に、『火の粉』『クローズド・ノート』『ビター・ブラッド』『殺気!』『つばさものがたり』『銀色の絆』『途中の一歩』『仮面同窓会』『検察側の罪人』『引き抜き屋1 鹿子小穂の冒険』『引き抜き屋2 鹿子小穂の帰還』『犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼』『犯人に告ぐ3 紅の影』『望み』などがある。

「2021年 『霧をはらう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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