えほんのせかい こどものせかい (文春文庫)

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  • 文藝春秋 (2017年10月6日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784167909468

作品紹介・あらすじ

カラーのオリジナルページを多数追加し、待望の文庫化!

「ちいさなうさこちゃん」「パディントン」シリーズの翻訳などで知られる著者の松岡享子さんは、長年児童文学の翻訳や研究をし、図書館や家庭文庫で大勢の子どもたちを観察し続けてきました。そんな松岡さんが、「子どもが読書の楽しさを発見する為に大人は何を手助けできるか」という事を著したのが本書。1987年に単行本が刊行され、24刷まで版を重ねている大人気のロングセラー本です。

本書では、子どもが最も喜んだ34冊を紹介し、読み聞かせのコツや優れた絵本を選ぶポイントを解説。また、松岡さんが東京子ども図書館の「おはなしのへや」で子どもたちに語りかける様子や、バラの咲き誇る図書館の素敵な外観などを撮り下ろしたオリジナルページもカラーで多数、追加収録しました。

『おさるとぼうしうり』『おやすみなさいのほん』『ぐりとぐら』『三びきのやぎのがらがらどん』『ちいさいおうち』……可愛い絵本の写真がたっぷりと入っていますので、見て楽しく読んで面白い絵本ガイドです。

みんなの感想まとめ

子どもたちに読書の楽しさを伝えるための手助けを考える本書は、著者の豊富な経験と知識が詰まっています。松岡享子さんは、長年にわたり児童文学の翻訳や研究を行い、子どもたちの心に響く絵本を選ぶポイントや読み...

感想・レビュー・書評

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  • 「幼児教育施設や学校での読書活動」などに関わったり「たくさんの本の中から どんな本を選んで読めばよいかわからない」と迷ったりしている方、「絵本のことをもっと学びたい」という方には、とくにおすすめです。著書の松岡亨子さんは、戦後アメリカで図書館学を学びアメリカの図書館に勤め、帰国後、外国の良質な絵本などを訳した書物は数限りない…松岡さんの名前は知らなくとも、訳した本は「知ってる!」という…、「くまのパディントン」「くまのコールテンくん」「うさこちゃんとじてんしゃ」など。「20年以上読みつがれている名作絵本」の訳者は、ほとんど松岡さんと石井さん…と言っても過言ではないくらいの方。「東京こども図書館」の創設者のひとりで、もう亡くなってしまいました。東京こども図書館では、大人・こどものための「おはなしかい」、おはなしの勉強会なども、定期的に開催されています。「おはなしのろうそく」など出版物多数。
    東京こども図書館の「おはなしかい」…魅力的…自分は興味は持ちつつ、でも、日程的都合つかず、まだ参加したことはありません。オンライン講座もあるようなので、まずは、そっちからかな…。

    「ちいさいうさこちゃん」(今ではミッフィーの名前の方が有名ですが)「くまのプーさん」「ピーターラビット」の訳者、石井桃子さんと並んで、絵本紹介者の草分け的存在だとおもいます。松岡さんの創作著書も「おふろだいすき」「ちいさいたいこ」「みしのたくかにと」など多数あり、どれもあたたかい内容でおもしろいし、安心して子どもに手渡せます。また、ストーリーテリング、お話を語る人向けの本も多数あり、内容は読者に語りかけるようにやさしい言葉で書いてくれているのでわかりやすくおすすめです。松岡亨子、で検索すると、テキクトブック「お話を語る」など出てきますし、たいていの図書館にはあります。

    って、長々書いてしまいましたが、ご存知の方はもうご存知の内容。

    結局何が言いたかったっていうと、つまり、松岡亨子さんと石井桃子さんは、日本絵本界の「二大巨頭」だってこと!なぜなら戦後の日本の絵本の世界を変えてくれたから!
    えっと…PC界で たとえると…AppleとMicrosoftみたいだってこと!そんくらいすごいんだよーって言いたかった!
    ベルゴさんみたいにうまく例えられない!うぅ…( ;`Д´)

  • 読み聞かせをする人には必ず読んでもらいたい本。お子さんがいる方々にもぜひ読んでもらいたいです。
    絵本の読み方、持ち方、読み聞かせの大切さ、絵本の良し悪しをみきわめる目の養い方、読み聞かせにおすすめの絵本リスト
    など盛りだくさんの内容です!

  • 自分の子ども達に絵本を読み聞かせて10年程になるが、本への扉を開いてあげられただろうか。
    この本を読んで私はまだ入り口に足を一歩入れだけだったんだと初心に戻った気分になった。
    今年は小学校での読み聞かせはロングセラー絵本を読もう!と思っていたが、この本に背中を押してもらった。
    小学生も1人一台タブレットの時代になってしまったので、本を読むことはこれからも大切にしたい。

  • 久しぶりに読み直しました。
    基本に立ち返る1冊です。

  • P63

    『すぐれた絵本は、
    子どもたちの、ものを見る目を養います。』


    絵本の絵を見ることで
    経験と知識がまだ少ない子どもに、
    実際の経験に代わる経験を
    絵本の中でさせてあげられる。


    美しい、悲しい、楽しい、腹が立つ

    絵を見て
    自分が知らない感情や、
    世界、
    言葉を知る。



    その訓練ができるのが絵本だ
    と気付かされた一冊。

  • 子どもと読書について、読み聞かせをする人のための基本図書。
    読み聞かせでは、子どもたちは物語だけでなく、読み手の持つ文学を味わい楽しむ能力を一緒に吸収し、自分に対する愛情を感じ取っている。また、絵本の絵を通して、実際の経験に代わる経験をし、想像力づくりに役立てていく。
    その分、読む本を選ぶのは非常に重要で「良い絵本」を選ぶことが大切である。
    「お話を語ることは、文学に対して、額縁が絵に対して果たすのと同じ役割を果たす」

  • 仕事をする上で、本当に参考になった本。
    新米だったころに読んで勉強になったし、仕事に慣れてきたかな、と思った時に読んでからは自分の経験や記憶と照らし合わせながら読むことができた。
    これからも、頼りにしています。

  • 忘れがちだけれど、子どもはこの世界に生まれてまだ間もなく、知識や経験が大人と比べて圧倒的に少ない。だからこそ、絵によって物語を「経験」することが大事だし、そのことを踏まえて気をつけるべきポイントがあることがわかった。

    ・物語を引き立てる読み方をすべき。たいていは、あっさりして簡素な方が物語に注意が行きやすい。
    読み手が迫真の演技をすると、こどもは画面に集中できない。物語の世界で遊ばせてあげなくてはいけない。

    ・絵本を見て知識をつけようとするのではなく、物語の世界に入り込んで楽しむ方が大事。
    おもしろいという感動によって心がそだってゆく。

    ・昔話は感情を表現するときに、抽象的な言葉ではなく、具体的で客観的な目に見える行動によってあらわし、聞き手に感情を起こさせるやり方をする。
    主観的な言葉であらわされた作品や、会話で成り立っている作品よりも、そちらの方が子どもは、より感情に触れることができる。

    ・その子らしい読書の追求があるので、たとえ読む本にかたよりがあっても、子どもの本に対する興味を、距離をおいてゆったり見守ってあげるべき。
    子どもと本の関係は個人的なもの。いわばプライバシーの問題。他人があまり無遠慮に立ち入るべきでない。

    などなど…よかれと思ってやってしまいがちなことが注意点として書かれていて、読んでよかったなと思った。
    大人ができることは、子どもとできるだけ良質な本が出会える機会をできるだけ多くことくらいだ。
    一緒に楽しむ気持ちでやっていけたらいいな

  • 「心が今日感じ取ったことを、頭が明日理解する」というフレーズが印象に残りました。

    こどもたちが幼稚園生くらいの頃に出会えていたら、絵本の読み方も変わっていたかもしれないと思いました。

  • 読み聞かせクラブの先輩ママにお借りしました。素直に、飾りげなく、そして心を込めて。そんなスタンスでお話会が出来たら、とても理想的です。あと、作品の意図やねらいを意識しすぎて、選書で誘導している傾向が自分にはあるなと反省。もっと自由に感じるまま絵本を楽しんでいいんだと、ちょっと肩の荷が下りる思いがしました。

  • とても役に立つ本だった。子どもたちと本でふれあうイベントがしたいと思い、本書を手に取る。

    絵本を読んであげることで、物語だけではなく、読み手のなかにある「よいもの」が子どもたちにも届く、というのがよかった。

    読みきかせをするときの注意点、子どもが興味を持つ絵本観の鍛え方、ながく読みつがれる絵本のポイントなどについて、ポンポンとアドバイス。さながら、ベテランから指導を受ける新米保育士の気分である。

    お父さん、お母さんにもいいが、子どもに関わる仕事や活動をする人、絵本をつくりたいと思っている人に、おすすめ。

    後半の本の紹介リストはとても有意義。さっそく図書館でチェックしたい。
    特に、本を読むときの状況(静かな雰囲気、わんぱくな男の子が多い、初めての子が多い、など)まで言及されていて、日常的に子どもと関わる仕事の人にしたら心強そう。

    そのときの気分やみんなの雰囲気で、読む本や読み方を変えられたら楽しそう、と思う。本を読んであげたくなる、良い本を守り続けたくなる、本の可能性を広げてくれている本。

  • 【えほんのせかい こどものせかい】
    東京子ども図書館 松岡享子著、文藝春秋、2017

    小さな子どもを見かけると、できるだけ絵本を読んであげたい。
    校長室に来た子どもたちにも絵本を読んだことがある。

    大人が子どもに出来ることのうち、大事なことの一つが、絵本を読んであげることだと信じている。

    今は、テレビ、DVD、youtube、で映像を子どもに見せてしまう子育てが一般的になっているが、まだ幼い脳には映像の刺激は負担が大きいのではないかと思っている。

    どの絵本をどんなふうに読んだらいいか、その方法論がこの小さな本には詰まっている。つまり、この本は子育てに関わる全ての人のための本なのだ。

    初版は1968年、今から50年前に書かれている(!)。

    子どもは、同じ絵本を繰り返し読むことを望んでくる。
    それがどうしてなのか。

    大人は、話の筋と違う質問を投げかけたりする。「さあ、ここで問題です。この絵にはケーキは何個あるでしょう?」とか。
    それがどうしていけないのか。

    そういう子供と大人を取り巻く絵本のすべてがここに書かれている。

    最近特に思うが、結局は「読書の質×量」なのではないかと思う。

    尊敬する人の共通する点は、皆さんよく本を読まれている、に尽きる。
    若い人も年配の方もみんなそう。

    そして、それは、本を「頭が良くなるから読む、読ませる」と捉えるのではなく、本の楽しさから、人の気持ちを思いやる、自分の気持ちを言葉で表現する、周りのことに関心を持つ、人との交流を楽しむなどの知的活動を促進する力が自ずと身についたからだと思う。

    子育てのための必読書だと思って読むのが良いのではないか。

    #優読書

  • 以前にハードカバーを借りて読んだのだが文庫になってるのを見て、買ってまた読んだ。よい絵本についてのくだりに納得。子どもは絵を見て物語を理解するし、その絵が言葉とセットでインプットされてストックされるから、本物らしい絵の絵本がいいと。また、子どもは知識が少なく、頭でお話の構造を理解するのに慣れていないから、簡潔で、わかりやすい(行動としてあらわれている)表現のお話がよいと。ただし、よい絵本だからって、子どもが全員好むわけじゃなく、個人差が大きい、など。
    文庫で子どもと接しての実感や、米国での学びなどがもとになっていて全体に説得力がある。

  • 子ども向け=やさしい言葉、簡単な言葉にすれば良いというわけでは無く、その年齢の子供が見ている世界、経験するものごとに合わせた内容にするべきだという言葉が心に残っている。

    大人の視点で見ると、子どもの世界は単純に思えるかもしれないけれど、だからと言って簡単では無い。

  • パディントンの翻訳をされた松岡享子さんの、絵本・読み聞かせ・子供の成長における絵本の役割と大人の心構えを易しい言葉で教えてくれるエッセイ。
    初めてこのエッセイが発表されたのは1968年、文春文庫になったのが2017年。
    松岡さんが後書きで書かれている様に、時代が進むにつれて、絵本を読み聞かせる重要性が高まっていると思う。
    親になってから読むと、より強くそう感じる一冊。

  • 【本の感想】
    子どもの心の栄養になる絵本の選び方や読み聞かせの際に気を配ると良いことなどが書かれています。
    おすすめ絵本のブックリストとしても活用できます。

    【おすすめポイント】
    澄んだ子どもの瞳にこそ「ホンモノ」の本を届けたい!という思いにしてくれる本です。
    様々な児童書が溢れている中で、子どもが選んでくる絵本を自由に読ませつつ、親からはこの本に書かれているような視点で選んだ子どもの心の栄養になる「主食の絵本」を手渡すと良いのかなと思い、手帳を相棒に試行錯誤しています。

    紹介者:なみ
    発行日:2022/7/25
    企画名:図書新聞夏号

  • 幼い子どもは字が読めません。じぶんひとりで本を選ぶこともできません。だからまず、おとなが絵本を選び、読み聞かせてあげましょう。
    知識も経験も少ない子どもにとって、絵は話の内容を理解する助けになります。次第に、絵を見てものを考えるようになります。絵本は「ものごとを抽象的にとらえる力」と「ものごとを絵にする力」を養います。

    本書で習得できることは主に3つです。
    ①良い絵本とはなにか
    ②読み聞かせの方法
    ③グループ(個人も可)での読み聞かせに向く絵本の中身と、読む時間がわかる絵本リスト

    約五十年前に発表された内容ですが、まったく色褪せず、むしろ古典的な読み聞かせガイド兼ブックガイドとして、今なお読みつがれています 。

    わたし自身、市が主催の「読み聞かせ講座」に参加させてもらったとき、古典的名著として挙げられていた絵本が、ここで紹介された多くの絵本と重なっていました。

    ここに紹介されている絵本を、子どもにたくさん読み聞かせてあげたくなりました。

    p29
    (前略)たしかに、子どもを本の世界にひきいれるのに、読んでやることほど必要な、そして着実に効果のあがる方法はありません。どうぞ一冊でも二冊でも、お子さんに本を読んであげてください。

    p30
    中から門をあけてやれば、「おはいり」と一言かえてやれば、子どもたちは、喜んで中にはいってきます。
    子どもたちが、絵本を手にとってながめているとき、それは子どもたちがさくのそばまで来ているときです。子どもたちが「これ読んで!」とねだるとき、それは、子どもたちがらさくの向こうから手をのばしているときです。中にはいりたがっているときです。このときをはずさず、ちょっと手をかしてやることは、書物の国の市民権をまつおとなたちみんなの義務ではないでしょうか。
    おとうさん、おかあさん、どうぞ中からあけてやってください。「おはいり」と声をかけてやってください。子どもたちは、すぐそこまで来ているんですから。

    p59
    ことば(文字)を手がかりに、情景をどこまでよく映像化できるかということが、その人が文学をたのしむ際のかぎになるように思います。

    p61
    絵本の絵は、それを読むとき、子どもの助けになるだけでなく、その記憶がずっとあとまでその子の映像づくりに役立つわけです。そのことを考えると、絵本の絵が、正確で美しいことがどんなに重要かわかるでしょう。

    p70
    (前略)まず一通り読んで、全体の感じや、訴えてくるものの内容や強さをつかむことから始まって、次に、すでに評価の定まっているものと比較して、それと共通の要素があるかどうかを見ること、そして、最後に、自分のもっているよい絵本の条件に照らして、その絵本を、分析的、批判的に見ていくということになるでしょうが、いずれにしてもこの三本の“足”に、平均して重みがかかるようなやり方でされた評価が、いちばん間違いが少ないのではないかと思います。
    この三つの“足”のうち、一読して得た感じというのは、ことばにしにくいものですし、ときとして、なんだか根拠のうすいもののような気がすることもありますが、これは、わたしたちの内部にある、絵本をたのしむ能力というか、感情というか、そういうものといちばん深くかかわっているものなので、うんと大事にしなければならないと思います。そして、非常にむずかしいことながら、子どもの本に対する場合は、できるだけ子どもの身になって読むことが大事です。
    そのためにたいへん有効な一つの方法は、絵本を見るとき、子どもと同じやり方、つまり、字は読まず、絵だけで物語をおっていくというやり方で、絵本を見ていくことです。

    p71
    そうして見ていくと、絵それ自体が何かを語りかけてくれる場合と、文を読んでからでなければ何の意味ももたない、いわば装飾的な働きしかしていない場合とが、実にはっきりしてきます。

    p73
    絵本のテストとして、絵だけ見ていくということは、非常に有効な方法です。絵本を選ぶのはむずかしい、どう評価していいかわからないというときは、まず虚心に、絵だけじっくり見ていくことからおはじめになるといいのではないでしょうか。

    p93
    子どもたちは、おはなしそのものを、新しい経験として受けとめようとします。おはなしの中に、なによりもまずひとつの経験-精神の冒険といってもいいでしょうか-を求めるのです。これは、おとなが、ある場合には、自分というものから一歩も外へ出ないで、傍観者として、いわば冷ややかに作品を見ることがあるのと比べて、大きな違いといえましょう。

    p94
    おとなの文学では、読者は、かならずしも主人公と一体化するとは限りませんし、作者の方で、むしろそうさせないような表現をとる場合もあります。しかし、子どもの場合は、そのような、読者が、いわば醒めた態度で作品の外に立つことを期待するような作品は、けっして成功しないでしょう。わたしは、この「主人公との一体化」という点が、もし、子どもの文学とおとなの文学を、わけているものがあるとすれば、その最大のものだという気がします。

    p106
    なぜ子どもは、このようにくりかえしを好むのでしょう?
    (中略)
    まず第一は、知っているもの、すでに親しいものへの執着です。わたくしが文庫でよく経験することのひとつは、はじめて文庫にやって来た子は、非常にしばしば、自分のうちにある本、幼稚園にある本、先生に読んでもらったことのある本を借りていくということです。おとななら、「せっかく図書館へ行ったんだ、うちにない本を借りてくればいいじゃないか」というところでしょうが、子どもはそうではありません。よく知っている本を借りることによって、本を借りるとか、図書室を利用するとかいうことが、その子にとってなじめることになるのだなということがわかります。

    p108
    大げさにいえば、おはなしを聞くことは、未知の世界にはいりこむことなのですから、子どもたちが手でつかみ、足をかけることのできるとっかかりがいる-それを、くりかえしという形式が果たしてくれていると思います。
    さらに、一歩進んで考えれば、くりかえしという形式は、子どもの物語への能動的な参加を可能にします。つぎからつぎへと新しい場面が展開すると、子どもは、そのあとをたどるのがせいいっぱい。途中で落伍することはあっても、話をたのしむゆとりなどとてももてません。しかし、同じ場面が再現されれば、子どもは、新しい事態を吸収するという負担から解放されて、その分だけ、ゆったり物語に対することができます。

    p111
    わたしたちが、昔話から学ばなければならないいまひとつのことは、その表現です。ことに、ものごとを、つねに外から見る、形でとらえるというやり方です。たとえ、心にかかわることを描くときでも、それを、心の中でだけ描くのではなく、それが外に表われたところを描く。それによって内にあるものを暗示するというやり方です。
    昔話では、わたしたちは、人間のほとんどすべての感情に出会います。愛も、憎しみも、恐怖も、嫉妬と、喜びも、失望も、信頼も、疑いも。けれども、そのような感情が、具体的な行動をともなわずに、ただことばとしてあらわされることは、まずありません。むしろ、感情を表現することばをいっさい用いず、すべてを目に見える行動によってあらわし、その結果として、聞き手(読者)の心にある感情を生ぜしめるというのが、昔話のやり方です。

    p129
    見開き面に、三場面も四場面もの絵がいっしょにかかれている例としては、『おばかさんのペチューニア』がありますが、こういうところは、読みながら、その場面をかるく指でさすとかしたほうがいいでしょう。時間の経過や、あるものの変化を示すために、同じページに、同じものをくりかえしかいてあったりする場合(たとえば『ふしぎなたけのこ』のたけのこののびるところなど)も同じです。

    p131
    絵本を読み聞かせるときは、子どもがいすにすわっているときは、読み手は立ち、床にすわっているときは、いすにすわるとよいでしょう。

    p140
    たとえば、『ぐりとぐら』で、ぐりとぐらがたまごを見つける場面。「...まあ!みちのまんなかに、とてもおおきな-」でページをめくりますが、次の画面のまん中に、大きなたまごを見つけた子どもたちが、それぞれ心の中で、「あッ、たまごだ!」と思うまをとってから、それを確認するように、「たまごがおちていました」と、読むのがよいのです。

    p141
    たとえば、『ぐりとぐら』の、カステラがふんわりと顔を出すところ。ページをめくってから文を読むよりは、前のページのところで、「『さあ、できたころだぞ』ぐらがおなべのふたをとると」までいってから、おもむろにページをくり、カステラを見せて、「まあ!きいろいかすてらが、ふんわりとかおをだしました。」とつづけるほうが、おもしろいと思います。
    『ふしぎなたいこ』の、げんごろうさんの鼻ののびるところも同じです。さきにてんびん棒の長さになっているげんごろうさんの鼻の絵を見せてから、「それでも、げんごろうさんは、『おれのはなたかくなれ、おれのはなたかくなれ』といってらどんどこどんどこたいこをたたきました。すると、げんごろうさんのはなは、てんびんぼうくらいのながさになりました」という文を読むよりは、「...どんどこどんどこたいこをたはたきました。すると-」と一瞬まをとって、それからページをめくったほうがらどうなるのだろうという興味をもりあげて、ずっとおもしろくなるでしょう。
    なお、日本の絵本の中には、一冊の中にふたつ以上お話がはいっていて、しかも、同じ見開きで、つぎのお話がはじまるものがあります。たとえば、『ふしぎなたいこ』『まりーちゃんとひつじ』『おかあさんだいすき』など。こういうときは、あらかじめそこに白い紙をはさんでおいて、つぎのお話の絵が見えないようにしておきましょう。

    p234
    ご承知のように、人間の脳のなかでも、前頭葉は、もっとも高度な機能をもつ重要な部位と考えられています。オーケストラの指揮者にたとえられたり、人間を人間たらしめている脳といわれたりしています。ここで司っているのは、意欲、思考、想像などの働きであり、注意力、集中力、記銘力、判断力、抑制力、創造性など、多くの知的、精神的能力や機能です。人の気持ちを思いやる、自分の気持ちをことばで表現する、まわりのことに関心をもつ、人との交流をたのしむ、集中してものごとにあたる、我慢する、想像力を働かせて新しいものを生みだす、物事の道筋をたてて考える、計画に沿ってものごとをすすめる...といった行動のすべてが、前頭葉の働きなのですね。
    ところが、テレビやビデオの映像を見たり、ゲームをしたりしているとき、刺激を受けて反応しているのは脳の後頭葉で、その間、前頭葉は働きを停止するといわれています。その時間が長ければ長いほど、前頭葉は発達の機会を奪われることになる、と田澤先生は警告しておられます。
    反対に、お話を聞いたり、絵本を読んでもらったり、あるいは自分で読んだりしているときは、前頭葉が活躍します。大好きな人から、肉声で聞く物語は、頭の中に映像を創り出す力をもっています。

    p236
    近年の脳科学、神経生理学の研究によって、幼い日に本に触れることは、発達しつつある脳に『回路をつける』のに役立つこと、単に概念や体験を貯めていくだけでなく、脳の形成を促進し、脳が有効に働く器官となっていくことを助けていることがわかりました。

  • 「はじまりの本」です。
    内容:翻訳家、児童文学研究者であり、設立時より40年以上にわたって「東京子ども図書館」の理事長を務めた松岡享子さんが、読み聞かせのコツや優れた絵本を選ぶポイントを解説しています。読み聞かせを始める時には、ぜひ手に取ってみてほしい一冊です。

    • workmaさん
      読み聞かせ入門に、役立ちますよね。私も再読するたびに学びが深まります。
      読み聞かせ入門に、役立ちますよね。私も再読するたびに学びが深まります。
      2021/11/11
  • またいつか読もう。
    愛あふれた子どもにどんな本をどのように読むのか、感受性を育むことの大切さを実感させてくれる。

  • 保育士でも図書館員でもなく普通の母親ですが、本書から学ぶものはたくさんありました。
    仕事に家事、育児と日々追われているとなかなかゆっくりと絵本を読み聞かせる時間がないのが現状ですが、できるだけ子どもたちからの「えほんよんで!」のリクエストに応えていきたいなと思いました。
    子どもたちにたくさんの絵本と出会う機会を作っていきます。

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著者プロフィール

兵庫県神戸市生まれ。大学卒業後、渡米。ウェスタンミシガン大学大学院で児童図書館学を学んだ後、ボルチモアの公共図書館に勤める。帰国後、子どもの本の普及に努め翻訳、創作など多方面で活躍。

「2015年 『新・小学校国語の教科書に出てくる読み物セット 全11巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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