血脈 下 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2017年12月5日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (672ページ) / ISBN・EAN: 9784167909802

作品紹介・あらすじ

佐藤愛子といえば、やはり『血脈』!

それは、妻子ある佐藤紅緑が、新進女優を狂おしく愛したことに始まった。
大正から昭和へ、因縁の炎が佐藤家を焼き尽くしていく。
圧倒的迫力と感動の大河長篇。

圧巻の三部作を、読みやすくした新装版で刊行。

【旧版からの変更点】
(1)人名・地名・難しい字に、ふりがなを増やしました。
(2)登場人物の系図を栞にして、上・中・下巻に挟み込みました。

(下)のあらすじ
紅緑が亡くなり、シナは過ぎ去った40年を思う。そして娘・愛子に「佐藤家には毒の血が流れとるから、気をつけなさい」と諭す。夫と別れた愛子に、小説を書くことを勧めたのは、シナだった。ヒロポン中毒の八郎の家で繰り返される佐藤家の因縁。愛子は再婚するも夫の会社が倒産し、多額の借金を背負う。シナが世を去り、八郎が急死。佐藤家を焼き尽くす因縁の炎の行方を見据えるのは、残された愛子であった。

みんなの感想まとめ

家族の因縁と愛憎が渦巻く物語が描かれています。主人公の佐藤愛子は、母シナと老いた父紅緑の看取りを経て、自らの小説家としての道を歩み始めます。彼女の家族には、情熱と狂気が交錯し、過去の栄光と苦悩が色濃く...

感想・レビュー・書評

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  • 離婚した佐藤愛子が母シナと老耄になってしまった紅緑を看取り、血は争えず小説家になろうとする。かたやサトウハチローという異母兄はあんなに美しい詩を醸すのに、ケチで下劣で最低男なんだと、愛子に聞こえてくる。ハチローの妻や子たちの尋常ならざる生きざまを知り、自身の再婚相手にはこれまた、けたはずれの借金に悩まされる運命。

    観察者(語り手・作者)兼中心人物愛子が老境になり、紅緑ハチローのかかわった女たち、紅緑の孫子たちの運命を見定めていく、圧巻だった。


    「若い頃の私は紅緑の小説を造り物だと批判しハチローの詩を噓つきの詩だと軽蔑していた。だが『血脈』を書くにつれてだんだんわかってきた。欲望に流された紅緑も本当の紅緑なら、情熱こめて理想を謳った紅緑も本当であることが。ハチローのエゴイズムには無邪気でナイーブな感情が背中合わせになっていたことも。・・・・・・この始末に負えない血に引きずられて死んでいった私の一族への何ともいえない辛い哀しい愛が湧き出・・・世間の誰もが理解しなくてもこの私だけがわかる。我がはらからよ。」


    この​著者のあとがきは秀逸である。読む者にとても響き『血脈』を書きたかった著者の胸中がわかるのである。

    これでもかこれでもかの波乱万丈人生模様。「自己中」のようで「鼻持ちならない」と読み捨てられないおもしろさ。平易な文章なのに誰でも書けるかというと、書けやしまい軽妙さ、やはり才能だなあ。
    というか、愛子さんの生まれ育った阪神間の土地風土に関係あるかと。

    「阪神間」、関東人のわたしには土地的には漠然としているが、文学ではおおいに出てくるので理解はできる。「風がちがうのよ」と須賀敦子さんは言ったそう。谷崎潤一郎『細雪』の時代と世界も思い出す。

    文学でもなくても、わたしのそこ出身の友人たちの言動、立ち居振る舞いは、良くも悪くも独特で、どぎもをぬかれた経験がある。今思うとおもしろくもなつかしい、いい異文化経験だったと​。違うものには新鮮味、深い興味とを感じる。

  • 緊迫した展開が続いた上巻に対し、佐藤家一族の大河ドラマは中流域に入り、流れは少しゆるやかになる。時代は1934~48年、戦争を挟む15年間。兄3人、そして福士幸次郎が亡くなり、父紅緑も亡くなる。
    愛子本人が頻繁に登場する。11歳から25歳、結婚して2人の子を産む。しかし、あの力強い「佐藤愛子」はまだ姿を見せない。試練の修羅場はもう少し先の話。
    ハチローは(とくに戦後は)活躍の絶頂期。そのハチャメチャな生きざまと文才は、往年の紅緑のそれとほぼ重なる。蛙の子は蛙、書名「血脈」のゆえん。
    この巻も、愛子の筆は容赦がない。往年の栄光を知るほどに、紅緑の耄碌ぶりが痛ましい。

  • 上中下巻、各600頁を超える超超超大作。
    佐藤紅緑、サトウハチロウー、佐藤愛子に脈々と受け継がれる佐藤家の血。

    「愛憎」という言葉がありますが、愛と憎しみは紙一重だとつくづく思いました。しかも、佐藤家の男どもは、人一倍寂しがり屋で、激しい情熱を持った人たち。寂しくて一人ではいられない、孤独が怖い。だから、愛を求めるけど、愛が得られないと荒れ狂う。激しく抵抗して、生活が荒れて、落ちるところまで落ちていく。
    「佐藤家の血は狂っている」という愛子の言葉が出てきますが、情熱と狂気も紙一重ですよね。

    佐藤家の男たちに、その伴侶の女たちは苦しめられますが、救いなのは、男たちの寿命が尽きて亡くなった後は、女たちは過去を笑い話にして、たくましく我が道を歩んでいくところ。

    しかし、これはほぼノンフィクションでしょう。いやいや、すごい家族です。そして、これを書き上げた佐藤愛子は本当にすごい!

    あとがきに、この小説を書き上げるまでの経緯が語られています。感動すること間違いなしです。是非お読みください。

  • 佐藤愛子の傑作、最終巻。
    間もなく百歳を迎える、おそらく最後の流行作家の生涯が垣間見える。

  • 60過ぎてからこんな大作を書き始めたって、DNAなんだろうけど、愛子さんすごい。読み終わって、佐藤家、特に男子に受け継がれる?性に敬服?哀愁?色々な感情が溢れた。血脈と言う題名にまた感服、正に血脈。とにかく色々な思いが残った本だった。感動した。よかった。

  • 【佐藤愛子といえば、やはり『血脈』!】物語は、佐藤紅緑が新進女優を狂おしく愛したことに始まった。大正から昭和へ、佐藤家を焼き尽くす因縁の炎。迫力と感動の大河長篇。

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著者プロフィール

大正12年、大阪生まれ。甲南高等女学校卒業。昭和44年、『戦いすんで日が暮れて』で第六十一回直木賞を受賞。昭和54年、『幸福の絵』で第十八回女流文学賞を受賞。平成12年、『血脈』の完成により第四十八回菊池寛賞、平成27年、『晩鐘』で第二十五回紫式部文学賞を受賞。平成29年4月、旭日小綬章を授章。近著に、『こんな老い方もある』『こんな生き方もある』(角川新書)、『破れかぶれの幸福』(青志社)、『犬たちへの詫び状』(PHP研究所)、『九十歳。何がめでたい』(小学館)などがある。

「2018年 『新版 加納大尉夫人 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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