陰陽師 螢火ノ巻 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2017年6月8日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784167908614

みんなの感想まとめ

安倍晴明と源博雅のコンビに加え、蘆屋道満が大活躍する短編集で、全9編の中から特に道満を中心にした物語が印象的です。シリーズ第14弾として、短めのストーリーが多いものの、道満のキャラクターや彼の意外な一...

感想・レビュー・書評

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  • 安倍 晴明の好敵手・蘆屋 道満が大活躍する3編を含めた全9編の短編集で、シリーズ第14弾❗️

    いつもよりも短い話しばかりのせいか、全体的には少し物足りなさを感じた作品でした。

    そうした中でも、『仰ぎ中納言』と『花の下に立つ女』、『屏風道士』の3編が個人的には気に入っています❗️

  • 夢枕獏の「陰陽師」が映画化されると聞いて原作を探しに書店へ!
    無事原作を発見し、他の読んでない巻はあるかなとみていたところ、帯に書かれた「蘆屋道満大活躍!」の文字に目がとまりこちらも購入!
    やはりやはり、道満が出て来るお話しは味があって面白いですね!今回も期待を裏切らない感じが良きでした!

  • 短編シリーズ12冊目。なんと今回、晴明も博雅も出てこない道満回が3話もある!(いつもは1話くらい)でもその分、晴明と博雅のいつもの話のときは、無駄にいちゃいちゃしてたからいっか(笑)


    「双子針」
    都で地震があり、多くの被害が出たほか、西寺の塔も倒れてしまった。数日後、博雅が真面目な顔で晴明のところへやってきて、帝が地震以来原因不明の病となり、あらゆる手を尽くしたが回復せず、晴明に診てほしいと言う。晴明の出した答えは…。

    双子の片方が怪我や病気をするともう一方も痛みを感じることがある。しかし怪我をしたのは本人ではないから、怪我をしたほうの人間を治さねばもう一人の痛みも治まらない。それと同じことが帝=平安京の間で起こったというのが晴明の診立て。内裏の柱に釘を打ったり(鍼ですね)したら帝も無事回復。


    「仰ぎ中納言」
    いつも空や星を眺めているので仰ぎ中納言と呼ばれている藤原忠輔。あるときふと空を見上げながらある人物の死を口にするとそれが実現してしまった。以来、忠輔の言ったことは実現するのではと噂されている。その忠輔がある晩「藤原兼家の死を願え」と脅迫されてしまった。犯人は彼が帝から貰った大切な文箱を盗んでそれを人質にしている。晴明に相談すると…。

    脅迫犯人は兼家の屋敷の観音堂の下に住んでいた貉だった。観音堂を改築する際に巣穴がみつかり夫と子供たちを兼家に殺されてしまったのを恨んでの犯行。だが忠輔の不思議な力は実は「言ったことが実現する」のではなく、「これから起こることの予言」で、それはかつてお伊勢参りをしたときに、水面に映った北斗七星の星の一つを知らずに柄杓で掬って飲み干してしまったせいだった。最後に星が水面に帰るのが可愛い。そしてこの星、北斗の拳でいうところの死兆星のことぽい(笑)


    「山神の贄」
    山道を一人で急いでいる女性に、三人の男たちが襲い掛かろうとしているところへ通りかかった蘆屋道満。女性がお酒の入った瓢を持っていたので女性を助けることに。しかし道満が男たちをやっつけてるうちに女性は礼も言わずに先を急いでいってしまった。事情を聞くと…。

    この女性=絃の夫・声足は、歌の上手い男だったが、仕事で任地にむかう途中、この山の中で歌を歌うと、そのあまりの上手さに「その声、欲しや」と声がして、声足は突然死んでしまった。連れの者たちが遺体をブナの木の根元に埋め石を置いておいたというので、絃は自分もそこで死ぬつもりでお供えの酒を持ってやってきたのだと言う。道満は酒の代わりに男を取ったもの=青い大猪獅子(青物主)を呼び出して、絃を声足に会わせてくれるよう頼む。

    二人は再会し喜び合うも、声足はすでに死者、自分を忘れて再婚するよう言い残して去っていく。道満はそれで絃が満足するかと思いきや、なんと絃はその場で自殺してしまった。思いがけない失策に道満は再び青物主を呼び出し、絃のことも連れていって夫婦一緒にいられるよう脅迫。二人は道満に感謝しながら消えていった。道満、意外と人情家なので、良い奴なんだよなあ。


    「筏往生」
    ある晩、道満が箕面あたりを歩いていると泣いている男がいる。男の名は炭麻呂といい、話を聞くと悲しいのではなく嬉し泣きだと言う。さきほど松の木の上から筏の櫓を漕ぐ音と美しい音楽が聞こえてたので様子をうかがっていると、それは阿弥陀様が浄土へ衆生を連れていく筏で、祥雲という箕面寺の僧が乗せてくれるよう頼んでいたが、1年後にまた来るからその時に、となった。その光景の美しさに感動したのだという。

    1年後、ふたたび道満がそこを通りかかると、木の上から言い争う声が。炭麻呂が自分も一緒に筏に乗せてくれと頼んでいるが祥雲がそれを拒否している様子。ついに枝が折れ炭麻呂が落ちてきて落命。やがて筏が到着するが、昨年の約束通り乗ろうとした祥雲は、炭麻呂を殺した罪を問われ拒否される。絶望した祥雲も木から落ちて自殺。


    「度南国往来」
    膳広国という男が庭を歩いていて突然亡くなるが、葬儀に参列した晴明は死体を埋めずに数日置いておくように家族に指示する。その話を博雅としているところに広国の家来がやってきて「主が生き返ったので来て欲しい」と言う。生き返った広国の話を聞くと…。

    その日広国が庭を歩いていると突然、青首と赤首という二人組に度南国(あの世)に連れて行かれてしまった。そこには三年前に死んだ妻がおり、夫が自分に冷たく死んでもろくに悲しまず墓参りは年に一度云々ゆえに夫を罰してほしいと訴えたため広国が連れてこられたのだった。しかし妻の頭にはすでに大きな釘が2本打ち込まれており、それは生前、夫の他に男を作り家事をせず、さらに浮気相手と共謀して夫を毒殺しようと企むも、うっかり自分がその毒入りご飯を食べて死んだせい。度南国王から広国は無罪を言い渡され、妻はさらに釘を追加される。王は無実の広国を連れてきてしまった償いに、死んだ父親に会いたければ会わせてやると言い、広国は父に会う。だが帰り道で交代していた橋の番人に止められ、あやうく現世に戻れなくなるところ、謎の童子が現れ助けてくれた。それで目を覚ましたという。

    晴明は広国が本当に死んでいないことを見越し、さらに万一のトラブルで広国が戻って来れなくならないように、広国が書写した観音経を広国の死体の上に乗せておくよう指示したのだった。元ネタは日本霊異記かな。


    「むばら目中納言」
    ある時、中納言・柏木季正の目が痛むようになり、さまざまな治療をしたが治らない。四徳という法師陰陽師を呼ぶと、季正の前世は比叡山の僧で山中で亡くなったがその骸骨の目の部分に茨が絡みついていたことがわかった。四徳が叡山まで赴き茨を取り除けると季正の目もたちどころに治ったため謝礼をはずみ、その後も季正はどこかしらが痛むと四徳に治療を頼むようになった。だがその頻度はどんどんあがって、毎月のように季正はどこか痛むようになってしまった。都度、治してもらっていたが埒が明かないため晴明に相談し…。

    実は四徳が、季正の前世の骨を持ち帰り、わざと何かしら手を加えて具合を悪くさせ、治して謝礼を貰うというのを繰り返していたのだった。


    「花の下に立つ女」
    桜の季節。六条河原院の東に満開の桜の木をみつけた博雅が例によって嬉しくなり笛を吹いていると、いつのまにか女性が立っている。笛を吹いてほしそうにしているのでさらに吹くといつのまにか消えてしまう…ということが何度か続いたある晩、その女性はとても悲しそうな様子で消えてしまった。気になって仕方ないが、その晩は仕事で行けない博雅は、晴明に自分の代わりに桜を見に行くよう頼み…。

    もちろん女性の正体は桜の精。実は伐られることが決まっており悲しんでいたが、その直前に晴明が枝を持ち帰り自分の庭に挿し木しておいた。桜は成長し、博雅はそれを自分の庭に植え替え笛を吹くと、嬉しそうな女童が現れた。可愛いらしい話。こういうの好き。


    「屏風道士」
    藤原兼家が気に入って手に入れた、空海が唐から持ち帰り東寺にあったという屏風。山水画で、扉も窓もないお堂が描かれている。表具が古くなっているので直してもらおうと、わざわざ唐から来た老絵師の単先生を呼び寄せたが、単先生はその絵をしみじみ眺めるとおもむろに絵の中の堂に扉を描きその中に入ってしまった。それきり出てこないので、兼家は晴明を呼びにやり…。

    晴明は兼家にお酒と肴を用意してもらって、お堂に窓を描きそこから博雅と一緒に絵の中に入り、単先生と飲みながら話を聞く。実はこの絵は300年ほど前に単先生自身が描いたもの。単先生は仙人の修行をして長命を得たが、家族をないがしろにし自分のこと以外なにも見えていなかった、それを思い出し後悔していると言う。しかし博雅が笛を吹き、単先生の心も浄化され、三人は絵の中から出て来る。絵の中に入っちゃう話が好きなのでこれも好きだった。


    「産養の磐」
    諏訪に住む女が、都から来た橘諸親という男と良い仲になり、男が都へ帰ったあとに妊娠が発覚。何かあったらいつでも都へ来いと言った男の言葉を信じて、父親の止めるのも聞かず一人で旅に出る。しかし山中で迷い空腹で困っていたところ、大きな岩の前にお餅とお酒が置かれているのを発見。餅5個を平らげ、お酒の竹筒は腰にぶらさげて歩いていくと小さな集落に辿り着く。そこで助けを求めるが、現れた村人たちは女が岩の前の餅を平らげ酒を持って来たことを知ると仰天、女を縛りあげて餅の代わりに「灰坊(へいぼう)」様に生贄に差し出すと言う。

    女は岩の前に連れていかれ放置される。そこに人語を喋る狼たちがやって来て女を食おうとするが、岩の上から救いの主が現れる。蘆屋道満。毎度、酒をくれるなら助けてやろうと言い、女を救出。件の岩は産養の磐というもので、狼の赤ん坊が生まれたときに餅などをお供えし、人を襲わないようにするためのもの。狼は橘諸親に化けて女を誑かそうとするが、道満が阻止。狼の目に竹を尖らせたものを打ち込む。翌日、村のご意見番だった鍛冶屋の老婆が目を刺されて死んでいた。

  •  陰陽師・安倍晴明と源博雅が活躍する14弾。今回は芦屋道満が活躍する3本も収録。

     今回も二人の息の合った掛け合いは健在、都の闇を二人の活躍で解決していく展開を楽しみました。

     しかも今回は、あの道満が中心となって話が進む作品もあり、物語に深みが出てきた感じでした。

     道満が中心の物語では、道満の意外な人間性も垣間見え、魅力を感じました。

     今後も二人だけでなく、この三人目も活躍していく展開を楽しんでいきたいと思います。

  • 9編
    道満が主役のが3編ありました。
    「山神の贄」はうるっときました。
    「筏往生」は…後味悪いって程でもないですが、後味悪い…あーあって感じでした。
    「度南国往来」は身内がどうしようもない。よく供養して上げようと思ったなと、釘刺さってるの怖い。痛やで済んでるのすごい。
    「花の下に立つ女」は、ほっこり。妖にモテますよね、博雅って。

  • 大好きな陰陽師シリーズ。

    このシリーズは、作中の時代に合わせるように、少しゆっくりと、より空気感を感じながら読み進める。

    道満、救いのヒトですね。

  • 帝と都が繋がっているという話「双子針」
    空を見上げるのが好きな星を飲んでしまった中納言の話「仰ぎ中納言」
    道満が山の主(青物主)に引き裂かれてしまった夫婦を救う話「山神の贄」 他。
    蘆屋道満の登場が多かった。道満の回は切ない話が多く、なかなか良い。

  • 今回は道満大活躍。
    悪い人じゃないんだよね。ただ退屈なだけ? 酒が飲みたいだけ?
    誰かと飲みたくなったら、都に行って悪さすれば晴明が相手してくれるしね。
    博雅の、晴明の話に混乱する下りが少なくなって淋しいな。
    二人が褒め合って照れる下りは増えたけど。ツンデレの晴明も、博雅相手じゃひとたまりもない。

  • 「双子針」主上と帝都が一心同体的なあのネタ。
    「仰ぎ中納言」星を飲んだ男。
    「山神の贄」道満殿がいいことしてるとちょっと動揺してしまう・・・。
    「筏往生」直接でも間接でも、人を手に掛けちゃおしまいなんだよなあ・・・。
    「度南国往来」やっぱりしんだ人にも徳を積まなきゃあかんのだなあ・・・。
    「むばら目中納言」たしかに永久機関で儲けられるな・・・と思ってしまった・・・。
    「花の下に立つ女」今巻の博雅爆モテノルマ。
    「屏風道士」仙人にも後悔はある。
    「産養の磐」結局お前が悪いんかーい、という海外ホラーオチ。

  • 今までの陰陽師シリーズの中で一番好きな色合いかもしれない。
    桜の薄紅色と天空の紺碧。
    桜の話、星を掬って飲んでしまった男の話、山の神にとられた夫に会うために健気に琵琶を奏でる女、身重の身で愛する都の男に会いに行こうとした世間知らずなお嬢様、食べるためにちょっとずつ欲が出てしまった法師、自分が昔書いた絵の中で人生を振り返る道士、都と双子の帝、仏道に目覚めた男、幼少期に写本した観音経に助けられる善良な男。
    自然を表す言葉もまた色合いが美しくい。
    人生に疲れてるときに効くのかもしれない。
    このまま年を積み重ねていくのもよいなと思える人生が遅れたら、どんなにか幸せだろう。

    晴明と博雅だと都からなかなか出られないので場所や客も決まってくるが、道満だとお酒をもって山に入れば、困ったときに高確率で助けてもらえるらしい。
    晴明たちの客が男が多い分、道満は若い女性相手が多かったり、庶民が多いようだ。
    彼もまた、庶民の心を知っていそうなものだから、どこか寄り添ってくれそうな暖かさを感じる。
    なるほど、以前は道満は乱暴者っぽくて好きではなかったが、今回はそんな粗野さすらチャーミングに見え、晴明の冷静な物語と対をなすものとして、いとおしく感じた。

  • 面白いけれど・・・
    老成したというか、無難になったというか。
    悪く言えば焼きが回った・・・?
    どろどろした良さ、不気味さ、生臭さが全く無くなった。
    全てを受け入れる悟りの境地が作品全体に漂っている。
    面白いんだけど・・・

  • 『陰陽師』シリーズ14弾。今回は晴明のライバル蘆屋道満を主人公にした短編が三本含まれています。道満、好きです。憎めないし愛嬌あるし強いし。悪さをしても晴明がやれやれと後始末しながら許してしまう気持ちわかります。そんな道満が旅の途中、思い出すのは晴明(と博雅も入ってるかな?)言葉に出さずとも彼らのことを好きなのわかります。
    道満はお酒のお礼と言いながら、旅の途中で出会うものたちを助けます。その中には命を落とした者もいるけれど、ちゃんと彼らの道筋をつけてあげます。彼らと別れるたびに一緒に酒を飲みたいと思い出すのは晴明(と博雅?)。博雅の笛の音もやっぱり懐かしいですよね。また都に戻ってきてください。
    そして、いつものことながら晴明と博雅が酒を酌み交わしている場面はいいですね。晴明がはにかみ、それを初だとからかう博雅。仲良しですね~。

  • サラリと安定

  • 双子針(地震以来帝が目を覚まさない)/仰ぎ中納言(藤原忠輔が語ったことが実現してしまう)/山神の贄(死んだ夫に会いに来た女)/筏往生(阿弥陀の筏に誰が乗る?)/度南国往来(膳広国は死んで五日して生き返った)/むばら目中納言(柏木季正が不調になるたびに四徳法師が治してくれた)/花の下に立つ女(博雅が桜の下で葉二を吹くと女が立って聴き入っていた)/屏風道士(黙想堂という堂が描かれた絵に修理を頼んだ単先生が入ってしまった)/産養の磐(生贄にされた女を救った道満)。

    ■安倍晴明と源博雅についての簡単な単語集

    【青物主/あおものぬし】猪の化け物、神? 紀声足(きのこわたり)を配下に加えた。
    【青音】藤原長実の娘。ちょっと変わってる女性のようだ? 藤原為成と橘景清が恋の鞘当て。
    【蘆屋道満/あしやどうまん】法師陰陽師。安倍晴明のライバル的存在ではある。敵対することはあるが当人たちは特に敵視してないと思われる。酒好き。
    【安倍晴明】日本史上最高の魔法使い。実在したそうだ。残ってる絵などを見るとなんだか冴えないおっさんやけど、このお話のようにさっそうとしている美形と考えておく方が楽しいでしょう。天皇にも遠慮せず、孤高で博雅など一部の人間以外には打ち解けず、山野の一角をそのまま切り取ってきたようなぼうぼうとした庭を愛でながら暮らしている。《事象の中に、つい、原理を捜してしまう。》醍醐ノ巻p.122
    【綾子】賀茂忠輔の娘。
    【綾女】晴明が使う式神。晴明んちによく似た女の描かれた絵がある。
    【一条の六角堂】観音菩薩を安置する予定だったが仏師が途中で死んでしまったので空のまま放置され寂れてしまっている小さなお堂。夜ともなるとかなりもの凄く寂しい。
    【犬麻呂】赤髪の犬麻呂と呼ばれる五十くらいのもと僧侶だった盗賊で皆殺しにしてからゆっくり金品を物色する残虐なタイプ。
    【恵増上人/えぞうしょうにん】醍醐寺の僧。秀才で経などすぐに覚えられるがなぜか法華経の二文字だけが覚えられなかった。
    【猿叫の病/えんきょうのやまい】痛さのあまり猿のような声で叫ぶ病。
    【応天門】どこも悪いところがないのになぜか雨漏りがする。
    【陰陽師】魔法使いのようなもの。理を利用して理に外れたものを修繕するような役目かと。《晴明よ、我らに必要な才は、かなしいかな、信の才ではなく、疑の才じゃ。》醍醐ノ巻p.194。三態あり、晴明や賀茂保憲など宮廷に仕える陰陽師。民間で民のために働いた陰陽師。播磨を拠点とした僧侶としての法師陰陽師。上田早夕里さんの作品で法師陰陽師が主役の話を読んだことがあります。
    【勘解由小路流/かげゆのこうじりゅう】賀茂家の流れを汲む陰陽道の流派。
    【柏木季正/かしわぎのすえまさ】たびたび不調になるがその都度四徳法師という播磨の法師陰陽師が治してくれた。
    【膳広国/かしわでのひろくに】死んだ後五日後に生き返った。
    【梶原資之/かじわらのすけゆき】図書寮の役人だったが坊主になり般若経の写経を一日十回千日続けることにしたが色っぽいあやかしに悩まされている。僧名は寿水。
    【ガネーシャ】シヴァ神(大黒天)とパールヴァティー(烏摩妃:うまひ)の間に生まれた。
    【賀茂忠輔】腕のいい鵜匠で一度に二十羽の鵜を使うことができる。「千手の忠輔」と呼ばれることもあるとか。博雅の母方の遠縁。
    【賀茂忠行/かものただゆき】陰陽師。安倍晴明の師。
    【賀茂保憲】陰陽師。賀茂忠行の長男。晴明の兄弟弟子だったとか師匠だったとか言われる。岡野玲子さんの漫画では晴明の才能に嫉妬する兄弟弟子という感じ。こちらのお話では大らかでのんびりした大物の風情。
    【漢多太】インド―中国―日本と渡った楽師。琵琶の名器である玄象の作者でもある。
    【寛朝】遍照寺の僧。法力も強く剛力でもある。
    【吉備真備】陰陽道の祖と言われているらしい。
    【首塚】藤原純友の乱が鎮圧された後も暴れ回っていた残党の首領たちを捕らえその首をさらしものにした塚。
    【黒川主】賀茂忠輔の娘、綾子のもとに通ってくる、尋常な風情ではない怪しい男。
    【恵雲/けいうん】謎の僧。叡山の祥寿院にボロボロの僧衣で現れた。
    【玄象/げんじょう】琵琶の名器。羅城門の鬼に盗まれたのを晴明と博雅が取り戻したことがある。事件が終わった後、ふしぎな琵琶になってしまった。
    【金剛】白い犬。
    【式神】晴明など陰陽師が使役する精霊のようなもの。
    【実恵/じちえ】長楽寺の僧。物覚えが悪くとろいが、品性のようなものがあり皆から愛されている。
    【四徳法師】播磨の法師陰陽師。孔雀明王を拝しているという。智徳法師の知人。
    【沙門/しゃもん】賀茂保憲が使役している猫又。黒猫。
    【呪(しゅ)】このお話ではなんでも呪ということになる。こだわり、ことば、名前、勘違い、脅迫観念…。人はただの木の棒に「箸」という呪をかけ箸として使っている。ことほどさように呪とな日常生活の中で誰もが普通に使っている。要するに言葉というものそのものが、それによる概念の定義が呪ということだろう。
    【朱天童子】朱雀門にて博雅と笛を取りかえた鬼。白い水干を身にまとった少年の姿をしている。
    【性空上人/しょうくうしょうにん】播磨国書写山円教寺の僧。播磨国なら蘆屋道満のご近所さんかもね。
    【祥寿院/しょうじゅいん】叡山の施設のひとつでその昔最澄が読経三昧に過ごすために建てた。
    【正祐法師/しょうゆう】僧侶。病気関係に強く帝の腹痛を一発で治した。
    【白比丘尼/しらびくに】有名人。死ねない女で、30年ごとに陰陽師のところにやってくる。
    【心覚上人/しんかくしょうにん】元の名を加茂保胤(かものやすたね)、賀茂忠行の息子。世間では賀茂保憲の弟ということになっているが実は兄。一念発起して僧になった。真面目すぎて融通がきかず極端なことをしでかして物議を醸す。
    【蝉丸】盲目の老法師。琵琶の名手。百人一首でもおなじみ。博雅が三年間通ってようやく琵琶の秘曲である流泉、啄木を聴かせてもらつた。
    【千手の忠輔】→賀茂忠輔
    【善智内供/ぜんちないぐ】妙法寺の鼻の長い上人。前は神護寺(じんごじ)にいた。芥川龍之介の「鼻」の主人公と同一人物かな。
    【善膩師童子/ぜんにしどうじ】東寺(教王護国寺)の毘沙門天の脇に控えている護法童子のひとり。
    【平大成/たいらのおおなり】70歳過ぎた双子の薬師。右頬に瘤がある。紅瓜茸が大好き。
    【平実盛/たいらのさねもり】行方不明になった。
    【平中成/たいらのなかなり】70歳過ぎた双子の薬師。左頬に瘤がある。
    【橘景清】青音をはさんで藤原為成と三角関係に。
    【単/たん】絵師であり表装も得意とする超高齢の先生。
    【智徳法師】晴明を試しに来た坊さんです。ほんのちょっとだけかわいそうな目にあった。
    【智羅永寿/ちらようじゅ】中国の力の強い天狗。
    【月駆道人】天帝から月とともに歩むことを命じられている。
    【土御門流】晴明を始祖とする陰陽道の流派。
    【露子姫】虫めづる姫君。橘実之(たちばなのさねゆき)の娘。いつも男のなりをしていて少年のように見える。式神の黒丸と、虫集めの子ども、けら男を連れている。他人がいるとき晴明は博雅に対し丁寧な口調になるが露子姫だけのときは普段通りのタメ口。
    【天狗の羽団扇】ある事件の後晴明のものとなった。
    【呑天/どんてん】寛朝僧正のとこの池にいた亀を晴明が譲り受け式として使っている。
    【猫又】長生きした猫が妖怪となり、尾が二つに分かれたもの。賀茂保憲はチャーミングな黒い猫又を飼っている。
    【葉双/はふたつ】博雅が鬼からもらった笛。
    【秘曲】琵琶の秘曲に「流泉」「啄木」「楊真操」などがある。
    【藤原兼家/ふじわらのかねいえ】摂政。何かとトラブルに巻き込まれるがけっこうそれを楽しんでいるフシもある。
    【藤原貞敏/ふじわらのさだとし】遣唐使。琵琶の玄象、青山(せいざん)とともに幾つもの秘曲を持ち帰った。
    【藤原実貞/ふじわらのさねさだ】目が覚めたら虫(むかで)になっていた。
    【藤原忠輔/ふじわらのただすけ】空を見上げるのが好きで仰ぎ中納言と呼ばれる。六十間近。
    【藤原為成】首に憑かれた男。青音をはさんで橘景清と三角関係に。
    【藤原妙瑞/ふじわらのみょうずい】雅楽寮のトップ雅楽頭(うたのかみ)。楽器の名手。
    【瓶子(へいし)】このお話ではよく出てくるアイテム。たいがいお酒が入っている。これをかたわらに片膝立てて杯を傾けながら庭を眺めているのが晴明のお気に入り。
    【牧場/ぼくば】玄象と並ぶ琵琶の名器。牧場が描かれているのでこの名がついた。
    【帝】この国のトップ。安倍晴明と賀茂忠行と蘆屋道満の三人は「あの男」呼ばわりして他者を慌てさせることがある。
    【右姫/みぎひめ】蘆屋道満が連れていた女童。人間ではなさそうだ…平将門の右手で今は道満が式として使っているらしい。
    【密虫/みつむし】晴明が藤につけた名前。のちに使役する女性の姿をした式にもこの名前がついているので藤の精かも。
    【蜜夜/みつよ】晴明の式。
    【蜜魚/みつを】晴明の式。
    【源博雅/みなもとのひろまさ】もう一人の主人公。真の主人公というべきか。平安時代の貴族。地位は三位(さんみ)ということなのでかなり上流? 実在の人物らしく、ほんとうは晴明とは時代が少しずれているようやけどまあ気にすることもないでしょう。このお話では30代の後半の年齢で、晴明の友人。無骨だけど愛敬のあるタイプ。まじめで、純粋で、正直で、つねに驚きをもって人生を歩んでいるいい男。かなりのロマンチストでふしぎなものは不思議として味わいたいが晴明に分析されて興がさめがっかりさせられることがある。善人で懐の深い大人物だと思う。笛その他の楽器の名手でそのせきで時折この世ならざる存在とかかわるが霊能力は皆無。それでも晴明にすらできないこともしてしまうことがある。このお話の魅力は晴明よりも、むしろこの博雅が醸し出していると思われる。《酒をよばれに来たのではないが、出てくる酒を拒みはせぬ》陰陽師P.27。《よい漢だなあ、博雅》太極ノ巻p.66
    【壬生忠見(みぶのただみ)】死んだ男。歌合わせで平兼盛に敗れて化けて出る。特に悪さもしないので、みんなほっておいている。
    【明徳/みょうとく】遍照寺の僧。寛朝の弟子。
    【無子訶/むしか】妖魔。鼠の姿。琵琶の牧場に憑いていた。ガネーシャ(象鼻天:ぞうびてん)の乗り物。
    【狢】ある人物を利用して家族の仇を討とうとしたが晴明に止められ逃してもらえたのでなにかあれば呼んでくれと言い残して去っていった。
    【明鏡/めいきょう】西光寺の僧。
    【戻橋】晴明が式神を置いているというウワサがある。
    【夜光杯】黒い肌に星が透けて見える杯。藤原成俊の持ち物。唐から持ち帰られた阿倍仲麻呂の遺品。
    【楊玉環/ようぎょくかん】楊貴妃のこと。玄宗皇帝に寵愛された美姫。
    【楊真操/ようしんそう】藤原貞敏が唐から持ち帰った琵琶の秘曲。今弾けるのは博雅か蝉丸法師くらい。
    【余慶律師/よきょうりつし】叡山の僧侶。
    【羅生門】朱雀門をさらに南へ進み京のはずれまで来ると荒れ果てた羅生門がある。いろいろ不思議なことが起こる観光スポットに。当時日本最大の門でもあったそうです。

  • 今までに増して芦屋道満がよく登場する。
    怪しい存在で阿倍野生命の邪魔をしたり、からかったり、そういった存在で描かれていたものが、困っている人を助けてあげる(酒の報酬があれば!)。そんなキャラクターで描かれている。

    秩父や青梅のほうに狛犬を狼にする神社やオオカミを神とするオオカミ信仰があるが、それに関する情報が載っていて興味深い。
    p238、狼に子供が生まれると捧げ物をする。岩や大きな木の下にお餅やお酒を捧げる。
    物語はそれを食べちゃった旅の女の人がどうなってしまうか?!というお話…。

  • 蘆屋道満多め

  • 『山神の贄』と『筏往生』の最後の蘆屋道満の寂しそうな、遣る瀬無さそうな姿が心に残ります。この人の人間臭さがとても良いな、と思うようになりました。
    『度南国往来』ではにかんだ晴明を博雅がからかったら次の『むばら目中納言』で晴明に逆に同様の事をされている博雅に微笑ましくなりました。仲が良くてなにより。

  • 蘆屋道満多めの巻。道満ってこんなイイ奴だったっけ?

  • 安倍晴明と源博雅がゆくシリーズ12作目

    好き:花の下に立つ女/屏風道士

    *2023.10


  • 陰陽師シリーズは蒼猴ノ巻以来で久しぶりに読んだ

    蘆屋道満がメインの話が今作は数多くあるのがいつもとはまた違った面白さがあった

    心温まる物語もあるが、読んだ後に物悲しくなったり、世の無情さを感じたりする物語があるのが魅力の1つだと思っている

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著者プロフィール

1951年、神奈川県出身。第10回日本SF大賞、第21回星雲賞(日本長編部門)、第11回柴田錬三郎賞、第46回吉川英治賞など格調高い文芸賞を多数受賞。主な著作として『陰陽師』『闇狩り師』『餓狼伝』などのシリーズがあり、圧倒的人気を博す。

「2016年 『陰陽師―瀧夜叉姫― ⑧』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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