空棺の烏 八咫烏シリーズ 4 (文春文庫) (文春文庫 あ 65-4)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167908638

感想・レビュー・書評

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  • 今作は武官を養成する勁草院が舞台となっている。ここにきてなぜ養成学校なのかというと、前巻の雪哉の全身全霊をかけた覚悟によるもの。心身共に成長していく姿はとても頼もしい。新たに登場するものたちもまた良いキャラで、衝突しながら信頼関係を築いていく物語はなんだかんだと引き込まれる。なかなかに容赦ないことをする雪哉を恐ろしく感じる場面も出てくるが、今まで読んできたことを踏まえるとそれだけの決意によるものだと思える。抱え込みすぎる者の心の強さと弱さを合わせ持っているのも分かるからこそ、胸が締め付けられる場面もある。そして、養成学校での話だけに終わらない展開にまたまたググッととのめり込み、やっぱり続きが気になって仕方ない。ちょっと明かすと、猿と金烏と山内のとても密接な関係を窺わせるようなことがチラッと出てくる。事実はいかに?この辺りもとても気になる。

    金烏とはどんな存在か?山内とはどんな世界か?過去に何があって未来はどうなるのか?少しずつ明かされていくことにワクワクする。権力や貧富による差別や横暴などにザワザワする。信念による改革と欲望による保守。この辺りの按配もとても良い。

  • 文庫で再読。
    八咫烏シリーズ第一部の中で、どれが一番好きかと聞かれたら、私は絶対に本書を選びます。

    本書の舞台は、金烏や宗家を守る近衛隊・山内衆を養成する勁草院。
    前作で若宮への忠誠を誓った雪哉が、相変わらず飄々としているかと思いきや、予想をはるかに上回る策士っぷりを披露してくれます。
    今後の物語の中でも重要な登場人物たちが多数登場するし、各々の内面やここに至るまでの背景が描かれているため、第一部をすべて読んでから再読すると、より一層沁みるものがありました。

    何度読んでも涙が出てしまうのは、第三章の最後、雪哉に茂丸が声をかけるシーン。
    一人でいろんなことを抱えて奮闘する雪哉にとって、茂丸の言葉がどれだけ力強く温かかったかを想像するだけで、目の奥が熱くなってくるのです。
    雪哉は自分で思っているほど冷酷な人間ではないんだよ、と私も伝えたくなってしまうのです。

  • 雪哉in勁草院編。
    いわゆる学園モノですね〜

    身分や立場や思想の異なる少年たちがひとつ屋根の下で共に学んで共に生活し、最初は対立して
    斑白し合うものの、やがて友情を育んでいく…。
    良いですよね!ボーイ・ミーツ・ボーイ(※そんなジャンルはない)、大好きです。

    雪哉はボーイと言うにはすでにいろいろ知りすぎていて、また優秀でありすぎるがために、生徒というよりは主宰側として大きな目的のために動かなければならない。
    そのためには友達を利用することも躊躇はしないけれども、だからといってもちろん何も感じないわけでもなく…。

    そんな葛藤をひっそりと抱える雪哉に茂丸が言葉をかけるシーンがすごく良かったです。
    立場は違っても、悩みをすべて共有するわけじゃなくても、自分の欠点も理解してくれた上でそばにいてくれる、ってどれだけ嬉しいことか。

    これぞボーイ・ミーツ・ボーイの醍醐味…!

    そして、そんな雪哉の学園生活も終わろうとしてるのを待ち構えていたように、八咫烏たちの住む世界・山内に再び不穏な影が忍びよります。

    おそらく次巻は大きく話が動きそうな予感!
    今巻は設定上、若宮と雪哉のコンビがほとんど見られなかったので、次は2人で活躍するシーンがたくさんあるといいなー。

  • 八咫烏シリーズ第4作。毎回ガラリと変わる趣向で、読者をとことん楽しませてくれる本シリーズ、今回は学園ものである。期待を裏切らないおもしろさだった。

    前作で、若宮を守る山内衆となるべく、その養成所である勁草院に入学することを宣言した雪哉。本作は勁草院での学友たちとの生活が描かれる。若宮はじめ従来のキャラたちは、今回あまり活躍の場はない。しかし、シリーズ4作目にして新キャラが続々と登場し、物語がますます深みを増していくことを感じる。そして、本作では雪哉の類稀な能力と、いささか屈折した性格もあらわになる。

    若宮を補佐する雪哉の成長は、以後の物語に必要な要素だったのだろう。今回回収されなかった伏線も、さらに提示された謎の数々も、用意周到な作者のこと、次回作以降で回収されるに違いない。ますます楽しみになってきた。

  • 『八咫烏』シリーズ第4巻。エリート武官を養成する全寮制の学校『勁草院』に入学した、少年達の成長の話し。

    前3作と比較すると、少し話しが小粒でしたが新たな仲間も加わって、今後の展開もますます目が離せません❗

    小出しに『山内』の事情が解明されてきて、期待度も巻を重ねる毎にアップしていきます♫続きが気になるので、このまま文庫の最新刊に向かいます❗

  • 八咫烏シリーズ四作目。
    中毒性の高い本である。今、手にとってはいけない!と思いつつ、4巻目に手が伸びてしまった。
    気がつけば、日はとっぷり暮れていた。いや〜本当に危険なシリーズだ!
    なんとなく、知っていたり(南は綿の量産地で働き手は奴隷扱いという筋は、アメリカの南部の奴隷制を彷彿とさせる)、読んだことのあるような筋書き(主人公を執拗にいじめる教官は、ハリポタのスネイプ先生を彷彿とさせる)があるのだが、それだけでない一枚上手なところがやはり読み手を引きつけるのだろう。次巻以降も読みたいが自制しないと家事が立ち行かない。2019.8.12

  • 面白かった!!
    雪哉がハイスペックに成長しすぎて末恐ろしい……
    一度覚悟を決めたら有言以上のことをやりきる男になってしまって、頼もしくてかっこいいんだけど少し寂しいなぁ。
    雪哉が若宮のことを慕って付いているんじゃなくて、故郷を守ること=金烏である若宮を守ることってスタンスだからか、若宮との関係がただの主従ではなくて、どちらかと言うとバディ感があるとこが面白いなって感じました。

  • 大好きな八咫烏シリーズ4作目!!

    前作『黄金の烏』では壮大なストーリーの展開が一気に広がった感じがしたが、本作は勁草院での日常が鮮明に描かれている故、話が進んだ感じはあまりしなかった。しかし、知られざる若宮の事情や猿についての新たな情報など著者の阿部氏はやはり予想を上回る展開をプレゼントしてくれる。

    本作を読み、雪哉への好感度が爆上がりしたので次作を読むのが楽しみになった。次作は雪哉登場する…?よね??

  • シリーズ4作目はまさかの学園モノ。登場人物が総じて若いためか、全体的な雰囲気がやや軽くなったような気がします。

    雰囲気の軽さは学園内での話展開が予定調和的なものだったことも影響している? 雪哉はもとから頭が良い設定(勉強ができる、というより機転が利く・地頭が良いというニュアンス)ではありましたが、雪哉の良さが際立ちすぎる展開にちょっと都合の良さを感じました(山内で最も用兵に長けているという翠寛に勝ってしまうのはやりすぎかと……)。この辺りに少年漫画的なライト感を感じたのかもしれません。

    とはいえ、全体から見ればそれは「ちょっぴり」気になる程度。

    雪哉をライバル視する明留や、妹のためやむを得ず公近に従う千早といった学友たちとの交流や、彼らが抱える悩みや揉め事を解決する様は胸がすく展開。また終盤訪れる猿の襲撃と真の金烏の謎に関わるエピソードはスリリング。

    エピローグでは勁草院を卒院する少年たちの凛々しい姿に期待感を、「嵐が来る」という若宮の言葉と最後の一行に不安を覚えさせられ、次巻が待ち遠しくて仕方ない次第(単行本を買うべきか…悩ましい……)。

  • 人間にかわり八咫烏が支配する世界・山内のエリート武官養成学校で切磋琢磨する少年たちの青春の日々を彩る、冒険、謀略そして友情。
    「文藝春秋BOOKS」より

    『烏に単は似合わない』で登場したときは、ひ弱な子どもかと思っていたら、、
    実はヤベーやつでした!雪哉の今後の活躍が大いに期待されます.
    もう読み進める勢いが止まらない.次の巻を用意しておいてよかった.

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著者プロフィール

1991年群馬県生まれ。2012年早稲田大学文化構想学部在学中、史上最年少の20歳で松本清張賞受賞。デビュー作から続く「八咫烏シリーズ」は、松崎夏未氏による漫画化、中台翻訳など進行中。19年『発現』(NHK出版)刊行。

「2023年 『烏は主を選ばない(4)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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