男ともだち (文春文庫)

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  • 文藝春秋 (2017年3月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784167908072

作品紹介・あらすじ

29歳のイラストレーターの神名葵は関係の冷めた恋人・彰人と同棲をしながらも、身勝手な愛人・真司との逢瀬を重ねていた。仕事は順調だが、ほんとうに描きたかったことを見失っているところに、大学の先輩だったハセオからの電話がかかってくる。7年ぶりの彼との再会で、停滞していた神名の生活に変化が訪れるーー。解説・村山由佳

みんなの感想まとめ

人間関係の複雑さや恋愛の曖昧さを描いたこの作品は、共感を呼ぶストーリーが魅力です。29歳のイラストレーター、神名葵は、冷めた恋人との同棲生活を送りつつ、自由な愛人との関係を楽しんでいます。大学の先輩と...

感想・レビュー・書評

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  • みんな共感すると思うしおすすめだし手元に置いておきたい大好きな本です!とは言えない本。
    自分自身クズだったから、クズだった部分が共感してしまっている。

    "あの時、私は何も考えていなかった。何も考えず、ハセオの背中を追いかけていた。不安も迷いもなく、この道が正しいのだと心の底から信じて、ただ、進んだ。"
    "あの時、頬に触れる風が心地好かった。身体は熱く、どこまでも歩けるような気がした。"

    あえて人に話すようなことではないと思っていた自分の経験がキラキラと輝いて感じた。
    これはこれで大切な思い出なのかもしれない。

    できることなら、これにとっても共感した!響いた!という人と、こっそりそんな経験を語りあいたい。

  • あなたは今までの人生の中で異性の”ともだち”をもったことがあるでしょうか?

    頭の中にパッと何人かの顔が思い浮かぶ方もいるかもしれません。男女の”ともだち”何人かと休みになればどこかに遊びに行って騒いだあの時代、そんなことを振り返った方もいるかもしれません。しかし、いま、ここで問いかけているのはそういったグループ交際のことではありません。一対一、二人だけの付き合いの中での”ともだち”関係のことです。それは、『布団と同じ匂いの筋肉質の身体が横に滑り込んできても、兄弟のように安心して眠り続けていられた』という男と女の関係になるはずの場面でも決してそんな関係に進展することのない関係です。大学時代、『バイトがない日は暗くなってくるとハセオの部屋に行った』と、男性の部屋に通う女性の姿を見れば当然にそこには恋愛感情があると見るのが自然だと思います。しかし、他の男性には『誘われればすぐに寝た』一方で、その男性とは決して男女の関係には進まない女性。そんな女性は、その関係をこんな風に説明します。
    
      『愛人でも恋人でもないよ、ハセオはただの男ともだち』。

    そんな女性は「男ともだち」のことをこんな風にも説明します。

    『旦那や彼氏や愛人では駄目な時ってある』、『女ともだちじゃなくて、そこはやっぱり男ともだちじゃなきゃ埋められない』。

    この作品はそんな女性が三人の男性と関っていく様を見る物語。そんな三人の中の一人の男性に「男ともだち」という繋がりを感じる物語。そしてそれは、そんな女性が「男ともだち」に支えられながら『自分が小さかった時に見たかった景色』を見つけていく物語です。

    『壁時計に目をやる。まだ朝の七時過ぎ』という時間に携帯電話の着信振動音が鳴り『こんな時間に電話をかけてくるのは真司さんくらいしかいない』、『当直明けの気まぐれ』だろうと思うのは主人公の神名葵(かんな あおい)。そんな葵はキッチンに立ち、自分の弁当を作っている彰人のことを見ます。『でないの?仕事の電話かもよ』と言われるも『彰人の前ででられるわけがない』と思う葵は『結婚している自分には細心の注意を払う』くせに『私の同棲相手への配慮』をしない真司に苛立ちを憶えます。電話の振動も止まり『占い雑誌のイラスト、終わったんだ』と訊く彰人は『生活のリズムは守った方がいい』と言って出勤していきました。『彰人よりひとつ上の私は来年で三十にな』るという葵は、携帯を手にし、先程の着信の相手を調べます。真司からではなかったその電話。一方で知らないアドレスからメールが届いているのに気付きます。『まいど。ご活躍なにより。しょっちゅう関西行くから暇ならつきあえ』というその内容を見て『ハセオ』と思わず声をもらした葵は、『夜にでも電話する』という最後の一文で再び『ハセオ』と呟きます。そんな葵はハセオと『いつも一緒にいた』という大学時代を思い起こします。『バイトがない日は暗くなってくるとハセオの部屋に行った』と、男子学生たちがしょっちゅう出入りして『煙草のけむりと酒瓶と漫画雑誌と麻雀の音』で溢れていた部屋のことを思う葵。『二歳上だった』というハセオと、『互いが景色の一部になってしまうくらい一緒にいたけれど』、『恋人同士ではなかった』という関係を続けていた二人。そんな過去に思い耽っている中、携帯の着信で現実に引き戻された葵は『もしもし』と通話に出ました。『晩飯でも行こう。迎えにいく』というその電話は真司からでした。『急いで服を着替え、彰人に置き手紙を残して部屋をで』た葵。『同じ額の生活費を入れ、平等な関係でいる』彰人との生活の一方で『大学付属病院の勤務医』で妻子もいる真司と関係を続ける葵。そして、再び着信があり、『おっでたな』といきなり語り出した相手はハセオでした。『雑誌でお前のイラスト見たから』と大きな声で話し出したハセオ。『一昨年、自費出版で絵本を一冊だした。それが海外で賞をとっ』たという葵は、話しながら『いつも独りで締切に追われている』ものの『名前は広まってきてはいるが、精神的にも作家としても豊かとはいえない』自身のことを思います。一方で『今週末、空いてるか』、『いま富山の薬売りなの』というハセオ。そして、再会を果たしたハセオに『楽だな』と感じる葵。『真司さんのように私の言葉の裏を読もうともしないし、彰人のように気を遣ってくるわけでもない』というハセオとの二人の時間に自然に笑顔が戻ってくる葵。そんな葵が三人の男性とそれぞれの接し方を続けていく中で、『ハセオは大切な大切な男ともだちだ。この先もずっと』と改めて気づくことになる物語が描かれていきます。

    「男ともだち」という少し不思議な書名のこの作品。そんな物語では、主人公の神名葵が接する三人の男性との関係性の違いが描かれていきます。まず一番身近な存在が『同じ額の生活費を入れ、平等な関係で』同棲を続ける彰人です。しかし、物語の中ではそのすれ違いの描写ばかりが目立ちます。『すれ違いから目をそらして、何も文句を言わない彰人に甘えていた』という葵は、その一方で『大学の事務バイト』で知り合ったという勤務医の真司と関係を深めていきます。『私たちの関係は不倫だ』とはっきり認識を持った上で妻子ある真司と積極的に関係を持つ葵。実際にこの作品で描かれる男と女の濡れ場シーンは、真司との濃厚な関係のみで、同棲相手の彰人とはそもそも本当に同棲しているのか?と思えるほどにクールな描かれ方です。『この関係が彰人にばれたら困る。けれど、困るのは彰人を失いたくないからというより、その後のあれこれが面倒だから』という葵のなんとも身勝手極まりない感情。主人公ながら葵という女性はなかなかに読者の感情移入を阻む残念な人物、そんな印象が募っていきます。

    そんな中に現れるのがハセオという第三の男性の存在でした。大学時代に知り合ったという二人の関係は『互いが景色の一部になってしまうくらい一緒にいたけれど、私たちは恋人同士ではなかった』という不思議な関係です。あなたは友人のことを思い浮かべた時に異性で”ともだち”と呼べる人はいるでしょうか?異性の場合、どうしてもそこには恋愛感情と紙一重な感情が生まれてくるように思います。グループでたまに遊びに行く相手、というならいざ知らず、親しくなればなるほどにそこには、恋愛感情が芽生えていくのではないかと思います。しかし、この作品で描かれる葵とハセオの関係は決して一線を超えません。『恋愛感情、人としての愛情、友情、連帯感、どれもぴんとこない』とその関係を自分でも定義できない葵。しかし、そんな葵はハセオのことを一緒にいて『楽な相手』だと感じています。『愛人でも恋人でもないよ、ハセオはただの男ともだち』と人に紹介もする葵は『男ともだち以外に呼び名が浮かばないんだよね』と言い切ります。しかし、そんな男女の関係性がどうしてもピンとこない相手からは『男と女が一緒にいて意識しないなんてのは嘘よ。偽善と欺瞞のにおいがする』、『男ともだちってずるい響き』だ、と言われてしまいます。そんな葵は、ハセオとの関係を改めて思う中で悩み苦しんでもいきます。『ただの男と女になるのだ。特別だと思い込まないように。特別でなくなってしまえば、もう失くすことを恐れないで済む』と考え、その関係性を変えることに突き進んでいく葵。そんな葵にあくまで「男ともだち」としての姿勢を崩さないハセオ。異性間の友情が成立するのかどうか、この辺りは読者によって意見が大きく異なるのではないかと思います。そんなことは絶対にありえないと思う方には恐らくこの作品はある種のファンタジーとさえ映るような気もします。一方で解説の村山由佳さんは『神名とハセオのような関係は、じつは、ある』と断言されます。『そんじょそこらには転がっていないだけで確かに存在する』と続ける村山さん。数多の小説で描かれる男と女の恋愛物語ではなく、男と女の友情物語が描かれる非常に稀有なこの作品。読者の異性間の関係性への考え方が図らずも露わになるこの作品。「男ともだち」という言葉の響きが気になる方には是非一読いただきたい作品だと思いました。

    そんな異性間の友情に一見焦点を当てているように見えるこの作品ですが、一方で、その主題は実は違うところにあるのではないかと感じました。それは、この作品は、児童書の編集者に『本当に描きたいものを描けてますか?』と問いかけられ自問を続けていく葵の成長の物語ではないかということです。『何かを生みだすことは、暗い暗い海にたった独りで舟をだすのに似ている』と感じ、『慌ただしい生活をしていても、絵筆を握れば違う場所に行ける』とイラストを描き続ける葵。『暗い海の底の底には光がある。闇の果てには綺麗なものがある』と思い、そのことを信じて『それを見つけたくて、一心に描く』と絵に向き合い、絵を描くことに真摯な姿勢を見せる葵のイラストレーターとしてのプロ意識は、同棲しながら不倫をするという乱れた異性関係を送る葵のまったく別人のような姿でもあります。『孤独だ、と感じる時ほど、純度の高いものを描ける。足りないものがある時ほど、自分の理想がくっきりと見える』と、あくまで自分自身を見つめていく葵。そんな葵の真の姿は彰人にも真司にも決して見えてはいません。それを唯一見てくれていたのがハセオなんだと思います。男性に甘えたい思いで彰人や真司に接していく葵。しかし、彼らは彼女の目指すところを見てはくれません。一方でそんな彼女を一歩引いた位置から真摯に見つめてくれるハセオには、男性として甘えることはできません。『いま会ったら甘えてしまう。甘えて、男ともだちじゃなくて男として求めてしまいそう』、そして『ハセオはずっと男ともだちのままでいて欲しい』と矛盾する思いに苛まれる葵。この作品で描かれる葵という女性は、上記した通り共感のしづらい女性であることには違いありません。しかし、自身の仕事に真摯に向き合い、人生の悩みをハセオという「男ともだち」に頼っていく葵の姿に視点をずらすと、そこにはドロドロとした男と女の物語ではなく、葵という一人の女性の成長の物語が浮かび上がってくるのではないか?そう、この作品はどこに注目して見るかで読後感が全く異なってくる、なかなかに興味深い作りの作品だと思いました。

    『愛人でも恋人でもないよ、ハセオはただの男ともだち』。私たちは異性間の交友を見ると、どうしてもそこに恋愛の感情の先に続く関係性を思い浮かべてしまいがちです。そんな言葉に『偽善と欺瞞のにおいがする』という指摘が生まれるのはもっともです。しかし、この作品では、そこにただ一緒にいて『ああ、楽だな』と感じる女性の姿があり、それを”ともだち”として受け止める男性の姿が描かれていました。

    悩み苦しみながらも『自分が小さかった時に見たかった景色』をようやく見つけたというその女性。そんな女性から『ハセオにとっての愛情ってなに?』と訊かれた男性はこんな風に答えます。『見ててやることかな』。女性の側から見えるそんな男性のことを「男ともだち」という言葉をもって描いていくこの作品。「男ともだち」なんて関係性は絶対にあり得ない!そうおっしゃるあなたにこそ是非読んでいただきたい、そんな作品でした。

  • 初読みの作者さん(厳密には、アンソロジーで短編一話読んだ記録あり。記憶になし)。
    「透明な夜の香り」の前に、フォローしている方のレビューに惹かれてこちらから読んでみた。

    イラストや絵本の仕事に打ち込みながら、関係が冷めつつある恋人とダラダラと同棲とし、遊びなれた医者の愛人との逢瀬を楽しむ、神名葵(29歳)。そこに学生時代の先輩から久し振りに連絡があって…、というところから始まる物語。
    恋愛感情も独占欲も下心もない異性の友人がいたらとても良いと思うのだが、私は『男と女が一緒にいて意識しないなんてのは噓よ』と口を尖らす自称ゲイのアキラ君の言い分のほうが腑に落ちることもあって、全体的に作者さんが言わんとするところがよく分からなかった。
    解説で言われているように、稀有にもこんな関係もあるかもしれないが、そうも思えないところを自身の貧しさのせいと言われてもねえ。そういう人にもありではないかと思わすように書いて欲しいと思ったのでした。

  • 久しぶりの初読みキャンペーン!


    以下、レビューではなく感想というか自分の回想ですので、おそらく何の参考にもなりません。笑



    読み終わりすぐにはレビュー書けず、色々昔の自分を重ね合わせて考えたりした。
    男ともだち、いたー!!!
    彼氏の友達だったけど、その彼氏と別れた後も今も連絡取れる友達である。

    でも、、一切恋愛感情なかったのか。どうなのか。
    スノボに行き、相手の実家にも泊まったことある笑
    つぼ八に行った思い出。笑
    ただ、25歳くらいで相手が結婚する連絡きたとき、ショックすぎた、深酒したー、、
    でもその時は付き合っている人がいた。

    なんだろ、男ともだちって……
    お兄ちゃんみたいな存在??

    解説では、全員登場人物がクズと書かれていたけれど、私はそう思わなかった、そなの!?と。

    むしろ、ハセオがかっこよくて、、、
    あのビルの中で、医師の不倫男にズバズバ言うシーン、あれはどんな気持ち?ハセオはどうなの?

    でも、私は読了して数時間経ち、ハセオのことが好きになってしまっている、、笑笑
    あら、、こうなると、男ともだちではない!?

    なんか読んでる途中は★3〜★5を行き来していたが、最後に★5。なぜならハセオに惹かれてしまい負けである(°▽°)

    • 1Q84O1さん
      なんなんさん、こんばんは♪
      なんなんさんにとって良い思い出か辛い思い出かはわかりませんが回想良かったです^_^
      ハセオ、これはかっこよすぎ!...
      なんなんさん、こんばんは♪
      なんなんさんにとって良い思い出か辛い思い出かはわかりませんが回想良かったです^_^
      ハセオ、これはかっこよすぎ!
      男も惹かれますよ〜w
      2023/05/24
    • なんなんさん
      1Q84O1さん、こんばんは!

      すみません、変な回想を書いてしまいまして^^;
      私にとって良い想い出です。
      そですよねー、ハセオかっこよす...
      1Q84O1さん、こんばんは!

      すみません、変な回想を書いてしまいまして^^;
      私にとって良い想い出です。
      そですよねー、ハセオかっこよすぎー、、これは付き合ってしまうと心配なるから『男ともだち』でいる事が最高なのかもですね。

      ってまた勝手に独り言書いてる笑

      初読みだったので他の作品も読んでみます★
      2023/05/25
    • 1Q84O1さん
      男ともだち〜なんなん編〜 楽しませてもらいましたよ(≧∇≦)/
      なんなんさんにとって良い思い出でよかったです♪
      独り言も面白い〜w(^。^)...
      男ともだち〜なんなん編〜 楽しませてもらいましたよ(≧∇≦)/
      なんなんさんにとって良い思い出でよかったです♪
      独り言も面白い〜w(^。^)クスッ
      2023/05/25
  • 安定か向上か。三十間近の大人達が迷い込む感情の迷宮のような。
    イラストレーターとして、徐々に仕事の質と量を増やしてきた女性。友人のような男と同居中。イケメン医師の愛人との逢瀬も重ねる。仕事も男も停滞中。そこに大学時代の男ともだちが、何事もなく現れる。出会いから現在まで、距離感が変わらない、彼女の本質を知る男。停滞中の彼女の背中を押してくれた感じかしら。
    この男ともだちという存在の現実性を納得できるかどうか。たまーに、居るんだけど、課題はその男ともだちが完全フリーであることだから、ハードルは高め。三十路のコバルトブックス。

  • 評価が真っ二つに別れる作品と思いました。
    千早茜は初読みです。
    男ー女友達は成り立つのか?
    登場人物全員が見事な屑っぷりで描かれている。
    でも現実はこんなもんではないでしょうか。
    自分の人生で自分とどう向き合っていくべきか。
    他人とどう接していくべきか。
    私自身は男ー女友達関係は成り立つと考えており
    実際に友達関係の人が存在します。腐れ縁とでも言うべきか。
    何年会わなくても、当時のように気さくに話せる。
    こういう関係の人がいることは、とても幸運だと思う。
    人として、というのか。まあ難しい話はやめましょう。
    凄く面白く読めました。また千早作品を読んでみます。

  • イラストレーターの神名葵は、同棲している恋人がいながら、既婚者で医師の愛人とも関係を続けている。
    大学時代にサークルで知り合ったハセオからの突然のメールで、停滞していた神名の生活が動き始める。

    神名は二つ歳上のハセオとは一緒にいたけれど、二人は恋人同士ではない。
    大人になって7年ぶりに再会した神名とハセオを見ていると、何だか危なっかしいような、大人として何かが欠けているような気がして切なくなってきます。

    お互いに別の誰かと付き合っていても、二人はいつもいつも前を向いてまわりを蹴散らして前進している。他人が入り込むすき間がないくらい。
    イラストレーターという過酷な仕事を続ける神名に、男ともだちって言う存在があるのは、ずるいような羨ましいような。

    だけど、読んでいてとても力強いものが感じられて面白かったです。

  • 全員クズなのになんかゆったりとしてて良い雰囲気の1冊だった
    なんか憎めないなあ神名。ハセオみたいな人だったら男友達って成り立つだろうな

  • 千早さん初でしたが私は良い作品だと思いました。
    テーマが大衆ウケするものではないからこそ、理解するのが難しいものの神名とハセオの関係性について深く深く語られていて凄いなと思いました。

    神名は一見すると自立していて、自信があって自分のやりたい事、したい事に夢中になっている強い女性のイメージを受けます。

    しかしながら実は孤独や不安を上手く消化できず抱え込んでいて、上手く消化できていないからこそ誰かを必要としながらも深く関わる事は慎重で恋愛関係に入る事をどこか避けている印象です。

    一方でハセオは神名に対して理解があり、自分の感情をはっきり主張せず、相手に合わせる事で関係を維持するタイプに見受けられました。

    友だちは一生続け得る関係ですが、恋愛になってしまうと終わってしまう可能性もありますしね…。
    こんなにも合うと思っていたのに上手くいかないとより心のショックは大きいと思いますので。

    ハセオは神名に恋人として踏み込んでいかないところが、神名としては他のエゴのある男とは違って特別な存在だと思われる所以だと思いました。

    私個人的にはハセオは神名に対して恋愛感情があると思いました。
    ただその恋愛感情は一般的な肉体関係になりたいというよりは、神名の事を理解して神名の困った時に支えてあげられるようにずっと見守っていたいという気持ちに昇華されているのかなと思いました。

    ちょっと難しくて不器用な性格を持った人と、その性格を理解して尊重して、別の形で愛情を持ち続ける人の素晴らしい関係性の物語でした。

  • ドロっとした部分と妙な清々しさのダブルパンチで、読み手によって捉え方や感想が変わりそうな作品ではあるなぁと思いました。

    作品のテーマは男女の友情であり、本作ではある意味歪な関係性を性の問題と対比させながら表現しているように感じました。特に良く表現されていたのが、周りの目の部分かなと思います。

    男女が2人で会うということはたとえプラトニックであったとしても、周りが偏った目で見てくるというのは、自分も経験があるので、妙な納得感はありました。

    人の恋路に関わって良いことってあんまりないのかなぁと思った感じです。

  • ハセオいいなあ
    千早さんの文はとろける感じでいい。
    アンニュイな感じでまったり読める。
    とても素敵。

    何かを生み出す仕事をしている主人公の神名。
    その仕事がうまくいっている時、うまくいっていない時、何かを生み出すために自分を空っぽにしたい時、近場の相手に何を求めるのか。
    インスピレーションを掻き立てるための刺激なのか、安心なのか、安定なのか。

    欲求をぶちまけたいのか、それとも貴重な理解者を失いたくないのか。

    どっちの欲が勝つのか


    主な登場人物一人を除いてたぶん子どもはいない、自由な雄と雌の物語。


    女はどんな時に受け入れられた気持ちになるのだろうか

    見ててもらった時だろうか
    ちゃんと受け止めてもらった時だろうか

    女男関係ない気もしてきたな

  • 『男ともだち』
    主人公の神名葵はイラストレーターで、会社員の彰人と同棲中。その一方で、妻子もちの医師 真司と不倫関係にある。仕事も徐々に増え軌道に乗り始めているものの、本当に描きたいものが描けずに彷徨っていた。
    そんな折、大学時代の先輩ハセオから連絡があり、神名の中で少しずつ変化が起き始める・・・

    『透明な夜の香り』に続き千早茜さんは2作目。
    物凄く剥き出しに現実的で潔くて清々しさすら感じた作品だった。

    男女の友情がどうなるのか・・・
    この描き方も含め、神名の心理描写がとにかく剥き出しで尖ってて凄かった。恋愛小説は、過去の経験から培われた部分が大きく影響しそうだが、作者に対するそんな陳腐な想像なんて無意味だと思う。きっと読み手は、自分の恋愛観と向き合いながら読むことの方に夢中になってしまう。

    神名の生きる道はどうなっていくのか・・・
    イラストレーターで生計を立てることの難しさ。夢と現実のギャップ。同世代との間に生まれる価値観の違い。
    安定した会社員の彰人と同棲することで、メリットを得ながら2人の関係には目を背けていた神名。彼女が仕事に向き合い成長していく様子は、作者の築き上げた過去が少しだけ垣間見れるように感じた。

    一線を超えることで男女の友情は壊れてしまう。
    ならば壊してしまえという露月さんと、絶対に壊しちゃダメという美穂。同じ女性でも真っ二つに分かれる意見。それぞれに歩んできた人生が判断を分かれさせるのも興味深い。

    ハセオ側からの心理描写も期待したが描く主軸がブレるからだろうか・・・これは作者の意図される所だろうが、この部分でもう少し膨らみを期待してしまった。
    でもハセオが神名に抱く感情に説明を欲してしまうのは、こういう「男ともだち」が私にはいないからかなぁ・・・としみじみ思った。

    三十路前後という年齢的な影響もあるのか、人生の迷い道だからか、神名のことを終始尖ってるなぁと感じていたが、終盤で少し成長して来たことで丸くなった気配がみえた。見ているハセオが安心出来たのが良かった。尖っていようが倫理的に逸れていようが、離れないでいてくれる存在って本当に貴重だ。

    神名には、ハセオに貰うばかりでなく与えられる人になって欲しいなぁ同性目線で感じた。
    貰うばかりでは、今後、お互いに結婚した時にその関係が壊れてしまう可能性が高くなるだろう。
    そこも含めて理解して受け入れてくれる伴侶なら別だけど・・・
    うーん、やはり性別ってこういう時に厄介だ。
    かくいう私も、伴侶にこんな異性のともだちが居たら嫉妬しちゃうな。
    半分は羨ましくてだけど笑

  • ー自分に欲情する男という生き物を見下しているー
    誰かを一途に愛することができない、浮気や不倫をしても何の罪悪感もない、そんな彼女や彼らの考え方や言動を垣間見たような感じがしてとても面白かったし、共感はしなかったが理解ができた気がする。
    多分こういう人種は、私の周りにも実際にいたなあと思いながら読んでいた。

    表題の“男ともだち”とはこの中でいうハセオという男で、いわゆるクズの沼男。。。( ;´Д`)
    ハセオと自分は恋仲にならないのか?自分の気持ちは恋ではないのか?友達なのか?
    ということについて主人公がずっと考えて出した答え。

    この2人の関係性を聞いたら、それは好きではないか?と思ってしまうけど、彼らにしかわからない雰囲気や感覚があるのだと思う。
    なんか違うな、でも好きかも?
    その絶妙な男女の雰囲気がこの小説で巧みに描かれているように思った。
    登場人物たちの会話の中で自然に出てくる名言みたいなものが、いくつか心にささって、男女の関係について考えさせられた。

    ー女の子って自分に置かれている状況を中心に物事を判断するから仕方ないわよ。ー
    女の子は自分のライフスタイルをみて、結果論で相談にのったりする。というか、そうでしか女の心に寄り添えないと思うからだと思う。
    そんな気持ちがこの一文に込められてる気がして、何度も考えてしまった。
    他の千早さんの小説で、みんな自分の恋愛が綺麗だと思っている、というふうに言っていたのを思い出した。
    こういう気づきがあって、千早さんの作品が大好き!

    神名の屑女っぷりもすごく見応えがあったし、それが結構にリアル。相手の気持ちよりも自分の立場や置かれている状況の方がいつも大切で、どこか俯瞰して見ているような、それでいつも空腹でいて強欲。
    欲に飢えて寂しくなると別の人にあたたかさを求めに行く…
    素晴らしいくらいにクズが描かれている、だけどその描写だけじゃなくて、ちゃんとその言動や結果についての神名の気持ちがまとめられているし、だからこそ読んでいて放り投げずに面白く読めたんだと思う。

    主人公が自分の気持ちにどう素直になれるか?
    気がつけるのか?というのが見所だと思う。
    手にしたら離れるのが怖いのかもしれない。
    出会うということは、いつか別れるかもしれないから。
    この絶妙な間柄が『男ともだち』という表題にピッタリ。

  • タイトルから予想していたよりも面白かった。
    異性の友達の有り無しはよく言われるけど、人それぞれ一括りにはできないと思った。
    表現するなら、男ともだち、というだけであって。
    失いたくないと思う相手が異性というだけで、恋愛とかに無造作に落とし込まれていく。周りがそうさせる時もあるし、どちらかが友達以上に進もうとすると関係性が変わっていく。
    勝手に決められる、勝手に変わっていくのは嫌だと思いながらも、かく言う私も、読みながらヤキモキして、こうあって欲しいと勝手に思ってしまうのだなぁと思った。

    ただ今回の結末は意外だった、なんだか嬉しく思った。異性とか同性とか以前に、大事にしたいと無意識に思う人に巡り会えるのは奇跡だと私も思う。

  • 題名で気になった本。

    内容は登場人物がクズばかりで、色々あるけど、サラッと読めてあっという間に読了。

    共感は出来ないけど、異性の友達は恋愛感情無しであるし、あんな風な人達もいるかもしれないと思った。

  •  異性を気にせず、親密な関係は伴わず時と場所を共にできる存在。時には良き情報源、時には雌雄の本能への猜疑心、時間と共に気持ちが右往左往としないのか。そんな関係が一人の女性を中心に描かれている。
     同棲相手との関係は互いを理解し干渉しすぎない距離を保っているものの、互いの不十分さに熱を奪われて冷めたのでしょうか。
     不倫は自身の機能維持を確認する手段に過ぎなかったのか。押し引きの掛け合いは互いの欲を適度に満たしていたのかもしれない。いなくなっても支障はないものの居ないと不便に感じる。不満のタガが外れるまでは。
     ともだちの本名はいつまでもともだちでいられるのであろう。そんなことある?って感じつつも変化に期待しながら先が気になって読み進めてしまった。同志と感じた理解者の幸せを近くで実感した主人公は自身の身の振りをどう進めるのか・・

  • この世で唯一無二であるハセオ。こんな男は存在するの?この本に出会うまでは男女の友情は成立しないと思ってたし、私には気の置けない男ともだちがいないから分からないけれど、ハセオのように見返りを求めてるわけでもなく、寄り添ってくれる特別な男ともだちの関係や距離感には少し羨ましさを覚えた。
    男女の関係には必ず終わりがあるし、駆け引きや損得もうまれるから〝ともだち〟として努めるハセオの愛情の深さはひしひしと伝わってカッコいいなと思った。恋人でもなく一線を超えない関係、むしろ強い絆で結ばれた大切な存在、その関係が永遠に続いてほしいな。

  • 千早茜さんの本は何冊か読んでいる。
    男女の間の友情とかってわりとありふれた題材だけど、中身がありふれない、つまらなくないところが千早さんの作品だ。

    主人公の神名は若い頃から男に絶望している。
    誘われれば誰とでも、寝る。
    でも、唯一寝なかった男友達、ハセオ。

    30歳間近になっても、恋人がいて、その他に不倫関係の男がいて、という生活をしている。恋人とはとうに、恋人というより、ただの同居人となっている。イラストレーターの仕事も、描きたいものを描くというより、来る依頼を淡々とこなしている感じだ。

    そんな時、ハセオと再会する。
    ハセオはただ寄り添ってくれる。
    それで、神名は、ちゃんと前に進める。

    神名は多分、とっても弱い人。
    でも、ハセオみたいな人が、ちゃんと寄ってきて支えてくれるって、魅力的な人だからだろう。
    何かしてあげたいって気にさせちゃうオーラ、私も欲しい。

  • 〈孤独だ、と感じるほど、純度の高いものを描ける。足りないものがあるときほど、自分の理想がくっきりと見える〉

    不思議な気持ちになった。
    この本の登場人物全員が屑だとは不思議と感じなかった。
    でも、どこかでみんな退屈な日常を諦めて生きているような、そんな寂しい大人な感じがした。
    そんな中、主人公とハセオは、自分が守りたい「信念」のようなものを強く持っているのではないかと感じられた。ハセオにとって、主人公:神名は、大事な存在であるのと同様に、神名にとって、創作活動だけは、人生切っても切り離せないものである。まあ、ハセオはそこまで考えているかは不明だが、少なくとも二人は相性がよく、お互いになくてはならない存在なのだ、と思う。
    ハセオは、神名の作品の誰よりもファンなのではないかと考える。

    主人公の目線から本を読み進めていく中で、芸術家の頭の中ってこんな感じなのかなーって思った。あり大抵のことでも、気づけないのが「普通」の人で、些細なことでも敏感に気づけるのが「芸術家」なのではないか、と。
    自分の中に空いた穴を埋めるために、そしてその穴に気が付くために、たくさん恋愛をして傷ついて、そして創作意欲が沸いていく…という。
    こんな人もいるよねーって、思わされた。
    確かにこういう人の恋人って気の毒だけど、でももしこういう芸術家タイプと付き合ってしまったら、どこかであきらめがつくというか。どこかで、この人と自分はもう一緒にいられないって気づくんじゃないかって。だから、相手に対して執着とか、憎しみとか、あんまり抱かずに別れられるんじゃないかって思う。むしろ、最初から、そういう人だってわかった上で、付き合っているんだろうけど。
    そして、主人公みたいな女の人の方が、何からも囚われていないようで自由に見えるし、軽そうで男からも好かれるのかな、とは思う。

    決してセックスを持ち込まないのも、二人の間を恋愛という月並みな関係に落とし込むことで、いつか終わってしまうのを避けるためだ。彼自身、もとより女性に不自由していないのだから、この世に唯一である存在を欲望の対象にする必要だない。寝たくないわけでも、寝たいくせにねないのでもなく、ただシンプルに、寝る必要がないのだ。(解説より)

    正直、この本がどうしてこんなに評価が高いのかはよくわからない。
    でもなんか、わかる気がする。切なくて、もどかしくて、尊い。不思議な読書体験だった。
    今はたとえよくわからなくても、読む価値があったと思う。読んでみてよかった。

  • 3作目の千早 茜作品。突然ですが、男女の間に友情は存在するのだろうか⁉️本書は、千早 茜という作家によって一つの回答が導き出された作品だと思いました❗️

    解説の村山 由佳さんの解説にあるように、登場人物は見事な屑ばかりで、決して共感できる人は一人もいませんでしたが、それぞれの心情はとてもリアルに感じて、結構楽しく読むことができました❗️

    この作品の評価を左右するのは、ハセオという主人公の神名 葵の大学時代からの男ともだちの存在です。もしも自分が神名の彼氏の立場だったなら、ハセオの存在は不倫相手の真司よりもちょっと許せなく妬んでしまうかなぁと思ってしまいます。

    逆に、自分がハセオだったとしたら、神名を抱きたくなる時はあるかも知れないけれども、自分自身が臆病なので、今の関係が壊れることを恐れて、きっと最後の一線は越えないだろうなぁーと思います。

    千早 茜作品、めちゃくちゃ面白いと声を大にしては言えないけれども、個人的に好きな作家さんです♪

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著者プロフィール

1979年北海道生まれ。2008年『魚神』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。09年に同作で泉鏡花文学賞を、13年『あとかた』で島清恋愛文学賞、21年『透明な夜の香り』で渡辺淳一賞を受賞。他の著書に『からまる』『眠りの庭』『男ともだち』『クローゼット』『正しい女たち』『犬も食わない』(尾崎世界観と共著)『鳥籠の小娘』(絵・宇野亞喜良)、エッセイに『わるい食べもの』などがある。

「2021年 『ひきなみ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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