荒野 (文春文庫)

Kindle版

β運用中です。
もし違うアイテムのリンクの場合はヘルプセンターへお問い合わせください

  • 文藝春秋 (2017年5月10日発売)
3.89
  • (19)
  • (34)
  • (16)
  • (4)
  • (1)
本棚登録 : 556
感想 : 29
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (544ページ) / ISBN・EAN: 9784167908454

作品紹介・あらすじ

山野内荒野、14歳。

まだ、恋はしてない。

……たぶん。



鎌倉で小説家の父と暮らす少女・荒野。「好き」ってどういうことか、まだよくわからない。でも、中学入学の日、電車内で見知らぬ少年に窮地を救われたことをきっかけに、彼女に少しずつ変化が起き始める。少女から、大人へ――荒野の4年間を瑞々しく描き出した、たまらなくいとおしい恋愛“以前”小説。全1冊の合本・新装版。



カバーイラスト:岸田メル

みんなの感想まとめ

思春期の少女の心の成長を繊細に描いた物語で、主人公の荒野は、恋愛の感情を理解し始める過程を通じて、成長していく姿が魅力的です。鎌倉の風景や季節の移り変わりが背景にあり、彼女の内面の変化とともに、読者も...

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 1人の女の子が大人の女になっていくお話。
    懐かしいく感じる部分もあったり、親の立場として寂しく感じる部分もあり、不思議でリアルなお話でした。

  • 14年ぶりの再読。女の出入りの激しい恋愛小説家を父に持つ山野内荒野の12歳から16歳までの物語。
    以前読んだときにはあまり気にならなかった義母や「ばあや」に目が行く。
    荒野の過剰なまでのピュアさの根源。「女」であること、「女」になることへの拒絶、「変化」がもたらす「喪失」への恐怖。
    義母容子の「普通の女」であり続ける力のもたらす救い。

  • 尊い。

    キャラクターが活き活きと、そしてしっとりしているところや、思春期特有の心の成長を描きつつ、だらしなかったりさっぱりしていたりガッツリしている大人の描写もあってみたり、なにより一つ一つ選びぬかれた言葉がとても心地よかった。

    桜庭さんの本はまだあまり読んでいないけれど、この作者の日本語選びはとても好きになりました。

  • 中学生くらいのころから、もう10年近く何度も繰り返し読み続けている。2桁周はしたんじゃないかな。
    『荒野』というタイトルで、荒野という、北鎌倉は今泉台、お座敷街の、武将みたいな名前をした人気恋愛小説家の、娘、が主人公。
    初めて荒野を読んだとき、私は13歳だったはずだけど、最後の16歳まで読んでも、私の方が精神的に大人びていると感じたのをよく覚えている。

    奈々子さんが大好き。朝が弱くて、少年みたくスレンダーで、センスのいい家事、くわえタバコに競馬新聞、腰に引っ掛けたジーンズ、事なかれ主義で、接触恐怖症気味の荒野に強いて触れない優しい他人。女であることをおくびにも出さない。正慶が真に愛したひとの娘を、育てた家政婦。離れにいる、愛する人と別の女を、庭から眺める女。利用された女。荒野のことだけは絶対に利用しないハングリー・アートの怪物に。追い出されて、見知らぬ家族の世話をする、荒野の優しい他人。自身が描かれてしまった小説で、荒野の女を見る目を目覚めさせる人。
    蓉子さんは蓉子さんで、強かに、奈々子さんの影、荒野の母の影と戦う女だ。初めから、女として、母として描かれる。愛する男を本当は独り占めしたい。でもそれだけはどうしても叶わない。これに苛まれながらも、愛する男の子供と正妻の座を手に入れて、母を知らぬ荒野の世界を母を知る女の世界へ塗り変えてくれようとする。愛のある女。荒野が奈々子さんと小説家 山野内正慶に目覚めさせられた女を見る目、で、恐らく初めて見た人。
    荒野は蓉子さんに出会って初めて母たるものを知る。この描写が、荒野を育てた奈々子さんはやっぱり母ではなかったのだと無表情に突きつける。
    この二人の対比が力強くて美しい。

    江里華と麻美、荒野の、仲良し三人衆も素敵。ただうわっつらだけの仲良しでなく、秘密を共有したり、ひっそり傷つけてしまったり傷ついたり、友達であることのふれあいが全体にたいしてよい割合、いい塩梅で描かれている。江里華は強くていい女だと思う。にぶい荒野の、江里華だから見抜ける、想われセンサー。切なくも、優しいから、優しくて、大好きだから、いつも教えてくれる。なんでもないような顔をして。いや、いい女。荒野のパパが言うこともわかる。
    学校だと阿木くんのことも。悠也とはタイプの違う男の子。強い、ところが苦手で私はあんまり得意じゃないけれど、素敵なキャラクターだと思う。世渡りが上手くて、隠れ不良。うまい言い方が見つからないので口が悪いが、物語からすると些細なこのキャラクターにさえ、世渡りの上手い理由(ああいう関係の姉がいる)が裏づけされているの、本当に凄い。

    多分、お話の主軸は、成長する荒野と、終幕後に恋愛へ発展するであろう、これまた成長する男である悠也との仲なんだろうと思う。大人の都合に振り回され、遠くへ行きたいと望む、自分の心たる文庫本を携えた少年、悠也。荒野は12歳のうち、また、14歳だったかな、悠也の離れに出入りするようになった頃、12歳の悠也の大人びたところをみる。12歳の悠也がこうまで、荒野より大人びてしまったわけを思うと、切なさもある。
    16歳、そばのアパートかどこかへ帰ってきた悠也と、鎌倉で過ごした荒野の、精神的な近さが、荒野のぐんと成長したところを強調するように思える。それとも、自分の意志で遠くへ行ってきた経験が、少年の必死で背伸びしていた踵を地面に着けたのだろうか。どちらもだと思う。
    優しい他人と蜻蛉のような父に軽やかで温かで透明な綿でくるまれて守られていたような荒野が、ふと揺れた吊り橋にぐわんと、ばかみたいに、揺られて、外へ飛び出してしまう。だから、悠也と恋をする。賢くて、大人びて、もてて、怒れる少年と。たしか背が伸びて、声も低くなって、荒野を大人としてじゃなく、対等に人として愛してくれる青年と。12歳の女の子とは落ちられなかった恋に落ちる。これらも、美しい構成だなと思う。

    荒野は最初から、ふつうの女の子たちよりちょっぴりこども! として描かれる。これは、少女としての成長が始まる頃、小学4年生の荒野が、心を守るために適応したからだと思う。そして、12歳以降、つまり本作が始まって以降、こども! からするとショックな、性的なアクシデントに少しずつ遭遇する。それはアルバイト中だったり、教室でだったり、夜中の山野内家だったり、友達の家だったり。荒野が積極的な興味を持ったのでなく、取り巻くまわりが、荒野と大人のセクシーな世界をふれあわせる。荒野は決まって鼻血を出してしまう。これが、荒野がずっと純粋な恋をしたまま大人になっていく理由なのかなと思う。
    荒野が憧れる大人の女は、スーツを纏ってカフェで休憩しながら文庫本を開くような女性で、父 正慶の小説に描かれるような(作中の具体例で言うとつけまの編集者みたいな)女ではない。小学4年生の荒野に恐ろしさを植えつけた、飢える女ではない。恐ろしさをいだいているのだから、憧れようもない。これも巧いなあと思う。一貫している。恋愛に興味はあれど、性的なことがらに関してはトラウマに由来する無意識下の忌避感を持つ少女。それでいて、いい感じにぼうっとしているからか、あの時期特有の好奇心かのか、家の中で直に聞いてしまっても、友達の家で見ても、荒野が気持ち悪いと感じる描写がないから、こちらに気持ち悪さを感じさせる描写がない。
    これを、なんというのだろう、リアリティーを持たせて、矛盾なく、辻褄が合うように、美しく(けがらわしくなく)描いて、恋をさせる。小説家とはすごい生き物だ。

    これまで何度も読み返したその度に、たくさんたくさん気づいたこと、思ったことはあったと思うけれど、今思える大好きなところはこのくらいかな。私自身が成長するに従って感じ方や考え方が変わるから、何度読んでも面白い。
    全てが運命的にまとまっていて、読みやすく、わかりやすく、解釈や想像の余地もあって、傑作と言うほか評しようがないと思っている。10年って。あの頃、この本が好きだったなあとかじゃなく、10年近く、ずっと、いやあ本当に素晴らしい大好きと思いながら何度も読み続けている。
    『荒野』に出会ったのをきっかけに、桜庭一樹さんの作品は結構いくつも読んだ。ばらばらとか、ほんとうとか、砂糖菓子とか、赤朽葉家とか、私のとか、このたびはとか、ファミリー、ブルースカイ、少女には向かない、七竈とか……。色々なのを何周かしてみたりしなかったりしているけれど、ずっとマイトップ。オンリーワン。ほぼバイブル。
    惜しむらくは、オンリーワンであるがゆえに類似小説に出会えず、初見のあの感覚をもう二度と味わえないであろうことかな。いいけどね! 積み重ねてきた『荒野』の読書経験が私の人生の宝物だから。

    このように、大好きな小説です! 愛、すぎる。愛しすぎている。ちょっと愛しすぎているかもしれません。この熱量で荒野の感想を書いてくれる人が、どうか、どうか増えますように!

  • 鎌倉の季節の移り変わりとともに、成長していく少女の物語。

    かつて少女だった大人にも読んでもらいたいけれど、今まさに少女である子にも読んでもらいたい。

    これを読んだら、遥か未来の大人の自分を、荒野のように、少女のあなたがすっと見るのだろうな。

  • 大人に憧れを抱きつつも、まだ子どもでいたいような気持ちは痛いほどよくわかる。制服を着ている間は守られているような無敵な気持ちになれていた。

    荒野は一人称を自分の名前で呼んでいる。実は私もかなり上の年齢まで自分のことを自分の名前呼びしていた。今でも恥ずかしながら、家族や気を許した人の前ではぽろっと一人称が名前になってしまうことがある。それが幼稚だと言うことも理解していて、「私」に切り替えないといけないと分かっていても、一人称を変えてしまったら、自分が一気に大人に近づいてしまいそうで、大人になることへの最後の抵抗のように自分を名前で呼んでいたいのだと思う。

    思春期の少女の繊細な心の動きが美しく、的確に描かれていて、(恋愛パート以外は)まるで自分の物語みたいに感じた。

  • 少女から大人へ…12歳から16歳、最も多感なお年頃。荒野の4年間を瑞々しく描き出した
    この上なくいとおしい、恋愛“以前”小説。はい全くその通り、この上なくいとおしい!
    ピュアでかわいくて…荒野を見ているだけで(桜庭さんの書いた通りに読んでいるだけで)
    涙が浮かぶのはなぜだろう。桜庭さんの描く少女達は生々しいまでの魅力に溢れています。
    傷付きやすくて儚く繊細、青臭い色気、少女ならではの透明感、汚れる前の白さ柔らかさ…
    色んなタイプの子それぞれ本当に魅力的。桜庭さんの中にも“女の子”がいるんだろうな
    だからこんなに私の中の“女の子”が刺激されるんだろう。新装版合本、買って良かった!

  • 久々の日本文学。
    初めての桜庭一樹。
    久々の恋愛小説。
    初めて意中の女性に借りた本。
    彼女がこの本を持ち、目で追い、内容を脳内でイメージしていたって考えると、なんだか同じ物をいま僕がこの手で持ってるってだけで嬉しくなってしまう。柄でもないが恋ってそういうことなのかな。
    恥ずかしい。。。。
    1/10くらい読んだけど、世界観がとても好きだ。
    鎌倉ってだけでなんかいいよね。
    もうやばい!思春期!!!
    おぼつかない恋愛(それが恋心とも気がついていない)、大人の身体へと変わっていく過渡期、保健体育の授業、男子のサルさ加減。思春期!!!読んでて恥ずかしくなってくるほどの!!
    小説家の父親が、15歳の荒野を「恋知らぬ 猫のふりなり 球遊び」と表現した。正岡子規。ビミョーにわかったようなわからないような感じだけど、桜庭一樹さんは「恋知らぬ猫のふり」という小説も書いているみたいなので、よっぽどこの句が好きなんだなあと思った。そっちも読んでみようっと。
    悠也「アメリカは、大地が広くて、新しくて、いろいろあるのになんにもないようなへんな国で、だからなんだか、自由を感じた。」とてもよくわかる。漠然とした開放感。自由。荒野にいるような。決して万能ではない自由。
    読み終わった。
    12歳から16歳になる物語。
    子供から大人になる物語。
    少女からおとなになる物語。
    桜庭さんが紡ぐ少女はとても魅力的だ。


    誰かに褒めてほしい料理は、おいしくても、どこか苦い。
    いまだけ!恋は、いまだけ!過去は眩暈がするほど遠く、未来もまた、晴れない霧の向こうにある国のように、いつまで経ってもたどり着けないと感じるほどに、やはり、遠い。

  • いやあ、これはヒット。少女が大人になっていく。大人になりたくない抵抗と大人になりきれないもどかしさと。解説では「私の男」とネガとポジとのこと。読まねば。

  • とても気持ちの良い本。
    桜庭一樹らしい面もチラチラ見え隠れする。
    少女が"おんな"の階段を上り始める第一歩を鮮やかに描き出した良い作品だと思います。

  • 十二歳から十六歳。たったの四年間。
    大人から見ればあっという間の時の中で、彼女の中身は目まぐるしく変わる。

    冒頭、中学に入学したばかりで恋を知らず自分自身にも無頓着だった荒野が少しずつ、けれど急速に周りの女達の匂いに釣られ、体型も変化し恋の味を覚えて行く。
    子供から女の入口へ。
    自分にもそうして変わっていった過去がどこかであったはずなのに、もう今となっては思い出せない。

    読んでいてとろりと甘くて水気の多い、熟れた桃を食べるような感覚だった。
    予想以上に濃厚だったのに後味が悪くないのは、荒野が環境の割には比較的素直かつ奥手で、ようやく女の気配をさせ始めた所であっさり閉じられてしまうからだと思う。
    思春期とか第二次性徴期とかそう言った言葉で片付けてしまうのが惜しくなる、少女の成長の物語。

  • あぁ、なんか、すごく好きだなぁ。
    中学生になった少女が、女になるための一歩を踏み出すまでの、話。
    特殊な家庭環境ではあるけれど、でも、すごく普通で、毎日が変化で溢れてる。

    荒野はこれから、どんどんいろんなものを見ていくんだろうなぁ。

  • 冗長で山場なし
    それを贅沢に捉えられるか退屈に受け取るか次第
    私にはまだ早かった

  • 思春期の女の子の日常。ぬるっとしてるが嫌悪感はない。いろんな女の人を見て成長している荒野(なまえがすき)が印象的だった。

  • 知らなかった人たちの青春についての本

  • 良かったーーーー!青春の甘酸っぱさを追体験できて、非常に良かった。読みやすいし面白かった。桜庭一樹さんの本、思い出補正も込みで、大好き!❤︎

  • とにかく自分には合わなかった。
    なんとか読んだけど、長い割に特に心に響くものはなかった。
    本作では思春期の女の子の心の揺れや成長が主に書かれているが、主人公にリアリティーを感じなかった。わざとらしいというか、あざといというか…恋愛シミュレーションゲームに出てくるような作られた理想の女の子という気がした。
    主人公だけではなく、この作品には一人も好きだなと思う魅力的な登場人物がいなかった。
    特に描かれている大人には気持ち悪く感じた。出てくる大人がお前もかってくらいみんな恋愛脳でフワフワ地に足がついていない。いや、いくつになっても恋愛はしたらいいと思うが自分の中の倫理観とかけは離れている恋愛至上主義っぷりや自己中心的な振る舞いにはただただ引いた。
    また、ストーリーも出てくるワード(ずっこけた、アベック、女の子のに向かって口笛を吹く男、ちぇっなど)も古くさくて読んでいて引っかかる点が多く読み進めるのが苦痛だった。

  • きゅんオブきゅん、ザ青春、甘酸っぱいとはこのこと。眩しすぎたし、口元がずっと緩みっぱなし。

  • ★3.5

  • 女の子の心の成長を描いた本。 大人の男女関係と共に描かれる、一箇所ドキッとするシーンがあり、子供に読ましてよいかな、と思ったが、中学生には読ませたい本の一つ。心の成長を知ってもらえるかな。

全26件中 1 - 20件を表示

この本が好きな人におすすめの本

著者プロフィール

桜庭 一樹(さくらば・かずき):1971年鳥取県出身、小説家。1999年、「夜空に、満天の星」で第1回ファミ通エンタテインメント大賞小説部門佳作を受賞し、翌年デビュー。『GOSICK』シリーズが注目され、さらに04年発表の『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』が高く評価される。07年に『赤朽葉家の伝説』で第60回日本推理作家協会賞を、翌08年に『私の男』で第138回直木賞を受賞。おもな著書に『少女を埋める』『紅だ!』『彼女が言わなかったすべてのこと』『名探偵の有害性』など、またエッセイ集に〈桜庭一樹読書日記〉シリーズや『東京ディストピア日記』などがある。

「2025年 『読まれる覚悟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

桜庭一樹の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×