ほんとうの花を見せにきた (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
3.83
  • (14)
  • (32)
  • (15)
  • (2)
  • (2)
本棚登録 : 292
レビュー : 29
  • Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167909567

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ものすごく切ない気分になる短編集でした。
    読みやすく美しい文体に、ファンタジックでありながらも、人間の内面をえぐるような心情描写とそのリアリティさ。堪能させていただきました。

    本書はフォロアーさんの素晴らしいレビューを読んで手に取った本でした。著者の桜庭一樹さん自体も初読みの作家さんです。
    「一樹(かずき)」という名前から男性の作家さんだと思っていたのですが、女性の作家さんなのですね。恥ずかしながら知りませんでした。2008年には直木賞も受賞されているし・・・。いやはや、まだまだ知らないことばかりです。

    本書は、人間そっくりの姿をした竹の妖怪である吸血種族『バンブー』と人間との禁じられた交流を描いた物語3本が収録されている中短編集です。

    吸血種族といえば『吸血鬼バンパイア』を思い出しますが『バンブー』はバンパイアとは若干違います。血を飲んだり、日光に当たると死ぬところなどは同じですが『バンブー』は不老不死のバンパイアと違って、歳は取りませんが不死ではありません。『バンブー』の寿命は120歳くらいで人間よりも少し長生きというところです。

    本書に収録されているのは
     〇 ちいさな焦げた顔
     〇 ほんとうの花を見せにきた
     〇 あなたが未来の国に行く
    の3篇で、どの短編も『珠玉の逸品』と言っていいでしょう。
    3篇とも描かれた時代が違い、登場人物もほとんど変わってしまいますが、各篇が少しずつリンクしているので
      「ああ、あの時のあれはそういうことだったんだ!!」
    という驚きがあって楽しめます。

    特に僕は第1篇の『ちいさな焦げた顔』が良かったですね。
    『ちいさな焦げた顔』は、マフィアによって一家皆殺しにあった家族で唯一生き残った10歳の少年をバンブーの青年が助けるところから物語は始まります。
    バンブーの青年は相棒の男性バンブーと二人暮らしをしており、そこへ人間の少年が入り込み、バンブー2人と人間の少年1人という奇妙な3人の同居生活が始まります。
    そして人間の少年はマフィアの追っ手を逃れるために女装し、『少女』として新しい生活を送るのです。
    バンブーの2人が人間の少年を実の弟のように、息子のように、そして恋人のように愛するところは微笑ましいのですが、そんな幸せな生活は長くは続きませんでした。
    バンブーの2人はバンブーの重大な掟を破っていたのです。バンブーの厳しい掟では、バンブーは人間とかかわってはいけなかったのです。
    彼ら3人に訪れる過酷な運命は・・・。

    第2篇の『ほんとうの花を見せにきた』は、バンブーの掟を破った『はぐれバンブー』の少女と人間の少女との交流。
    第3篇の『あなたが未来の国に行く』では、人間とバンブーが分かれて暮らすこととなった歴史的な事件が描かれます。

    どの物語も非常に切なく、限りある命の大切さを思い起こさせてくれます。
    どの物語の登場人物にも感情移入でき、自分だったらどうするだろうか?と自問自答する場面もたくさんありました。

    この3篇の物語に共通するのは、
      人間以上に『人間らしい心』を持ったバンブー達の美しい生き様
    です。
    この物語には、たくさんのバンブーが登場し、同じくたくさんの人間達も登場するのですが、第1篇のマフィア達のようにここに登場する「人間たち」のその心の汚く、愚かなことといったらありません。
    この「汚い心を持った人間」と「人間以上に『人間らしい心』を持ったバンブー」の対比には、読者は考えさせられるところが多いと思います。
    第1篇、第2篇に登場する「はぐれバンブー」の少女ですら、信じた人間との約束だけは絶対に破らないのですから。

    この物語に描かれるようなバンブー達は理想の存在かもしれませんが、そのような心を持とうという意識を持つことは、僕たちでもできると思います。
    日々の生き方をもう一度思い起こさせてくれるような素晴らしいストーリーでした。
    ぜひ、バンブー達を主人公にした物語を今後も書いて欲しいと思います。


    と言う訳で、物語は素晴らしかったのですが、一点だけ注文をつけるとすれば、文庫本版の表紙イラストですね。
    特に、僕が感銘を受けたフォロアーさんが単行本版の方でレビューされていたので、本書の文庫本版を手に取った時の違和感ったら半端じゃありませんでした。
      あれ?これ違う本じゃね?
    と素直に思いましたよ。
    そして、本書一読後に再度このイラストをまじまじと見てみたのですけど、
      ちょっと誰だか分からない!
    ネットで検索してやっとこの表紙の少女は第1篇の主人公の少年が女装した姿らしいというのが判明したのですけど・・・僕の脳内イメージとは違いすぎます・・・。女装した男の子の絵とか誰得・・・。
    やはり、単行本版のようなダークなイラストの方が、本書には似合うのではないでしょうか・・・。
    ・・・・・・というか、もしこういうのが得意なイラストレーターの方に依頼するなら、表題作であり、第2篇の主人公『はぐれバンブーの少女・茉莉花』を描くか、いっそのこと、もっとこうBL本っぽいかんじで、第1篇の美男子バンブーの二人「ムスタァ」と「洋治」をフィーチャーしなきゃだめでしょ!!!(※念のため、本書にはBL要素はありませんのでご注意ください)

    って、最後に訳分からないレビューになりましたけど、物語は最高ですので、ぜひ読んでみてもらいたい1冊です☆

    • kazzu008さん
      くるたんさん。
      こちらにもコメントありがとうございます!
      いや、本当にいいお話でしたよね。
      確かにあのムスタァと洋治を選ばなきゃならな...
      くるたんさん。
      こちらにもコメントありがとうございます!
      いや、本当にいいお話でしたよね。
      確かにあのムスタァと洋治を選ばなきゃならないシーンは泣きました。どちらも選べないですよね・・・。
      それに僕は茉莉花と梗ちゃんの関係性も好きでした。茉莉花はちょっと駄目な子ですけど、すごく純粋な娘なんでしょうねぇ。彼女が花に変わるラストシーンには泣かされました。

      やはり、文庫本のイラストはちょっとですよね・・・。単行本版をそのまま使っても良かったのに(笑)。
      2019/12/19
    • nejidonさん
      kazzu008さん、こんにちは(^^♪
      レビューとはちょっと離れるのですが、どうしても気になったことがありまして。
      アメリカインディア...
      kazzu008さん、こんにちは(^^♪
      レビューとはちょっと離れるのですが、どうしても気になったことがありまして。
      アメリカインディアンの昔話に「小さな焦げた頬」という有名なお話があるのです。
      高学年から大人用で、私も素話の持ちネタにしています。
      インディアン独特の神秘的な宇宙観を持った美しいお話なのですよ。
      焦げた頬と言われるくらいですから、お姉さんたちにやけどを負わされて、
      前半は可哀想なんですけどね。
      すみません。場違いな話で。
      桜庭さんは、あるいはタイトルだけ拝借したのですはと思います。
      ストーリーを読むと、似てなくもないようでしたので。
      2019/12/25
    • kazzu008さん
      nejidonさん。こんにちは。
      返事遅くなってすいません。

      「小さな焦げた頬」というお話があるのですね。知りませんでした。
      桜庭...
      nejidonさん。こんにちは。
      返事遅くなってすいません。

      「小さな焦げた頬」というお話があるのですね。知りませんでした。
      桜庭さんは、そのお話をオマージュして本書を書いたのでしょうかね。

      インディアンの神秘的な宇宙観ということでちょっと気になります。
      興味深いコメントありがとうございます!
      2019/12/28
  • すごくよかった。
    やっぱり桜庭一樹さんの本は好きだ。
    言葉のセンスがすごいと思う。私好み。

    ちいさな焦げた顔
    ほんとうの花を見せにきた
    あなたが未来の国に行く

    の3篇からなる。
    全部が繋がっていて、すごく切なかった。
    ある話では悪役に見えたヒトが、ある話ではその背景が分かって読んでて悲しくなったりとか。

  • 感受性が豊かで、ガラスみたいに透き通って繊細な時期に出会っていたかった、そういう作品。

    私はもう大人で家庭だって持ってて社会人としての経験も人並み…以下かもしれないけどあるわけで、そういう立場の大人が読むと、物足りなさやいわゆる寒さを感じかねない作品ではあった。

    けれどもし私が10代で、傷ついていたあのころに読んでいたなら、この作品はかけがえのない物語となって心に残ったと思う。
    愛とは何か、この作品に教えてもらうことができたのだろう。

    大人なので、このスケールの物語ならもっと長く濃密な形で読みたかったなあと思ってしまった。でももっと年を取る前に読めてよかった。

  • 読んでいて涙が出た。ちょっと切ないファンタジ。桜庭作品は何冊か読んでいるが,こういう作品も描けるのかと驚いた。
    あらすじ(背表紙より)
    中国の山奥からきた吸血種族バンブーは人間そっくりだが若い姿のまま歳を取らない。マフィアによる一家皆殺しから命を救われた少年は、バンブーとその相棒の3人で暮らし始めるも、人間との同居は彼らの掟では大罪だった。禁断の、だが掛けがえのない日々―。郷愁を誘う計3篇からなる大河的青春吸血鬼小説。

  • 止まった時間と進み続ける時間が重なる瞬間を小説に捉えた話。
    直木賞の授賞式で桜庭一樹自身が言った言葉が、その感覚が、切なさと心地よさと懐かしさを引き出し魅力となっていると思う。
    全力で愛して、無垢なまでのその愛情は他人を裏切りながら続いていく。それでもあまりの無垢さに裏切りさえも受け入れられていくように感じる。

  • 120年のおわりには花が舞ってさぞかし綺麗に消えるのだろう。切ないお別れ。朝の光に焦げ儚い灰になってしまっても愛してる。ぼくのバンブー!ムスタァ!

  • 「誰にだってさ、子供のころには仲良しのオバケの一匹や二匹、いるもんだ。だけど、みんな忘れて大人になる。」
    人間の子どもと、吸血鬼。
    その設定だけですでに、終わりがくることが分かっているのが醍醐味?ではあるけれど、歳をとったからかこの展開にめっきり弱くなった。

  • 中国の山奥からやってきた、夜に活動して血を啜る竹のオバケ一族・バンブー。
    命の危機をバンブーに救われた少年は、彼らと3人で暮らすことになる。
    しかしバンブーにとって人間と関わることは禁忌だった――
    『ちいさな焦げた顔』『ほんとうの花を見せにきた』『あなたが未来の国に行く』の3篇で構成されたバンブーの物語。

    『ちいさな焦げた顔』のムスタァ、洋治、梗ちゃんの疑似家族っぷりがとにかく愛おしかった。
    終盤は読み進めるうちにぽろぽろと涙がこぼれてやまず、いっそ声をあげて泣きたいくらい、胸いっぱいに熱い気持ちがあふれた。読み終えてもなおラストシーンの余韻が抜けない。
    この一篇だけでこの本を手に取った価値を感じられる。
    久しぶりに読んだけれど、やっぱり桜庭一樹が好きだなぁとしみじみ思った。

  • 苦手な分野。
    セリフが多いので、あっという間に読めてしまう。だからなんとか最後まで読めたけど。

    こういう話は苦手。非現実過ぎるからなのか、どこにも共感できずに、梗ちゃんという人の「ムスタァ」という呼び方が、甘えて語尾を伸ばしているような感じでずっと違和感があった。

    でも、バンブーが死ぬとき、白い花が咲くというのは美しい。
    たくさん咲き乱れるのが意外だった。
    儚く一輪、咲くのかと思っていた。
    夢十夜のように。

  • 涙が止まらなかった。
    ページをめくることがこんなにも辛い本に出会ったのは初めて。
    妹と一緒に涙でぐちゃぐちゃになりながら読んで、間違いなくこの本は一生記憶に残ると思った。
    恋と愛の違いを知ることができた。

全29件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

2000年デビュー。04年『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』が、ジャンルを超えて高い評価を受け、07年『赤朽葉家の伝説』で日本推理作家協会賞を受賞。08年『私の男』で第138回直木賞受賞。

「2016年 『GOSICK GREEN』 で使われていた紹介文から引用しています。」

桜庭一樹の作品

ほんとうの花を見せにきた (文春文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする
×