ソナチネ (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2017年2月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784167907884

作品紹介・あらすじ

生と死とエロス――。著者の真骨頂!
刹那の欲望、嫉妬、別離、性の目覚め…。著者がこれまで一貫して描き続けてきた人間存在のエロス、生と死の根幹に迫る圧巻の短篇集。
「鍵」「木陰の家」「終の伴侶」「ソナチネ」「千年萬年」「交感」「美代や」の7編収録。
解説・千早茜

みんなの感想まとめ

生と死、愛と欲望が交錯する短篇集は、心をかき乱す大人の物語が詰まっています。7つの短編は、それぞれ異なる視点から女性心理を深く掘り下げ、登場人物たちの複雑な感情を鮮やかに描写しています。「鍵」では死者...

感想・レビュー・書評

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  • 「ソナチネ」小池真理子

    素晴らしい。まさに小池真理子さんの真骨頂!
    じんわりと切ない、大人の短編集です。

    『鍵』
    亡き夫がコッソリ持っていた、どこかの鍵。それを握りしめて妻が行く先は…。

    『木陰の家』
    性格が正反対の姉と自分。父に溺愛され、父を頼り愛していた姉。その父の危篤の際にも、不倫関係の恋人に会いたくて仕方なかった自分…。

    『終の伴侶』
    離婚した夫の腹違いの姉との奇妙な縁。久しぶりの電話は、また金の無心かと思ったのだが…。

    『ソナチネ』
    ピアニストの佐江は、教え子の少女のホームコンサートで、少女の叔父だという男と出逢う。

    『千年萬年』
    健康優良児のような主婦の美津代。娘一家の帰省で、後からどっと疲れが出て、街中でふと見かけた指圧院に初めて入ってみるのだが…。

    『交感』
    若い女性作家の作品に魅入られた、車椅子の老人男性が手紙を書いたことから、2人の文通が始まる。

    『美代や』
    父の病院を継いだ新平のもとに、手紙が届く。身体の弱かった母の代わりに、新平が幼い頃からずっと家政婦として働いていた美代の死を知らせる手紙であった。

    どのお話も、身近な人の死が関わっています。そして、どのお話も、読み終えた瞬間「ほおう」とため息がもれました。
    美しくも赤裸々な、ある意味怖いようなエロスが描かれています。しかしそれは、型にはめられた恋愛関係ではなく、なんというのだろう?本人自身にも説明できないような、心の奥底でどうしようもなく湧き上がる感情というか。このへんが、小池さんの文章のうまくて美しいところですね。

    この短編集、私はかすかに既視感があるので、昔読んだのかもしれません。(図書館?)しかし今、還暦間近となったこの年齢で読んで、本当に良かったと思う作品でした。もっと言うなら、歳をとってからでないと、この良さは実感できないんじゃないかしらん?などと思いました。(現に、前回読んだ時の印象は朧げです)

    自分自身もそうですが・・・
    若い頃の恥ずかしいことって、年を経ないと分からないと思うのです。その時は夢中で大真面目でやっていたことが「ああ〜自分は若かったから」と思えるのって、何年も何十年も経ってからのような気がします。
    そういう意味でも、私は『木陰の家』『終の伴侶』が特に好きでした。泣きそうでした。

    小池真理子さんの文は艶があり美しい。好きだったところを少し。
    ーーーーー
    死んだ人間どころか、生きている人間に問いただしたって、はっきりできないこともたくさんあるよ。いや、それだけじゃない。自分自身に質問をぶつけても、人間は自分に向かってすら、なかなか本音を出さないんだ。

    そうしながら、私は私が通りすぎてきた道に吹きつけた風、積もって凍りついた雪、土をえぐるように降りしきった雨を思い浮かべる。嵐のあとに一条の光が射したことも、その光が消え入りそうになりながら、霧の向こうに滲んでいってしまったことも。

    上を見上げればきりがなく、かといって下を見て、自分と比較しながら次元の低い安堵を覚えていてもまた、きりがない。人生に欲しいものは多々あれど、簡単には手に入らず、捨てたいものがあっても簡単には捨てられない。

    老いは哀しい。ひたすら哀しく、憐れで残酷なものです。若いうちは想像もできなかったような種類の哀しみが、自身の身に、自身の心に、冷たい霧のようにまとわりついたかと思うと、あれよあれよと言う間に肌にしみわたり、増殖し始めるのです。
    ーーーーー
    最近、辛いことがあると、ここから10年くらいすっ飛ばしてしまいたい…なんて思ってしまうワタシでしたが、こういう作品を読むと、やっぱり長い長い時間を積み重ねてから、やっと気づけるその時まで、なんとか頑張って過ごそうと思うのでした(*´ω`*)

  • 大人の愛、日常に潜んでいそうな心かき乱される7つの短編からなります。
    ◾️鍵
    死んだ夫から見つかる鍵をめぐる物語。夫への愛おしさと次の世界への旅立ち。ドキドキします。
    ◾️木陰の家
    愛人へのくるおしい心と父親への思い。複雑に絡まり、虚しさが込み上げてきます。
    ◾️終の伴侶
    何の面白みがなくて別れた夫との結末。人生の最後に孤独であることへの慟哭に感動です。
    ◾️ソナチネ
    ピアノ練習曲ソナチネ演奏中におこる熱情。心の動き、燃え上がる激情の描き方、臨場感が凄いです。ここで終わり?と言いたくなる短編。
    ◾️千年萬年
    マッサージを巡る女性の抑えられない気持ちが詳細に描かれていますね。性描写までいかないギリギリが綺麗な文体になり、引き込まれてしまいます。ここで終わり?II 叫びたくなる短編。
    ◾️交感
    手紙のやりとりで成り立つ物語。老人と若手作家の組み合わせが面白い。最後は、、、
    ◾️美代や
    手紙からフラッシュバックする美代やの思い出。母と父の思い出も美代やを中心に巡っていく。やはり!と思いながも最後まで引き込まれます。

    女性心理が、さまざまな角度から描かれています。ギュッと味わって、ジワーっとひろがるような短編の面白さを満喫できる一冊です。

  • 何も恐れるものがなかった子供時代を象徴するメロディ。
    生きていくことの不安、絶望、虚無感など、まだひとつも感じないでいられた、幼い頃の自分をおもわせるような…

    ディアベリのソナチネ
    久しぶりに弾きながら、人生を、思う。

  • 続きを考えてしまう色っぽい話。
    「千年萬年」は特にいろいろな続きを想像してしまった。

  • 初めての小池真理子作品

    生と死とエロスを描き続けた…
    の後ろ書きに惹かれ手にとった本、
    題名からは想像もつかない、
    短編7作

    女性の心奥深くに潜む、
    生や快楽への執着のような
    年を経た今だから分かるような
    自分でも言葉にしにくい感情を
    上手く小説のなかで表してくれているような
    そんな感じがしました。

    エロス的な流れでは、ソナチネ、
    千年萬年、美代やが流れる時間と
    臨場感に自分までがどうしようもない
    焦燥感を感じる。
    上手いなあと思った。

    そして、千早さんの解説が素晴らしい。
    登場人物は恋愛を人生の中心にすることはない。
    表向きはなかったこととして現実を生きていく。
    強烈な交わりを忘れることはなく、
    ひっそりと記憶の片隅にしまう。
    記憶の中のさまざまなものに結えられ、
    ふとしたはずみにずるずると溢れでてくる。

    〜それはふと香る、匂いだったり
    夕日が染める空の色であったり、
    新緑に芽吹く木の葉であったり、
    人それぞれ…
    自分自身でもなにをきっかけとするかも
    わからずに
    記憶がずるずると自分を取り巻いていくように
    感じるだろうと思った。

    美しいものは恐ろしい。
    愛も欲望も、死も老いも、
    人生を彩る景色として流れに身を任せよう。

    美しいと感じる心に敏感にいたい、
    感じた心を大切にしたい、
    きっと人生の時間はそんなには長くない。

  • 「鍵」「木陰の家」「終の伴侶」「ソナチネ」「千年萬年」「交感」「美代や」
    これらの短編7編が収録されています。

    小池さんの最近の作品は初期の頃のスリルで胸がドキドキする様な内容ではありませんが1編1編言葉を取りこぼしたくない様な味わい深い丁寧な作品になっています。

    読み始めた途端、自分のいる日常を忘れ、小池さん独特の世界へ入り込んでしまった様な錯覚に陥ります。

    決して派手な作品集ではないけれど一人ゆっくり物語をあじわえる素敵な本に仕上がっています。

  • 家族、友人、恋人、恩師、同僚、先輩etc 様々な関係があるけれど、どんな関係か?と問われて答えられない関係もきっと大人にはある。カテゴライズできない関係。

  • 大人の女を描くのが日本一の作家さんだと思ってます。この本は短編集。知的で、美しい女性はもちろん、心にどす黒いものを抱えた女性、心のバランスがどこかおかしな女性、いろんな女性や光景が浮かぶ一冊でした。

  • ほとんどの話に、死と官能的な表現と、欲望が描かれている短篇集。
    「千年萬年」は死は出て来ないけど、解説を読んだら老いというテーマが共通してるなと思った。
    「ソナチネ」の主人公は若そうな感じがしたけど。
    「交感」のラストは、老人は本当に亡くなったのかな…と思った。
    小説家がかつて好きだった老人が一方的に連絡を絶った、という経緯となんだかかぶります。
    もっと広げられそうな作品だなと思った。

    どの話も読み応えがあって、余韻深い読後感。
    軽い気持ちで読めない(笑)

  • 大人の心模様、短編集
    他人から見た、他の人の人生なんて、表面でしかないんだなぁ、なんて考えさせられた。

  • ピアニストの佐江は、教え子の少女のホームコンサートで、少女の叔父だという男と出逢う。音楽堂の暗い客席で、少女の弾くソナチネのメロディに合わせるように、佐江と男は視線を、指先をからませていく…(「ソナチネ」)。生と死とエロスを描きつづけた著者の真骨頂、7つの作品を収めた圧巻の短編集。

  • 2022年8月8日
    最後の話は読んだ記憶があり。
    ピアノの先生の仕事も婚約者のこともほったらかして熱に浮かされる。
    あるかもね。

  • この短編集は、表題作はじめどれも「そこで終わるの!?その先は?」と問いたくなる引きで終わっている作品ばかり。あえてそうしているのだろうが、物語の余韻がどれも強く残る。

  • エロス漂う短編集。ということで「えっろ」「えんろ」「エッッッ」等の言葉を携えて本を開いてみたが、肉体の交わりより魂の交わりに重きを置いているというか、しっとり後ろめたい大人の恋愛といった内容。といいつつ指圧師にエロマッサージを受ける話が好きな俺を赦して下さい。

  • 大好きな千早茜さんの解説もとてもよく、今回は「鍵」が特に気に入りました。

    彼女の文章の何が好きかって、文章に色気があるのはもちろんのこと物語に余韻があるんです。
    スパッと完結させる語り口もあるんでしょうけど、じんわりとたおやかに終わるんです。
    時にはゾクっとするような感覚が、空気が纏っているんです。

    達した時に迎えるあのじんわりとした余韻が物語から感じられます。

  • ピアニストと教え子の叔父、主婦と指圧師、未亡人と亡き夫の友、そんな男女が互いに(あるいは一方的に)惹かれる描写が目に見えるようでした。亡き夫の衣服のポケットから見知らぬ「鍵」を見つけたところは、自分がその立場だったらと考えてせつなくなった。

  • 安定の上手さの7編の短編集。夫の遺品から自分の知らない鍵が出てきた『鍵』と、子供の頃にいた家政婦のことを思い出す『美代や』が良かったかな。指圧院でマッサージを受け官能の扉を開いちゃった中年主婦の話『千年萬年』はどっかのエロ小説の設定にもありそうだけど、小池さんが書くと格調高くなるという……それで、どうなっちゃうの?という気になるところで終わっているのがニクイです。ここのところの小池さんのテーマなのか、どの話も背景には死や老いが含まれていて、文章は綺麗で堪能できたけど、私の好みとはずれていた。

  • ひとつひとつを長編で読みたい気にさせる短編集でした

  • ありきたりではない恋の話。さすが読ませる

  • 生と死とエロスかあ。著者の得意分野ですね。
    若干ミステリーというかホラー分野も取り入れた本作は、なんだか気味が悪いような、でもエロティック。文体が美しいので気味の悪さが増すのかな。
    「千年萬年」はどこかで読んだことある。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小池真理子の作品

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