オレがマリオ (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2017年8月4日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (176ページ) / ISBN・EAN: 9784167909154

作品紹介・あらすじ

新しい光に満ちた第五歌集。



「電信柱抜けそうなほど揺れていた」震度7とはそういうことか

空腹を訴える子と手をつなぐ百円あれどおにぎりあらず

子を連れて西へ西へと逃げてゆく愚かな母と言うならば言え



東日本大震災発生当時、東京にいた著者が仙台の家に帰れたのは、4日後だった。余震と原発事故が落ち着くまでと思い、翌朝息子の手をひいて、西へ向かう。



醬油さし買おうと思うこの部屋にもう少し長く住む予感して

第三者的には「軟禁」とも言える車を持たぬ離島の暮らし

「オレが今マリオなんだよ」島に来て子はゲーム機に触れなくなりぬ



紆余曲折ののち、沖縄の石垣島に住むことになった親子。豊かな自然、地域の人々との密な触れ合いは、様々な変化をもたらした。



愛、発見、出会い――。かけがえのない石垣島の日々から生まれた第五歌集。



解説・松村由利子(歌人)

感想・レビュー・書評

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  • 常々、俵さんの言葉のひとつひとつの光は、
    羨ましいほどの表現力で、大好きです。

    この一冊は、震災、移住、家族、仲間、繋がり、
    大切な人の死など、多方面から綴られていて、
    俵さんの日々の様子や感じていることを
    まるで知っているかのような感覚になります。

    俵さんが大切にしていることが何か、
    お子さんや助け合って生きている方々への表現で、切に伝わるってすごいなぁと、心から感じます。
    〜オレがマリオ〜!うん、子の力は偉大ですね。

    あとがきの言葉がまた素敵なんです!
    〜子の歌は刺身。
    新鮮なうちに、切れ味よく。
    恋の歌は熟成。
    少し寝かせて、味付け。〜
    うー、素敵な表現力です。

    歌の中の表現でも、
    〜言葉とは 無限の玩具〜
    落ち葉を踏み締める音も、俵さんにかかれば、
    〜しゃかしゃかはりり しゅかしゅかぱりり〜
    感服です。。。

    最後に、私が一番心響いた歌を、備忘録で残します。


    〜いのちとは心が感じるものだから
    いつでも会えるあなたに会える〜

    忘れない歌になりました。

  • 2013年発行の第五歌集。
    前作『プーさんの鼻』から足掛け9年とあるので40代~50代はじめの歌かな。
    9年の間に、小さかった坊やは元気いっぱいの腕白男児へと成長しており、作者は沖縄県石垣島に居を移されている。
    あとがきに綴られる息子さんのエピソードに微笑ましくも独特なセンスがあり、あぁ、万智さんの血が受け継がれていると感じた。
    歌もお子さんの言葉や行動をそのまま素材として率直に詠まれているものが多い。(多少の調整はされているかと思うが)
    “チョコくれぬ女子にもクッキー用意して「らいねんはチョコください」と書く”

    南の島で賑やかに暮らす男児の母である作者と、都会でひとりきりの読者の私。
    今までの歌集よりも共感できるものが少なかったが、言葉の選び方、何気ない日常からの素材の拾い方、歌人の目は健在。

    前半は震災後の歌、後半に前作から震災前までの歌という構成。
    好きだなぁと感じた歌は後半が多かった。

    ◆特に好きな歌を三首だけ
    “振り向かぬ子を見送れり振り向いたときに振る手を用意しながら”
    →親という一字を思う。親は子を心配して木の上に立ってまでいつも見るから親なのだと、昔に母が手に指で書きながら教えてくれた文字。

    “遊園地 どこにも行けぬ乗り物を乗り継いでゆく春の一日”
    →ほんとだ、確かにどこにも行けない乗り物。春の遊園地だなんて言葉だけ並べると楽しくて明るいのに、さみしさを帯びる歌。

    “母は母、マザーはマザーでいいのにね しんぐるしんぐる銀杏ふる道”
    →シングルマザーのシングルがひらがな表記で繰り返しのオノマトペとして使われているのがとても好き。
    銀杏の葉がくるくる回りながら散る情景が見えるようで。

    本歌集には母子家庭であることを詠んだ歌が他にもある。

    写真は子供一人ばかりになるということ。
    ゴーカートを運転する役目は自分であること。

    私自身も母子家庭で育った。
    子を持たない私は親の目線にはなれず子の目線で読み、しばし自分の母の事を思う。

    松村由利子氏が解説で触れる通り、作者はさみしさやかなしさを、かろやかに反転して歌う。
    じめじめとした陰気さは俵さんの歌には全くない。
    それでも涙の跡のように残るものがあり、それこそが歌を輝かせている。
    『NHK短歌 作歌のヒント』(https://booklog.jp/item/1/4140162333)にて、著者の永田和弘氏が前作の『プーさんの鼻』について、「もっとも悲しい歌集、明るさの中に漂っている悲しみの感情が新鮮である」というようなことを述べられていた事を思い出した。

  • あらゆる日々の営みが見方次第で歌になり得る、ということを改めて思い知った。いや、「見方次第」なんていうのは私みたいな凡人が言うことであって、世界の見え方がそもそも違って、日常の中にでも、自ずと詩を見出しているのが、本当の歌人詩人なのか。「小躍り」の歌が一番好きな歌だ。「さざやかな」って言葉があっても良いと思った。

  • 俵万智の作品の中でもかなり好きなものだった。自分の年齢が上がったからか。3.11について、子供について。さらに刹那的に感じられ、母として女性の愛を感じる。

  • それぞれの詩が繋がりあったエッセイのような小説のような詩集。詩ならではの躍動感と自然の描写が想像力を掻き立てる作品に。
    母でありながら1人の女性であることを忘れず恋の描写もあったのが人間らしかった。
    他の作品も読みたい。
    77/100

  • サラダ記念日の後に読むと、作品の作り方が違っていることに気付く。ありのままを素描したもの、自己の中で練り込まれたもの、私はどちらも好き。

  • 万智さんの人生が垣間見れたように感じた。
    お子さんも万智さんもどこまでも自由で美しい人だなと思った。

  • 詩人の感性の高さに心震わせる。
    歌にすることで想像力をかき立てられることを、俵万智さんから毎度強く思い起こされる。
    この時はこんな状況かな?と思いを巡らしながら読む素敵な詩集。

  • 「オレがマリオ」のタイトルに惹かれました。言葉選びのセンスがすごい。

  • この人は昔から哀しいと楽しいが7:3の感じがする、絶妙だ

  • 「オレが今マリオなんだよ」島に来て子はゲーム機に触れなくなりぬ

    はじまりはみなこのかたち魚卵にも似たるパパイヤの種を掻きだす

    「ただいま」を言え言え言えと言われれば「ただいません」と返すおさなご

    無垢、無邪気、無心、無防備 笑顔とは無から生まれるものと思えり

    振り向かぬ子を見送れり振り向いたときに振る手を用意しながら

    観覧車の歌口ずさむ秋の空 思い出じゃない一日が欲しい

  • 感受性に喜怒哀楽を乗せると,こうまで吸引力が生成されるものか.

  • 【愛、発見、出会い―かけがえのない石垣島の日々】オレが今マリオなんだよ…東日本大震災後、東北から石垣島に辿りついた親子が見つけた新しい光とは? 三四一首を収めた第五歌集。

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著者プロフィール

1987年の第1歌集《サラダ記念日》はベストセラー。歌集に《かぜのてのひら》《チョコレート革命》《プーさんの鼻》《オレがマリオ》《未来のサイズ》《アボカドの種》、評伝《牧水の恋》、エッセイ《青の国、うたの国》など。2022年、短歌の裾野を広げた功績から朝日賞を受賞。読売歌壇選者のほか、宮崎で毎年開催される高校生の「牧水・短歌甲子園」審査員もつとめる。

「2023年 『旅の人、島の人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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