奴隷小説 (文春文庫)

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  • 文藝春秋 (2017年12月5日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (192ページ) / ISBN・EAN: 9784167909727

作品紹介・あらすじ

どこにも、逃げられないよ──。



長老との結婚を拒絶する女は舌を抜かれてしまう、という掟のある村で、ある少女が結婚相手として選ばれる「雀」。

ある日突然、武装集団によって、泥に囲まれた島に拉致された女子高生たちを描いた「泥」。

アイドルを目指す「夢の奴隷」である少女。彼女の「神様」の意外な姿とは?(「神様男」)。

管理所に収容された人々は「山羊の群れ」と呼ばれ、理不尽で過酷な労働に従事し、時に動物より躊躇なく殺される。死と紙一重の鐘突き番にさせられた少年の運命は?(「山羊の目は空を青く映すか」)……など。



時代や場所にかかわらず、人間社会に現れる、さまざまな抑圧と奴隷状態。

それは「かつて」の「遠い場所」ではなく、「いま」「ここ」で起きている。

あなたもすでに、現代というディストピアの奴隷なのかもしれない――。

様々な囚われの姿を容赦なく描いた七つの物語。

桐野夏生の想像力と感応力が炸裂した異色短編集。



解説は政治学者の白井聡。

カバーイラストは、かわいさと残酷性を併せ持った作風で物議を醸すLA在住の画家、Luke ChuehのRough Waters。

みんなの感想まとめ

さまざまな抑圧と奴隷状態を描いた短編集は、現代社会の暗い側面を浮き彫りにします。七つの物語は、物理的にも精神的にも囚われた人々の姿を通じて、希望を失う恐怖や理不尽な支配構造を描写しています。特に「雀」...

感想・レビュー・書評

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  • 7つの短編小説が収められた短編小説集。雑誌掲載の作品を集めたものであるが、発表時期は2006年から2014年の間でばらついている。何かに物理的に捉われていたり、あるいは、支配されている状況を描いた小説ばかりである。「奴隷小説」という短編小説集全体の題名も、そこから来ているのだろう。
    どれも、やり切れなさ、あるいは、自分が実際に同じ状況に置かれたらどうなるだろうという怖さを感じる小説ばかりである。どの小説が最も印象的かというのは、人によって異なるだろうが、私は「告白」という短編小説が最も印象的で、最も怖かった。他の小説も、絶望的な状況に置かれた人たちを主人公にしているが、それでも、場面が展開する可能性のある終わり方をしている。しかし、この「告白」は、終わり方こそが救いようがない。
    【引用】
    「ヤジロー様、これは私たちが如何にして、少しずつ希望を失ったかという物語でございます。言うなれば、希望の瓶が底を突く、というお話。次は私の番でございます」
    【引用終わり】
    主人公のヤジローは、薩摩から逃げ続け、インドのゴアに到着する。そこで、ある老人と知り合うが、気がつくと、暗闇の中で縛られ身動きが出来ない状態のまま、その老人の「如何に希望を失ってきたか」という話を聞かされる。そして、その老人の話だけでは終わらず、「次は私の番でございます」と「絶望、希望を失う話」をしようと手ぐすねをひいている多くの人たちが待ち構えていることに気がついたところで小説は終わっている。身動きのとれない状態のまま、人が希望を失っていく話を延々と、あるいは、もしかしたら永遠に聞かされるというのは、人が思いつける最も絶望的な状況に近いのではないかと思う。それが、とても怖かった。

  • 久し振りの桐野作品! タイトル通りの社会構造を浮き彫りにする短編7編。「雀」「泥」「告白」「山羊の目は空を青く映すか」あたりがお気に入り。特に「雀」の世界観は、理不尽で重層的な支配構造を描いており、気持ち悪くなりながらも頁を捲る手が止まらなかった。

  • 桐野夏生『奴隷小説』文春文庫。

    帯には『様々な囚われの姿を容赦なく描いた7つの異色短編』とある。確かに変わった設定の、イヤな後味を残す短編ばかりが収められている。が、最初の2編はまあまあ面白かったが、3編以降は次第に尻窄みといった感がある。

    『雀』。恐ろしく、おぞましい物語。どういう設定なのか解らぬままにストーリーは展開し、この物語の全貌を知るとき、何とも言えぬ不快感に襲われる。他人に決められた好きでもない男との結婚は女性にとって、さぞや苦痛なのだろう。

    『泥』。突然、囚われの身になった女子高生たち。これも気持ちの良い物語ではない。泥の下には…

    他に『神様男』、『REAL』、『ただセックスがしたいだけ』、『告白』、『山羊の目は空を青く映すか Do Goats See the Sky as Blue ?』を収録。

  • まさに奴隷状態に置かれている人々をモチーフ(?)に書いた短編集。
    設定はさまざま。ボコ・ハラムに誘拐された女子生徒たちと思われるものや、北朝鮮の人民を連想させるもの、何の情報も得られず、閉ざされたコミュニティでひたすら働くしかない炭鉱労働者、江戸時代に国外逃亡した男、など。
    一つだけ現代の日本の女の子(の母)を題材にしたものがあって、「アイドルになりたい」という夢の”奴隷”となり、あらゆることを犠牲にしている、という設定なんだけど、かなりシリアスだった。AKBやら乃木坂なんちゃらやら、次々に現れては消えていくアイドルの、華々しい活躍の陰に、こういう”奴隷化”された人たちがいるんだな…と、ちょっと背筋が寒くなる。
    私たちは平和な日本にいて、ニュースで中東のテロや、ボコ・ハラムの誘拐事件を聞いても、「死者何十人」とか、「数百人誘拐された」とか、本当は驚くべき数字だが、多すぎてもうピンと来なくなっている。でもその「数百人」の一人一人は、当たり前だがちゃんと尊厳を持った、大切な一人一人で、その当たり前のことに想像力を働かせて書かれている「泥」という一編は圧巻だった。社会的な問題提起だけが作家の仕事ではないと思うけど、問題提起というか、どんな遠くの国の出来事でも、ここまで想像力を働かせることができる、という意味でとても意義深いと思った。

  • すっと書いてある分、そこらのちょっとしたエログロより大分きつかった。一話につき30ページでこれだけ伝えられる表現力。遙かなる高み。「神様男」が身近には一番辛い、私はこういう人達を知っている。

  • どれもこれもおどろおどろしい。
    でも全部最後はふわっと終わる。
    でも最後までは凄く面白い。  
    不思議だなー。
    告白なんか、ちょっと最後まで教えてよ!って思う(笑)全部最後までどうなるか教えてほしい。けどふわふわしてるのがいいのかな。

  • 後味がどれも悪い。希望が無く結末が曖昧で
    モヤっとする、きっとそれが
    囚われている『奴隷』っていうコトなんだろぅな。

  • 箸休め的に三時為の短編集を読もうと思い購入。

    世界観は独特だが心に響くものが無い。

    淡々と読み終えた作品。

    厳密にいうと☆2.5

  • 「雀」「泥」「神様男」「REAL」「ただセックスがしたいだけ」 「告白」「山羊の目は空を青く映すか」
    これら7編が収録されています。

    どの短編も日常と掛け離れた一種独特の世界が描かれていて桐野さんらしい「毒」が溢れた作品でした。

    現代を描いた「神様男」その他、場所や時代背景は異なるけれど皆、何かに囚われている奴隷状態と言えます。

    読後感は決して良くはないけれど、読んでいる間どこか別世界に入り込んだ様な錯覚に陥ります。

    不気味で暗鬱な作品だけれど桐野さんの「毒」は癖になります。

  • 女性、低所得層、民族や人種。今もなお、目に見えないところで差別されている人々。
    BLMのプロテストが今行われている中でとても考えさせられた。誰しもが、フィジカル的にもメンタル的にも奴隷的に扱われていること扱っていることそしてその可能性があることに気づいているのかな。

  • スラスラ読めたけどしんどい

  • 穏やかではないタイトルですが、短編集なのでさらっと読めます。個人的には「泥」と「山羊の目は空を青く映すか」が好きです。どちらも奴隷生活が終わる予感で締められているからかな。もっとも解放されるだけであって、ハッピーエンドというわけではないですが、そのあたりはやはり桐野作品です。
    何度でも読みたくなるかと問われれば頷けない短編集ではありました。特に印象的なフレーズも場面もなく、それでもちょっと空いた時間に読むのにちょうどいい長さと重さです。

  •  ナボコフっぽい短編集( ´ ▽ ` )ノ
     ナッツ失速後の作品ゆえ、エロもグロも破壊も逸脱もかなり控えめ……(´ヘ`;)ウーム…
     各短編、前フリだけで終わってる感……(´ヘ`;)ウーム…
     カツテノナッツなら、「そこから先でドギモ抜き」だったんだけどね……(´ヘ`;)ウーム…

     ブクログレビュー(16個しかない……)見るとみなさん「神様男」がお気に入りのようだけど……(´ヘ`;)ウーム…
     ケチを付けるようで申し訳ないm(_ _)m――あれなんかナッツ失速後の典型作に思える……(´ヘ`;)ウーム…
     以前なら、(妹でなく)おっ母さんのほうがトチ狂ってアイドル目指しだすとか、さらなるレッスン料を求められた長女が妹を風俗に売っぱらうとか、メチャクチャな展開になったはずなのに……(´ヘ`;)ウーム…
     そも、タレント願望・無名事務所・レッスン料って言うから、てっきり詐欺→借金→AVという典型的な「奴隷」堕ちストーリーになると思ったんだけど……悪い意味で予想を裏切られた……(´ヘ`;)ウーム…
     キモヲタのほうを主人公にして、AKB握手券商法で地下アイドルの奴隷となっていく話のほうがまだよかったような……(´ヘ`;)ウーム…

     全体に寓話・ファンタジー的な体裁にしたのも良し悪しで……(´ヘ`;)ウーム…
    「奴隷」というテーマが極端に観念的になっちゃって、今一つも二つもピンとこない……(´ヘ`;)ウーム…
    「女神記」なんか、こうじゃなかったんだけどなあ……(´ヘ`;)ウーム…

    「奴隷」テーマなら、西村寿行作品(「怒りの白き都」など)をゲップが出るほど読んだから、本作ていどじゃぜんぜん物足りない……(´ヘ`;)ウーム…

    2019/05/24

  • どの話も大きな可もなく不可もない感じ。
    読みやすいのであっという間に読めはする。

    話によって終わり方のできにばらつきがあるような気がする。
    基本的に読み手からすると悲劇なんだけど、主人公にとっては悲劇ではなくハッピーエンドなのかなぁという終わり方が多かった気がする。

  • 肉体的あるいは精神的に隷属状態に置かれた人々を描いた短篇集。

    とにかくぞくぞくしました。
    面白いと言うのは不謹慎かもしれないけど、こんな気持ちにさせてくれる桐野夏生という作家はやっぱり稀有な存在だと思います。

    さまざまな時代や設定の中で、奴隷として抑圧状態に置かれた人やその周囲の人を描いていますが、自分の抑圧状態に無自覚な人もいれば、脱出しようと戦おうという人もいます。

    暴力によって肉体的・直接的に支配される女性を描いた話はとんでもなく苛烈で、過去だけではなく現在でもこのような扱いを受ける女性がいるのだろうと想像するのもおぞましく、反吐が出そうになりました。

    精神的に搾取され続ける女性の地下アイドルの話も痛々しかった…。
    作中ではアイドルが「キモオタ」に消費されいつかは見向きもされないであろう未来を暗示しており、人間の尊厳を削り取っていく歪んだ構造に寒気がしました。

    よく考えたら、人間が二人以上いたら支配と隷属は必ず存在し、それは人間社会の構造上当たり前のことなのかもしれません。
    現代日本でも精神的な抑圧は至るところにあって、今の隷属状態から抜け出してもまた別の何かに支配されるかもしれないし、生き続けてるだけで「地獄巡り」みたいなものなのかも。

    世界に搾取され続ける人がいることに目を背けず、小説で描くことで絶えず訴え、現代社会を照射し続ける桐野さん。
    多分、自分が社会に受けた怒りが小説を描く原動力になっているのかな。
    私はデビュー以来桐野作品の登場人物にずっと共感してるし、自分の気持ちを代弁してくれてると思ってます。
    桐野さん、大好き…いつまでも作品を追って読んでいきたいです!

  • 古今東西に存在して滅する事のない、人間社会の抑圧と奴隷状態。さまざまな囚われの姿を容赦なく描いた7つの異色短編集。
    人間とは「差別」をする生き物である。自分と他人との優劣をつけることにより、己の立ち位置を見つける。どの作品も無国籍的で哲学的だが、分かりやすいのが「神様男」。売れない地下アイドルの世界が舞台だが、キモオタ男の発する言葉が、真実を突きながらも空々しい。

  • 解説を読むまで本書の書きたいことがわかりませんでした。
    一読でわかるほどになりたいです。

  • 一読後、うーむと頭を抱えてしまいました。
    不条理な環境に置かれた主人公をどこか突き放した視点から描くいつもの桐野さんらしい筆致は楽しめたのですが、多くの作品が長編のプロローグのように思え、この続きを読みたいという欲求不満ともやもや感が残ってしまったからです。
    シンプルといえば確かにそうなのかもしれませんが、桐野さんレベルの書き手だったらもっともっと掘り下げた部分までじっくり描いて欲しかったなあと感じました。

    収録された7作の中で一番読みやすくて面白かったのは、やっぱり「神様男」でした。
    現代の地下アイドルを取り巻く歪な構造が悪意とユーモアを交えて描かれていますが、この作品だけが現代日本を舞台にしたリアリズム小説で、一番身近に感じられたことが大きかったように思います。

    本編とは関係ないですが、文庫版の表紙は単行本版から変える必要は無かったのではないでしょうか。
    このイラストはちょっと・・・。

  • 短編集ですが、楽しめました。
    設定が現代なのに、理不尽に人が連れ去られて殺されたりの話があったりして。
    非現実的ながらも「理不尽」「差別意識」などを考えさせられる斬新な内容です。

  • 様々な奴隷を書いた短編集。
    最後の短編「山羊の目は空を青く映す」で、母親が、日本の男の背広を作っている。という発言でようやく奴隷小説がストンときてああっとなりもう一度読んだ。架空の世界の話に見せてそうではないところがとても恐ろしい。
    「奴隷」と聞くと自分とは遠い存在の言葉と思っていたが何かに囚われるということ。

    どの小説も結末というものがないので続きというか、もう少し書いて欲しいと思ってしまう部分もあった。
    これも囚われか。

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著者プロフィール

1951年生まれ。1993年『顔に降りかかる雨』で江戸川乱歩賞、1998年『OUT』で日本推理作家協会賞、1999年『柔らかな頬』で直木賞、2003年『グロテスク』で泉鏡花文学賞、2004年『残虐記』で柴田錬三郎賞、2005年『魂萌え!』で婦人公論文芸賞、08年『東京島』で谷崎潤一郎賞、2009年『女神記』で紫式部文学賞、2010年『ナニカアル』で島清恋愛文学賞を受賞。

「2011年 『小説家の饒舌 12のトーク・セッション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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