- Amazon.co.jp ・本 (399ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167908263
感想・レビュー・書評
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面白かった。
根っからの悪人ではなかった直家が、悪人にならざるをえなかったあたりの見せ方がとても上手い。この話だと、悪人らしいのは浦上宗景の方だったし。
続きの楽土も読んでみたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
第一話を読み終え、宇喜多の娘に感情移入してしまい
「もっと読みたかったのに、何だ短編集だったのか・・」
とガックリしたのも遠い昔の記憶。
一連のつながりのあるストーリーだったのですね。
読み進めるにつれて、憎き悪役と思っていた宇喜多直家に対する見方がガラリと変わってしまいました。
◇中国地方の歴史に疎い私は、
「誰それ?聞いたこともない」
と、読みとばしていた人名が伏線であり、
「もしや、これがあの人のことか!」と何度ページを後戻りしたことでしょう。
これがデビュー作とは驚きで、次もまた読みたくなりました。 -
誰が忠義で誰が不忠か分からぬ謀略の数々、人の心の裏の読み合う宇喜多直家と娘の於葉。短編の中にゾクリと感じさせるものがあった。「宇喜多の捨て嫁」
短編集でありながら、宇喜多直家の生涯を主君浦上宗景との謀略数々を中心に描かれている。
短編の時系列が直家晩年の「宇喜多の捨て嫁」から始まる。宇喜多直家の人となりは謀略に長けた戦国大名の印象であったが、幼少期からの直家が成長するにつれ、止むに止まれず謀略を使わずには生きられず、その謀略の業を自らの病「尻はす」として背負っていることを伝えたかったのではないだろうか。
ちょっと、アクが強い作品。
馴染みのなかった戦国大名宇喜多直家に少し興味を持った。 -
戦国武将の切なさや悲哀が詰まっている。
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タイトルから、直家の嫁いだ娘のお話かと思いましたが、それはこの本の中の一編。視点を変え、年代を前後し、いつしかこの本が梟雄とまで呼ばれた宇喜多直家を描き出していることに気づきます。時系列が前後することで読みにくいかなと思いましたが、本人視点まで交えて語られたことで徐々にはまるピースに見せ方の上手さを感じました。娘を捨て嫁とまで世間から呼ばせた彼は、ただの梟雄ではなかった。それまでの荒々しさをすっとまとめるラストの「五逆の鼓」が印象的です。衣類の流れていた旭川の冷たさが私の足にも伝わってくるほどでした。
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戦国時代。下剋上の世の中で、宇喜多直家は自身の舅を暗殺したり、自分の娘たちを嫁がせた後、片っぱしから暗殺や謀殺を繰り返していくなど、悪名高き武将だった様です。
表題作の宇喜多の捨て嫁は、直家の四女の視点で描かれていますが、この本の冒頭の話なので、そして私自身が宇喜多直家をほとんど知らずに読んだので、衝撃的でした。いくら戦国時代だからって、酷すぎる…と思い読んでいました。
しかし、読み進めるにつれて、直家を中心にして、様々な人たちの視点で続きものの短編集の様な形で描かれていますが、時代やそうせざるを得なかった背景、葛藤、苦悩なども描かれていて、「この時代を生きる・生き抜く」ことの壮絶さを感じずにはいれませんでした。
もちろん、物語なので、本当のところは分かりませんが、裏切らなければ、どうしたらいいのか、妻や子どもたちが拷問の末殺されるのを策を講じず見ているのか、主は何て、非情の極みみたいなことをするのか…と何とも言えない気持ちで読み終えました。直家は、死の間際、何を思ったのだろう。
様々な人たちの思惑や時代の流れ、才覚や運など、たくさんの要素が重なっていて、本当に大作でした。その中で、やっぱり、人の心はある。そこにかなり救われた様な気持ちになった作品でした。
ずっと、直家が患っていたとされる「尻はす」という濃い血膿の霧が漂っている様な作品でした。 -
(再読)
本書を読むのは二度目だが、衝撃は薄くならない。
背筋を何かが這い回り、気持ち悪いのだが、ゾクゾクするような快感がある。
これからも、この快感を味わいたくて何回も読み直すだろう。
読み直す価値のある物語だと思う。 -
「楽土」の前作だが、完成度が全然違う。
作者独自の設定はこちらにもいろいろ入っているが、それぞれに説得力があり、なるほどと思わされる。
登場人物はどれも一筋縄ではいかないが、特に直家の造形は、その境遇も含めて、唸るよりない。