蒲生邸事件 上 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2017年11月9日発売)
3.59
  • (35)
  • (62)
  • (65)
  • (18)
  • (3)
本棚登録 : 1191
感想 : 45
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (352ページ) / ISBN・EAN: 9784167909574

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 二・二六事件の真っ只中にタイムスリップ!!
    そもそも二・二六事件ってどんな事件だっけ?
    青年将校がクーデターを起こして
    要人を殺害占拠… う~ん
    ちょっと取っ付き難い近代史も宮部みゆきさんの手にかかればSF、ファンタジーあり謎解きありと興味を持って読むことができると思い手に取った。

    主人公孝史はホテル火災から謎の中年男平田に助けられ気が付いたら、そこは昭和11年2月26日、陸軍大将蒲生憲之の屋敷だった。

    中盤まではたいした事件も起きず孝史がタイムリープを信じる、信じないのやり取りでちょっと中弛みしてしまう。
    この孝史がなかなかの曲者で大人しくしてるように言われているにも関わらずあちこちうろちょろして自分勝手さにかなりイラッとさせられる。
    こんな気持ちにさせられるのも著者の筆力の凄さなんだろう。
    タイムリープのやり取りで面白いなと思ったのが、「俺たちラベンダーの香りでも嗅いだんですか」と、ここでまさかの筒井先生の『時をかける少女』のエピソードが出てくるとは思わなかった。うーん懐かしいなぁ。
    謎の男平田の秘密も明らかになっていく。
    能力者故の苦悩と悲しい過去が。
    平田の言った「まがいものの神」時代の改変が興味深く感じた。でもネタバレになるから内緒で。

    そして後半は物語が一気に進む。
    平田も力の使いすぎで具合が悪くなり、
    屋敷の外ではついに二・二六事件が勃発、屋敷内では蒲生憲之の身にあることが起こる。
    これを機に孝史の様相が一気に変わるのだけど、急に変わりすぎて「どうしたの?」と聞きたくなる。
    『クスノキの番人』の主人公が後半、人が変わったように大人びた感じになるのと同じ感じ。

    正直、上巻は前置きが長く感じたけどこれも何かの伏線の一部なのか。
    今後、孝史が二・二六事件とどういう風に関わっていくのか?
    蒲生憲之に起こった真相は?
    なぜ平田は昭和11年2月26日にタイムスリップしたのか?そしてもとの時代に戻れるのか?
    女中の「ふき」との仲も気になるところ。
    いろいろ謎を残したまま続きは下巻へ持ち越し! その分下巻が楽しみだ。

  • 孝史が二・二六事件のために道を塞ぐ兵隊たちのバリケードに感じた恐怖は、単に「武力」に対するものだけではなかったと思う。
    ここにきて孝史は二・二六事件が何なのか、自分が全く知ろうとしてなかったことに気づく。
    何も知ろうとせずに生きることが、どれほど自分の身を危うくすることなのか、そのことがどれほど恐怖心を煽ることになるのか。

    自分を卑下してしまうクセがついている孝史。目上の人への言葉遣いもなってないし、なにより、自分の置かれてる状況を理解しようと努めずに、命を助けてくれた平田に苛立ちさえ募らせる。
    タイム・トラベルという事態は十分パニックに陥る状況だとはいえ、ちょっと自分勝手でイラッときてしまう少年だ。その一方で、孝史は両親の気持ちを 慮る優しさを持っている。またこの時代で世話になった“ふき”をある出来事から助けたいと決意する熱い感情も生まれる。
    人が考え行動することによって、さまざまな自分というものが誕生するのならば、未来への道も無限に広がっていくのではないかなと思う。孝史がこれからどういう行動を起こすのか、そして、この時代で直面する出来事や人々と接することで、どのように気持ちの変化が訪れるのか楽しみだ。

    また「まがいものの神」であることに絶望している時間旅行者の平田と、「まがい物」でもいいから“ふき”を助けたい孝史の相反する想いに、どのような着地点が用意されているのか見届けたい。
    さらには、蒲生憲之の自決が他殺かもしれないという謎解きが迎える結末。
    全ての出来事が大変気になるところで上巻は終わっている。

    タイム・トラベルのSF要素、クローズド・サークルであるミステリ要素、そして戦争へと向かう当時の帝都の様子を描いた歴史小説であり、少年の成長物語でもある。
    なんて贅沢で欲張りな物語だ。

  • 先日、加藤陽子著「それでも日本は…」を読了して少し日本の近現代史に明るくなったので次はこれ!とばかりに本作へ。

    紹介文に二・二六事件の未明にタイムトリップ…とあり、戦争へ踏みこんでいく混迷の時代に現代の浪人生が巻き込まれていくさまが想像力豊かに描かれている。
    もしも安穏とした今の世の中から大戦前の不穏な日本にとばされたらどんな心地だろう…
    展開がまだまだ読みきれない。
    勢いをつけて、下巻へ。

  • ある浪人生が二・二六事件の日、陸軍将校の邸宅にタイムスリップする。日本SF大賞受賞作の上巻。

    実際の2月26日に合わせ読了して、1か月経ってからの感想(読書記録)となるため、既にうろ覚え。

    主人公や蒲生邸の人々などの登場人物やその時代の生活感や空気感が伝わってくる、丁寧な描写のおかげで、上巻からしっかりと没入感がありました。

    続きは下巻の方で。

  • 事件は起こった。今後の展開は全く読めない。
    ミステリー、歴史、SFと楽しめそうな要素が多い。下巻が楽しみ。

  • 二・二六事件を題材にしたミステリー。歴史物があまり好きではないので読みづらかった。

  • 昭和ミステリーなのか。それともタイムリープものなのか。上巻はスムーズに読めたので下巻を読むのが楽しみである。

  • 「歴史は自分の行きたいところを目指す。そしてそのために必要な人間を登場させ、要らなくなった人間を舞台から降ろす。」という印象に残るフレーズ。

    踊る大捜査線の、「人が事件を起こすのではなく、事件が人を起こすんだ。」と同義か。

    個人的には腑に落ちる考え方。その中で精一杯、自分の責任を果たす。心を燃やしながら。

  • ずっと昔に読んでいたけど、2月が来るとまた読みたくなり再読。何度読んでもさすがのうまさ。

  • タイムスリップもの、面白い。 子供の頃、もしも自分がタイムスリップできたらひどい歴史を変えたいのに…と思ったことがあるけど、この小説の中の設定、歴史は変えられないことに納得。 一旦昭和十一年にタイムスリップして、現代に戻ろうとしたのに昭和二十年に行ってしまうのが効いてるなと。 平田さん、ふきさん、孝史はどうなるんだろう。お屋敷の人たちは? 先が気になりながら、下巻へ。

  • 感想は下巻に纏めると言うことで。
    自分も歴史物は苦手なんだけれども、しかもこれ再読だと思うんだけど、思ったよりも面白く読めたし続きが気になる。

  • 予備校受験のために上京した浪人生が、ニ・ニ六事件当日の東京にタイムスリップする物語。
    すぐ近くでニ・ニ六事件が進行する中、身を寄せた屋敷の主が死亡し、殺人事件の疑いが浮上する。

    高校生の時にワクワクしながら一気に読んだ小節。
    大人になって読んでも、とても面白かった。

  • (2019-10-30L)

  • 時間を取り扱われると参ってしまいます

  • 2月26日にXに流れてきて読んでみたくなった本。

    ホテル火災に巻き込まれた孝史が
    タイムトリップで連れてこられた場所は
    陸軍大将の家だった。

    タイムトリップして過去の惨事を防げても
    場所と関係者を変えて似たような事件が起きるだけ。
    蒲生憲之の死、孝史いわく「この家の人たち、みんなヘン」な蒲生家、進行してる二二六事件。
    下巻でどうなるのか。うずうず。

  • #読了 #宮部みゆき #蒲生邸事件上巻 #読書好きな人と繋がりたい
    ジャンルとしたら、ミステリー?、SF?、はたまたファンタジー?

  • 二・二六事件について、ほとんど知識がないわたくし。
    どうしてこの事件が起きたのか
    なぜこの後日本は無謀な戦争に突き進んだのか
    少しでも理解が深まればと思い、この本を読む。
    上巻を読了するも
    まだまだその匂いを感じることなく、下巻へ。

  • 個人的に苦手意識のある時代なのでずっと避けていたけど、宮部みゆきなら…とチャレンジ。まだ主人公側の動きはないけど、苦手だったはずなのにサクサク読めた。

  • 文庫版
    前半が暗く長くまどろっこしかった。展開させるためには仕方ないと思うが主人公の行動が勝手でイライラした。

    でもよく考えたら宮部さんはいつも長いし模倣犯も暗いけどすごく好きな作品なので
    単に戦争のからんだ話だから好みでなかったのかも知れない。作中ずっと重苦しい雰囲気だった。
    それでも最後まで読ませられる文章力がすごい

  • 二二六事件の頃に1994年の現代からタイムトリップする話です。宮部みゆきさんの知識の深さに感動しますし、孝史と同じで、もっと二二六事件について知っておくんだったと、そしたら、もっと面白く感じただろうと主人公の孝史に共感できました。こちらは、上巻なので、登場人物のそれぞれのキャラやタイムトリップしたことなどが描かれるのみで終わります。本題は下巻のほうです。

全40件中 1 - 20件を表示

著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

宮部みゆきの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×