蒲生邸事件 下 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2017年11月9日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (432ページ) / ISBN・EAN: 9784167909581

みんなの感想まとめ

現代から歴史の転換点であるニ・ニ六事件に転移する主人公の物語は、SFとミステリーが融合した魅力的な作品です。下巻では、事件を背景にミステリー要素が強まり、歴史小説としての深みも増しており、読み応えがあ...

感想・レビュー・書評

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  • もし今日が歴史のターニングポイントだったら?
    歴史の転換点といわれる二・二六事件、学校でもさらっとしか習わなくて主人公孝史同様詳しく知らない人の方が案外多いのではないだろうか。
    本書はそんな意図もあるのか孝史を通じて追体験し分かりやすく描かれている。

    ちょっと退屈気味だった上巻と打って変わって
    下巻は話の展開が面白くなってきた。
    蒲生大将の事件が自決か?殺人事件なのか?
    謎が次から次へ出てきて複雑に絡みあい読み手を夢中にさせる。
    そして相変わらず孝史の性格と態度にはイラっとさせられる。特に鼻高々で推理を披露するシーンにムカッとしてしまうのは私だけ?
    二人のタイムトラベラーの能力の考え方の違いやタイムパラドックスの制約、まがい物の神としての葛藤を二・二六事件、これから起きる戦争と絡めSFファンタジーとしても奥深さを感じた。
    私的には主人公が英雄、勧善懲悪とはいかなくとも、もう少し二・二六事件に深く踏み込んでもらいたかったかな。(タイムトラベルの制約、歴史改変に繋がるから難しいのかも)


    終章で戦中、戦後を必死で生き抜いた蒲生邸の
    人達のその後の人生やちゑの手紙に想いを馳せるシーンは切ない面もあったが良かった。
    時が経っても繋がる変わらない想いとあたたかさが心に染みる。
    最後は黒井の血縁者が訪ねてくるとかそんな結末も期待したのだが、そこはちょっと残念である。

    気になったのが平田と孝史の別れの際に交わした何気ない会話での表現のしかた。
    「SF映画好きなんだ。ジュラシックパークを二回見た。ゴジラが観たかった。」
    歴史という大きな力を人の力ではどうにもならない怪獣に例えたのかなと、そう考えるとちょっと面白い。考えすぎ?

    もし今日が歴史のターニングポイントだったら、あなたは気付きますか?そんな問いが本書には含まれている。
    作中では、これから起きる悲惨な戦争に向かっていくにもかかわらず誰も気付かない国民の姿に未来を知っている孝史の叫びたくなる気持ちが痛い程伝わってくる。
    ロシアとウクライナの紛争も気付いた人はいたのだろうか。以前読んだ『ズーラの日記』ではいきなり明日から戦争になりますと学校で伝えられた様子が描かれていた。
    過去の出来事から教訓として学ぶ大切さ、世界の情勢や動向に目を向けたり戦争体験者の話に耳を傾ける。
    本書はそんな気付きを与えてくれる良書。
    さすが「読み継ぐ記憶」に選ばれた作品。
    もしかしたら気付かないだけで今日という日が
    歴史のターニングポイントかもしれない。

    二・二六事件を扱った三島由紀夫の作品や恩田陸のSF小説『ネジの回転』、北村薫の『鷺と雪』読み比べてみるのも面白いかも。

  • 蒲生邸事件を再読。2回くらい読み返しているし、もう全部覚えているんじゃないかと思いながら読み始めたけれど、ほぼ内容を忘れていて、新鮮な気持ちで夢中になり、そのまま読了。宮部みゆきさんの新刊を追いかけていた時期の作品で、初めて読んだのはもう30年くらい前になる。それでもまったく古さを感じず、やはりすごい作家さんだなぁと改めて思う。

    受験に失敗し、予備校の試験を受けるために上京していた田舎の青年が、滞在していたホテルの火事をきっかけに、昭和初期の二・二六事件の真っただ中へタイムトラベルしてしまう物語。時間旅行の能力を持つ平田という男とともに、思いがけず歴史の渦中に放り込まれる。初読の頃は主人公とほぼ同年代だったため、尾崎孝史の幼さをあまり意識していなかった。でも今読むと、大学受験を終えたばかりなのに東條英機のことをほとんど知らない点や、敬語をうまく使えないところなど、行動の端々に幼さが見えて驚かされた。それでも、「千と千尋の神隠し」のように、目の前で起こる過酷な状況を受け止め、乗り越えながら成長していく主人公の姿には強く引き込まれる。無知な若者が、きちんと考える力を持った知的な若者へ変わっていくところに、素直に感動を覚えた。

    二・二六事件とは別に、タイムスリップした蒲生邸でも事件が起こり、その背景を推理していく展開も面白い。思いもよらぬ結末で、最後まで飽きることなく読ませる。物語の軸は太平洋戦争開戦間近の重苦しいものだけれど、結末まできちんとまとめられていて、ぱーっと愉快な気持ちになりつつ、時間の流れの厳しさに涙して読了。やっぱり名作だなって思った。

  • 下巻に入ると、物語が一気に動きだした。
    上巻でわたしが知りたかった「孝史の気持ちの変化」「まがい物の神に対する思い」「蒲生憲之の死が自決か他殺かの真相」は、どれも当事者たちの感情など丁寧に描かれていて、しっかりと受けとめることができた。特に孝史に対しては、上巻の軽薄な印象ががらりと変わるほどだった。

    戒厳令が発布された後、葛城医師と外出した孝史は、街を歩き市民と会話をしたことで、自分の暮らす「現代」との違いに気づくだけでなく、この時代だからこその「働くことの意味」にまで意識を向けだした。その辺りから、顔つきが変わってきたんじゃないのかなと想像する。
    そんな孝史が大きく変化したなぁと思えたのは、クーデターの鎮圧が発表された後に、貴之とともに外出したシーン。
    未来を知る孝史の目の前に、未来を知らずに生きている人たちがいる。たくさんの人が戦争で死ぬこと、生き残ったとしても辛い道であること。そんなことを知っているからといって、自分は何もできない。数人の命を救えたとしても戦争は起こるという事実。
    「歴史は何も見ないし何も聞こうとはしない。」
    歴史を前にして、自分もまがい物の神に過ぎないことを孝史は悟るのだ。

    人間として生きたいと願った平田。臆病者のひとりとして生き抜くという貴之。逃げ出すことはできないと現代へ誘う孝史の申し出を断ったふみ。
    未来からみれば歴史の転換期であった時代で懸命に生きた人たちがいる。

    「ちゃんと生きること」
    「そのときそのときを精一杯やること」
    それがどれだけ尊いことなのか、孝史は身をもって知ったのだ。そして、それはわたしも同じこと。ちゃんと今を生きなきゃなと思うのだ。

    • しずくさん
      随分前に初読みして宮部さんが好きになったのは本作がきっかけでした。逢う約束をしたのは確か浅草寺入り口でだったかしら? 何年かして上京した折に...
      随分前に初読みして宮部さんが好きになったのは本作がきっかけでした。逢う約束をしたのは確か浅草寺入り口でだったかしら? 何年かして上京した折に訪ね、ここで再会したのよねと独り言ちしたのを覚えています。
      二十数年前だから自信ないなぁ~
      2020/07/04
    • 地球っこさん
      しずくさん、こんばんは⭐
      コメントありがとうございます。

      宮部みゆきさんは、今年になって、「え、わたし、宮部みゆきさん好きやわ」と、...
      しずくさん、こんばんは⭐
      コメントありがとうございます。

      宮部みゆきさんは、今年になって、「え、わたし、宮部みゆきさん好きやわ」と、突然ビビビっと好きになってしまいました。
      なんでかわからないんですけど、ストンとハマってしまったのです。
      まさに「今さら」なんですけどね 笑

      蒲生邸事件、ぐいぐい引っ張られながら、読むことができました(*^^*)

      孝史とふきが逢う約束をしたのは、しずくさんの覚えておられるとおり、雷門の前でした。
      孝史がホテルの火事にあった現代(平成6年)に戻り、東京で予備校に通うために一人暮らしを始めた4月、ふきの誕生日にです。

      わたしもきっと、二十数年後にも覚えているんじゃないかなと思える作品でした。
      2020/07/04
  • 流れるように読了し、「壮大だったなぁ」の言に尽きる。読み終わった後のひたひたと世界感に浸って、ものを考えているこの時間が心地いい。

    本作はSF、ミステリー、歴史時代小説の顔をもつ。歴史を知っていても大きな流れは変えられないことを前提として、でもタイムトリップが可能なら人はどうするのか。
    無力感に絶望する人、その能力に誇りをもち個人のために役立てようとする人、歴史の修正を試みる人…それぞれの登場人物がタイムトリップという能力を目の当たりにしたときの化学反応が、どれも確かにそういう行動に出たくなるかもなぁと考えされられるというか。

    作者の描こうとしたテーマが重厚で、ここで感想を書き尽くせるほどまだ自分は読みきれていないと思わされる。折に触れて手に取り、また読み返すよろこびを胸に。

  • 現代(90年代)に生きる主人公が、ニ・ニ六事件という歴史の転換点に転移するSF小説、その下巻。

    下巻は事件をきっかけにミステリー色が濃くなり、
    また、歴史時代小説としての重厚感も増してくる。

    宮部みゆきさんの本を読んだのは、中学生の時に夢中で何回か読んだ「ブレイブストーリー」以来、本当に久しぶりのことでしたが、当時を思い出すような、余韻の残るラストが印象的でした。

    後日、実際の歴史にはいない架空の人物の話と知って驚きました。

  • SFであり恋愛でありミステリであり。史実を知っていればもっと楽しめたのでしょう。感動しました。

  • 高校生の時に学校の図書館に入ってたのを読んで、それから内容を忘れて再読。宮部みゆきファンの友人に貸したら、いたく気に入ったらしく「宮部作品の中で1・2を争う」と言っていたので、この作品を読んでいない、SF好きな方にはオススメしたいです。

  • 2026.04.28
    元少年、元青年から思うこと。宮部みゆきという作家の強みは、少年から青年に至る男の子の心情を掬いとるのが巧みだというところにあると思う。本作もその強みが如何なく発揮されていると思う。
    もちろんSFとか歴史とかの視点からの高い評価も首肯しているが、ワタシには最初に挙げた点を最も高く評価している。

  • 何十年か前に読んだのを再読。当時は「SF?ふーん」って程度にしか思ってなかった。あらためて読むととても良作だった。主人公の行動がやや大胆過ぎて思慮無さに違和感感じたけれどそれぐらいでないと話も進まないか、と自分を納得させました。宮部みゆきさんの作品はちょっとした人物でも嫌な人物でもなぜかみな魅力的に思える。今回もみんな主人公になりうる魅力があった。
    時間を移動する系の設定でこの小説が一番地に足ついてる気がする。

  • 再読とはいえ読むのは数十年ぶりなので、前知識(というか思い出せたこと)は「『二・二六事件』の日にタイムトリップする」という、あらすじにもならない断片的な情報だった。
    今まで、数は多くはないものの、いくつかタイムトリップものの小説を読んだが、必ず起こるのが歴史の改変、タイムパラドックスだ。物語によっていろいろな設定があり解決法があるものだが、本作の、事象の解釈の仕方があまりに胸に迫るもので、何だか歴史とは、時間の流れとはすごいなぁと、到底敵わない気持ちになった。平田の言う「まがい物の神」は言い得て妙で、孝史の身に染み渡ったように、私にも強い印象と余韻を残している。

    私自身も近代史、特に昭和史にはとんと疎く、きっと貴之に「何も知らないのだな」と言われてしまうのだろう。でも、あまりに題材の二・二六事件が面白そうで、ネットだけではなく紙の資料にもあたってみたくなった。

    SFでもあり歴史小説でもあり、ちょっぴりロマンスもある、青年の成長物語。これだけの要素を濃淡上手く書き分けるのはさすが宮部みゆきだ。

  • めちゃくちゃ泣いてしまった。
    語彙力なくて何も言えないけれど、なんとなく人間の無力さとか愚かさを思い知った。
    『歴史はただ進んでいくだけ、人間はその中のパーツにすぎない。』
    主人公が二・二六事件を過ごすなかで経験したいろんなことがなんか突き刺さってきた。
    竹槍事件を初めて知った。
    A級戦犯とされる東條英機も、その時代では英雄で、人々に賞賛されてきた。蒲生大将は日本の未来を見て東條を批判しただけで、その時代を見て国の行末を予想したのではない。それを語る貴之の台詞が切ない。『父は未来を見たんだ。結果を知っていたんだ。知った上で、何も知らずに生きた人たちが、これから成すことを批判したんだ。父ひとりだけが、言い訳を用意したんだ。抜け駆け以外の何者でもないじゃないか。』
    すごく共感した。戦犯とされている軍人たちも、あの時代、国を懸命に動かしただけ。彼らは間違っていたのかもしれない、けれど未来を知っている私たちは誰もそれを批判できないと思った。人間は歴史の中で生まれては消えていく存在で、歴史はただその方向に進んでいくだけ。平田もそう言っていたが、そんな彼は竹槍事件での悪辣な召集を受け入れた。
    自分はこの時代で生きなければいけない、この時代をひとりの人間として生き抜くんだと言っていた平田。彼は人間となって死んだ。
    臆病者だった貴之も、この時代を、戦争を生き抜き、臆病者ではなくなって人生を終えた。孝史がふきからの手紙を読んで貴之に賞賛を送るシーンでは涙が出そうになった。
    『そうか、貴之は戦争を生き抜いたのか。孝史はその事実を噛み締めて、貴之のために微笑した。やったじゃないか、あんた。』
    孝史はこの時代にやってきて最初は少しも役に立たなかった。でも、周りと関わりその時代の人間として生きていくうちに、だんだんと成長していった。
    『ふと、さっきまで町を歩いていた時の自分のていたらくを思い出した。銃を担いだ兵士を目にしただけで震え上がってしまい、屋敷に帰り着いた時には涙目になっていた尾崎孝史。だけど俺は、この時代に慣れてないんだ。日本に軍隊があり、軍人が武器を持って町を闊歩している時代に慣れていないんだ。しょうがないじゃないか。』
    自分がこの時代にいれば、何かできただろうかと考えた。孝史と同じ状況で、何ができただろうか。きっと何もできないと思う。
    貴之から、君は何も知らないんだなと言われ、自分たちがバカにしていた歴史オタクの友人を思い出した孝史。何も知らない自分を恥ずかしく思ったのは、私も一緒だった。無力さを痛感した。

  • どう表現すればいいのか分からない、ぐちゃぐちゃした感情になる。けれど決して不快ではなく、いいものを読んだ満足感はある。
    未来を見てきた人が将来に向けて手を打つことを、「ずるい」と言うのは目から鱗だった。だけど確かにそう。たった今を懸命に生きられず、歴史に対して言い訳を用意する。戦犯にも劣る臆病者。それをちゃんと貴之が分かっているところは、父よりずっと勇敢では。

  • ただのタイムスリップミステリーものかと思って読むと、付いていけなくなるのが二・二六事件ごろの日本の情勢知識でした。ただ、苦戦しながらも読み切ることで抜群のストーリーを味わうとともに、歴史的知識を増やせたことに感動してしまいました。

    昭和十一年について詳しく考えたこともなかったけれど、その時代の人々が現代の私たちとそう変わりない人間らしさで生きていた描写に納得しました。激動の時代だったからと言って誰もが思想家や活動家だった訳ではないし、日常があって当たり前。

    時の細部の調整を辞めて人間らしく生きることを目指した平田や、命の終わりまで愛する人々のために時間旅行を駆使した黒井の考え方はどちらが正解ということもなく苦悩の末の決断だったというのが印象に残りました。タイムトラベラーでなくても、行ってきた善意に意味がないと諦めて自分らしく生きるか、大した意味がなくても行動し続けることにするか、後者がかっこいい気がしてしまうけれどどちらを選んでも現実は厳しかったり。。

    後半に進むにつれ面白さが加速する作品だったので、読み切れて本当に良かったです!

  • タイムトラベル系の話は一歩間違えるとドン引きしてしまうリスクがあるので、最初は少し不安でしたが、すんなり読めました。
    とにかく人物の描写が上手いですし、ストーリの流れも良かったです。流石推理小説界の女王ですね。

  • 上巻では呆れるほど子どもだった青年が、ラストではここまで思慮深くなれる。そのための経験を二・二六事件にからめて描くミヤベの技はさすが。

  • 〈この国は一度滅びるのだ。あなたたちが今ここで意識している「国」は滅びるのだ。そして滅びるときに、あなたたちをみんな道連れにして行くのだ。そこで笑っているあなたも、そこで歩道の人に笑いかけたあの兵隊も、戦車の上の兵隊も、みんなみんな道連れにされてしまうのだ。〉

     予備校の受験のために上京し、ホテルに滞在することになった尾崎孝史は、そのホテルがかつて陸軍大将であった蒲生憲之の邸宅だったことを知る。蒲生は二・二六事件勃発当日に自決した軍人だった。それまで二・二六事件のことを何も知らなかった孝史は突然ホテルで起こった火災に巻き込まれ、死を覚悟する中で、謎の男に連れられ、気付けば雪の降る昭和十一年二月二十六日未明の東京、永田町にいた。間もなく二・二六事件がはじまる――。

     孝史自身もほとんど二・二六事件について知らないという設定(その設定自体、後半に重要な意味を帯びてくるのですが)なので、詳しくないひとでもすんなり入っていける作品だと思います。

     時間旅行者の苦悩、蒲生憲之の自殺の真相、青年の恋と友情、父と子の想い、そこに生きる人々への祈り……様々な要素が絡み合い、奔流のように流れ込んでくる最後の100ページくらい、ずっと涙で文字がぼやけていました。私がタイムスリップものに弱いとか、そういうのは脇に置いておくとしても、『永遠の名作』という言葉はこういう作品のことを言うのだろう、と過去の昏い絶望の先に、明日への希望が射す余韻に深く頷きたくなりました。

  • 読んで良かった!度々、目頭が熱くなった。タイムトラベルものは、死とはまた違う別れがつきもので切なくなる。
    平田の時間旅行者としての葛藤も、歴史の中の人物も、皆『今を懸命に生きる』方に向かう。例え間違いがあったとしても、その時懸命に考え、生きたことが何より。
    タイムトラベルは、皆やってみたいと思ったことがあるんじゃないかと思うけど、未来を見るとつまらない。嫌な過去もそんなに変えられない。やはり何より今現在が大事なんだなと。

  • 上巻はもどかしい時間が続いたが、下巻は駆け抜けるようなドキドキと切なさがあった。貴之、珠子、ふき、誰もが逃げも隠れもせず戦後まで生き抜いた。たとえまがいものの神でも、貴之が自分の誇りを貫いて死を迎えられてよかった。
    もし自分がこの力を持っていたら、平田のように人間として死ぬことはきっとできない。

  • 2.26事件の時代に突然タイムスリップし、事件の横で様々な事象を眺めるお話。
    メインテーマは、事件に関わることを通じた主人公の成長だろうか。最後の最後の展開は感傷的で良かった。

  • 後半の主人公の成長ぶりがよかった。
    下巻の半ばまでは、何かと主人公の幼稚さを強調するような描写が多かったので、タイムスリップで過去の歴史を見つめたことをきっかけに、未来に向かって頑張っていこうとする姿は清々しかった。
    その後どうなったのか、ラストシーンの描写にあたたかさを感じた。

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著者プロフィール

宮部 みゆき(みやべ・みゆき):一九六〇年東京都生まれ。八七年「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。『火車』で山本周五郎賞、『理由』で直木三十五賞、『名もなき毒』で吉川英治文学賞、ほか多数の文学賞を受賞。『霊験お初捕物控』『ぼんくら』『三島屋変調百物語』シリーズ、『きたきた捕物帖』シリーズなど著書多数。


「2025年 『東海道綺譚 時代小説傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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