あじフライを有楽町で (文春文庫 ひ 20-7)

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167908737

作品紹介・あらすじ

平松洋子さんの本を読むと、お腹が空くだけでなく、食べること、生きることへの活力をいただける。――戌井昭人(「解説」より)【主な目次】Ⅰ 危うし、鴨南蛮どっきり干瓢巻き/トリュフvs松茸/ヤバい黒にんにく/どぜう鍋を浅草で/レモンサワーの夏/歌舞伎座で、鰻/羊羹でシンクロ/ステーキ太郎、見参/熊タン、鹿タン/海苔弁アンケート/インドのお弁当/最初は鯨めしだった/パンケーキ男子Ⅱボンジュール、味噌汁久慈でもたまごサンド/外ジュース、家ジュース/冷麺あります/生ウニは牛乳瓶で/えいね! 土佐「大正町市場」/砂糖じゃりじゃり/無敵なスープ/パリのにんじんサラダ/ちょっとそばでも/ムルギーランチ健在/品川で肉フェス/Ⅲ エノキ君の快挙ちくわカレー!/もっとアミの塩辛/出たか、筍/とうがらしめし!/シビレる鍋/朝顔とドライカレー/夏の塩豆腐/いちじく祭り/ごぼうアセンション/わたしの柚子仕事/朝も夜も、湯豆腐/今年も焼きりんご/冷やごはん中毒/煮物ことことⅣ 鶏肉は魚である征太郞少年のカキタマゴ/栗の季節です/居酒屋ごっこ/白和えフリーク/牛鍋屋へいらっしゃい/かけそばと目玉焼き/志ん生の天丼/キャラメル夢芝居/塩豆とビール

感想・レビュー・書評

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  • (抜粋)
    安心するのです。胸もとをはだけた三角座布団。ぴんっと突き出た尻尾も、お約束。いつの時代も底値安定価格。冷めたら冷めたで、身がきゅっと締まっておつな味。予想を裏切ることのない、揚げ物界のご隠居さん風情がすてきだ。定食屋でも居酒屋でも、「あじフライ」の五文字を確認すると、品書きに安泰感が漂いますね。ほっとする。
    (「あじフライ」を有楽町で)

     分かる!分かる!分かるぅ!
    あじフライって何で時々食べたくなるんだろう?もっとも私は自分で作るには「めんどくさ」さのほうが優って、スーパーのお惣菜で冷めたあじフライのお世話になっている程度で、母にあまり作ってもらった記憶もなく、定食屋や居酒屋で食べたことも実はあまりない。なのにどうして平松さんの文章を読んだら「家庭的な味」としての私の記憶が甦ったのかと考えてみたら、多分、小学校での学校給食で時々出されたのではなかったかと思う。
     そんな「あじフライ」の魅力を痛いほど分かっている店として紹介されているのが、有楽町の東京交通会館の定食屋「キッチン大正軒」。交通会館が出来て以来半世紀、ビル地下にある小さな店で、スコッチエッグもハムカツもある、平松さんも「ツボをぎゅっと押さえつけられている」お店だそうだ。そして例えば、「ミックスA定食(メンチ、あじ、エビ)950円」「ミックスB定食(豚生姜焼き、あじ、エビ)」のようにどの定食でも「あじフライ」が基本になっているのだそうだ。
     キャノーラ油で揚げたさくさくの味!堂々とした体躯でふっくら、座布団然として食べごたえ十分、ソースがまだらに浸みこんだ下世話なおいしさ!イヤ〜ン!そんなに誘惑しないで♡
     行ったこともない東京有楽町、大正軒の「あじフライ」はきっと私には何故か“運命の人“のように懐かしく味わい深いに違いないと思う。
     さらに、平松さんはイケナイ、悪魔的な“あじフライ“の食べ方を書いてくれる。
    (抜粋)
    全部食べたあと、落下した衣のツブツブが皿のあちこちに散乱している。これをですね、箸でかき集め、ある程度溜まったら残りの千切りキャベツを移動、丁寧に混ぜ合わせる。もちろん、せん切りキャベツはこのためにとっておいた大事なお宝で、すでにうっすらソースにまみれているところがポイントだ。

     週刊文春に掲載された食に関する平松さんのエッセイを集めた本書。
     そのほか、特に私がそそられた作品を一部紹介。

    『砂糖じゃりじゃり』
     パインミーと呼ばれるベトナムの“バケット“を炭火で焙ったのに、砂糖をじゃりじゃり押し付けて、食べる。ベトナムコーヒーによく合うらしい。

    『八十三歳の意地』
     茨城県常陸太田市の83歳の中嶋利さんが全国でただ一人作られる“凍みこんにゃく“。厳寒の二月、田んぼ一面に二万五千枚の薄切りこんにゃくを地面に敷き詰めた藁の上に手で並べ、凍らせ、自然解凍を繰り返して五日目に裏返すという作業を繰り返し、三週間ほどかけて作る。五十年もつといわれる究極の保存食。食べてみたい!

    『とうがらしめし!』
     ゴールデンウィークの新宿御苑で売り出された“新宿内藤とうがらしめし“。とうがらし汁で炊いた茶飯はほのかな辛みが染みて滋味深く、あとを引く味だそうだ。そこに甘酢漬けの実、葉とうがらし伽羅煮がのせてあるそうだ。そそられる大人の味!

    『夏の塩豆腐』
     平松さんの自慢の料理“塩豆腐“。絹ごし豆腐に塩をパラパラ振って、優しく表面をなで、布巾で包んでから豆腐パックに戻し、重しをのせ、冷蔵庫で一晩置くだけ。絹ごし豆腐がむっちり、ねっとり、モツァレラチーズのようになるそうだ。

     どの作品にも“愛“がある。“美味しい“って高級だとか、ミュシュラン星幾つとかだけで決められないんだな。その食材や料理を作った人の思いとか、その料理を食べたときの思い出とか、そんな“体温“と料理が合わさるとたとえ失敗した料理でもおいしい、おいしい思い出として残るのだろう。平松さんの本を片手に味巡りをして自分なりの地図を作ってみたい。



    • Macomi55さん
      なおなおさん
      揚げ物全般、後片付けのことを考えるとめんどくさいですね( ̄∇ ̄)。それにフライは小麦粉と卵とパン粉と3種類も付けるので、ハード...
      なおなおさん
      揚げ物全般、後片付けのことを考えるとめんどくさいですね( ̄∇ ̄)。それにフライは小麦粉と卵とパン粉と3種類も付けるので、ハードル高いですね。何故かキッチンが粉まみれになってシンクが詰まります。それに私は生魚を出来れば触りたくない(゚∀゚)。スーパーであじを見ると「熱々のフライを作って食べたいけど」と悶々としながら、「買ったら後悔する」と思って諦めます。
      “あじの南蛮漬け“も魚を揚げて漬けるという手の込んだ料理ですね。よく作ってもらったとは羨ましいです。私は大人になるまで、南蛮漬けという料理を知りませんでした。
      2023/09/09
    • kuma0504さん
      前回の東京旅の時には、この本を読んで大正軒含めて数軒ピックアップして行ったのに、年末だったからか、全部お休み!!物凄く悔しかった、という思い...
      前回の東京旅の時には、この本を読んで大正軒含めて数軒ピックアップして行ったのに、年末だったからか、全部お休み!!物凄く悔しかった、という思い出しかありません。
      2023/09/11
    • Macomi55さん
      それはそれは残念無念!
      でも、きっちり年末年始お休みされるところが、昔ながらの洋食屋さんらしいですね。
      覚えておきます。年末年始はお休みです...
      それはそれは残念無念!
      でも、きっちり年末年始お休みされるところが、昔ながらの洋食屋さんらしいですね。
      覚えておきます。年末年始はお休みですね。お盆休みもとられるかも。
      2023/09/11
  • 年末年始を東京で、過ごすことにした。それで食べ物系の文庫本を物色した。グルメガイド本には、食指は伸びなかった。グルメ旅に行くわけじゃない。でもせっかく行くからには、幾つかの店には「物語」が欲しかった。最初、手にとっていたのは池波正太郎の本。しかし、彼の人の行きつけは70年代、80年代の店である。今もその味で残ってあるかは疑問だと思い直した。

    次に手に取ったのが本書。最近小川洋子さんとの対談本を読んで、平松さんが同年代でしかも我が家から自転車で行く事が可能な距離に住んでいたと分かり、一挙に親近感が高まったと言うのもあるけど、グルメ本や料理本や料理薀蓄本ではなさそうだ、では何なのだろう、という興味が1番の選んだ理由である。

    もちろん、東京散歩の参考にもさせてもらう。行きたいのは、題名になっている有楽町東京交通会館「大正軒」のミックスA定食(メンチ・あじ・エビ)950円、新有楽町ビル一階「はまの屋」の玉子サンド、JR中野駅前の中野商店街入口右手「田舎そば うどん かさい」田舎そばかき揚げ370円、昭和通り沿い東銀座「ナイルレストラン」のムルギーランチ、志ん生行きつけだった湯島の天ぷら屋「天庄」。

    その他、作ってみたい料理も、幾つか。塩豆腐、イチジクの赤ワイン煮、ごぼう茶、柚子ポン酢、柚子ジャム、湯豆腐、白菜と豚肉の重ね煮、肉豆腐、白和え。全て、「自由な」生活の中に溶け込んでいるから、真似したくなるのである。
    2017年12月27日読了

  • 平松さんの食のエッセイは、何冊か読ませていただいている。
    しかし、かぶっている、とか、デジャヴ、みたいなことが一つもない。
    毎回新しい発見なのだ。
    毎日、ごはんとお味噌汁の食事でも、その時のちょっとした加減や、自分の心持で、一度として同じ食事は無い…みたいなものだろうか。

    この本で、アッと言わされたというか、長年生きていれば自分でも気付いていたはずなのに、初めて気付かされたと思ったのは、“鴨南蛮”
    そうね~、その辺のお蕎麦屋さんで、鴨なんて入ってないけど、誰も偽装だ嘘だ、と怒ったりしませんよね。
    落語の演目にちなんだ鰻料理、自分では食べられないので、お話を聞く(読む)だけでも素敵な味わい。
    “海苔弁”に関する、アンケートのみの潔さ。
    あらゆる“知人”から、あらゆる到来物が平松さんの元に届けられ、それらを誠心誠意をもって料理する様子。
    映画に登場する料理、料理屋を描いた絵画…
    話題の多様性が、驚くばかりに無限だ。

    気がついたら、前作『ステーキを下町で』、手元に買ってあったのに、まで読んでいなかった…不覚!!

  • ミスマッチのような、ベストマッチのようなユニークな題名にまず魅かれた。
    食を巡る78編のエッセイ。
    どの単元を読んでいても、口中に唾がたまり、よだれも出るかと思えるほど。
    食べること、生きることに意欲がわいてくる。
    ただ、空腹時に読むことはお勧めできません。

  • 「ひさしぶりの海苔弁」に続き読む。

    あとがきに、「食べ物は無数の記憶や物語をもたらす。」とある通り、自分の食の記憶を掘り起こしたり、平松さんの文と対話したりする読書だった。
    平松さんの文章は、威勢がいいけど、すっきりして、押し付けがましさがない。

    神戸の昭和の佇まいのお好み焼き屋でビールを飲んでる図なんて、渋いなあ。こういうのが似合う人はなかなかいないと思うよ。

    沢山の柚子を仕込む台所仕事とか、筍料理とか美味しそうだなあ。

    「ひさしぶりの‥」にも深夜の料理の話があったが、
    (引用)はっと我に返ると、深夜に台所に立ってごそごそやっていることがある。ワインを飲んで相当楽しくなっているときで、知らないうちに包丁でざくざく刻んでいたり、鍋に火がかかっていたりするから不気味だ。

    考えずに手が勝手に料理をしているという。家のオカーサンが夜中に変な料理してたら怖いだろうなあ。

    東銀座のナイルレストランのムルギ―ランチの話もあった。僕はムルギランチと伸ばさず呼んでいたが。
    いつだったか、僕は別の料理も食べてみたいと他のカレーを頼んだのだが、番頭さんから「ダメ、それ遅いね。ムルギランチ美味しいよ」と無理やりムルギランチにさせられてしまったことがある。まあ、ムルギランチ美味しいから文句はないんだが。それから、あの真っ赤で、悪魔的に辛いラサムスープの話も欲しかったな。

    表紙口絵の水丸のイラストは、他からの出典とのこと。水丸さんとのタッグもこれで見納め。

  • 食のエッセイ。
    文章から、食べる喜び、幸せが溢れてくる。鯨めし、そんなに美味しいの??鯨雑炊、どんだけ美味しいの???あじフライにはタルタルソースとレモンだなぁ~とか、お腹が減ってたまりません。いつも何気なく食べてる食材たちに改めて感謝したくなる、良本です。

  • 平松洋子『あじフライを有楽町で』文春文庫。

    様々な食をユーモアと蘊蓄と共に描くエッセイ集。安西水丸のイラストと共に綴られた食のエッセイ78編。安西水丸との饗宴はこれが最後らしい。

    平松洋子が描くリズミカルな文章からは食の大切さと面白さと共に美味しさまでもが伝わってくる。鹿タン、熊タン、ちくわカレー、塩豆腐、霜柱など食べたことのない美味そうな食のオンパレード。

    谷口ジローのファンだったことからシリーズ最初の『サンドウィッチは銀座で』を読み、平松洋子のエッセイの面白さを知った。以来、『ステーキを下町で』『ひさしぶりの海苔弁』とシリーズを読んできたのだが、本作もまた間違いなく美味しい。

  • 食に関するエッセイの多い筆者。食欲は常人以上だが品のある語り口が心地よい。

    週刊文春の連載エッセイ。一話一話が短いのでスキマ時間に読むのに最適。筆者の品のある語り口と擬音が何とも心地よい。本当に食を大切にしていることがうかがえる。最近お気に入りの作家の一人。

  • いやはや。シリーズも最終(今のところ)になって判明だよ。この作者さん思ってたよりずいぶん若い!なにせあの東海林さだお氏より上?と思ってましたから。ほんと。いつぞやそう思い込ませる記述があったんで。冗談を真に受けたんデスネ。今回はしんみりする記事が多め。あと、塩豆腐に挑戦するゾ!

  • 新鮮ないちじくを食べてみたいと思う。

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著者プロフィール

平松洋子=1958年、倉敷生まれ。東京女子大学卒業。エッセイスト。食文化、暮らし、本のことをテーマに執筆をしている。『買えない味』でBunkamura ドゥマゴ文学賞受賞。著書に『夜中にジャムを煮る』『平松洋子の台所』『食べる私』『忘れない味』『下着の捨どき』など。

「2021年 『東海林さだおアンソロジー 人間は哀れである』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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