きみは赤ちゃん (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (351ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167908577

作品紹介・あらすじ

35歳で初めての出産。それは試練の連続だった!芥川賞作家・川上未映子のベストセラー出産・育児エッセイ待望の文庫化!〇本書は、妊娠が判明したときから、出産を経て、1歳の誕生日まで、出産・育児という大事業で誰もが直面することを、芥川賞作家の鋭い観察眼で赤裸々かつユーモラスに描き、多くの共感と感動を呼んだ異色エッセイです。つわり、マタニティブルー、分娩の苦しみ、産後クライシス、仕事と育児の両立……妊娠&出産という個人的かつデリケートな出来事を、己の身体と精神の状況を赤裸々に描くことによって、単行本刊行時に圧倒的な読者の支持を得たベストセラーエッセイです。本書への反響を通して、「読者のみなさんの人生に一瞬でも触れるような感覚をいただけたこと」は、書いてよかったと思うことの第一だと、川上さんは「文庫本のためのあとがき」で述べています。あの感動を、改めて文庫版で!〇本書は女性読者はもちろん、男性読者にもぜひ読んでいただきたい!「父とはなにか、男とはなにか」「夫婦の危機とか、冬」「夫婦の危機とか、夏」などの章では、出産・育児における男性の役割を鋭く考察しています。〇号泣して、爆笑して、命の愛おしさを感じる一冊。「きみに会えて本当にうれしい」。〇「文庫本のためのあとがき」付き。

感想・レビュー・書評

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  • 著者ご本人の、妊娠・出産・育児をありのままに記したと思われるエッセイ。これから出産を控えている方、そして育児真っ只中の方に激推しです。前半は楽しく笑えましたが、後半は自分の辛かった時と重なって、共感しまくりでした。

  • 妊娠中に読んでおきたい!妊娠や出産にまつわるエッセイ&小説9選|cozre[コズレ]子育てマガジン
    https://feature.cozre.jp/81268

    川上未映子「きみは赤ちゃん」書評 初めてづくしのなかで気づいたこと|好書好日
    https://book.asahi.com/article/11612584

    file7.山戸結希・選:映画を夢見る時に読む本|昨日、なに読んだ?|山戸 結希|webちくま
    https://www.webchikuma.jp/articles/-/583

    文春文庫『きみは赤ちゃん』川上未映子 | 文庫 - 文藝春秋BOOKS
    https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167908577

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      出産・子育ての悩みが軽くなった! 妊娠中に読みたいおすすめ本5選 - 共働きwith -講談社公式- 仕事も家庭もわたしらしく
      https:...
      出産・子育ての悩みが軽くなった! 妊娠中に読みたいおすすめ本5選 - 共働きwith -講談社公式- 仕事も家庭もわたしらしく
      https://withonline.jp/parenting/kxxux
      2022/06/24
  • なんとはなしに読み始めたら、出産した年のみならず妊娠周期までぴったし同時期でびっくりした!
    私が妊娠や出産や育児やあれやこれやに一喜一憂していたとき、どこかで未映子さんもおなじように日々を過ごしていたんだなと思うと、不思議な感慨がある。

    出産直前のまんまるとしたおなかをみても、あまりにも現実のこととは思えず「このかたまりがこれから産まれてくるってマジなのか?」と信じられなかったけれど、もちろんちゃんと生まれてきた長女(今日で8歳になった!)。
    すでに私はかつてこの子を妊娠中、赤ちゃんだったころのことを容易には思い出せないでいる。あの怒涛の毎日を、何をして何を話して何をみて暮らしていたのか、断片的にしか記憶がない。きっとそれほどいっぱいいっぱいだったんだろうな。
    でも「あぁこんなこともあった!」「こんなふうに悩んでた!」と、笑ったり泣いたりして読み進めながら次々と記憶の箱がひらいていって、それこそ案ずるより産むが易しじゃないけれど、なんだか今にして思えば本当に波乱万丈で愛おしい日々だった。

    次女も6歳になって、出産はもはや遠い過去のこと。二人ともすっかり大きく、むしろ大きすぎて抱き上げるのもひと苦労だし、「こんなに大きくちゃもうママのおなかにはもどれないね〜」と冗談を言っては笑い合う。
    一年ごとに誕生日をお祝いして、よくぞここまで健康にすくすく成長してくれたものだと驚きと共に喜びがこみ上げてくる。あっというまの一年が、なんと尊いものか。
    今じゃ生意気でいっちょまえの女子に成長した娘たち。
    彼女たちだって、私のおなかのなかにいて、私の赤ちゃんだったときがあるのだ。
    最近は反出生主義についていろいろ考えることが多かったけれど、出産が暴力的なものに感じる気持ちは拭えないけれど、それでも。私は娘たちに会えてよかったんだと思う。忙殺の毎日で忘れてゆきそうなその大事なことを、未映子さんの言葉は軽やかに思い出させてくれた。
    生まれたばかりのほやほやな娘たちを抱いたときに全身からあふれでたよろこび、やわらかさ、手指の心許なさ、におい、夜、呼吸。「わたしの赤ちゃん」、と思った。
    かけがえのないそれらはいつまで経ってもほんとうのことだ。生まれてきてくれてありがとう、と、心から伝えたい。


  • 「お腹の赤んぼうは100%こちらの都合でつくられた命で、100%こちらの都合で生まれてくるのだから、それならば、われわれはその『生』を100%の無条件で、全力で受け止めるのが当然じゃないのだろうか。
    それが筋、ってもんじゃないのだろうか」

    妊活、妊娠、つわり、マタニティブルー、分娩の壮絶な苦しみ、産後クライシス、仕事との両立 etc...

    改めて、子供を授かることがどれだけ奇跡なのか、健康で産まれて、健康で育ってくれることがどれだけ凄いことなのか感じることができた。

    〝産前産後はホルモンの奴隷”

    号泣して、爆笑して、命の愛おしさを感じる一冊。


    2020年読了、42冊目。

  • 夫の寝顔に殺意が湧く。
    眠っている夫がマジで嫌いになる。

    川上未映子さんご自身の妊娠出産子育てに関するエッセー作品。言い得て妙。
    100人に100通りの
    「産む・産まない・結婚する・結婚しない」
    があるんだよなあ。

    読みながら、私自身の30年以上前の妊娠出産子育てあれこれを思い出し、余裕皆無の連続で、言葉にできなかった感覚やもやもやに輪郭を与えられた気がする。
    「がんばることをやめられなかった」のだよなあ。

    夫への敵意や攻撃性は、最近の研究で妊娠出産に伴う女性のオキシトシンというホルモンの影響で、「子どもを守る」の一点で夫を排除したくなると科学番組で観た。

    川上さんが作中何度も言及されているよう、自分で制御しようのない夫へのイライラ、八つ当たり、攻撃性…。そういう感情を持ってしまう自分も妻として、母として失格だと自責の念に駆られて一層追い込まれるのだよな。

    「母親としての自分の一挙手一投足がこの子の生育成長発達を大きく左右する」と抱え込んでしまうのも性さがに近いのだろうなあ。

    今我が子たちが三十路に入ってもどうしても母親モードに入ってしまいそうになるわが身への自戒を込めて笑。
    「母親のキャラ設定」をすると、視野狭窄になり、子どもとの距離を詰めたくなるのだよなあ。

    唯一それを軽減するのは、母親を「孤独」「孤立」から引きはがすパートナーや周囲の人たちの存在だと今は思う。
    P.236より:
    (当時のメモを)あとから読むと、なにを書いているのかほとんど意味のわからないことも多いのだけれど、でも、ひとつはっきりとわかることは、この時期、本当に孤独だったということだ。

    それは、自分の味わっている痛みやしんどさを、この世界の誰ひとり、同じようにわかってくれる人などいないという、考えてみれば当然すぎる孤独だった。

    以上抜粋。

    自分と同じ感覚を全く同じように経験できる他者は誰一人いない。自分以外が全員他者であるという真っ向事実に打ちのめされるのだ。頭では理解していても…。

    そして、以下の箇所が痺れる。

    「出産を経験した夫婦とは、もともと他人であったふたりが、かけがえのない唯一の他者を迎え入れて、さらに完全な他人になっていく、その過程である」(p.235)

    「共感」「寄り添い」にとても大きな価値が置かれる今の私たち社会の雰囲気。
    他者は他者として、「想像すること」はできても、「同じ」であることに過剰な価値を置くこととは異なると思う。

    「同じではない」けれども「傍にいて想像してくれる」「心を寄せようとしてくれる」他者の存在こそ重要な気がする。

    愛おしくてたまらない我が子も次第に親から離れていく。我が子も「他者」となっていくことを受け容れるのが、成長を見届けること。

    気力・体力・責任感が自分の限界を軽々越えていても、「この子を守らなければ」の一念で走り抜けたあの時期。痛みや苦しみは経験して強くなるという、「苦しみ系信仰」は根強いけれど、何もしなくても試練が押し寄せてくるのが生きること。

    今の母親たちは楽をして~なんていうつもりはないよ。
    選択肢は多い方がいいに決まってる。

    「これしかない」「自分しかない」と強迫的思考に押しつぶされそうになるけれど、パートナーや専門家、或いは利害のない他者の言葉や存在に救いを求めていたら、私は今夫にもう少し優しくできたのかも笑。

    あの頃のぷよぷよの身体、えもいわれぬ赤ちゃんの匂い、いつも握って一緒に歩いたちっちゃな手。思い出すだけで胸がキュッとなる。
    もう2人ともおっさんだから、「キモっ!」って言われるので私の心の中で呟くだけでいい笑。若者たちに幸あれ〜!

  • おもしろいし、感動もしちゃうすごい本。
    妊娠出産子育てのリアルがいっぱい

    こんなん聞いてないって!こんなん先に言っといてよって思いながら始まった子育て
    そう、そう!ってうなずきながら読んだ
    きっとまた読みたくなる

    この本の85パーセントくらいは
    同じこと考えてたわーなんだか有難い。

    出産ってデリケートだから話題になりにくくて
    自分なりの答えが出るまでに時間がかかるけど、
    この本があることで
    救われたり、
    子育ての幸せ感を感じれたり、
    しんどさを笑い飛ばせる人が増えたらいいと思う。まじで

  • 作家の感性と表現力に圧倒される1冊。

    妊娠、出産、子育てにまつわるエッセイは数あれど、これほどの感受性と、冷静な描写力を兼ね備えたエッセイはなかなかない。

    もう、現国と保体の教科書を一つにして、このエッセイを読ませるってことで良いのではないだろうか。
    セックスを覚える前に、そして子供を作る前に読むべき1冊。



    子育て期の思い出は濃厚だけどあっという間で、過ぎてしまえば記憶もだんだんとあやふやになっていくものですが、そこは流石に作家さんの描写力。文章によって自らの記憶も呼び覚まされます。子育てが一段落した後に読むのも良いですね。

    川上未映子さんの『乳と卵』は、ドライな語り口の中にもお互いへの思いやり溢れる作品だったけれども、実際の川上さんがこれほど情が深い方だったとは。愛が溢れています。

  • ーいとしくていとしくて、たまらない


    35歳、はじめての妊娠、出産、そして子育て。未知なる現象にあわてふためく毎日と、突然襲う体調変化や不安、、、。小説家という仕事と育児の両立の中で訪れる限界突破。それでもかわいくていとしくてたまらない、わが子。女性としての一大イベントであり、太古より繰り返される生の営みをエッセイとして綴られた一冊。

    エッセイってはじめて読んだかもしれないです。
    読み終えて思うのは「母は偉大!!」ということにつきます。
    妊娠中から(なんなら、妊娠前から)わたしたちは守られて生まれてきたんだなぁと、ひしひしと感じます。
    つわり、マタニティーブルー、破水、出産、授乳、離乳食、、、。次々訪れる試練の連続に、お母さんたちは真剣に立ち向かってくれたんだなぁと、お母さんありがとう!の気持ちが芽生えます。

    赤ちゃんのいとおしさが溢れて止まらない一冊です。

  • 色んな経験をしてもその経験をその瞬間にこんなに深く考えることをその後文章化してこんな風に差し迫ってくる物であることがすごい。
    生まれたことは単純に祝福されることではなく意味も無いしいらないと思っているのに、きみとの出会いを嬉しいと思う。
    親のエゴだとわかった上でその出会いに喜びを感じることに心が震える。

  • 妊娠初期に友人にいただいたものの、自分自身の状況よりも未来の出来事が描かれているとなかなか実感がつかめずに読み進められず止まりがちだったところ、臨月に入ったタイミングで後半を一気読みしてしまった。

    私自身が、妊娠中そこまでマタニティブルーにならず(少しはあったけど)安定した日々を過ごすことができていたため、川上さんの感受性の豊かさ・感情の起伏の激しさ(!)に「作家だなぁ…」と思いながら、ときにお勧めベビーカーのブランドをメモしたり、お勧めケアグッズをその場でポチったりしながら、少しずつ読み進めていた。

    が、最後オニ君が産まれてからの川上さんの溢れ出る愛情の描写が本当に素晴らしく、心をつかまれそこからは一気読み。
    感受性の振り幅が「愛情」に振れたときのパワーに驚きつつも、産まれてくるわたしの天使との対面が一層楽しみになった次第。
    とてもよいエッセイでした。

    「まだ言葉をもたないオニ、しゃべることができないオニは、まるでみたものと感じていることがそのままかたちになったみたいにして、私の目のまえに存在している。オニはそのまま、空であり、心地よさであり、空腹であり、ぐずぐずする気持ちであり、そして、よろこびだった。」(p326)

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著者プロフィール

大阪府生まれ。2007年、デビュー小説『わたくし率イン 歯ー、または世界』で第1回早稲田大学坪内逍遥大賞奨励賞受賞。2008年、『乳と卵』で第138回芥川賞を受賞。2009年、詩集『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』で第14回中原中也賞受賞。2010年、『ヘヴン』で平成21年度芸術選奨文部科学大臣新人賞、第20回紫式部文学賞受賞。2013年、詩集『水瓶』で第43回高見順賞受賞。短編集『愛の夢とか』で第49回谷崎潤一郎賞受賞。2016年、『あこがれ』で渡辺淳一文学賞受賞。「マリーの愛の証明」にてGranta Best of Young Japanese Novelists 2016に選出。2019年、長編『夏物語』で第73回毎日出版文化賞受賞。他に『すべて真夜中の恋人たち』や村上春樹との共著『みみずくは黄昏に飛びたつ』など著書多数。その作品は世界40カ国以上で刊行されている。

「2021年 『水瓶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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